ロックマンDASHエピソード0 後編

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 長い廊下を走る。本当なら小刻みに重力が変わるエリアが続いている筈の場所だが、今は作動していない。
見かけるリーバードもまだ小型のものばかりで、数も少数だ。どうやらこちらを敵だと判断しているようだが、生憎と小物を相手にしているだけの余裕はない。それらを全てスルーして走り抜けた。
時々避けきれないものもいるが、キックで軌道を逸らしたり、持ち上げて同士討ちさせたりと、適当にあしらうことにした。
『・・――える?聞こえる、トリッガー?』
「あ、はい。聞こえますよ、ちょっと調子悪いけど」
 暫く走ったところで通信が入る。ユーナだ。既にこの状況に気が付いていることはわかっていたが、流石はマザーの名を冠しているだけのことはあり、行動は早かった。
『まだシステムが本調子じゃないから、こっちからもスキャンしようと思ったんだけど、上手くいかなくてね。あなたに調査をお願いしようと思ってたところなのよ』
「えぇ。マスタールームからも上手くアクセス出来ませんでした」
『そうね。あなたもわかってるとは思うけど、ディフェンスエリアを抜けてくしか方法はなさそう。今出逢うリーバード達は小物ばっかりだけど、数が多いから注意してね』
「わかってます」
 そう云った矢先、眼前にホロッコが飛び出してきた。最下級リーバードの一体だが、全身が炎に包まれているせいで迂闊に触れることは出来ない。
おまけに移動速度はなかなかのものだ。完全スルーというわけにはいかないだろう。
 初手の突進を側転することで避け、起き上がり様にバスターを放つ。ホロッコならば数発のバスターでも簡単に倒せる筈だ。
「くっ・・!?」
 しかしホロッコはバスターを受けつつも、それをものともせずに突っ込んできた。予想外の出来事に回避が遅れ、体当たりを受けて近くの壁へと叩き付けられる。
ホロッコはそれでも止まらない。すぐにターンをすると続けざまに攻撃しようとロックに向かって猛然と向かってくる。
『トリッガー!』
「くそっ!」
 反応の遅れによる回避失敗に二度目はない。飛び込み前転でホロッコの頭上を飛び越え、すれ違い様にバスターを連射する。
放たれた光弾は一発、二発、三発とホロッコに炸裂した。体勢を立て直しつつ、更に連射を浴びせ続ける。ホロッコが爆裂したのは数えて七発目の光弾が直撃した瞬間のことだ。
 ロックは思わず大きく息をついた。アーマーを着るのが一年ぶりだったせいで、肝心なことを忘れてしまっていたのだ。
『大丈夫?前にも云ったけど、あなたのアーマーはセラちゃんとの闘いでボロボロなの。見た目は綺麗になってるけど、武器の出力とかはかなり低くなってるってこと忘れないで』
「すみません、肝に銘じます」
 かつて最高クラスにまでカスタマイズしていたバスターも、今では最低出力だ。これでは確かにホロッコを倒すことさえ難しい。極力戦闘は避けるべきだろう。
 一応持ってきている右手のシャイニングレーザーもエネルギー残量はほとんどゼロ。恐らく撃てて一発が限度だ。それでも最大出力が出るかどうか怪しい。
 割と状況を甘く見ていた自分をロックは反省した。今の装備では強力なリーバードには太刀打ち出来ない。それどころかディフェンスエリアの地形さえ忘れかけているのだ。
『まっ、私がナビして上げるんだから道に迷う心配はないわよ、ロック君』
「人の心を読むのはやめて下さい・・」
『おーっと、暢気に会話してる時間はないみたいよ!続々来るから気をつけて!』
「は、はい・・!」
 ユーナに指定された扉を開くと、そこは見事にリーバードの山だった。
 見渡す限りのホロッコの大群。それらのあちこちににょっきりと頭を出すフィンゲリー。騒々しい音を立てて駆け寄ってくるのはクルグルだ。その奥には扉を守るガンブリーの姿も見える。
それらはロックの姿を確認すると、一斉にロック目掛けて殺到した。かつてディフェンスエリアを抜けてきた時よりも遙かに凌ぐ数だ。とても最低出力のバスターと一発しか撃てないシャイニングレーザーでかき分けられる状況ではない。
 しかしロック・ヴォルナットは地球ではSS級ディグアウターだ。そしてロックマン・トリッガーは一等粛正官の名を冠するイレギュラーハンター。
例え武装が貧弱だとしても、たかがリーバード如きに尻尾を巻いて逃げる男ではない!
「えーいもうっ・・こうなったら正面突破だ!」
『トリッガー、がんば!』
 殺到するリーバードの軍勢目掛けてバスターを連射する。最低クラスまで威力と連射力の落ちたバスターではその中の一体すら仕留められはしない。
だが掃射するバスターは破壊するのが目的ではない。それらを受けたホロッコ達の足を一瞬でも止める為のものだ。
「最弱のバスターでも!」
 足を止めたホロッコの一体を引っ掴み、すぐ近くの一体目掛けて放り投げる!
「使い道は!」
 更にそれで吹き飛ばされたホロッコ達を端から掴み、とにかく手近なホロッコへとぶつけ、同士討ちを狙う。
 足下を掬うようにして突っ込んでくるクルグルは頭上を飛び越えて躱した。そしてフィンゲリーの眼前に着地したロック目掛けて、クルグルは更に追撃を仕掛けてくる。
それをギリギリまで引き寄せ、側転で離脱。急旋回の出来ないクルグルはフィンゲリーに激突すると、両者は爆炎を上げて四散した。
「あるんだっ!」
 背後からゆっくりと歩み寄ってくる二体目のフィンゲリーに足払いをかけ、その体勢を崩す。
重心が高く腕を持たないフィンゲリーはそのまま起き上がることさえ出来ず、ただじたばたと足を動かすだけだ。そしてそれは上空へと移動することの出来ないホロッコをせき止める障害物にもなる。
ロックを追いかけようと次々突進してくるホロッコは、横倒しになったフィンゲリーに阻まれて動くことが出来ず、あまつさえ後から後から突っ込んでくる仲間達の衝撃に耐えかね、やがてはフィンゲリー共々破壊されていった。
『ひゅー!やるじゃない!でもガンブリーはどう切り抜けるの?』
「こうします!」
 空中に浮遊し、四つの腕を飛ばしてくるガンブリーを倒さなければ扉は開かない。そして扉を開かなければ、すぐにまたこの部屋はリーバードでいっぱいになってしまうだろう。
 ロックの決断は早かった。次々に飛んでくる四つの腕を紙一重で躱し、一気にガンブリー本体にまで肉薄する。
そして戻ってくる腕が再びエネルギーを充填する為に纏う光を消した瞬間、それらを足場にしてガンブリー本体の上に飛び乗る。
後は頭部の影に隠れるだけだ。再びエネルギーで満たされた腕は、ターゲットを破壊しようとロックオンした者へと一直線に向かっていく。その軌跡の間に自分のメインコンピュータが存在していようとも。
『・・トリッガーの頃からは考えられない闘い方ね』
「今は一応ディグアウターですから」
 爆裂するガンブリーに巻き込まれないようにして離脱し、着地する頃には扉が開いていた。そうなればもうリーバードの山を相手にする意味はない。
すぐに扉をくぐり抜けたロックは、追いかけてくるリーバードの大群に「ごめんね」とだけ挨拶をすると、すぐに扉を閉じて再び駆け出した。
『ねぇ、前々から聞きたかったんだけど』
「何です?」
 リーバードの勢いが若干だが緩んだ為か、それともロックが今の装備で闘う術を確立したのを確認した為か、通信機の先のユーナが切り出してきた。
 突進と共に鋭い片腕の突きを放ってくる二体のシャルクルスを同士討ちにしつつ、ロックはメットのイヤー部分に片手を当てて返事をする。
こうしていないとまだ少しだけ残っているノイズが邪魔をして、ユーナの声を上手く聞き取れないのだ。
『ディグアウターって楽しい?遺跡から使えるものを掘り出すってことは知ってるけど、それって割に合わないと思うんだけど』
「よっ・・!そうですね。はっ!楽しいかどうかはわかりませんけど・・っと!僕達にとってはそれしか手立てがありませんし、それが仕事ですから!」
『ふうん、僕達ね』
「えっ?」
『いや、何でもないの。それよりも前よ、ロック君!』
 云われた瞬間、ロックは腰を屈めた。反瞬前にロックの頭部が存在していた場所を、シャルクルスの突きが貫いていく。
腰を屈めた勢いを利用し、バック転の要領でシャルクルスの腕を両足で挟み、そのまま後方に回転する勢いを以て地面にその頭部を叩き付ける。
シャルクルスは強力なリーバードだ。しかしメインコンピュータを破壊されてはもはやどうしようもなかった。二、三度震えたシャルクルスはそのまま静かに沈黙していった。
「ふぅ、危なかった。すみませんユーナさん」
『・・・・』
「ユーナさん?」
『えっ?あぁ、ごめん。そのまま真っ直ぐ進んで。曲がり角にはリーバードがいるかもしれないから気をつけてね』
「・・?は、はい」
 ユーナは基本的にロックをトリッガーと呼ぶ。その方が呼び慣れているからだとは彼女自身の言葉だ。
彼女がロックをロック君と呼ぶのは何か特別な意味を持つ時か、もしくはロックをからかう時だけだ。特に地上に残してきた人々の話をする時、ユーナはロックをロック君と呼ぶ。
 ロックには気が付いていないことだが、これ以降ユーナはずっとロックをロック君と呼び続ける。
それはロックがディグアウターというデコイ達の職業に対し、僕達という表現を使ったことで、彼がトリッガーの記憶を持とうが持つまいが、デコイ達の社会の一員なのであると思い知らされたからだった。
『・・ごめんなさいね』
「どうしたんですか、いきなり?」
『アハハ。なんだか君はヘブンにいるべき人じゃないって、今わかっちゃったからかな。
 本当ならあなただけでも地上に帰して上げなければいけないのに。
 そんなことも出来ないなんて、私・・マザー失格かな』
「なんだ、そんなことですか」
 ユーナの警告とは裏腹に、曲がり角にリーバードはいなかった。その代わりに巨大な扉がずっしりと構えている。
シャトルベイに繋がる扉だ。無我夢中でリーバード達の中をくぐり抜けてくる内に、いつの間にかこんなところにまで辿り着いていたのだ。
 幸い扉はロックされていない。こちらから触れてやれば簡単に開き、発生した異常事態の正体を教えてくれることだろう。
 しかしロックはすぐに扉を開けることはしなかった。片手をメットに当て、努めて明るい声でユーナに返事をする。
「ユーナさんは立派なマザーだと僕は思いますよ。セラさんも。普通マザーみたいな位の高い人がたった一人を自分のパーツを使ってまで助けようとはしないと思います。
 例えそのせいで後々大変なことになるってわかってても、一人を見殺しにすることが出来なかったなんて、まさに『マザー』じゃないですか」
『・・そ、そうよね!マザーだもん、命と何かを天秤にかけるなんて出来ないわよね!おほほ、おほほほ』
 それは単なる向こう見ずであって、ユーナはそこまで考えてはいない。この通信を傍受しているだろうセラはきっとそう思っている。
「それに僕のことは心配しないで下さい。必ず地上に帰れます。前にも云ったじゃないですか」
『・・・・そうね』
 そこで会話を切り、ロックは扉を開けた。
 むわっとした空気が一気に流れ出てくる。この一年間ずっと使っていなかったせいで、酷くこもったような空気だ。
それに加えて何かが爆発した後みたいにほこりっぽい。思わずくしゃみが出そうだ。涙のせいで視界も悪くなる。
 それでもなんとか片手で目を拭ったロックは、少しずつ晴れ始めた埃の先に見覚えのないものを二つほど見つけた。
「何だ・・?」
 一つは巨大なリーバードだ。背丈はロックの二倍から三倍くらいある。
人型をしているが、腕の付け根が胴体の前面についているという不思議な形をしていて、そこから伸びている腕を背中側にぐにゃりと曲げて、胴体の横に持ってきている。
見覚えがないと思ったのはどうやら記憶違いだ。出逢ったのが随分前だったせいで忘れてしまっていただけらしい。確かヨーションカの廃坑で闘った経験がある。名前はジャイワンで間違いなかっただろう。
 もう一つは恐らく異常の正体だ。シャトルベイの壁を突き破って顔を出している金属の塊。あちこちがつぎはぎだらけで、形も不格好で何を象っているかはわからない。
リーバードの類だろうか。いや違う。しかしロックとしての記憶も、トリッガーとしての記憶も、あれを象徴する呼び名を知らなかった。
『ック・・ん・・なに・・見え・・』
「ユーナさん!全くこの通信機は肝心な時はいつもこれなんだから」
 ノイズと共に通信機からの声が途切れた。
 とはいえ黙って見ていることは出来ない。ジャイワンはのしのしと歩きながら、壁を突き破っている正体不明の金属の塊の方へと向かっている。
後ろに回していた腕をダランと下ろし、今にも金属の塊を攻撃しそうだ。
 確かにリーバードにとっては正体不明の異物以外の何者でもないだろう。しかしロック達にとってはその正体を突き止める義務があるものでもある。
少なくとも勝手に破壊させるわけにはいかない。ジャイワンを止めなければ。
「止まれ!」
 手始めにロックはバスターを連射した。威力が最低にまで落ちているバスターではジャイワンの装甲に傷一つつけられないことは百も承知だが、同時にジャイワンの弱点たる場所も知っている。
 それは背中に生えている棘状の物体だ。そこなら低威力のバスターでも充分にダメージを与えることが出来る。
 案の定弱点を叩かれたジャイワンはもんどり打って尻餅をついた。射程距離ギリギリの射撃だったお陰でダメージそのものはほとんどないが、相手はこちらに気が付いてくれたらしい。
リーバード特有の赤い瞳をこちらに向けると、ロック目掛けて駆け出した。
「ヨーションカの街で闘った時は割と簡単に倒せたけど・・」
 だがここはヘブンだ。同じ外見のリーバードといえど、地上にいるものは比べものにならないほど強い。
 ジャイワンもその例に漏れず、地上で闘ったものと比べてスピードは段違いだった。初めから身構えていなければ一気に眼前にまで迫ってきたジャイワンの両腕の打撃を躱すことは出来なかっただろう。
「弱点を集中攻撃すれば!」
 バックステップからの側転、更に突進を横に躱しての前転がジャイワンの背後に回り、コアに向けてバスターを連射する。
 またジャイワンはもんどり打って尻餅をついた。だがそれほど効いている様子はない。そして立ち上がって旋回するスピードも桁違いだ。
一度の攻撃チャンスで叩き込める光弾の数は今の状態では一発か二発が限界だろう。頼みの綱のシャイニングレーザーも、今のスピードを見る限りでは射出するまでの隙にコアを隠されてしまって意味がない。
 それでもロックは諦めなかった。とにかく攻撃を躱し、少ないチャンスにひたすらバスターをコアへと浴びせ、また攻撃を躱す。このサイクルを何度も何度も繰り返した。
 しかし流石はヘブンの高級リーバードだ。こちらの動きを徐々にだが学習し始めたらしい。数えて二十度目の攻撃を試みた頃には、既にバスターを一発当てる隙を見つけ出すことさえ難しくなってきていた。
「せめて・・シャイニングレーザーを当てることが出来れば・・」
 息が上がっている。いかにヘブンの内部といえど、持久力まで無限大になるわけではないらしい。
 さてどうしたものかと、ロックは思考した。見た限りではジャイワンはまだまだ活動を続けられるだろう。対してこちらは攻撃チャンスもほとんどなく、与えられるダメージも微々たるものしかない。
勝つ為にはどうすればいいのか。SS級ディグアウターとしての経験と、一等粛正官としての戦闘センスがフル回転で勝機を探す。
探しているが、その思考を妨害するアクシデントは不意に現れた。
「・・!?」
 ジャイワンの攻撃を紙一重で躱した瞬間の出来事だ。金属の塊の一部ががたがたと音を立てている。まるで内部から何かが装甲を突き破ろうと動いているみたいに思える。
 そちらに一瞬意識を向けたのが間違いだった。次の瞬間、ロックは巨大な二本の腕による打撃を受け、遙か遠くの壁にまで叩き付けられていた。
「ぐはっ・・!!」
 壁にめりこみ、それからずるずると床に滑り落ちる。セラとの闘いで大破していたアーマーは、ユーナの云うとおり綺麗なのは外見だけだった。
能力が落ちたのはバスターだけではない。強度もだ。セラと闘った時なら何てことはない攻撃だが、今のロックのアーマーにはほとんど命取りに近かった。
申し訳程度に展開されていたライフシールドも破壊された。次に攻撃を受ければ、間違いなく二度目のリセット・・いやそれすら出来ない状況へと追い込まれるだろう。
「こんな・・っ・・」
 視界がぶれる。ジャイワンが二重に見え、やがてあり得る筈のないものまで見えてくる。
 こちらが動けなくなったことをいいことにゆったりと歩いてくるジャイワン。その横に、なんだか小さくて黄色い子供が見える。
愛嬌のある可愛らしい子供だ。どこかで見覚えがある。すぐに思い出した。確か、何度も小競り合いを続けた空賊達が連れていたロボットだ。
 こんな時にそんな幻覚を見るなんて、思っていたよりもずっと印象が強かったのかもしれない。そういえば銀行強盗に間違えられた彼等を追いかけたり、
彼等からこっそり兄弟になってくれなんて手紙を貰ったこともあったから、そのせいかもしれない。
「ところでっ・・」
 なんとか立ち上がるロック。しかしジャイワンはもう目の前にまで迫ってきていた。視界が元に戻る。黄色い子供達の姿はもう見えなくなっていた。
 ジャイワンが腕を振り上げる。もう躱すだけの時間はない。もはや残された手立ては、真っ正面からシャイニングレーザーを叩き込むことだけだ。
それでジャイワンを倒せるか否かなど問題ではない。ただ一つ残された選択肢だ。そしてこんな場所で倒されるわけにはいかないロックは、躊躇いなくその選択肢を選んだ。
 ・・選んだ瞬間だった。
「うわー!危なーい!」
「諦めちゃ駄目ですー!」
「退避退避ー!!」
 聞こえたのはやたら甲高い子供のような声。そして同時に身体が自分以外の力で持ち上げられ、移動していく。
ジャイワンの腕はタッチの差でロックの真横をくぐり抜けると、今までロックが立っていた位置の床を大きく穿つ。そして跳ね返ってきた瓦礫を受け、ほんの一瞬だけ動きを止めた。
「大丈夫ですか、青い人さん!」
「危なかったですー!」
「これを使って元気になって下さーい!」
「き、君達は・・!?」
 その声は幻聴などではなかった。姿も、幻覚ではない。床に降ろされたロックは、間一髪で助けてくれた者達の姿を見た。
 ロックの腰くらいまでの身長しかない小さな身体。黄色い大きな頭に、青い色のボディ。ぴょんぴょんと忙しなく跳ねる子供達が三人。
ロックは彼等を知っていた。確か名前は・・・そう、コブンだ。空賊ボーン一家の一員で、やたらと数のいるロボット達。見た目の通り可愛らしくて、いつも倒すのに罪悪感が付きまとっていたこともよく覚えている。
「早く早く!またアイツが来ちゃいますよー!」
「う、うん」
 エネルギーボトルを差し出してきたのは三人の中で唯一頭の天辺のパーツが赤い色をしているコブンだ。
 ロックは素早くそれを受け取ると、エネルギーをボディへと流し込んだ。破損していた箇所が少しだけ修復され、ライフシールドも復活する。ふらふらだった意識も完全に安定した。
「うわー、来たー!」
「みんな、しっかり掴まって!」
 何故彼等がここにいるのか。どうやってここまで来たのか。聞きたいことは山ほどある。だが、ジャイワンをなんとかして止めることが先決だった。
 猛スピードで向かってくジャイワンの突進を、三人のコブンを抱えてのジャンプでなんとか躱す。そしてすぐにコブンを降ろして退避を命じ、再びジャイワンと対峙する。
 エネルギーボトルで回復したとはいえ、状況に余り変化はない。相変わらずバスターは最弱だし、シャイニングレーザーを放つ隙もない。
ならばどうする。どうやってジャイワンを倒す。再び二人のロックが勝機を探すが、そのチャンスはロックがアイデアを練るよりも早くに外部からやってきた。
「照準セット!発射ー!」
 対峙するジャイワンの背が不意に爆裂したのだ。ロックバスター以上の攻撃力を叩き込まれたジャイワンは、そのまま為す術もなく前面に向かって倒れる。
ジャイワンに攻撃を加えた者の正体は、ジャイワンというベールを脱いだことで姿を現した。
ピンク色の外装をした人型のロボットだ。その左腕には大きなドクロマークが飾られたバズーカが搭載されていて、そこから狼煙が上がっている。
 あれの名前は確か――ロックがそれを思い出そうとした時、それを遮るようにしてロボットが喋った。女の子の声だった。
「ロック、今よ!がーんとやっちゃいなさい!」
「あ・・・・う、うんっ!」
 考えている時間はない。ロックはシャイニングレーザーをジャイワンの背のコアに向けて照準すると、残された全てのエネルギーを一点に集中させた。
 一年ぶりの発動だ。セラとの闘いでどこか壊れているかもわからない。一発どころか、不発。或いはその場で爆発する危険性すらある。
しかしロックは躊躇わずにそれを発砲した。絶対に大丈夫だという、確固たる自信があった。何故なら、これはロックの最も信頼するメカニックが生み出した最強最大の特殊武器だからだ。
「シャイニングレーザー!!」
 ピンク色のロボット――グスタフが退避すると同時に、光は放たれた。














「ふぅ・・・」
 光が晴れた頃、残されていたのは半分以上が蒸発してしまったジャイワンの残骸と、貫かれた壁だけだった。
 思わず肩を落とすロック。しかしすぐに思い出して、ふと後ろを振り向いた。そこには――
「・・・あ・・・」
 そこには、見慣れた者達の顔があった。
「おお、ロック。一年ぶりじゃのう。元気にしとったか?」
「バブー!」
「青い人だー!」
「全く相変わらず危なっかしい奴だなあ、お前ぇはよぉ」
「いやー随分時間かかっちゃってごめんよぉ、ロックー」
 何度も夢の中で見た光景。
 何度も頭の中で思い描いたシーン。
 でもこれは夢じゃない。
 頬を抓っても、いつものように目は醒めない。
 目を擦っても、いつものように消えてなくならない。
 聞こえてくる声も、目に見える皆の顔も、全てが現実だ。
「ほ、本当に世話の焼ける子ね、あなたは!わ、私の助けがなかったら今頃どうなってたか、わからないんだからね!」
 グスタフのハッチが開いて、声の主の女の子が姿を見せた。
 そして、何かに気が付いたようにして皆がそっと横に退く。
 皆の影になっていた位置から、一人の少女がゆっくりと前に踏み出してきた。
「ロック・・・」



 ――何度このシーンを思い描いたことだろう。


 ――何度夢とわかって落胆したことだろう。


 ――何年でも待つつもりでいた。


 ――いくらでも待てる自信があるつもりでいた。


 ――でも、きっともう限界だったのかもしれない。


 ――何を話せばいいんだろう。


 ――何から語ればいいんだろう。


 ――どんなことを云えば、いいんだろう。


 ――いや、僕が云う言葉は決まっている。


 ――きっと最初から決まっていた。



「お帰りなさい、ロック」




































「――ただいま」

























































































 ――願わくば、この風景が夢で終わらないことを.......












fin