ロックマン創作の会
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ロックマン創作の会
ja
2012-09-11T17:39:44+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ エピローグ
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/37.html
『――であります。卒業生一同様の益々のご発展をお祈りし、ここに締めさせて頂きます』
『卒業生・在校生起立。礼、着席』
ガタガタっと騒々しい椅子が擦れる音。立ち上がる生徒達。自分では最高り演説を演じたつもりの市長。
淡々とプログラムを進めるナレーター。既に泣き出してしまっている父兄。
そして、伝統に基づいて綺麗に飾りつけられた体育館。普段の空間とは一線を覆す、華やかな場所。
そんな体育館内には所狭しと椅子やテーブルが並べられ、それと同じ数だけの人間・レプリロイド達が座っている。
ステージの天井から吊るされたプレート。体育館の側面に控えた吹奏学部。ここぞとばかりに着飾った者達。
窓の外を見ればガラス面いっぱいの桜の花を見ることが出来るだろう。三年前、今まさに祝われている生徒達が見たものと同じ、蔓延の桜を。
彼は市長の長い癖にそれ程内容のない、最悪テンプレートにしか聞こえない演説がようやく終わったのをいいことに、思わず大あくびをかいてしまった。
昨晩はこんな行事の前日だというのにやるべきことに追われ、睡眠時間をたっぷりととっていなかった所為なのかもしれないが、
彼はあくまで市長の演説がつまらなかったことの所為にするつもりだった。
こつん。流石に目立ったのか、隣に座っているクラスメイトに肘でつつかれた彼は、慌てて姿勢を正す。
幸いに次のプログラムに以降する為にその他大勢が慌だしかったお蔭で、彼の怠惰は周りには勘づかれていなかった。
「卒業式くらい、しゃんとしろ」
「う、うん」
小声で耳打ちされ、睨まれる。流石に言い返す言葉がないので、彼は小さく返すと縮こまってしまった。
そういえば入学式――ではないが、それに近い式がかつてあった――の時も同じように前日夜更かしをしてしまい大あくびをかき、
隣に座っていた兄に肘でつつかれたことがあった。それを思い出すと途端に顔が熱くなってしまい、彼は片手で顔面を覆った。
ああなんて恥ずかしいのだろう。と。
「――卒業式」
ようやく顔の火照りがおさまった彼は、ふと顔を上げてステージに吊るされたプレートに目をやった。
『第八回フロンティア学園卒業証書授与式』の文字が大きく描かれたプレートはなんということはない、ただのプレートだ。
だが彼にとってはそれだけでも大きな意味があった。
2012-09-11T17:39:44+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 最終章~君を忘れない~後編
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/36.html
「くっ・・!」
「遅いな。やはり人間風情ではこれが限界か」
瞬時に二連射された光の線は、双方二つの目標に到達する寸前にそれを失い、虚しく虚空を裂く。
完全に捉えた筈の狙撃なのだが、彼等はそんな常識など知ったことではないと云うように、
半瞬後にはウィドの懐まで飛び込んできていた。
「違うよ。単にこれが俺達と彼の決定的差・・ってことさ!」
「ちっ!」
しかしウィドの反応もそれに負けじと素早い。もう片手に握り締めていたビーム・メスの刃で、捻り込まれるイクスの拳を受ける。
が、押し切られた。圧倒的な衝撃エネルギーを加えられたウィドはそのままロケットのような勢いで後方へと吹き飛び、
まだ奇跡的に無事だったトレーニングルームの壁へと叩き付けられる。
呼吸が止まる程の鋭い痛み。ずるりと床に滑り落ち、膝をついたウィドだったが、骨折がないことを幸いとしながら足腰に力を込めた。
ここで例え一秒でも倒れているわけにはいかないのだ。奴等相手に、その一瞬の隙でさえ命取りとなる。
「・・一瞬は早く俺の拳をビーム・メスで受け止め、ダメージ覚悟で受け止めたのか?」
「いや、それだけじゃあない。自ら後ろに跳んで衝撃を大きく半減したようだ。この小僧、動きだけはなかなかのものだ」
「勝手な・・勝手なことを云いやがって」
ペッと口の中に溜まったものを吐き出す。血とも唾液とも云えないものがべちょっと床に粘り付く。
多分喉の粘膜まで吐き出してしまったんだろうという錯覚に陥りつつも、ウィドはそれに気を配ることすら許されない。
再びレーザー銃を正面に構え、もう片手でビーム・メスを握り締める。このまま二対一で闘った場合、勝率はほぼ零に等しいだろう。
それでもこうして構えることしか出来ないのだ。死ぬまでの時間を伸す為なのか、それとも零に等しい勝率に期待しているのか。
それはウィド自身にも判らないし、そんなことを考えている余裕もない。けれど、一つだけ確かなことがあった。
「ただの人間の少年だと思っていたけど、この暇つぶしはかなり楽しめそうだよレイ」
「お前も相変わらず余興好きだな。確かに動きがいいことは認めるが、この程度の小僧を殺すことなど造作もないこと」
「君もよく云うよレイ。だったら最初の一撃で首を斬ってしまえば良かったのに」
「ふんっ・・」
以前セイアか
2012-09-11T17:39:02+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 最終章~君を忘れない~中編
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/35.html
「ウィド、下がれ」
「セイア・・」
それはいつものセイアの声だった。しかし逆らえない。有無を云わさぬ何かがそこにはあった。
イクセ等の宿主だっただけのことはあるというのか、それともこれがウィドの知らない戦闘者としてのセイアなのか。
その答えがどちらだったとしても、気が付けばウィドはセイアの云う通りに引き下がっていた。
そしてウィドが射程外に出たことを確認するやいなや、セイアはゼット・セイバーの刃を具現化させた。
それに伴ってイクセ達の闘気も更に威圧感を増す。そして燃え上がる殺気の中で彼等は笑んだ。
「これで心置きなく闘えるか?」
「ウィド君――足手纏い――も消えたことだしな」
「じゃあ、君がこの短期間でどれだけ強くなったか見せて貰うよ!」
「イクセ!」
そして誰が止める間もなく闘いが始まった。
三体のリミテッドが瞬時に三方向へと散開する。セイアは一瞬戸惑ったが、すぐにダッシュで前方へと跳んだ。
そしてセイアが体制を立て直すよりも前に頭上からのレイの剣撃がセイアを襲う。が、紙一重で避けていた。
床に手をつくことでダッシュを無理矢理に停止させたセイアは、すぐにその軸腕を中心に身体を翻し、レイの頬を蹴り飛ばす。
更に二撃目の蹴りをレイの胴に叩き込み、それを足場にして更に跳ぶ。
後方へと持っていかれる途中、空円舞を使い直角の軌道を以て上空へとセイアは飛翔した。
「いい動きだ。だが、空円舞と飛燕脚は同時使用出来まい?」
「イクス!」
空中へと上昇を続けるセイア。それを狙ったのはイクスだった。
地上からタップリとエネルギーを込めたバスターほこちらに向けている。
悔しいがイクスの云うとおり一度空円舞を使ってしまっては更に姿勢移動をすることは不可能だ。
セイアの上昇エネルギーが尽き、ピタリと空中で静止した瞬間にイクスのバスターが爆ぜた。
セイア自身のフルチャージとほぼ遜色ない巨大なエネルギーが一片の狂いもなくセイアを目指す。
目と鼻の先になったエネルギー弾!イクスはクリーンヒットを確信し、ニヤリと口もとに笑みを浮かべた。だが!
「おぉぉぉ!」
「なにっ・・!」
バスターは直撃した。そのエネルギー量は辺りに耳をつんざく程の爆風を残した程だ。
が、その爆風の中から姿を現わしたセイアは無傷だった。いや、無傷とは違う。
2012-09-11T17:38:41+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 最終章~君を忘れない~
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/34.html
ありがとう 兄さんへ――
あなたは沢山のことを教えてくれました 沢山のものをくれました
ありがとう 兄さんへ――
あなたは強い心をくれました あなたは僕に剣をくれました
ありがとう――友人達へ
あなた達は僕を受け入れてくれました あなた達は僕に笑顔をくれました
ありがとう――みなさんへ
あなた達がいてくれたから 僕は楽しかったです
とてもとても楽しかったです
暖かな人生を歩めました 全てが僕の想い出です
ごめんなさい――親友へ
あなたを置いていく僕をどうか許してください
あなたと過ごした時間は 僕の宝物だから...
さようなら――親友へ
君を忘れない
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「なあ、セイア」
ウィド・ラグナークがふとロックマン・セイヴァーに声をかけたのはいつだったか。
確かウィドが忙しくキーボードを叩いている様を見詰めている時だったように思う。
彼の邪魔にならないように、とこちらから話しかけることを避けていたセイアは驚いた風に返した。
その拍子にぶちまけってしまった砂糖の塊がコーヒーの黒い波の中に呑み込まれる。
もう手遅れだなと諦めつつ、セイアはそれを自分で飲むことに決めた。
「何、ウィド?」
「お前は一番の願いが何かと聞かれたら、どう答える?」
「一番のお願い?」
カチャカチャとスプーンでコーヒーを掻き混ぜ、一口口に含んでみる。
ミルクも入れていないブラックコーヒーは、余程身を投じた砂糖の量が多かったらしい。
甘党のセイアでもうぇっと顔を顰める程に甘かった。こんなものをブラック派のウィドに渡してしまったらと思わず肝を冷やす。
きっとコーヒー独自の味わいが失われただの、豆の美味さを台なしにしているだの云われるのだろう。
幸いウィドはキーボードを叩いた姿勢のまま振り向かないので、その事実は雲隠れしてしまいそうだが。
何やらカチャカチャと慌ただしいセイアの様子をいぶかしげに思ったのか、振り向こうとするウィド。
セイアは慌てて手の中の甘すぎるコーヒーを飲み下した。ウィドが見たのはうぇーと顔を顰めるセイアの顔だけだった。
「・・何してんのお前」
「え、た、たまにはコーヒーでも飲んでみようかなって
2012-09-11T17:38:19+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 第参章~交差する力~後編
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/33.html
「ようやくここまで辿り着いた。さぁ、姿を現わせウィルス!」
第六階層へ辿り着くや否や、セイアは声を張り上げた。
声の波というデータは、プログラム配列の隅から隅までを走っていく。現実世界の常識が通用しないここならば、きっとどこまでも声の波は届いたであろう。
マザーコンピュータの第六階層。そこはイレギュラー・ハンターの最も深い領域であり、同時にマザーのCPUの中枢。
確かにここを攻撃されればマザーは容易く墜ちるであろう。問題は、ここまで辿り着く程の強力なプログラムがあるかどうか。
――事実マザーが暴走しているのだから、その答えはYesなのだが。
さっきまでの第一階層から第五階層と較べ、第六階層の作りは偉く単純だった。
簡単に現わすとすれば、真四角のただっ広いフィールド。その側壁にはさっきまでと同じ模様が走っているが、目立った突起物はどこにも見受けられない。
本当に正真正銘の最深部なのだろう。何故かセイアはその作りに納得してしまった。
「・・・!」
セイアの声が隅から隅まで届いたのを見計らったかのように、セイアの斜め上に光の輪郭が現れ始めた。
ブゥンという不可解な効果音を発しながら、それは少しずつその姿を形成していく。
セイアが想像していたものよりも随分と現実味を帯びた姿だと思う。
思いの外それは人型だった。いや、動物をモチーフにした人型レプリロイドといった方が正しいのかもしれない。
赤紫の外装に、大きく伸びた複数の羽。ゲイトのアーマーと同じくらいけばけばしいその姿に、セイアは確かに見覚えがあった。
同時に今までの事柄全てに合点がいく。マザーの暴走も、さっきの複数のウィルスも。
セイアは呟く。ハイパー・リミテッドの恩恵を受けたであろう、黄泉より蘇った電脳世界の狂気の名を。
「サイバー・クジャッカー・・」
自分の名を呼ばれ、クジャッカーはクックックと狂気的な笑みを浮かべる。
するとふっと彼の姿が掻き消え、すぐにセイアの目の前へと現れた。
電脳世界においてクジャッカーは全ての法則を無視して移動することが出来る。
このフィールドは、いわばクジャッカーのクジャッカーによるクジャッカーの為の戦闘領域だ。
現実世界より参入したセイアは、この状況において極めて不利。
それを理解しつつも、セイアはエックス・サーベルを抜く
2012-09-11T17:36:25+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 第参章~交差する力~中編
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/32.html
サイバー・スペース。一般的に電脳空間のことを指す言葉だ。
この空間はプログラム配列を持つ電子機器全てに存在している。
家庭用の電子レンジから、ハンターベースのマザーコンピュータまでありとあらゆるものに。
その実体は文字どおりプログラム配列だ。サイバー・スペースとは、それを擬似的に現実世界のものに見立てた際の言葉であり、
基本的にコンピュータにレプリロイドやメカニロイドがダイヴ――メインプログラムをインストール――した時にだけ使用される。
プログラム内にダイヴしたレプリロイドは、そこで作用するソフトウェアの力により、
サイバー・スペース内をあたかも現実世界かのように運動することが出来る。
無論それは視覚的・感覚的なものであるから、ダイヴしている本人以外にそれを知覚することは出来ないのだが。
プログラムに直接ダイヴしたレプリロイドは、その場で万能プログラムと化す。
内部のプログラムに攻撃行為を行えばそれを破壊することが出来るし、逆に修理を行うも出来る。
そう・・つまりロックマン・セイヴァーは自らがワクチンとなってウィルスを消去しに向かうのだ。
スペース内に蔓延っているウィルスプログラムを直接攻撃し、消滅させることが出来れば、その時点でマザーコンピュータにアクセスすることが可能となる。
が、そんなダイヴ行為にも、代償としてあらゆる危険が付き纏う。
ダイヴを決行中のレプリロイドは完全無防備だ。ボディやプロテクトといった防御機能が全て外された、いわば丸裸であり、
最もデリケートな部分を露出した状態となる。
しかもプログラム内にインストールするのがメインプログラムである以上、それは実戦よりも遙かに危険なことが明白である。
もし仮にダイヴしたレプリロイドがサイバー・スペース内で撃破されるようなことがあれば、その崩壊は一気にメインプログラムを侵食し、破壊され、
繋ぎ止める間もなくその人格を消去するだろう。
それはつまり人間でいう『死』、だ。ボディが無傷であるから、その死は更に質が悪い。
だがしかし、サイバー・スペース内で死亡したレプリロイドを復活させる手段は確かに存在する。
ボディや頭部が破壊されていない以上、法律上でもそれは『死』とは認識されず、単に行動不能に陥ったと判断されるからだ。
レプリロイドの再生を行う方法は実に単
2012-09-11T17:36:08+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 第参章~交差する力~
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/31.html
『第五階層へ降りるルートはその先だ。急げセイア』
「了解。このまま突っ切る!」
おおよそ現実空間では再現出来そうもないサイバーチックな空間の中、
ロックマン・セイヴァーはそれを楽しむ様子もなく走り続けていた。
辺りには電脳世界独特の光のラインが多々見える。
何を模したのか判らない、言葉では言い表しにくい建造物に囲まれたそこは、現実から離れたもう一つの戦場だった。
これが現実ならば敵機の接近は気配で判るというものを。この世界ではそんな常識が全く通じない。
三百六十度好きな方向から突然姿を現わし、攻撃を仕掛けてくる敵機達は、個々の戦闘力とは裏腹に手強い。
セイアはここに来るまでに、既に幾度かのダメージを負ってしまっていた。慣れない戦場で、上手く実力が発揮出来なかったからだ。
所々に被弾したアーマーを気にかけつつも、セイアはウィドの声に指令されたルートを急ぐ。
が、そんな侵入者の進行を止めようと、セイアの目と鼻の先で巨大な敵機の姿が現れた。
『セイア!』
「判ってる!」
しかしセイアは止まらない。セイアを制止しようとするウィドの声にそう答えつつ、セイアは飛翔した。
エックス・サーベルを抜き放ちつつ、飛燕脚からの推力を利用し、連続的に回転運動を始める。
サーベルを頭上に構えたまま高速回転を始めるセイアは、おのが身体を一つの弾丸とし、そのままゴーレムの様な姿の敵機に突っ込む!
辺りに三日月型のエネルギーを発散しつつ、弾丸となったセイアが敵機を貫いた。三日月斬だ。
『成る程。だが正面にエネミーの反応が多数。陸地タイプだ』
この世界において『陸地』と形容することほどのデタラメは恐らくない。
けれど、ウィドにもセイアにも他にそれを形容する言葉が見つからなかった。
常識の通用しないこの世界で、『地面』と認知させる部分から離れられない敵機のことを、ウィドは『陸地タイプ』と言い表した。
事実上は間違っていようとも、その言葉をしっかりとセイアは理解した。そして、自らがそれに対抗しうる為の最善たる技を瞬時に繰り出す!
「疾風っ!」
急停止するセイア。が、彼の姿を模したエネルギーの塊は、ダッシュの姿勢を保ったままに敵機の大群へと突っ込んでいく。
傷つく恐れも撃ち落とされる恐れもないエネルギーの塊・疾風は、自らに触れるもの全てに、文
2012-09-11T17:35:41+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 第弐章~脅威~後編
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/30.html
「くっ・・!」
思いの外素早いキバトドスのパンチをサーベルで受け止め、セイアは呻いた。
なんて重い拳圧だ。こちらは両手で受け止めているのに、吹き飛ばされてしまいそうだ。
姿勢を低くし、パンチを受け流し、ダッシュで真横へと移動しながら、バスターを浴びせ掛ける。
この強化されたバスターの威力なら、多少は効果がある筈だ。
しかしキバトドスの装甲は、動きからは想像出来ない程に分厚く、
チャージのないセイアのバスターは、氷で覆われたその装甲の前に、無残に散らされた。
ならば、とチャージしてバスターを放つが、キバトドスが眼前に配置したフロスト・タワーを貫くことは出来なかった。
「・・っ!」
キバトドスの弱点は判っている。焔だ。
ファイヤー・ウェーブ。ラッシング・バーナー。ライジング・ファイア。マグマ・ブレード。
そして龍炎刃。翔炎山。
セイアが現在使える武装はこれだけだ。これをいかに有効的にキバトドスにぶつけるか。
最も使いかってがいいのはマグマ・ブレードだ。
これなら通常のサーベル感覚で扱えるし、使用エネルギーも少ない。
「たぁぁぁ!」
キバトドスは巨体だ。それ故小回りが効かない筈。
一度三角蹴りで壁に駆け上がり、エアダッシュでキバトドスを跳び越え、視界から消える。
そしてキバトドスが振り向くよりも前にマグマ・ブレードの一閃を叩き込む!
一気に辺りに水蒸気が散乱し、二人の視界を奪った。
しかし、確実に斬り込んだ手応えはあった。
「・・くっ!?」
しかし甘かった。水蒸気で視界が悪い中、唐突に頭部を鷲掴みにされ、セイアは思わず小さな悲鳴を上げた。
エックスの強化アーマー並の剛性を誇るセイアのヘルメットが、ミシリと音を立てた。
セイアの数倍、下手すると十倍はある握力だ。こんな握力をいつまでも加え続けられたら、
それこそ一巻の終わりだ。
セイアはつかまれたままバスターをチャージし、キバトドスの頭部目掛けて放った。
流石にフルチャージは堪えたのか、少しの隙が出来た。その隙に掴んでいた掌を引っ剥がし、
キバトドスの苦手とするだろう懐へと飛び込み、灼熱のサーベル、翔炎山を切り上げる。
悲鳴を上げて反り返ったキバトドス目掛け、更に焔の塊――ラッシング・バーナーを連射!
「うぉぉぉ!!」
直撃、直撃、フロス
2012-09-11T17:34:42+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 第弐章~脅威~
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/29.html
ロックマン・セイヴァーは、片手に繋がれた様々なコード類を見詰め、ゴクリと喉を鳴らした。
傍らでは、懸命にPC画面と睨めっこしつつ、ウィド・ラグナークがキーボードを叩いていた。
目的はそう、突如として変化を遂げたセイアのバスターのデータを解析することだ。
クリアレッドと変わったセイアのバスター。
その出力は元の姿の比ではなかった。先程の試し撃ちでは、的どころか、そこら一帯を完全に吹き飛ばす程の威力を見せている。
フルチャージですらない射撃で、だ。
まだフルチャージ・ショットの試し撃ちはしていない。が、もしフルチャージで放つことになったら、
果たしてこの正体不明のバスターはどれ程の威力を暴走させるのか。
考えただけでもゾッとした。
そもそもバスターの変化は、あのストーム・フクロウルの残骸から出現した謎のメカニロイドとの接触にあると考えたウィドは、
セイアにバスターの解析を勧めた。セイアもそれに賛同した、というわけだ。
PC画面に流れていく文字列に、セイアは眉をしかめる。
殆ど申し訳程度の知識しかないセイアには全く読み取れない専門用語だらけの文字列。
ウィドはそれを見て何やら唸っているようだった。セイアは、そんな彼の様子を見て、なんだか不安にかられる。
「ウィド」
話しかけても、余程集中しているのか、ウィドは振り返らない。
もう一度呼びかけてみたが、結果は同じだった。
セイアは、仕方無しにもう一度PC画面を覗き込んだ。
流れていく文字列はその流れを止めていた。代わりに、真っ赤な文字でアラートが表示されていた。
かなりの重要ファイルなのか、それとも単に操作ミスなのか。
セイアが何かを尋ねようと声をかけたときには、ウィドは既にそれを突破し、その先のファイルを開いている途中だった。
流石だなと舌を巻きつつ、セイアは彼の背中を見る。
セイアは、ふと誰かの背中を見た気がした。
ウィドと同じ、髪の色こそ違えど長い髪をした、孤高の剣士。
セイア自身は一度しか逢ったことがないが、その力強さと優しさは確かに伝わった、誰か――
セイアがその者の名を口に出しそうになったとき、それを遮るようにウィドが呟いた。
「『H・L』」
「エイチ・エル?」
セイアが鸚鵡返しすると、ウィドはようやくセイアの方へと振り返った。
セイアの
2012-09-11T17:34:16+09:00
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ロックマンXセイヴァーⅡ 第壱章~暗躍~後編
https://w.atwiki.jp/comeback_rockman/pages/28.html
街から少し離れ、人気が多少少なくってきた小規模の街。
第十七精鋭部隊が派遣されたのは、その一角だった。
首都から較べれば大分静かなところだが、それでも街としては充分過ぎる程に活気づいている筈のその街は、
健次郎――彼はアディオンに乗り込むさいにアーマーを装備し、セイアとなっている――達が到着した時には、
既に建造物の殆どが破壊された、廃墟と化していた。
辺りを見回しつつ、セイアは部隊員達に指示を送る。
建造物の破片の下には、まだ多くの市民たちが埋まっている。既に息絶えている者も少なくないが、
それでもまだ微かに生命反応が残っている場所もある。
この街をこんな姿にしたイレギュラーの所在が気にかかるが、それよりもまずは住民たちの命を優先しなければならない。
きっと兄・エックスなら同じ判断をするだろう。もう一人の兄のゼロは、救出と共に敵の殲滅をも熟してしまうだろうが。
「イレギュラーは見つけ次第、僕が対処する!皆はイレギュラーの出現に注意しつつ、市民たちを救出!
手が足りないのであれば、本部に救護隊の出動の要請を許可する!」
バッと手を振りながら指示を下すセイア。
隊員達は口々に了解の意を並べ、素早く市民たちの救護へと向かう。
生き長らえている市民はそう多くはない。
十七部隊全員が動けば、この街程度なら救護隊の出動を要請せずとも大丈夫だろう。
まだイレギュラーがどこかに潜んでいる危険な地に、下手に救護隊を呼び寄せて、
二次被害を起こしたくはない。素早く十七部隊の隊員が動けば充分間に合うというのなら尚更だ。
隊員たちが速やかに市民たちを救助する姿を視線に掠らせつつ、セイアは未だ見ぬ敵の姿を模索する。
まだ近くにいる筈だ。イレギュラー発生からそれほど時間が経っているわけではないし、
なによりイレギュラー反応は計器から消えない。どこかに隠れているのだ。
「ウィド。君は出来るだけ僕の近くに。救助はみんなに任せて、僕達はイレギュラーを倒すんだ」
「目付きが大分変わるなセイア。了解だ。俺は索敵にまわる」
そう云って、ウィドはレーザー銃を片手に握りつつ、小型のモバイルを取り出して、
辺りのイレギュラー反応を計測し始めた。
セイアの持つ計器よりも敏感なそれは、
単に近いか遠いか――もしくはあるかないか程度――しか判ら
2012-09-11T17:32:56+09:00
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