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「不二咲おねぇ、いや…おにぃだっけ?くすくす、いつまでそんなつまんない事してるのかなー?」 学園内のとある一室。 不敵なその少女は、年齢に伴わない外見で、しかもその外見にも伴わない意地の悪い笑みを浮かべている。 その眼前には、彼女と同じ位の背丈の少女がいた。---いや、正確には『少女の格好をした少年』である。 きっと男性だ、と説明されなければ誰もが彼を『女性だ』と見間違えるだろう。 不二咲と呼ばれたその少年は、先程まで少女と何かしていたのか、乱れた衣服を何とか手で直そうとじたばたもがいていた。 「あのさー、不二咲おにぃが何したいかわかんないけどさー?恥ずかしくないの?」 「う、そ、それ…は…」 「男のくせして女のカッコしてさ!しかもそれ、罰ゲームじゃないんでしょ?何それー!恥ずかしーい!」 途端にかぁっ、と不二咲の顔が赤に染まり出す。 彼は自分のひ弱さ、華奢さが一番のコンプレックスだ。そしてそれを隠すために、そのために少女の格好をして今まで生きてきた。 強くなったら、いつかあの、大きな背中のような強さを得たら。 そうしたら、きっと自分自身とも向き合えると信じていた、のに。 「恥ずかしいよね?恥ずかしいよね?じゃあ脱がせてあげる!わーい!わたし優しーい!」 雅やかな着物が、窓から注いだ太陽の光できらりと艶やかに光る。 きっちりと締められた帯が、彼女の---西園寺日寄子の厳しさを強調しているようだ。 まだ夕暮れなのに、その目には暗黒を讃えている。 まるで、絶望でも見てきたかのような、漆黒。 「あのね、わたしね、いい事思い付いちゃったんだー!」 普通に考えれば、自由奔放な少女が浮かべている満面の笑みだ。 しかし、そうは行かないのがこの希望ヶ峰学園である。この学園には、普通なんて言葉は存在しない。 価値観が違いすぎる【超高校級】ばかりが集まるこの場所で、当人の当たり前で他人の当たり前を推し量れなくて当然。 よってこの西園寺の笑みもただの笑みではない。 この場合のいい事だって、不二咲にはいい事だとは限らない。 「あの…一体、何しようとしてるの…?」 それでも聞いてしまう。 聞かなければならない、と不二咲は思った。 ここで退いてしまったら、本当にこのままバカにされてしまったら、もう自分はあの背中に追いつけないかもしれないから。 「えー?何って、」 西園寺の顔がぐにゃりとゆがむ。 「不二咲おにぃを【男にしてあげる】んだよー?」 「……は…?一体……どういう事…?」 声が上擦る。不二咲の脳内では色々な言葉が駆けめぐっていた。 しかしどれも確証に欠けるし、何よりも【男にしてあげる】の意味が分からない。 彼女は何をするつもりなのか。 自分は何をされてしまうのか。 と、不二咲が思考に気を取られた瞬間であった。 いつの間にか、自分と西園寺の距離が急激に縮まった。 「え」 「…くすくす、捕まえた。」 西園寺の声が一段と低くなる。 不意を突かれた不二咲の体は緊急停止、体の各部にストッパーがかかってしまったみたいに動けなくなった。 同時に、その少女に恐怖していたのだ。 その恐ろしさのせいで、不二咲は気付くのが送れてしまった。 西園寺が、自分のスカートを思いっきり下ろした事に。 スカートの下から控え目な白い下着が現れた。 一瞬呆気に取られた不二咲が、しかし自身の足下に感じる違和感に気付き、あっと小さく声を上げかける。 …声が、出ない。 「ゃ……やめ…」 小さく唸る不二咲を無視して、西園寺はしゃがみこんだ。 衣服としての意味が無くなったスカートは不二咲の立っている場所に落とされている。 多少無理矢理引っ張ったが、彼の華奢さが手伝って壊れてはいないようだった。 「へぇー、下着は男物使ってるんだね?不二咲おにぃ。…まぁそっか、女物の下着だと流石にはみ出しちゃうか!」 軽口を叩いた。不二咲が羞恥に顔を歪ませて何も言い返せないのを知っているからだ。 西園寺の目線の前には、不二咲の下着がある。すなわち、その眼前に不二咲が男である証明が備わっている、と言う事だ。 しかも今、たった今このような辱めを受けながら、その下着の中の本能が次第に蠢き出したのを、西園寺は見逃さない。 「…ふーん?不二咲おにぃって変態なんだー。わたしに見られて堅くしてんじゃーん、こう言うの好きなの?」 「…ッ、これは好きでやってるんじゃ…」 「でも堅くなってるよね?くすくす、触って確認してもいいの?」 声色が徐々に鋭さを増す。 不二咲を仕留める為の鋭さを。 そこで西園寺は最後の仕上げにかかる。 すっ、と立ち上がって、いよいよ涙目になりそうな不二咲から離れた。 「……何……してるのぉ?」 「この着物はわたしの家で一番いいやつだから、汚せないんだ」 言うが早いが、自らの帯を外した。 自分でその帯を締める事が出来ないにも関わらず。 自分でこの事態の始末を付けられないにも関わらず。 彼女は着物の帯を外し、あっと言う間に着物が乱れる。 「…どう?わたしの体、見たい?」 不二咲はこの時、もっと早く助けを呼ぶべきだったと痛感する。 この状態を見られたら、自分が男だった事がバレてしまう上に、西園寺の状態から言ってまず「襲おうとした」と思われても仕方がない。 それでも苗木辺りならまだ話をちゃんと聞いてくれそうだが、彼が来る可能性だって乏しい。 この場で西園寺を制したとしても、それはそれで後から報復が恐ろしい。   それよりも、何よりも言い訳が効かなかったのは、自身の体の変化であった。 手詰まりだ。 …これがギャンブルなら、焼いた鉄板で土下座でもさせられているんだろうか。 「あ、…分かってるよ、不二咲おにぃ。もう辛いんでしょ?そんなにパンパンだもんね?」 今までに無いくらいの哀れみと艶やかさの籠もった声が耳に入る。 「わたしの体、見せてあげるね」 囁くような西園寺の言葉の意味を理解した瞬間には、不二咲の眼前にそれはあった。 高校生とは思えない程の、幼児体型。 密やかに存在を象徴する小振りな胸に、ハリのある滑らかな素肌。 ぷにぷにとした二の腕、それにぴんと引き締まっている臀部。 まだ殆ど毛も生え揃っていない陰部。 西園寺日寄子の裸体がそこにあった。 「さ…いおん…じ…さん?」 振り絞った弱々しい声で相手の名を呼ぶ。 夢のような出来事。 「…どう?不二咲おにぃ。もうこんなの見ちゃったら、女の子のフリなんか出来ないでしょー?」 意地らしい笑みが不二咲を貫く。 彼の意志に反して、パンツの中の熱はどんどん膨張していく。 股間が早く外に出して欲しいと言わんばかりに布を突き上げている。 ああ、もう、たまらない。 「や、やめようよぉ…今ならまだ、間に合うよ?ぼ…僕も…キミの裸を見たい訳じゃ…」 頭がぐるぐるしている。 自分が何を言いたいかもよく分からない。 鼓動が早くなり、自分の息遣いがうるさく聞こえた。 「なーに言ってんの?」 ふっと西園寺が再び近付いてきた。 今度もしゃがんで不二咲の股間に熱視線を送る。次は抵抗出来たはずの不二咲は、まだ動かない。 「つーか、これからっしょ?…澪田おねぇ風に言うと、そんな感じかな?」 にやにや。西園寺の口許が緩んでいる。 その様子は、この弱者をどうなぶってやろうかと考えているようで。 「ほらー、不二咲おにぃのココはもう【男の子】だよー?」 西園寺の言葉責めは続く。 「ねぇ?こんなモノがあるのにまだ女の子のフリするの?それってズルいんじゃない?不二咲おにぃは男の子だよね? わたしね、そう言う弱いフリする人って大っ嫌いなんだー」 どちらともしれず、ごくり、生唾を飲む音が聞こえる。 「こんなもの無かったら良かったのにね?」 次の瞬間、 「…ッあ!?」 「くすくす、どうしたの?」 下着越しに思い切り男根を捕まれた。 しかも質の悪いのは、西園寺がそのまま手をゆっくり上下に動かし始めた事だ。 「まさかおにぃ、これで何か感じてたりするのー?何でなんで?こんなんで感じるなんて淫乱ー」 そう言う西園寺の顔も少し紅潮しているように見える。 「…や…そんな…ち…がっ」 「じゃあ何でよがってるの?」 「やめ…てよぉ…っ、」 「不二咲おにぃのココはそんな風に言ってないよ?もっと触って?ってなってるよ!」 「やだぁ…ッ、恥ずか…しい…」 「ビクビクしてるー!すごーい、おにぃのココ、ビクビクしてるよ」 今の不二咲にとって、もはや何を言われても駄目だった。 か弱い少女に攻められて責められている、その事実だけで駄目だった。 不意に、その攻めが止まる。 「っあ…は…ハァ…ハァ…ッ、?」 「………つまんない、不二咲おにぃ。」 真意はうやむやなまま、そんな言葉が胸に刺さってくる。 「やっぱり直に触んないと、おにぃは墜ちないのかな?」 くすくす、と小さな笑いが漏れ出した。 既にひくひくと痙攣したように動く肉棒は、布切れ一枚被さっていたところでその存在を隠し切れていなかった。 迷わず西園寺は、不二咲の布切れ一枚を脱がしにかかる。 心を折りにかかる。 これで相手を脱がせて、イかせて、逝かせる。それが西園寺の策だ。 とにかく不二咲の心を折らずにはいられない。 両手をそっと腰元の布にあてがい、たださっと下ろして脱がせて--- 愕然とする。 正味な話、西園寺が【ソレ】を生で見たのは、初めてだった。 興味本位、と言う言葉が一番当てはまるだろう。 誰かの心を思い切り踏みにじるためには、と考えた挙げ句に出た策を実行していたにすぎない。 だからその対峙した相手が、想像よりも想定よりも遙かに大きかった事が、西園寺にとって衝撃であった。 「み…みないで、見ないでよぉ…」 不二咲が思いがけずぽろり、と涙をこぼした。 その弱々しさに反する程、彼の象徴は凄まじく怒張しており、女々しい姿が嘘のようだった。 「…は…?ちょ、不二咲おにぃ…こ、これっ…て…?」 西園寺に初めて動揺が見えた。 「…え?…これ…は、僕の………あそこ…だよぉ…」 不二咲も一瞬だけ言いよどんだが、意を決して口にした。 「いや、いやいやいや!こんなに大きいなんて知らなかった…!」 「…?……何の話ぃ?」 不穏な空気を不二咲が察した。 対して西園寺の顔色はみるみる悪くなっていく。 ただ遊びたかっただけなのに、ただちょっとちょっかいを出してみただけなのに。 その代償は高くつく。 「あ、あの、さ…不二咲おにぃ…あ、謝る…から…!」 西園寺が何を想像したのかは分からない。が、恐らく頭に浮かんだのは最悪の事態だろう。 震える声が聞こえてきた。 まるでさっきとは様子が逆転してしまったようにも感じる。 「……謝る?それで済むと思ってるのぉ?」 自分が途端に冷静になったのを感じた。 いや、もしかしたら本能的に動いていたのかもしれない。 不二咲の両手は、いつの間にか強い意志を伴って西園寺の両頬を掴んでいた。 「ふぇっ?!」 「…てよ」 「な、何て?何言ってんの、不二咲おにぃ?」 「……これ、舐めてよ」 そこにいたのは、今までの少女のような少年ではなく、まさに、男であった。 「はっ?わ、わたしが…こんな…こんな汚いモノ、舐められるわけ、」 「舐めたくなくてもいいよぉ、口にねじ込むから」 「!?」 「それとも下の口がいいのぉ?…って、これは山田君に教えてもらった言い方だけどさ」 「やっ、やめっ…!」 「僕は男の子だよ?力でかなうと思ってるのぉ?」 そうだ。不二咲は、不二咲千尋は今までに無く怒っていた。 かつて見た事が無い程、感じた事が無い程に怒っていた。 その怒りは、彼の男性本来の力を引き出させた。 何とか逃げようと暴れ出した西園寺だが、顔を掴む力は緩むどころか強くなっている気さえする。 痛みに耐えかねて西園寺の力が抜けた。 視界がはっきりした時には、自分の体が横たわっている事に気が付いた。 「え?や、わたし、いつ寝ころんだっけ…!?」 押し倒されたのだ、と言う事に結論が行く前に、下半身に異様な感覚が走った。 勿論西園寺は、性行為にそこまで詳しい訳ではない。 クラスメートには、花村のように【詳しいだけで行為に及んだ事の無い】者もいたが、まぁそれは不二咲の側も同じだろう。 そもそも彼らの仲間で、性行為を行った事がある者などは数える程(例えばソニアだとか)なのだから。 …だから、だからこそ西園寺は自分の最も敏感な部分を舐められている、と言うのを理解する事がしばらく出来なかった。 「やっ、あ…!?なっ……何、してんの、不二咲おにぃ…!」 呻き声のような呟きが漏れる。 動こうとしたが、どうやら腹部に両手を当てられて背を床に押しつけられている。 上半身を起こそうと思えば起こせたのかもしれないが、腹筋に力を入れると不思議な感覚がより鋭敏になるので、抵抗が上手く出来なかった。 じたばたと床の上を両手が這いずり回っていた。 その内、西園寺に変化が訪れる。 体が熱っぽい。 気怠くなってきた。 抵抗するのが変に思える。 なんだか、この不思議な感覚が心地よくなってきた。 先程まではこれを我慢していたはずなのだが、なぜだろう、受け入れる事を躊躇わなければ、この感覚は気持ちがいいものなのではないだろうか。 「…ぁ…あァ…ッ、も…っと…!」 その熱の籠もった声が自分のものだと知るのは、随分後の事だ。 訳が分からないまま体に奇妙な感覚を植え付けられていた。 目的も理由も今はそこに無くなってしまった。 ただそこでは、ひとりの少年が、ひとりの少女の陰部を舐めているだけ。 けれど、どんな宴にも終わりはある。 「や…っ!あ……、ッぁああああ!」 一際大きな声が、その室内に響きわたった。 西園寺の目の中で、星が弾け飛ぶような光が見えた、気がした。 その小さな体は、びくん!と大きく跳ねた後は、今ようやく疲れを知って床に横たわった。 永遠とも思える沈黙が支配する。 宴が終わったなら、後は始めるだけ。 くちゅくちゅ。 嫌らしい湿気を帯びた音が聞こえた。 「ひっ…!?」 西園寺の体から聞こえた音だ。 それをやった相手も見当が付く。ひとりしかいない。 何度かくちゅり、と水気を含んだ音が耳障りに聞こえてきていた。 しかし西園寺にはもう力が残っていない。 拒否も、肯定も、否定も、賛同も。 ずんっ。 そんな音にも例えられる衝撃は、鈍く体に響いた。 「ーーーーーぁあああああ?!」 「どぉ?僕の男の子、満足出来たぁ?」 その不二咲の声で、今の衝撃の正体も、先程の叫び声の本体も、西園寺には理解出来た。 これは、この体内を貫く衝撃は--- 続いてその衝撃の正体がずるる、と体内を徘徊していた。 熱くて堅いものが自分の体に入っている。 彼女が大嫌いな虫のたぐいが、木の枝の中に入り込むように。 そんな歪なイメージを脳に抱えたまま、彼女の体内でソレは大きく膨張した。 瞬間、 ずん、と再び体の奥底まで貫かれた。 「う…ッぁああああ!」 再び西園寺が呻く。 今までに無い程のボリュームで。 ふわり、体が少し、浮いた。 不二咲が西園寺を抱き起こそうとしていた。 半開きになった西園寺の目に、結合部分が一瞬だけ映る。 赤。赤。流れる赤。少しだけ、白と透明。 ソレは西園寺を抱き起こした途端、さらに奥深くに突き刺さった。 ぐっ、と小さく唸る。 「普通に正常位でやるより、こうして抱き抱えた方が奥まで入るんだってぇ。あ、これは葉隠君が言ってたんだぁ」 声だけ聞けば、いつもの、不二咲だった。 冷静になったのか、と言われればそれは疑問が残るが。 あのひ弱で力の無い不二咲が、なんと少女ひとりと結合しながら、抱き抱えていた。 何かトレーニングでも積んだのだろうか、あるいは、ただ単に本当に怒りの力だけなのか。 ともかく、不二咲が男である、と言う事実を遺憾なく発揮していた。 「…いくよぉ」 「…ひ、ぃ…や、止めて、止めてよ不二咲おにぃ…!」 「何で?」 「おにぃ…おにぃは、こんな事する人じゃないでしょ…!」 抱えられた小さな西園寺が、小さな不二咲の腕の中で震える。 自業自得、と言う言葉を忘れたかのようなその言い草。 先に焚きつけたのはどちらだったろう。 「…あのね、西園寺さん?僕は、男の子なんだよ」 それを解らせてやるために、宣告を突きつけた。 ついでに、ぐんと腰を突き上げて、西園寺の奥底に痛みを伴わせてやる。 「っぐぁぁ!?い、いたい!いたいっ!う、うわぁぁぁぁん!」 西園寺は泣き叫ぶ。 その声ももはや聞こえないと言わんばかりに、不二咲は何度も何度も突き上げた。 「っが…!やめっ…!いやぁ!いた…!やめて…!止め…不二咲…おにぃ…」 少しずつ声に力が無くなっていく。 ゴリゴリ、と音が聞こえてくるようだ。 肉壁を何度も何度も突き上げる。 何度も何度も、何度も。 痛みと、少しの快楽に喉が詰まった頃を見計らって、不二咲はスパートをかける。 「西園寺さん…僕…もう出すねぇ?」 「は、やっ…め…もう…!おにぃ…!!」 「そうやって言う度!僕の事締め付けるでしょ!キミこそ変態だよぉ!」 今度は不二咲の攻めを受ける番。 内部をえぐる肉棒が、一段と膨張した。 西園寺の小さな体が満杯になる位、熱くて、多くて、どろどろとしたモノが、たった今発射された。 「あ…ァ…!わた…し…の…!!」 「西園寺さんッ…!!」 西園寺はこれが何なのか知っている。 知識だけでは、よく解っている。 同時に、これがどう言う事なのかも理解してしまう。 「……ぅああ…わたしの…おなか、…ふじさきおにぃに…よごされたぁ…!」 たどたどしく、苦々しく、西園寺が吐き出した。 涙混じりのその声は、あまりにも弱々しくて。 「…汚しちゃったねぇ、ごめんねぇ」 「ごめんじゃ…ないよぉ…!」 「でもねぇ…」 「え?」 西園寺は戦慄する。自分が今まで泣いていた事を忘れた程に。 ぐんっ、と体内に再び堅い感触を感じたのだ。 自分の中で堅くなるもの。 それが何なのか、西園寺は知っている。 これがどう言う事なのかも理解してしまう。 「一回と二回は、もう変わらないよね?西園寺さぁん」 天使のような悪魔の笑顔が、西園寺の網膜に張り付いた。

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