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9-56」(2013/09/02 (月) 15:15:14) の最新版変更点

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立ち読みしていた雑誌を元の場所に戻して店内の壁掛け時計を見ると、家を出てから既に30分以上が経過していた。 ――そろそろ戻ってもいいかな。 何も買わずに居座るのも悪いと思い、適当にガムを一つ持ってレジまで足を運び会計を済ませる。 コンビニのシールが貼られたガムをジーンズのポケットに入れて店を出る。 ゆっくりとした足取りで僕は家に戻ることにした。 ――ケンカをまったくしない仲という訳でもない。 たとえ響子さんと付き合っているとしても、些細な事でケンカをする。 例えば本部に足を運んだ際、女の子から連絡先を聞かれて後日メールが来たりした時とか。 そこから先は売り言葉に買い言葉。 "キミだって本部の男性達から食事を誘われたりするじゃないか――!" "あら、一人前に嫉妬だけはするの? 誠くんのクセに生意気ね" 彼女の冷たい視線と悪辣な言葉に怒りの反論をぶつけてしまう。けれど、これでは逆効果だ。 お互い頭に血が上っている状態だと話し合いも平行線を辿るだけ。 このまま居座っても悪化の一途を辿るだけだと学習している僕は財布と鍵を持って玄関に向かう。 "本気で言ってるの――?" 最後に一度だけ振り返り、響子さんの顔を見て尋ねてみる。 すると彼女は言葉に詰まらせ立ち尽くすだけだった。 以上が、今から30分以上前に繰り広げられていた出来事だ。 自分の家の玄関の鍵を挿し込みロックを解除する。 既に響子さんが帰っていたら明日、十四支部できちんと謝ろう。 まだ部屋にいるならすぐに謝って仲直りをする。 距離を取って頭が冷えた今なら謝罪の言葉が言える。今回のケースは僕に非があるのだし。 「……ただいま」 玄関の三和土にはまだ響子さんの靴があった。 返事がないことは当然と思いながら玄関を抜け部屋に入ると、ベッドの上でタオルケットを頭まで被っている人がいた。 「……響子さん?」 問い掛けても返事がなく、本当に寝ているのか狸寝入りなのか判断できない。 ――だったら、と少しでも話しやすい雰囲気を作るための準備をするとしよう。 キッチンにあるコーヒーメーカーにフィルターを敷いて二人分の挽いたコーヒー豆を入れる。 水容器に水を注いでスイッチを入れる。そしてしばらくドリップが零れる様子を眺めながら待つ。 そして――。 「んぅ……」 ベッドの方でもぞもぞと動く気配。 おそらくコーヒーの香りに釣られて意識が冴えたのだろう。 マグカップにコーヒーを注ぎながら、小さい子供をあやすように言う。 「おはよう」 「……えぇ」 「コーヒー淹れたんだけど、飲む?」  自分のマグカップに砂糖とミルクポーションを注いでいると後ろからぎゅっと、しがみ付く様に抱きつかれてちょっと驚く。 「……響子さん?」 「……さっきはごめんなさい。本当に、ごめんなさい……」 背中に額を押し付けられながら、囁くような謝罪だった。 僕は気にせずティースプーンでカップをかき混ぜながら言う。 「響子さんが怒るのも無理ないよ。僕だってきっと響子さんの携帯に他の男からメールが来たら嫌な気分になるって」 「でも……」 ティースプーンを置いたら響子さんの腕をゆっくりと解き、向かい合う。 そして指先で唇を軽く押し当て、一旦彼女の言葉を区切らせる。 「コーヒー、飲もっか? 冷めちゃうよ?」 「……あなた、お人よし過ぎるわ。絶対……」 「……響子さんだから」 そう言って軽く唇にキスをする。 「響子さんだから僕は優しく出来るんだよ。……ここまで言ってもわからない?」 だからさ、仲直りしよう――? そんな風に囁いたら響子さんは前髪で瞳を隠すように俯きながら"バカ――"とだけ漏らした。 "そうかも"って苦笑しながら僕は彼女の頭をあやすように撫でるのだった。  こうして僕らの中は丸く収まった――。   ――――― ケンカの後の仲直り。 二人してコーヒーを飲み終わったら特別に激しく、格別に優しく慈愛を込めたセックスに僕らは没頭するわけで。 そんな素敵な仲直りに僕らは夢中になるのだった――。 響子さんの両脇に手を入れて抱き上げると、途中で躰をひっくり返しながらベッドに倒れ込んだ。 「……この体勢でするの?」 「一方的にされるより、一緒の方がいいかなって思って」 そう言いながら彼女の穿いているジャージを膝下まで下ろす。 こちらもジーンズのファスナーを下ろされたので腰を浮かせて脱がせやすいようにする。 「はぁ、んっ、もぅ……」 「くっ、んんっ……!」 露になったショーツの中心を指で撫でていると僕の先端が温かい感覚に包まれる。 そして下着もずり下げられると先端だけでなく、幹全体を包み込むように滑った感覚が襲いビクンと脈打つのだった。 こちらも負けじと彼女の腰ごと抱きかかえ、ショーツを脱がしにかかる。 響子さんのお尻の感触を確かめるように撫でながら、内股に唇を寄せる。 「んんっ、んんっ……んんんぅ、んぅ、んんう……」 触れるだけの口付けでは飽き足らず、味わい尽くしたい衝動に駆られる。 滴る愛液を舌に乗せてその源に口を寄せ、さらに吸い出していく。 最も敏感な突起も手のひらや親指でやさしく、しかし念入りに捏ねるのを忘れない。 「ふむぅう、んふぅ……!」 響子さんの身体がピクンと震えながらも、僕のを咥えたままそれを離さない。 含んだまま呻いた彼女の舌が踊り、僕の先端を弄ってくる。 「んぅ……! ぷぁっ」 思わず舌の動きを止めて悶えてしまう。 その空白に付け込むように響子さん舌の動きが激しくなった。 ジュプジュプと音を立てて、唇でペニス全体を擦り上げてくる。 かと思うと、急に動きを緩くして口の端でカリ首を締め付け、舌の先で鈴口をねぶり回す。 僕は身を仰け反らせて、その全てがもたらす快感に耐える。 まだ果てちゃダメだ。今回だけは自分だけ先に高みに昇るのは嫌だ――。 そう自分に言い聞かせながら響子さんに愛撫の中断を求める。 「響子、さん、そろそろ……」 「ん、ぅんん……えぇ、お願い」 身体を上方にずらしながら上半身を起こして、膝下に留まったままのジーンズとパンツを脚から抜く。 響子さんの方も下半身が裸になったらお互いバンザイをするようにして相手のTシャツを脱がす。 後は枕元に置いていたコンドームのビニールを破り、逸る気持ちを抑えながらスキンをペニスに装着させる。 準備万端になったら僕も響子さんも首筋に手を回し、唇を寄せる。 ちゅ、ちゅ、ちゅ、と軽く三度触れ合わせたら額を付け合わせて――。 「リクエストとか、ある……?」 「……いっぱい、ぎゅーって抱き締めながらお願い」 「……ふふっ。甘えんぼさんだね、響子さんは」 「ちょっと、聞き捨てならないわね。あなたから提案してきたじゃない……」 「ごめんごめん……。僕もピッタリとくっつきながら繋がりたいって思っていたんだ」 「……同じね」 「……同じだね」 ゆっくりと横たわるように押し倒し、たっぷりと濡れた響子さんの中に割り入った。 「んっ、くっ……!!」 「ん……ぁん……!」 何度も体を重ねてきて、もう馴染んでいると言っても過言ではない響子さんの秘所。 それでも快感は高まろうとも、飽きたりするなんてこれっぽっちもない。 肘を突いている両手で響子さんの肩を掬い上げるように抱きしめる。 彼女もそれに応じて僕の胸を抱き寄せる。 裸の胸がぴったり合わさったら僕は身体全体をこすり付けるようにグラインドさせる。 腰だけではなく、身体全体を使ってのストローク。 響子さんのおっぱいが胸板で柔軟にたわむ感触が僕は好きだったりする。 その分、動く側の僕からしてみれば運動量は多い。けれど、身体の前面全てで愛する人の抱き心地を堪能できるのはお釣りが来るほどだ。 「きょう、こ、さんっ、んんっ……。愛してる、よ……!」 「んんぅ……! わたし、もっ、愛してる……! 離さっ、ないんっ、だかっ、んぅ、んんうっ……!!」 「……ぷぁっ、僕も、だよっ……!」 無限ループの愛の囁き――。 それはきっと、まぎれもない幸せと希望に満ち溢れた循環――。 「んんっ、んんっ、んんんぅ……んぅ、すふっ、すふっ……」 「んっ、んっ、んふ……ん、んんっ」 精一杯舌を差し伸べ合ったり、ザラザラな舌の腹どうしで摺り合わせたり――。 互いに甘噛みしたまま、ゆっくりと舌を出し入れして唇を刺激したり――。 「あん、あんっ、あんっ…あっ、ん、んうぅ……!!」 「んっ、くっ、んっ、んうっ……!」 「ま、まことくん、ちょ……くすぐったいっ……!」 「あっ、ごめん……。ははっ、僕ら汗、びっしょりだね……」 「ふふっ、そうね……。後でお風呂に入りましょう?」 「うん。一緒に入ろっか……?」 裸の身体全体を使ってのスキンシップで僕らはたちまち汗まみれになる。 それでもお互い気にすることなく頬摺りに興じて、分かち合うぬくもりの心地よさに浸る。 「ねぇ、誠くん……。動いて……」 「うん……」 響子さんからの吐息程度に囁くようなおねだり。 僕はそれに首肯すると、もう一度だけ響子さんにキスしてからリラックスしきっていた四肢にゆっくりと力を込めていく。 両の肘で上体を支え膝を込めて腰を浮かせると、二人の汗ばんだ肌と肌とがしっとりとしたまま離れる。 僕は下から抱き込んでいた響子さんの肩に力を込める。 慈愛を込めた動きから情熱を込めた動きにシフトチェンジをするように、弾力と熱を秘めている響子さんの子宮口を乱打する。 「あっ、あっ、んあっ……ん、んふっ…ま、まことくんっ、まこ、と、くんっ……」 「はあっ、はあっ、はあっ……きょうこさん、きょうこさんっ……!」 ぬぷっ、ぬぷっ、ぬぶっ、ずぶっ、ずぶっ――。 押して、引いて、さらに押して、さらに引く。 ぐっと押しつけたかと見せかけて、いきなり一ヶ所を刮げおとすかのようにそこだけをグリグリと擦り付ける。 「あっ、ふあぁっ!! ら、めっ……ごめ、なさっ、わたし、わたしっ……もうっ……!」 「……ん、いいよ……? 堪えなくても……」 「あぁっ、も、らめっ…あ、あぁああーーっ!!」 響子さんのつま先が伸び、背筋が反り返る。 奥深くを突き上げ捏ね回すたびに、彼女の腰が勝手に浮き上がっていく。 まるで"もっと、もっと"とせがむように。 ――やっぱり綺麗だなって思う。 響子さんが絶頂を迎える姿を間近で見ながら僕は思った。 それと同時に何ものにも代えがたい男としての達成感を味わい、僕は自然と笑みが零れてしまう。 「……ぁ、ごめん、なさ、い。また、わたしだけ……」 「……うん、可愛かったよ」 もっと可愛い姿を見たい――。 その衝動に駆られて僕は再び腰を動かしだす。 「……っあ……う、動かさ……ない……でぇっ!」 「ごめん、ねっ、きょうこ、さん。僕も、そろそろ……!」 「……だ……だめぇ。……まこと、くんっ、だめぇ……」 甘い悲鳴をあげながら、僕にしっかりと抱きつく響子さん。 しがみついた手に力を込めてくる。 「くっ、くううっ……うううっ!!」 「ああっ! あっ、ああっ、あああっ……!!」 僕はとどめの一撃とばかりにペニスを深く突き込む。 グイグイと響子さんの尻肉を押し上げながらできるだけ奥まで挿入して果てるのだった。 その刺激で響子さんも二度目の絶頂に達して、声を限りに鳴いてくれる。 「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。ごめん……無茶、したかな?」 「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……。いえ、平気よ……」 お互いの汗にまみれることも厭わずキスをしたり頬摺りをしたりして絶頂の余韻に浸るのだった――。 ――――― 「……いいかしら?」 「どうぞどうぞ」 湯船に浸かって待っていると響子さんが僕に背を向けた格好で湯船に入ってきた。 元々一人分が入れるくらいのそんなに広くない浴槽なので、僕が彼女を抱え込んでいるような状態である。 響子さんの方も少しずつ身体を後ろに寄せて密着具合を高めてくる。 "はい、どうぞ"と言われたので僕は彼女の左肩に顎を乗せる。 最後はお腹周りに腕を回してやんわりと抱きしめながらリラックスして浸かることにした。 「……ケンカするほど仲がいいって言うけど、実際どうなんだろう?」 「どういう意味……?」 「うん、今回みたいにほんの些細なことでも僕たちはたまにケンカをしちゃうじゃない?」 「えぇ、そうね」 「そのたびに何とか仲直りをして、本当は大好きなんだよって気持ちを込めながらエッチをして。けれど……」 「それは現状に甘えているだけじゃないのか……。そう言いたいの?」 「うん……」 さすが"超高校級の探偵"と言われただけのことはある。 僕の言いたいことを推理して先読みしてくるのだった。 「……誠くん。一度しか言わないからよく聞いて」 「う、うん」 「私もあなたとケンカをするたびに自分の未熟さを恥じて、言い様のない自己嫌悪に陥ってしまうわ」 「響子さん……」 「それでも誠くんは、赦されるのを分かっていながら待っているだけの私の気持ちを汲んで、いつも先に仲直りをしてくれるわ」 「それは……僕が響子さんとこれ以上気まずい関係でいられるのが耐えられないだけだよ」 「そして裸になって互いの体温に触れて、優しさを見せ付けあうような仲直りを繰り返す度に私達の絆はより深まって、強くなっていく気がするの」 そして僕の方を向きながら"それは私だけの錯覚なの――?"と問いかけてくる。 「……錯覚、なんかじゃない」 抱きしめていた両手を響子さんの右手を包み込みながら言う。 決して消えることのない火傷の痕を残す地肌の手にお湯を染み込ませるように。 「錯覚なんかじゃないんだ、響子さん……」 僕の言葉が響子さんの心に染み渡ってほしいことを込めてもう一度言う。 すると響子さんは空いている左手で僕の目元に触れる。 「……どうして、誠くんが泣くの?」 「わからない、わからないよ……! けど、全然悲しくなくて、むしろすっごく嬉しくて……!」 「フフッ。同じ気持ちなら、たとえどんなにケンカをしようと私達の相性はピッタリの筈ね」 「うん、そうだね……!」 そして、僕らは流れる涙を厭わず夢中で頬摺りに興じるのだった。 ――響子さんにココロをロンパされた。 END

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