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「誠くん、お願いがあるの」 「ん? なぁに?」 ベッドに腰を降ろして響子さんを抱き締めたまま、ゆるゆると背中全体を撫でている時だった。 「……今日は私にオシオキして」 あまりいい思い出のないキーワードに思わず背中を撫でる手が止まってしまった。 「何か後ろめたいことをしたの……?」 「……いいえ」 「じゃあ、どうして?」 「……夢見が、悪かったの」 僕は辛そうな表情を浮かべる彼女をあやすように再び背中を撫でながらポツポツと響子さんが見た夢の内容を聞くことにした。 夢の内容は戦刃むくろ殺しの裁判の時に裏切り見捨てた結果、僕がクロになりオシオキの"補習"をされた時のことで。 あの時はアルターエゴのおかげでプレス機に潰されることはなかったけど、響子さんの夢の中では僕はそのまま――。 その結果、絶望的な真実を突き付けられて膝を付いてしまい、僕を見殺しにしたことを悔いたまま憔悴して学園生活を送るという内容だった。 「……確かに、それはあり得たかもしれない可能性の一つだろう。けど……」 「私があなたを見捨てたことに変わりはないし、許してもらおうとは思っていないの」 「今も……そう思っている?」 「……えぇ」 響子さんも過去のことを引きずったまま前に進むから僕らは案外似た者同士かもしれない。 けれど、僕に負い目を感じているという考えは引きずって欲しくなかったな。 僕はそんなこと、とっくに許しているのに――。 「先に言っておくけど、僕は響子さんの弱みに付け込んで関係を持っているわけじゃないよ。本当にキミのことが好きだから抱いているんだ」 「それは理解しているわ。けど、私自身が納得いかないの。……ごめんなさい、融通の利かない女で」 「響子さん……」 いくら言弾を紡いでも分かり合えないケースっていうのはある。 今が正にそんな時で、打開するには行動に移すしかなかった。 「……わかった。今から響子さんにオシオキの意味を込めてエッチをするよ」 「ありがとう誠くん。私のワガママに付き合ってくれて」 「でもキミを傷つけたり苦しむ姿は見たくないんだ。どうすればいい?」 「そうね……。誠くん、アレを使ってくれないかしら?」 そう言って響子さんはサイドボードの上にあるアイマスクを指差した。 当直勤務のために日が射す日中でもよく眠れるよう、就寝時に身に着けている安物のアイマスクだ。 「今から私がこれを身に着けて成すがままになるから、誠くんは私のカラダを好きに使って」 「好きに使ってって……。僕がリードすればいいってことだよね? 大丈夫? 視界が遮られて不安じゃない?」 「ちょっと不安だけど、あなたになら何をされても構わないわ」 そう言って寝巻き代わりのブラウスを脱ぎ、アイマスクを装着してベッドの上に横たわった。 まな板の上の鯉ならぬ、シーツの上の響子さん。 僕はそっと覆いかぶさって耳元で囁く。 「僕がキミのこと大好きだって気持ちは本当だってこと、信じてほしいんだ……」 彼女を苦しめる悪夢を断ち切るつもりで唇にキスをする。 「んっ、んんっ、んっ、むふぅ……」 「んふっ、……んっ、ん、んむっ」 舌先で歯をツンツンとノックしたら響子さんもそれに応じて舌を伸ばしてきた。 くちゅりくちゅりと、舌を絡ませ合ったら生温かい唾液を注ぎ込む。 それでも響子さんは息苦しさを気にも留めず、僕の舌を受け入れ自分のモノと混ざった唾液をすすり嚥下していく。 「……ぷぁっ」 先に僕の方が耐え切れず酸素を求めて唇を離してしまう。その影響で彼女の顎を伝うように銀の糸が零れる。 その糸を舐めとった後は目元を覆うアイマスクを除いた顔中にキスの雨を降らせた。 ちうっ、ちうっ、ちうーっ、ぷちゅ、ぷちゅ、ちょぷ――。 わざと音を立てるようにして響子さんの聴覚を研ぎ澄ませる。 ぷるぷると体を震わせているところに不意打ち気味に左の耳たぶをかぷり、と甘噛みする。 「ふぁっ!?」 堪らず仰け反って反応する響子さん。 驚かせてごめんね、とあやすように撫でながらぺろりと耳たぶを舐めて、最後にうなじを強く吸い付く。 「んっ……!」 この場所なら響子さんがポニーテールにしない限り、決して他人から見えない位置に僕だけが付けられる印を残す。 ちゅぷ――と唇を離すと雪のような白い肌にたちまち紅い印が浮かび上がる。 ふと、彼女の三つ網を結う黒いリボンに目が行く。 そのリボンを見て閃いたことがあり、彼女の耳元で囁くようにしておねだりしてみる。 「ねぇ、響子さん……」 「……どうしたの?」 「三つ網を結っているリボン、解いていい? それで響子さんの手首を縛ってもいいかな?」 「えっ……?」 「ダメ、かな……?」 「……いいわ、あなたの好きにして」 「ありがとう……」 壊れ物を扱うように響子さんの黒いリボンに触れ、三つ網を解く。 解けた髪を手櫛で梳かしたらリボンを持った手で響子さんの手を握り、胸元に引き寄せる。 "大丈夫? 痛くない?""いいえ、平気よ――"そんな遣り取りをしながら両手首をリボンで縛る。 彼女を拘束したら横寝になってもらい、後ろから抱き締める。 右手はお椀型の美しい形をした乳房を揉みしだく。 左手を瑞々しい薄紅の亀裂がひらめくコーラルピンクの陰唇へ伸ばす。 「ふぁうっ! うんっ、あっ、はぁ……!」 クチュクチュ、ピチャピチャと音を立てながら響子さんの蜜泉をかき混ぜる僕の指は第二関節まで呑み込んでいくほどだ。 もちろん、中指でパンに溶けたバターを塗るようにクリトリスを指の腹で繰り返し転がすことも忘れない。 そして昂奮の度合いによってサクランボからグミキャンディーのような弾力を帯びてきた乳首を指先で摘んでコリコリと転がす。 「ふぅっ、ふぅんっ、ぅんっ、んっ、んふぅっ、うぅんっ、ぅんっ……!」 「ねぇ響子さん。お尻に当たっている感触、わかる……?」 「えっ、えぇ。あなたの大っきいのが……」 響子さんの感じる姿を見てすっかり準備万端になっているペニスをグリグリとお尻の谷間に押し付ける。 「このままお尻の間に挟んで動くね……!」 「あんっ、ちょっと……あっ、ん、んんんっ……!」 ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬぢゅっ、ぷちゅっ、ちゅぷっ、びちゅっ――。 響子さんのお尻の谷間に勃起したペニスを挟み込ませながら、僕は両手一杯に彼女のお尻を堪能した。 丸くって、スベスベしてて――こんなに木目細やかで柔らかくて。 ジットリ汗ばんでいても、こんなに肌触りがいいものは他にない。 病み付きになってしまう――。 ちゅぷ、ちゅっちゅっ、ぬりゅ、ぬぢゅ、ぐみゅ、ぬみゅっ――。 愛しさと、それに勝る情欲でさらに激しく燃え上がってゆく衝動に身を任せて唇を求め合う。 擦れ合って、吸い付き合って、舌を忍ばせ合って。 「……う、うっ!」 「んっ、んん……! ああっ、熱い……」 歯止めが利かず、思わず響子さんのお尻に擦り付けるように果ててしまう。 けれど響子さんは咎めることなく陶然と呟き、熱い飛沫を受け止めるのであった。 慌ててサイドボードにあるティッシュを数枚引っ張って響子さんのお尻周りを拭く。 「ご、ごめん響子さん……!」 「……いいの。私へのオシオキだから気にしないで。まだ続けられる……?」 「うん、もちろんだよ」 そう言って再び硬さを取り戻すように自分の手で扱いていると響子さんが鼻をすんすん、と鳴らしながら何かを探している。 "もしかして、舐めてくれるの――?"と尋ねてみると首を縦にコクンと振ってくれた。 僕は根元を押さえて、お尻の谷間から響子さんの口元にペニスを動かす。 すると響子さんが亀頭に舌を這わせ始めた。 精一杯伸ばして、なんとかカリ首の縁までしか届かないような距離。  それでも鈴口に舌をそよがせ、赤黒い亀頭の皮を丁寧に舐め清めてくれる。 次々に残滓として残っていたドロドロの粘液が亀頭を伝って、また汚してしまうのだが彼女は飽く事無く僕のペニスの先に舌を這わせ続ける。 僕のペニスはそれによって、どんどんと手で押し下げるのが困難になっていく。 堪らずに先端を響子さんの開いた唇に押し付けた。 「ふぅっ、んん……ぅんっ、んっ、んん……」 抵抗することなく自分の唾液と逸り水に濡れたペニスを受け入れてくれる。 口中に溜まった唾液を呑み込む動きと共に、僕のペニスは幹の半ばまで唇のさらに奥へとゆっくりと沈んでいく。  舌がねっとりと絡まっていく。 唇が窄まり、柔らかく締め付け始めていく。 さっきまであんなに舌を絡ませて甘い息を吸うキスをしていた口。 こうしてその口を汚しているのだと思うだけで、震えが起きた。 気づいたらガチガチに硬くなって復活していた。 「ありがとう、響子さん。気持ちよかったよ……」 後は枕の下に予め用意していたスキンを取り出し、ビニールを破って装着させる。 再び響子さんを横向きに寝かせたら片脚を持ち上げて自分の肩に乗せた。 「だっ、きたな……あぁんっ」 「……どうして? そんなことないよ。こんなに綺麗な脚なのに……」 お返しとばかりに足へキスの雨を降らせる。 その指の間に舌を這わせると、くすぐったいような快感に腰がぴくんと跳ねる。 「あっ、あぁうっ! はっ、はぁっ、はぅっ! は、早く……」 「うん。いくよ……?」 最後に足の甲にキスをしてから照準を合わせて、先端を響子さんの蜜壷の入り口に添えた。 一息で貫くと過剰に溢れていた蜜が押し出され粘着質な音が結合部から響く。 「うぁうっ、あぁっ、ふぅあっ……!」 「くっ……ふぅ」 深奥まで突き通したら軽く呼吸を整える。 前屈みになって体重を掛けながら、大きく腰を前後に動かして響子さんの深奥を突き崩すように攻め立てる。 「はぁうっ、ぅあぁうっ、はっ、はぁっ、うぅあっ!」 横臥位で交わると響子さんは頭を揺らして髪の毛を振り乱し、激しく身悶えていた。 目隠しと手首の拘束で緊張気味だったけど、慣れていくうちに徐々に性感の刺激を享受し、更に強い快感を求めて自ら腰を揺すりだした。 ぶちょ、ぬちょ、ぬぢゅっ、にちっ、ぷちゅ、ぬぢゅ――。 「はぁっ、はぁっ、はぁんっ、あんっ! ……んっ、んふぅ、ふぅっ、うふぅっ!」 響子さんの顔が自然に綻び、腰の動きにも拍車が掛かる。 「んっ……! ほら、まだ、だよ……?」 「はっ、あっ、ああっ! あぅ、あぁうっ、あっ、あっ、ああっ!!」 柔肉が痙攣し、蜜壷全体が搾り上げるような感触に小さく呻いてから、またすぐに腰を振って響子さんを攻める。 僅かに肩を震わせた彼女は、すぐに僕の動きに応えるように腰を振り歓喜の嬌声を上げ始める。 「あっ、はぁっ、ぁはぁっ、はぁっ、あっ、あっ………あぁあぁーーっ!」 「くっ……!!」 獣のように低い嬌声を漏らし早々と絶頂を迎えた響子さんの膣内が、自然に僕の精を搾り取るようにくねり蜜壷が引き絞られた。 慌てて背筋に力を込めて、果てそうになるのを堪えた。 腰の動きを緩め、呼吸を整えたら肩に担いでいた響子さんの脚とお尻を横に押して、彼女を四つん這いにさせた。 するとやんわりと両脚を開いてくれたので、僕はその間で膝立ちとなり改めて後背位の体勢を整える。 「はぁ、はぁ、はぁっ……あぁん」 すぐに腰を動かさず、イタズラで響子さんのお尻を撫でる。 柔らかなお尻の肉は軽く撫でるだけで波打つように震え、すぐに元の形に戻る。 乳房のように指を押し返してくるような弾力はないけど、指先がどこまでも沈んでいきそうな柔らかさは胸とは違う魅力を持っている。 僕が撫でたり摘んだりすることに没頭していると、響子さんの躰がぴくぴくと痙攣し始めた。 「はあ、あ……、誠くん……」 アイマスクで視界を封じられているけど、後ろを向いて蕩けるような甘い囁き声で僕を呼ぶ響子さん。 お尻がゆらゆらと左右に揺すられ、秘所から溢れ出した蜜が太ももを伝ってシーツの上に染みを作った。 「響子、さん……!」 僕は喉の奥に込み上げてきた生唾を飲み込み、腰を前に突き出して響子さんの内部に押し入った。 「うっ、くっ……ぅんんぅう~~!」 「うう、うっ」 彼女の唇から媚びるような悲鳴が漏れ出て、僕を包む粘膜が絡み付くように収縮する。 一瞬、あまりの快楽に意識が遠くなるけど頭を軽く振って眼を覚ました。 落ち着いたらリズミカルにピストン運動を繰り出す。 ずにゅ、ずにゅっ、ずりゅ、ずりゅ、ずりゅりゅ――。 「はあっ、はあっ……あ、くっ、んんっ……。響子さん、気持ちいい……?」 「う、うんっ……い、いいのぉ。……は、恥ずかしいけど、気持ちいいっ……!」 さっきみたいに暴発しないようにって意識しているけど理性は少しずつ愛欲に押され、次第にグラインドのストロークが大きくなってしまう。 「はあっ、はあっ……ごめん、響子さんっ……!」 「あっ、あんっ! ああんっ!! ちょっ、そんなっ、いきなりっ……!!」 詫びるように名前を呼ぶと、響子さんのお尻をしっかりと掴んで強めのストロークでペニスを突き込み始める。 心持ち上体を弓なりにしながら、Gスポットの手前から一息で子宮口を穿つように何度も何度も腰を突き出す。 それにより肌と肌が打ち合う音も大きくなり、性器同士がぬめり合う音もますます淫らに響いてきた。 ――まるで、愛しい響子さんを思いのままに犯しているようで。 僕は良心の呵責に苛まれながらも、男心が満たされてゆくのを感じていた。 ペニスも見る見るうちに射精欲を募らせ、これ以上ないほどに長く、太く、硬く勃起しているのを実感する。 「はっ、あっ、ああっ! ……あぅ、あぁうっ、あっ、あっ、ああっ!」 響子さんは僕の成すがままに、吐息とあえぎを繰り返し漏らした。 それでも彼女は両肘と両膝を突っ張り、僕の激しい動きを受け止め続けてくれた。 「ま、こと、くんっ。……ねえ、まこと、くっ、んんっ……」 「ン……? どう、したの?」 「お願い……キス、して? ……っ!! ん、んぅ」 「んっ……うぅんっ、んぅ、んちゅっ、んっ、んんっ……!」 「すふ、すふ……んっ、んふっ、ふぅん」 響子さんのリクエストに答えて覗き込むように頭をもたげる。 肩越しに唇を重ね、そっと吸い付き合う。 互いに愛おしさが募っているぶん、鼻にかかった声でよがりながら水音を立てつつ啄ばみ合った。 「んっ……んっ、んふっ、んっ、んんっ……」 「すふ、すふ、んむ、んっ、んっ……」 僕はキスしたまま、ゆっくりとグラインドを始めた。 身体を擦り付けようにして彼女の尻肉を押し上げるようにのんびりと揺れ動く。 僕の穏やかなピストン運動に、響子さんもキスしたままかわいい鼻声でよがる。 優しい往復はもちろん、キスも、乳房への愛撫も存分に堪能できて本当に夢心地だ。 響子さんの方はずっと視界をアイマスクで封じられ何をされるかわからないスリルに緊張感もあるけど、二人で汗ばんだ身体もそのままにぴったりと折り重なり、舌を触れ合わせてキスしながら互いを高ぶらせてゆく。 ――ふと、僕の中で何かが弾けた。 響子さんの乳房を堪能していた両手を目元に寄せてアイマスクをそっと外す。 突然の視力の復活に目を細めつつ、僕を視界に捉えたらどこか安堵の表情を浮かべているのだった。 「……ごめん、響子さん。キミのお願いを無視するようにしちゃって。……やっぱり響子さんの顔が見たいんだ」 「誠くん……」 「それで最後は僕が振り回すようにじゃなく、いつものように一緒にイこう? ね?」 「……わかったわ。あなたがそれを望むなら」 「響子さん……んっ、んんっ……ぷぁ、響子、響子っ……!」 「んっ、んむっ、ぷぁ、誠くん……誠くん、んっ……」 押し留めきれなくなった愛おしさが爆発して、初めて呼び捨てで彼女の名前を呼んでしまう。 そんな僕を咎めることなく響子さんは受け止めてくれるのだった。 このまま最後まで駆け抜けようと、僕は響子さんのGスポットを意識しつつ膣口からわずかに入った辺りで念入りに亀頭を往復させる。 「響子……響子、響子っ……!」 「あ、ふぁあっ……だめぇ! んぁ、そ、そこ、そこ好き…好きぃ……!!」 僕らは無我夢中で叫び合うと、それぞれ最後の瞬間を迎えるために少しずつ体勢を整えた。 腕を交差させて右手で左の乳房、左手で右の乳房を鷲掴みしながら夢中でそのカラダを抱き締める。 「きょっ、響子! イクよっ! イクよっ……!!」 「わっ、わたしもイクッ! イクッ! イクッ……!!」 ぶちょ、ぬちょ、ぬぢゅっ、にちっ、にぢっ、にちゅ――。 「んっ、あぁああぁーーーっ!!」 「くっ、くううっ……うううあぁっ!!」 電撃が走ったかのような悲鳴と共に響子さんの肢体が硬直する。 同時に僕を包んでいた柔肉が、引きちぎるような勢いで収縮した。 僕もその締め付けに思わずペニスを深く突き込んだ。 グイグイと響子さんのお尻を押し上げながらできるだけ奥まで挿入し、そこで二度目の絶頂を迎える。 「う、ううっ……!!」 彼女の粘膜は最後まで吸い上げるように痙攣しながら絡み付き、僕は為す術もなく搾り上げられ続ける。 「はぁ、はぁ、はぁ……ぁあ、はぁ……きょうこ、さん……」 「ふう、ふう、ふう……ふぅっ。ん……んんっ…はぁ、はぁあ……」 僕は響子さんの背中にのしかかったまま彼女の様子を覗いてみる。 すると安らぐように目を閉じて荒い呼吸を繰り返している。 僕の視線に気づいたのか、響子さんが首を動かして僕の顔を見た。 「……ふぅ。……うふふっ」 「んふっ、ふぅっ、うぅん……」 「あふっ……んぅう、んうっ、んっ、ん……」 トロンとした微笑みを浮かべながら僕に身体をすり寄せてきた。 射精した直後の気だるい疲労感に包まれながらも僕はそれに応じ、肌を密着させて唇を啄ばみ合うのだった――。 ――――― 響子さんの両手首を縛っていた黒いリボンを解く。 きつく締めすぎたことで痕が残ってないか目を凝らしてみると、ちょっとだけ紅い痕が残ってしまっていた。 「ごめんね、響子さん……」 「気にしないで。明日になれば痕は消えるわ」 「それもあるけど……。キミを呼び捨てにしちゃったことも含めて」 「どうしてあなたが謝るの……?」 「それは……響子さんのこと恋人として抱いていたのに、途中から興奮し過ぎて響子さんのことをモノみたいに扱ったりしたよね?」 「でも誠くんは私のことを気遣ってくれたでしょう? それに……」 「それに?」 「誠くん、あなたは私のカラダに何をしたの?」 「えっ?」 思わず髪を撫でていた手が止まってしまう。 撫でる手が止まったことに不服だったのか、枕代わりにしている僕の左腕に頬摺りをして催促してくる。 再び右手を手櫛代わりに髪を梳かす作業を再開させるとポツリ、ポツリと話の続きをしてくれた。 「あんなにも私のことを求めてくれて……正直、予想外だったの」 「……そうかな。負い目なんか気にしないで、恋人として求めているんだって躍起になっていただけだよ」 「あなたからオシオキをされることが当然の報い……。義務として受け止める行為なのにあんなにもドキドキしてしまうんですもの」 「つまり、響子さんもオシオキとか関係なしに気持ちよかった……そう考えていいんだよね?」 「……好きに解釈しなさい」 すると響子さんが僕の胸元に顔を寄せて、目を合わせないようにしてきた。 あっ、これ照れているサインだ――。 後ろ髪を撫でながら僕は言葉を続けることにした。 「もし、また悪夢にうなされたって言うなら呼んでほしいな」 「……善処するわ」 「僕らは割り切ったり、乗り越えたりするほど器用じゃないと思うんだ。引きずって、その度に思い出して……」 「そうね」 「だからその度にきちんと向き合っていこう? 慰めあって、前に進む元気を貰おうよ?」 右手で響子さんの左手を握り、指を絡める。 そして黒いリボンを左手に持ち、繋いだ手首同士を一括りにするようにしてリボンを巻く。 "縛るの、手伝ってくれる?"と囁いたら響子さんが空いている右手でリボンを縛る作業を手伝ってくれた。 「さっきのように、今度は僕が誰のモノなのか教えてほしいんだ。ここまで言えばわかるよね、響子さん?」 「えぇ、わかったわ……」 艶然と微笑み、僕の唇に軽くキスをしてきた。 それが合図――。 「許してもらおうとなんて思わない……。その言葉に二言はないわ。だからあなたを……」 「僕も響子さんの抱える悩みと真摯に向き合うよ。だからキミを……」 「「離さない」」 ――響子さんと一緒にオシオキされた。 END

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