「9-366」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

9-366」(2013/11/05 (火) 12:11:16) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

「あなたが見せたかったものって、これのことなの?」 「うん、そうだよ……」 そう言って隣に立つ響子さんの手を握る。 窓の外の夜景を僕らはしばらく眺めていた。 「……ホテルのディナーに誘ってくれた時から何となく推理は出来たけれど、やっぱり綺麗ね」 「そう言ってもらえると嬉しいな。ここ最近は忙しくて二人でゆっくりする時間も取れなかったし」 「でも少し前まではモノクマ暴徒ばかりの荒れ果てた世界だったのよね……」 「うん。こうして街の灯りを見渡してみると、人類史上最大最悪の絶望的事件から立ち直っている気がするんだ」 「絶望は伝染する……。けれど、希望も伝染する」 「そうだね。何度絶望の世界がやってこようと人々は希望の灯火を失ったりはしないんだ……」 "僕らみたいに――"と呟いて夜景から響子さんに視線を移す。 「響子さん、お誕生日おめでとう。それと、これからもよろしく」 「ありがとう、誠くん……」 そっと抱き合い、唇を重ねる。 彼女の唇は仄かにコースメニューと一緒に飲んだワインの酸味が残っていた。 その酸味を味わいたいがために何度も吐息を絡め、舌を絡め合う――。 ワインの酸味も抜け、響子さんの甘露のような唾液にすっかり変わった頃になってようやく唇を離す。 「……お風呂、入ろっか? 背中流すよ」 「何から何まで至れり尽くせりね……」 「だって響子さんの誕生日だもん。精一杯もてなしたいんだ」 そう言って手を繋ぎながら僕らはバスルームに向かった。 ――――― 「……もう少し強く擦ってもいいのよ?」 「そうかな? ちょっと力を入れただけでも肌を傷めてしまう気がするんだけど」 「誠くん、あなたが自分の背中を洗うのと同じ力でしてほしいの。それじゃ洗ったことにはならないわ」 「わかったよ……。どう? これでいい?」 「そう、その調子よ……」 垢擦りのスポンジで響子さんの背中を洗っていると、決まって力の加減が足りないと指摘されてしまう。 雪のように白く、陶磁器のようにスベスベな肌を傷つけてしまいそうな気がして壊れ物を扱うように洗ってしまうのだ。 子供の頃、妹のこまると一緒に父さんの大きな背中を洗うのとはまた違った難しさだ。 「そうは言ってもね響子さん、人の背中を洗うのってまた違った感じなんだって。その……響子さんはないの? お父さんやお母さんの背中を洗ったことって?」 「母が生きていた頃に何度か……。遠い昔のことだけど」 声のトーンが若干低めになるのだった。 しまった――。つい、お父さんの学園長に関わる記憶を掘り起こしてしまったか。 「……前の方はどうする? 響子さんの方で洗う?」 「そうするわ。あなたはお風呂に入って待っていて」 「うん。わかった」 話題を逸らすようにして響子さんにスポンジを渡したらシャワーで手に付いたボディーソープの泡を軽くすすぐ。 後は湯船に浸かりながらバスタブの縁に頬杖を付いて、響子さんの身体を洗う姿を眺めていた。 「……そんなにジロジロ見ないの」 「あっ、ごめん……」 ジト目で睨まれたので、湯船に漂うにバスルームの天井を眺めて待つことにした。 いつもの見慣れた自室のバスルームとは異なる天井。 ホテルの割と高めな部屋なだけあって広々としたバスルームだ。 「……大丈夫? 湯あたりしてない?」 「うん。平気」 身体を洗い終わった響子さんがそんな遣り取りをしながらバスタブに入ってくる。 人二人が入っても十分なスペースがあるにも関わらず、響子さんは僕の身体を座椅子代わりにして湯船に浸かってくる。 僕も彼女のお腹周りに腕を回してキュッと抱きしめる。 「……一年ってあっという間ね」 「……そうだね。仕事に追われていたら、あっという間にキミの誕生日だ」 「学生時代の過ごした一年と同じだけの時間なのに……。不思議よね」 「あの頃みたいにいっぱい写真を撮って、いろんな記録を残すことはもうできないけど……。僕らの胸の中にしっかりと生き続けるんだ」 「でも、年月と共にその記憶も薄れていくんでしょうね……」 「……そうかもしれない。でもね、響子さん」 お腹に回していた手を響子さんの手と重ねる。 「この一年、僕はキミと一緒に過ごした日々は素敵な思い出になったよ? 仕事でも、プライベートでも支えあって充実したな」 「……私も。こうして一年を振り返るとあなたと過ごした日々がかけがえのないものに感じるの」 「来年の今頃もこうしていられるといいな。……そうだ! 来年はどこかの温泉旅館に泊まろうよ?」 「フフッ、それは素敵ね。あなたと過ごせるなら来年も楽しみよ」 二人して戯れるように頬摺りしたらチュッ、と軽く唇にキスをする。 すると響子さんが"バスタブの縁に座ってもらえる――?"と頼んでくるので、言われるがままに湯船から上がりバスタブの縁に腰掛ける。 そして僕の股間に自分の顔を寄せてきたので"こういうの、僕がする番だと思うんだけど――?""あなたばかりにしてもらうのは気が引けるの。甘んじて受けて――?" しゅにしゅにしゅに――。 そんな遣り取りをしながら僕のペニスを緩やかに扱いてくる。 いつもの手袋の滑らかな生地の感触とは異なる、地肌のカサカサした感触。 響子さんの手と認識するだけで鎌首をもたげ、徐々にいきり立つ。 「んっ……。んむっ、んっ、んんっ」 先端に口づけを落とすとチュッ、と音を立てて鈴口を吸い上げられる。 片手で包んで緩急をつけて扱きながら、舌先で先端を弄られる。 次に睾丸を揉みながら舌で幹全体に唾液を塗り広げてくる。 「んっ、あっ……!」 幾分上擦った声で反応すると、響子さんが僕を上目使いで見つめてくる。 男性のデリケートな部分を刺激したけど、痛かったのかと言いたそうな目――。 僕は額に薄っすらと汗を浮かべながら彼女の髪を優しく撫でる。 「……大丈夫。続けて」 愛撫の再開を促すと、蕩けたアイスキャンディを舐めるように下から一気に舐め上げ、カリの部分を咥えこんで甘く噛んでくる。 苦しさや咽びそうな表情を一切見せず、僕のを深く飲み込む。 唇を窄め、舌を這わせて、強く吸われながら何度も頭を上下されると忽ち射精欲が押し上げてくる。 「響子さん、そろそろ……!」 射精るから、離れて――。 僕の中断を求める声に聞く耳を持たず、ペースを崩さずに愛撫を続ける響子さん。 そして――。 ドピュルッ、ヒクンッ、ビクッ――。 「んっ! んん、んふっ……」 「くう、あぁ、うぅ……!」 僕の呻きとともに、すべてが響子さんの咥内を白く汚していく。 「はぁ、はぁ、んぅ、ぅうっ、あぁっ……!」 尿道に残ったものを優しく吸い上げて、ようやく屹立から口を離してくれた。 零さないように口を押さえているのでシャワーホースを渡し口をすすぐ様に促すと首を横に振る響子さん。 「うっ……」 すると眼が回ったような感覚に襲われ、足元がふらつく。 そして成す術もなく、膝から崩れるようにして僕は意識を手放すのだった――。 ――――― 気が付くと浴室の天井ではなく、ベッドの上の天井が目に映った。 入浴した時とは異なり、裸ではなくバスローブを羽織っていた。 確か、クローゼットの中にあった備え付けのバスローブだ。 「……大丈夫?」 そんな自分の置かれた状況をボンヤリと考えていたら右の方から僕を呼ぶ声がした。 ベッドの縁に座って、僕と同じようにバスローブ姿の響子さんだ。 ぼんやりとした頭で受け答えをする。 「……何とか」 「ごめんなさい。あなたもお酒を飲んでいたのに湯あたりさせてしまって……」 「気にしないで。気持ち良すぎてオーバーヒートしちゃっただけだよ、ハハッ……」 「だからコレ、飲んで」 すると僕にミネラルウォーターのペットボトルを差し出してくる。 それを黙って受け取り、額に当ててみる。ヒンヤリして気持ちいいな――。 冷蔵庫で冷えたボトルを冷えピタ代わりにして火照った体を冷やす。 その間に隣の響子さんは立ち上がり、僕らが着ていた衣服をハンガーに掛けてクローゼットに仕舞っていた。 その姿を見て自嘲気味につぶやいてしまう。 「こういうの、今日くらい僕がやるべきことなのに……ごめん」 「いいの。謝らないで、誠くん」 「肝心なところで失敗しちゃって。カッコ悪いよね」 「そのカッコ悪いところも含めて私の好きな誠くんなの。ここまで言ってもわからない?」 そう言って子供をあやす母親のように僕の髪を撫でてくる響子さん。 その感触が気持ちよかったので、目を閉じて感触を研ぎ澄ませる。 お風呂に入っていたときとは違って、いつものように手袋を身に付けた僕にとってはお馴染みの感触――。 「今日はどうする? このまま休んでいく?」 「ぅぅん、ちゃんと響子さんを抱きたい。だからもうちょっとだけ待って欲しいんだ、そうすれば体の調子も戻るし」 「誠くん……」 「お願い、抱かせて」 ゆっくりと起き上がり、ボトルの蓋を開けて口に含む。 冷たい水で喉を潤して少しでも早くコンディションを整える。 すると響子さんが手に持っていたボトルをそっと奪い、サイドボードの上に置いた。 そして僕の両肩を掴んだらゆっくりと押し倒された。 「わかったわ。あなたの調子が戻るまで私がするからじっとしてて」 「んむぅ……んっ、んんっ、んんぅ……」 お風呂の時に僕が出したのを口にしたにも関わらず、響子さんのキスは苦味もなく極上の甘露のように感じた。 そんなことをぼんやりと考えているとバスローブの腰紐が解かれ、胸元がはだける。 「あぅ、うぅ、あぁ……。うっ、くっ、はあっ、はあっ……。ああっ!」 首筋、鎖骨、乳首と順番にキスの雨を降らされたら脇腹からおへそまでツーッと一気に舌を這わされた。 ちょぷ、ちょぷ、ぷちゅ、ちょぷ、ちうっ、ちうぅ、ちうーっ。 袖から脱がせるようにして肩、二の腕、肘、手首、掌、甲、指先と右腕も隈なくキスをされる。 こういった全身リップ、僕がやりたかったんだけどな――。 そんなことを思っていると背中に回りこまれてしまった。 「あぁっ!」 普段、手でも滅多に触れない肩胛骨の間にキスをされて思わず声が出てしまう。 首筋を反らした頃には時すでに遅し。後ろから覗き込むと微笑んでいる響子さんと目が合った。 "ここもあなたの性感帯ね――"と言っているような気がして思わず顔を真っ赤にしてしまう。 なすがままって、結構恥ずかしいな――。 左腕の袖も脱がされ裸になったら、腰の窪みの辺りまで唇は進んでいく。 シーツを掴みながら響子さんの愛撫に耐える。 このまま両足の方もたっぷり舐められるのかな――って思っていると後ろから抱きしめられた。 「……ふーっ」 「っ!?」 突然、耳に息を吹きかけられる。 その隙を突かれるとヌルリとした舌が入り、筋を弄る。 一度、二度と往復させるたびに、頭を振っていやいやする。 でも響子さんはやめてくれない。 そして耳たぶを甘噛みし、そのまま舌で口の中に入った耳を嬲る。 十分に右の耳を味わったら次は左の耳。 その後は項を舐めて、背中越しに僕の乳首を抓む。 ピンと立っている僕の乳首を。 「んっ、んんっ、んぅ、うぅんっ!」 羽で撫でるようにそっと、優しく撫でられる。 やんわりとした甘い刺激。 とろとろに溶けそうになるような微弱な官能の火。 指の腹で肌を撫で、乳首をこすり、僕のカラダが震える箇所を的確に探し出していく。 僕が響子さんのおっぱいを弄っている時も、こんな風に感じてくれているのかな――? 「響子さん、お願い……!」 「えぇ、わかったわ」 疼きに耐えられず、こちらからおねだりしてしまう。 間髪置かず、幹に軽い圧迫と暖かさが伝わりやんわりと包まれた。 淫らな音を立てながら根元から亀頭へ、そしてその逆へとゆっくりこすり上げていく。 「ぅぁ……はぁ、はぁ、はぁ……!」 僕のカラダに負担を掛けないようにってわかっているけれど――。 呻き声が抑えきれずに洩れた。 意識せずに腰が動いてしまう。 僕は敏感になっているカラダを動かしながら首をねじらせ、響子さんに口づけする。 お互いの吐息がかかりあい、さらに高ぶっていく。 唇が吸われ、舌が吸われ絡み合う。 僕の舌をなぞるように、響子さんの舌が蠢く。 じゅぶ、ちゅ、ちゅう、ちうう、びちゅ、ちゅう、ちゅぷ――。 いやらしい音がホテルの一室に響き渡る。 舌を差し入れ、唇を、舌を、唾液を貪り合う行為。 唾液が唇から漏れて、顎を伝いポタポタと落ちてゆっくりと離れる。 「……しよっか」 「……えぇ」 阿吽の呼吸で肯き、スキンを付けるために起き上がろうとするとやんわりと止められる。 彼女の意図がわかったので横になって待つことにした。 僕が枕元に用意していたスキンを取り出し、ビニールの包装を破る。 口にスキンを含ませたら、僕の先端に口付け喉まで飲み込むように咥えこむ。 「うっ、んっ……」 スキンの巻かれた皮膜がなくなるとゆっくりと顔を離して僕の方は準備万端になった。 彼女の方もバスローブを脱いで、やっと僕がご奉仕する番だと響子さんの陰部に手を伸ばそうとしたらその手首を掴まれた。 導かれるように彼女の淵を指で触ると、薄白い蜜液が真下にツーと細い糸となって滴るくらいに潤み尽くしていた。 「あなたの悶える姿を見て、私も疼いてしまったの。……軽蔑した?」 「うぅん。そんなことない」 「ありがとう。私が動くから、じっとしてて……。はぁ……っ、うぅんっ」 もどかしげにカラダを震わせながら響子さんは場所を合わし、一気に腰を下ろした。 ぶちゅっと湿った音がして、下腹部がやわやわと包まれる。 「あっ、はぁ……あ、熱い……!」 「うっ……くっ」 目元を潤ませ、うっとりと満足げなため息をもらす彼女の姿にドキリとした。 目をとろんとさせて響子さんが上半身を傾けてくる。 じっと見つめると唇が近づいてくる。 キスをねだっていた。 「はぅん……んっ、んむ、んふぅ、はふぅ」 「んふっ、んっ、ん、んむっ」 僕も顔を上げて唇を合わせた。 直ぐに舌を差し入れ、同じく僕の口腔にやってきた響子さんと絡み合い互いを舌先で刺激しあう。 「……動くわね」 響子さんは僕の耳元でそう囁くと、肩に掛けた指を支えにしてゆっくりとカラダを上下させ始めた。 湿った粘膜が絡み合い、溢れ出した蜜が立てる特有の水音と共に僕と響子さんのカラダが繋がる。 「あぅっ、あぅっ、あぅぅっ! んっく、ぅうぁあっ!」 「は……あ、ふぅ、くっ! はぁ……!」 背筋に甘い電撃が疾る。 脳髄までもが熱くいやらしいとろみにぐずくずにとけていく。 粘膜がぴったりと隙間なく張り付き、暖かい。 そして今度はゆっくりと引き抜いてくる。 絡みつきピッタリと張り付いた粘膜は、僕のをまるで舐め回しているようだ。 飲み込まれているのか、吐き出されているのかそれさえもわからなくなる。 彼女に翻弄されているだけだった。 「はあ、はあっ、はああっ……! ねぇ、き、気持ちいい?」 掠れて上擦った声で、囁くように訊ねる響子さん。 僕が声もなくうなずくと、響子さんはうっとりと満足げに顔をほころばせた。 翻弄されっぱなしもまずいと思い、僕は腰の後ろに回していた腕を響子さんのお尻の下に添えて腰を突き上げるように動かし始めた。 「あっ、はぁっ、ああっ、はっ、あぁんっ! あっ、はっ、はぁっ、ああっ!」 響子さんは慌てたように僕の首の後ろに腕を回してしがみつき、澄んだ嬌声を上げ始めた。 やがて焦点の合わない瞳で僕を見つめ、途切れ途切れに囁いてくる。 「はっ、あっ、あぁっ……あっ、あっあっ! わっ、わたし……っ、も、もうぅ……!」 「うん、好きなときに、イッて、いいよ……!」 穏やかに笑い返して、腕と腰を動かしながら響子さんのカラダを揺さぶる。 すぐに大きく身悶えていた彼女のカラダがピンと突っ張り、動きを止めた。 僕を包んでいた柔肉が、ぎゅっと収縮する。 「んんっ、んぁあぁーっ! ……ふぁっ、はぅっ、ぁふぅっ、はふっ……」 「はっ、あっ、はぁっ、あっ、あっ、はぁ……」 僕のカラダをクッション代わりに肩を上下にしながら呼吸を整える響子さん。 汗ばんだ背中を撫でながら僕も一緒に呼吸を整える。 ――うん、もう大丈夫だ。 「響子さんっ」 名前を呼びながら、彼女の背中とお尻を引き寄せ抱き締める。 「あっ、だめっ……んんっ」 ぶるぶると肩を震わせながら響子さんは顔を苦悶と悦楽に歪ませ、じたばたと肢体を跳ねさせた。 抵抗する彼女のカラダをギュッと抱きしめながらカラダを90度横に転がす。 「キャッ!?」 もう一回90度転がったら絡まった脚を解いて、響子さんに覆い被さった体勢になる。 「あっ、あの、誠くん……?」 「いっぱい響子さんに気持ちよくさせてもらったから、今度は僕の番ってことで……」 波打つ髪の毛を枕にして、怯えた表情を浮かべる響子さん。 チュッとおでこに軽くキスをすると、アメジストの瞳が柔らかく和みうっとりと細められた。 「動くよ……」 「えぇ、来て……! はぅっ、ふぅっ、ぅふぅっ、うぅっ、んっ、んふっ、ふぅっ!」 イッたばかりの響子さんに負担を掛け過ぎないよう、緩やかに動く。 蜜壷の浅い場所を緩慢な動作で何度も往復する。 「……んっ、んふぅっ、ふぅんっ、んんっ、ふぅ、はぁ、ふぅぅ……」 響子さんに体重を掛けないようにしっかり腕でカラダを支えながらゆっくり腰を振る。 そんな僕の気遣いを察したのか、彼女は幸せそうに微笑みながら腕に背中を回し、腰に両足を絡めてくる。 「んっ……ねえ、誠くん。もう大丈夫だから……大きく動いて」 「大丈夫? 無理してない……?」 「平気……。だから、ね?」 「わかった」 響子さんがゆるゆるとかぶりを振って、にっこりと微笑みを浮かべる。 お酒が入っているから年相応の笑みを浮かべるのかな――って思いながら僕はうなずき返す。 そして響子さんの頭を軽く撫でてから、僕は腰を大きく動かし始めた。 「んぁっ、あっ、はぁっ、あぁっ……! あ、あっ、ああっ、ああんっ!」 「はあっ、あっ! ああっ、ああっ、あああっ……!」 響子さんの汗ばんだ太ももが痙攣しながら強張り、激しく上下に振れる。 恍惚とした表情を浮かべ、瞳の端に歓喜の涙を零しながら顔を上げて僕を見つめてきた。 その姿に思わず心臓が鷲掴みされたような衝撃が走る。 「ごめん、そろそろ……!」 せん妄状態になっていても、響子さんはすぐに僕の言いたいことを察してこっくりとうなずいた。 頭の中がパチパチとスパークする。 じんじんとした熱いとろみが体の奥底からこんこんと湧き上がってくる。 クライマックスは目前だった――。 「あぁ、あっ、あっ、あっ、ああぁーーっ!」 「うっ! くっ……!」 かん高い叫び声をあげながら、響子さんは全身をわななかせた。 彼女の長い手足が、強張りながら突っ張る。 響子さんが絶頂を向かえるのと同時に、僕のものを包み込んでいた柔肉が、ねじ切るように収縮する。 喉の奥で呻きながら、響子さんの深奥に精を迸らせたのだった――。 「あぁっ、あぅっ! ……んっ、んんっ、まこと、くん……」 「うん、きょうこさん……。お疲れさま……」 響子さんは大きくカラダを揺すり、うわ言のように呟いて全身を弛緩させた。 労いの言葉を掛けるとお互いの汗に塗れる事を厭わず、二人してクスクスと笑うのだった――。 ――――― 設定した目覚ましのアラームより早い時間に目が覚めた。 隣には穏やかに眠る彼女の姿。 ここ最近は夢見が悪いって相談されたことがあったけど、悪夢に魘されている様子はなく安堵の溜め息が漏れた。 「幸せって、こういうことを言うのかな……?」 頬杖を付きながら響子さんの寝顔を見て、なんとなくつぶやいてみる。 希望と絶望。 幸運と不運。 コインの裏表のようにワンセットとなっている言葉が一瞬、頭を過ぎった。 こんなにも幸せで充実した日々を送っていると、その反動で特大の絶望や不運が押し寄せてくるのでは――。 それは心当たりがないってわけじゃない。 希望ヶ峰学園の入学案内が届いた日だって、その日はとことんツイてなかったし。 不運が不運を呼ぶような≪人生最悪の日≫だった。 「でも、それがなければ響子さんとは出会うことがなかったんだよね……」 イタズラで頬を軽くぷにぷにと突っついてみるが、起きる様子がなかった。 彼女の寝顔を眺めていたらもう一眠りしたくなってくる。 再び横になって、後ろから抱きしめる様にして瞳を閉じる。 そして、心の中で念ずるようにメッセージを伝える。 父さん、母さん、ついでに妹のこまる――。 僕、苗木誠はやっぱり幸運≪しあわせもの≫です。  人類史上最大最悪の絶望的事件によって人類の歴史や地位、財産、名誉、誇りは失われました。 ゼロからの再スタートを響子さんと一緒にしている真っ只中です。 僕らのやるべきことを全て終えたら、彼女と人生を送ることを真剣に考えています。 もしかしたら、苗木家の姓を捨てて婿入りするかもしれません――。 その時はごめんなさい。 それくらい探偵の誇りを大切にする響子さんのことが大好きで、覚悟はあります。 全ては希望溢れる未来のために――。 そんな抽象的な目的や信念じゃなく、響子さんと一緒に歩む未来のために僕は頑張ります。 これからも僕らを陰ながら応援してください――。 そんなことを考えていると忽ち睡魔が押し寄せてくる。 それに抗うことなく、響子さんの体温に包まれながら僕は二度寝をした。 ――響子さんの誕生日を祝った。 END

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: