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「ねぇ、もっと足、開いて……?」 「……もう」 カーテンの隙間から差し込む曇り空を明かり代わりにして響子さんの顔を伺う。 小さく咎めるような声。けれど拒んではいないと僕は推理した。 掛け布団の中から自分の右手を出して中指と人差し指を口に含む。 唾液で潤いを与えた指先を再び掛け布団の中に潜らせ、彼女の秘所へと伸ばす。 「んんっ! 誠くん……!」 指の腹が響子さんの花園に触れると、トロトロの蜂蜜のような愛液が伝ってくる。 手探りの状態でゆっくりと優しく彼女の奥を掻き回せば目の前の響子さんの唇から熱い息遣いが切なそうに漏れた。 僕はそっと微笑みながら、彼女の快感に酔う姿を目で愉しむ。 ――この時季は布団から出るのも億劫になる。 何だか布団にオカルト的な魔力でも備わるのだろうか。 僕らもその魔力に抗えない人の一部で、昨晩あんなに愛し合ったにも関わらず今朝も布団の温もりに浸りながら睦み合っていた。 今日の夜から僕は当直勤務だというのに――。 「あなたばっかり、ずるい……」 「んっ!? くっ、んぁっ、ん、んぅう……」 彼女の中を掻き回していた指を引き抜いて今度は濡れた指先を彼女の敏感な真珠に滑らす。 響子さんの身体がその刺激に跳ね上がると同時に、僕の下腹部も包まれるような刺激を受けた。 僕のペニスが探り当てられ優しく握りこまれた。 ゆっくりと幹をしごきつつ、もう片方の掌で睾丸もやわやわと揉みしだかれる。 「はあっ、はあっ、はあっ……きょ、きょうこさん、響子さんっ……」 「はふ、はふ、はふ、ん、まことくん……んんっ! 誠くんっ……」 二人してペッティングに耽溺するまま名前を呼び合って、潤んだ眼差しで見つめ合った。 その姿に愛おしさを覚え、せつなく胸を詰まらせてしまう。 「んっ、んふっ……んぁ、ん、んんっ……んぅう」 「んぅ……ん、んんっ……んふっ、ん、んん」 けれどペッティングの手を休めることなく、先を争うようにして唇を重ね合う。 そのまま貪りつくように何度も何度もついばみ合い、やがてぴったりと吸い付き合ってキスの悦びに浸る。 最後にひとつ、ふたつ、みっつ、とちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と甘やかな水音をベッドいっぱいに満たして唇を離す。 「ねぇ、響子さん」 「誠くん」 僕らはお互いの愛しい人の名前を呼び合ったら阿吽の呼吸で頷いた。 僕はサイドボードからこういう時のために、と昨夜残しておいた最後のスキンを取り出す。 掛け布団を捲って逸る気持ちを抑えながらペニスにスキンを装着させる。 そして掛け布団と一緒に響子さんへと覆いかぶさる。 「……お待たせ、寒かった?」 「いいえ。……この体勢でするの?」 「うん。寒くなってきているからさ、風邪引かないようにってことで」 「そうね……。一緒に温まりましょう?」 感覚で響子さんの秘裂を探ろうとしていると、彼女の手が導いてくれる。 僕はそれに従うように身体を滑り込ませ、ゆっくりと深く沈める。 「はうっ……はぁぁっ」 「くっ……んんっ」 滑らかな肌と肌の間で溢れる愛液が湿った音を立てる。 軋むように少しずつ重なった場所を深め、一分の隙も無く響子さんに包まれようとしていた。 そして差し入れたモノがコツンと軽く押し返されるような感触。 僕の先端が響子さんの奥底に触れた。 「くぅっ……あぁっ」 「はぁ、気持ちいい……。響子さん、愛してるよ」 「……私も」 互いの五指を絡ながら密着した先端を更に強く押しつけると入り口で恥骨と恥骨がぶつかった。 響子さんの鼓動まで伝わってくるような一体感。 男女にとっての至上のスキンシップを満喫できた幸福感。 僕らは幸せな溜め息を吐いてその感動に浸る。 「動くよ」 密着させていた腰を僅かに浮かして、静かに引き抜く。 じゅくじゅくと擦れ合う肌と滴る液体が音を立てた。 半ばまで引いて、再び突き立てる。 「あんっ」 細やかな肉襞が一部の隙も無く僕のモノを押し包む。 押しても引いても、細波の様な滑らかなうねりが滾る肉欲の棹に絡みつくように震えた。 その突き当たった先端を、更に押し込むように重ねた身体に重みを加える。 「ん、んっ、んんっ……んっ、んふっ……ん、んぅう」 「んぅ、んぅ、ん……ん、んぅ……んんっ、ん、んん」 ちゅぴ、ちゅぴ、ちゅぴ、とささやかな水音を立てながら二人仲良く代わりばんこにキスをする。 「ひっ、ひぁっ……う、くっ、んっ、んぅう……」 「はあっ、はあっ、はあっ……気持ちいい、き、気持ちいいよっ、響子さんっ……」 「えぇ……わ、わたしも……わたしも、気持ちいい……」 布団とベッドの間で肌を打ち付け合う音が響く。 溢れた雫が滴る湿った音と、僕の動きに合わせて上がる響子さんの艶声。 「んぁ、んぅ、んぅう……ねえ、誠くん……。浅い、ところも、お願い……」 「ん……。ここ? こんな感じに?」 「あんっ……! そ、そこ…そこ、好きぃ……んぁ、あんっ! い、いいっ、いいのっ……!」 「んんっ! ちょ、響子さんっ、締め付けすぎだよっ……!」 浅いところ、つまり膣口から数センチほど入り込んだ辺り。 響子さんの弱点とも言うべきGスポットを意識して突くと、背に腕を廻され高い吐息を奏でる白い喉が反り返る。 その嬌声に合わせて膣口が力任せにペニスを締め付けてくるものだから、思わず声を上擦らせてうめいてしまう。 「やっ、ああっ……あんっ!」 「ああっ……んんっ!」 再び深く突き入れれば先端が行き止まりへと突き当たる。 引き抜く時には幾重にも綾織られた肉襞に扱かれる。 嬌声なのか悲鳴なのか、判別すら付かない短い叫びが間断無く上がる。 もっと乱れた姿を見たい。 もっと憐れな声を聞きたい。 その一心で僕は突き立てる動きをより一層速めていく。 「はあっ、はあっ、はあっ……響子さん、イキそう……ボク、イキそうっ……」 「あん、あん、んぁ……ん、いいのよ、イッて……まことくんの、好きな、ときに……」 やがてストロークの長い大胆なピストン運動も膣の深奥部だけで密やかに揺れ動くのみとなってしまう。 それぞれの下肢を打ち合うようにぴったりと同調していった。 僕の突き込みと響子さんの跳ね上げに合わせて、結合の深奥では亀頭と子宮口が何度もぶつかり合って快感を生み出す。 「んぁ、ああっ! きょうこさんっ! イクよっ? いっ、イッていいっ……?」 「うん、きて、きてぇ……そっ、そのままっ、奥の方、したままっ……お願いっ……!」 「イクよっ、イクよっ、きょうこさんっ……! ああっ、イクっ、イク、イクッ……!」 「きてっ! きてきてっ……! お願い、奥がいいの、奥でっ、奥でぇっ……!」 僕らは互いを目一杯の力で抱き締めて叫ぶ。 抗しきれない愛欲にどこまでも飲み込まれて絶頂に登り詰める。 「んんっ!? んんっ!! んんんんっ……!」 「んっ!! んぁ!! んっ……んぅうっ……!」 突如、左の肩に急な痛みが走る。 僕は響子さんの膣内で思い切りよく精を放ちながら原因を探る。 すると響子さんが僕の肩口を噛むようにして、ぼっと火が出る勢いで顔面を紅潮させてうめいていた。 甘く噛みながらも震え、小刻みに快楽の色を示す彼女のカラダ――。 最後の極みに昇り詰めた後には襲いくる、強烈な脱力感。 「んっ、響子さん……。ちょっと、痛いかな……?」 「あっ……ごめんなさい」 「んっ……! 唾を付ければ治るからって、これはちょっと舐め過ぎだよ、響子さん……!」 顔を起こし、見詰め合う。 絶頂の余韻に浸りながら飽きることのない抱擁と口付けを僕らは交わし続けたのだった――。 ――――― 後回しにしていた掃除と洗濯をしながら、ふと思う。 洗面台にあるコップに二本の歯ブラシ。 クローゼットにある響子さんの予備のスーツとブラウス。 響子さんの下着を洗濯ネットに入れて、中性洗剤で単独洗いするのだってそう。 「何だか僕の家に入り浸っているみたいだ……」 「ちょっと、人聞きが悪いわね」 「うわっ!? ご、ごめん……」 後ろを振り返ると、僕が前に着ていたモスグリーンのパーカーを部屋着にしている響子さんが立っていた。 右手にはハンディモップが握られている。 「掃除の方は済ませておいたから」 「あ、ありがとう。ところで、響子さん……」 「なに……?」 「この一ヶ月、僕の家で寝泊りしているけどさ……響子さんの家って大丈夫なの? 空き巣に入られたりしてないよね?」 「ねぇ、誠くん……あなたに駆け引きなんて似合わないわ。遠回しに言うよりも、正面から言ってみたら?」 ジト目で僕を睨んでくる。 「その方が、バカ正直なあなたらしい……。それに、真っ直ぐに言われた方が心に響く事もある……。それはあなただって知っているわよね」 「うん……。そうだね」 軽く深呼吸してみる。 「ねぇ、響子さん。こ、これって……同棲みたいなものだよね?」 「……そうね。け、けれど利害関係は一致しているでしょう? 生活の負担も分担して仕事の両立も可能にするなら……ずっと傍にいる方がいいはず」 同棲――。 その言葉を意識したらお互い顔を真っ赤になってしまう。 さっきまで、あんなにエッチなことをしていた僕らなのに――。 「ねぇ、何を黙っているの? 返事を聞かせてくれないかしら」 「うん。これからもよろしく、響子さん」 「……ええ」 右手を差し出して、しっかりと手袋に包まれた響子さんの手を握った。 ――響子さんと同棲していたことに気づいた。 END

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