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霧切さんは自室のドアを開けると、様子をうかがうように廊下を見渡した。誰にも見咎められないように、決して感付かれないように。 その姿は盗人のように後ろめたさに満ちており、普段の堂々とした振る舞いとは食い違っていた。 霧切さんは今日もオナニーをする。それも普通の自慰では駄目で、心の底から満足できる自慰でなければ何の意味も無かった。 学園のどこか、見つかるか見つからないかギリギリの場所、そこを舞台にして自分の体を満足させたい。一種の露出願望、それが霧切さんの性的嗜好だった。 他人につけ込まれないように喜怒哀楽を封じ込め、無表情を貫きそれを良しとする。そんな霧切さんの行動が、歪んだ形で性欲に反映されたのであった。 仮面を剥がされ、乱れる心を剥き出しに晒されてしまったら、どうなってしまうのだろう。軽蔑か、あるいは嘲笑か。 恥ずかしさで体が震え、冷たい喪失感が体の中を蹂躙していくはずだ。 見つかれば、なにもかもが滅茶苦茶になってしまう。想像するだけで、子宮の奥が焼けた鉄のように熱くなる。 完璧に理性的に振る舞う霧切さんと、鏡合わせになったような欲求。それは自分の破壊に通じる、マゾヒスティックな願望であった。 ただし、欲求があるとはいっても、それを追求するかは別問題である。特に露出願望というものは、社会的な危険と隣合わせなのだ。 盛るなら自室で済ませればいい、性的満足のために危険は犯せない――普通の女子ならばそのような当たり前の理屈で思いとどまるところだ。 「仕方ないのよ……」 仕方ない。それは道理であり、筋の通った理屈でもあり、性欲を追求することを許す魔法の呪文でもあった。 そして、彼女の自慰には自己満足以上の「意味」がある。オナニーをしなければ冷静な自分を保てないのだ。 人間の内面には理性と感情が同居している。ロゴスとパトス、二つの要因の偶発的なからみ合いで、行動や言動が左右される。 人は元来、理性を徹底出来る生き物ではないのだ。平均的な高校生より理知的な思考回路を持つ霧切さんだからこそ、そんな論理の限界をも理解している。 そして人間の感情的側面を支配するのが食欲や睡眠欲等の肉体的欲求、そして最もコントロールが難しいのが性欲である。 食に溺れ地位を失う者は少ないが、性欲に基づく愛、そして憎悪で自他共に崩壊する人間は後を絶たない。 殺人事件の大半は、密接な関係の中から生まれ落ちている――赤子のようなものだ。 それでも、あくまで理性でつま先から表情までの肉体を支配するというのなら、感情が暴れまわる要因を吐き出すしか無い。 霧切さんは、普通の女子高生と比べて性欲が強いということを、持ち前の分析能力ゆえに自覚してしまった。 彼女にとってのオナニーは、暴れ馬のような性欲飼い慣らすための、不可欠な手段なのであった。 学生同士が殺しあう狂った箱庭。そんな環境で感情に左右されていれば、何もかも上手くいかないはずだ。 霧切さんは自分の体のことを誰よりも深く把握している。徹頭徹尾冷静に振る舞うためにも、毎日二回のオナニーは必須。 霧切響子にとってのオナニーは、大神さくらのプロテインに匹敵するぐらい、欠かせない重要な存在なのであった。 だから、仕方ない。今の私は冷静沈着な霧切響子じゃない、何もかもを剥き出しにしても、とても人には見せられない乱れ方をしても「仕方ない」のだ。 犯罪スレスレの露出オナニーをしてしまっても、それは「仕方ない」ことなのだ。 「ふぅ……」 肉親にも明かさない秘密の内面。霧切さんは、そんな自分の体質に多少の嫌悪を覚えるとともに、喜び楽しむ感情も持ち合わせていた。 これほどオナニーにドはまりしてる自分という屈辱、それでもオナニーは気持ち良くて仕方がないのだ。 恥ずかしがることはない。膨れ上がった欲望を吐き出す、要は排泄のようなものなのだ。そう自己暗示して、心のバランスをとる。 なんにせよ、オナニーさえ済ませれば冷静な自分が戻ってきて、必要なジャッジを論理的に下してくれるだろう。 そして霧切さんは今、早朝の五時という年頃の少女が起きるには早過ぎる時間帯に、一人廊下を早足で歩いていた。 背筋を伸ばし、左右の足を上品に、交互に働かせる。その度に長髪の尾が、右へ左へとしっぽのように揺らめくのである。 革手袋がなされた手は、小さな手提げバッグの取っ手をしっかりと握りしめていた。 氷のように無表情だった。ただ、今の表情は普段の無表情とは違う。すでに感情が漏れだし始めていたのだ。 大半の筋肉は御することができても、反射はそうもいかない。頬には赤みがさし、体温が上がって、汗のつぶが無用にも浮かんでいた。 それは、霧切さんという女子高生特有の、静かな発情表現であった。 膣の形に沿って皺の付いた下着には、涎を垂らしたような染みがすでに生々しくも浮かんでいる。 そして食堂前の広場までやってくると、仁王立ちして、流し目で前方180度を見渡す。そしてそっと振り返り、廊下にも人影がないことを確認した。 「誰もいないわね」 当たり前のことを確認するようにつぶやくと、革手袋をはめた手で、長い髪の毛を涼しげにかきあげる。 倉庫側の廊下の壁に、身を潜めるように背中を預けた。そこは個室の入口からは死角であり、誰かが突然現れても対処できる位置取りである。 冷静な思考はギリギリで許容できる危険を計算していたが、廊下という公共の場で自慰をするという未来は、霧切さんを興奮させた。 震える手でバッグのファスナーを開ける。待てをされていた子犬のように、しかし音をたてないよう細心の注意を払って、 霧切さんはガチガチに固いお気に入りのオモチャを取り出したのだった。 「……ふふっ」 慣れ親しんだ形。大きな二つの瞳から放たれる視線が、性玩具の扇情的なくびれに焼けつくほどに集中する。 20センチのバイブ、一般的なモノよりも少しだけ逞しい。根本の部分から小さいものが枝分かれしており、膣内とともにクリトリスを刺激する。 ネット通販でこっそり購入した中学時代からのパートナーである。初めてもこのバイブレーターに捧げたが、後悔はしていない。 最初に使った時は膣のサイズに合っておらず、多少苦しい体験となったが、体が成長するにつれて膣の穴も広く柔軟になり、 こういう逞しいオモチャでも充分以上の快楽を得られるようになった。 間近で匂いを嗅ぐと、ほんの少しだけ磯の香りがする。自分の膣の匂いが染み付くぐらい、何度も何度も交わった相手なのだ。 生々しい亀頭の形、茎のいぼいぼ、これが性器の細胞一つ一つを丁寧に揉みしだいてくれる。 オモチャを咥えるどころか、性器に当ててすらいない。それなにの霧切さんの下着はじっとりと濡れ、 薄布に包まれた膣は、はしたなく唾液を零しながら男根をねだりひくひくと動き始めていた。 こんな道具に弄ばれる瞬間を、霧切さんの体すべてが待ち望んでいた。唇がひとりでに微笑む。 静かな仕草だが、霧切さんの発情は退っ引きならないほど激しく、思考回路の底でごうごうと燃え上がっていた。 「もう駄目、早く入れないと抑えられなくなる……」 鼻息を荒くしながら下着のゴムに手をかける。手間取りながら腰と足をくねらせる姿はまた官能的だった。 スカートの中で尻が露わになる。布と膣がくちゅりと音を立てて離れる。 粘っこい液が、下着の染みと膣のヒダを名残惜しそうな一本の糸となって結んでいた。 足を上げ、下着を脱ぎ捨てる。濡れた性器が直接外気にあたってひんやりとする。膣までもがスカートの中で露わになる。 霧切さんの膣からは少しだけヒダが出ており、毎日のようにオナニーを繰り返したおかげか、クリは小さいビー玉ぐらいにまで育っている有り様だ。 具と穴を隠し挟む膣の肉も細身の体型のわりには豊富で、男根であれ指であれ、柔らかく締めあげられるだけの体質的素養があった。 性器の作りからして淫乱そのものなのである。月のものが始まったころの慎ましやかな性器とは、もうかけ離れていると霧切さん自身が自覚していた。 こんな姿、誰かに見られたら。破滅をスパイスに霧切さんのオナニーは燃え上がる。 床に落ちた下着、手には太いバイブ、ここにいるのは年頃の学生ばかりだった。 もし誰かが飛び起きて痴態を見咎めれば、もう言い訳はできない。彼女の築き上げてきたイメージは痴態という事実で塗り替えられてしまうだろう。 あの子が、あの人がオナニーしている自分を見たら。そんなあってはならない妄想が、破戒の快楽となって、霧切の快楽中枢をビリビリと刺激する。 そしてようやく、高まったあつあつの股下を、割れ目にそって指が柔らかくなぞった。 「あっ……!」 声を殺したいのに、気持ちよすぎて漏れてしまう。初日は色々なことがありすぎてオナニーも出来なかった。股間から性欲が溢れている。 手袋をしたままの手で、性器の表面に直に触れる。部屋でするよりも数段増幅された性感で、霧切さんは甘いため息をついた。 気持ちいい。オナニーは何回しても気持ちいい。緊張でこわばった全身の筋肉が解きほぐされていくかのよう、そんな爛れた夢心地。 そして手袋越しの手淫は、まるで自分ではない誰かに触れられているように錯覚できて、素手よりも心地よかった。 「ふぅ、んん……」 小陰唇をつねる。膣の肉を開いて、尿道と膣穴の間を指先でこする。クリトリスの周りをなぞりながら、 餅で遊ぶように大きめのクリトリスを揉み上げ続ける。赤い真珠はペニスのように硬くなり、刺激に連動して膣液がこぼれ始める。 最初は規則的だった霧切さんの吐息も、熱が増してゆくにつれ不規則になり、 スタッカートのように跳ね上がったと思えば、うっとりした様子で熱く吐く。 「ん、んぅ、ンッ!? あっ、くあぁぁ……ぁっ!!」 坂を転げ落ちるように淫乱になる。物静かな仮面を剥がして、性を貪る情動的な動物になる。快楽を貪りたいがため、膣の奥を触りやすいがに股になって、 二本三本の指で、じゅぽじゅぽと膣内をかき回すのだ。体がひとりでにビクンビクンと跳ねる。気持ちよさのあまり目元から涙がこぼれていた。 喘ぎ声は出口を求めて体の中で暴れまわる。口を閉じて閉じ込めようとすれば、鼻からだらだらと音が漏れてくるのだ。 「あぅッ、くぅぅ、ん、ふぅ、はぁ、ぁ、あああぁ……!!」 口元がゆるみ、涎がたれる。 「くひィッ、うぅ、あ、あぁぁ、はぁ、はぁ……」 腰がひとりでに動いてしまう。スカートの中の膣はベタベタに濡れ、今も愛液を分泌している。 膣のいたるところが粘ついた液でぬらぬらと光るが、それだけでは満足できないのだろう、膣口がしきりにピクピクと動いている。 草原のような陰毛の、毛先一本一本が濡れ、その先に愛液の粒を実らせる。体温と交わって湯気になる。一度目の絶頂、もうすぐ来る。 まだ、愛しのバイブさえ、使っていないのに――あまりにも早く、絶頂が襲ってくる。 気持ちいい。気持ちいい。気持ちよさで脳みそがスパークして、目の前がチカチカとする。 嬌声はもはや、堤防を破った波のようである。 「ひっ、ひッ、イッ、はうッ、ぅ、ぅぅあっっ!! くぁっ、んあっ!!」 切なく泣くような声をあげる。霧切さんは腰が砕けそうになりながらも、背中の壁だけを頼りに、二足歩行の尊厳を守っている。 革手袋の三本の指が、深々と突き刺さって子宮の入り口にまで到達する。膣はかなり広げられていて、内部全体の快楽神経が摩擦されていた。 バイブを床に取り落とす。このまま絶頂してしまう。バイブを持っていた方の手で口元を覆い、本能の発情声を物理的に抑制する。 口元を抑えないと、興奮のあまり叫んでしまいそうだったからだ。 「ん、ん、ふッ、んんッ! んく、ん、ンンんんん゛ッッ、ンウう゛ううううぅぅーーーーーッッ!!」 ふとももがビクビクと震える。尿道口から透明な液体がパシパシと音を立てて吹き出される、目をつむった夢の中で、霧切さんは鋭い絶頂にみまわれた。 性器から全身に快楽の情報が伝達される。全身が瞬間的に敏感になって、快楽の汗が溢れてゆく。喉を通るは気持ちよさの吐息。 膣と革手袋は愛液でぐっしょりと湿っていた。そして床にも失禁したかのような快楽の染みが残されていた。 ふとももも汗やら膣液やらでべったりで、霧切さんの乱れ方がどれだけ尋常ではなかったか、論より証拠とはっきりと表している。 「ふぅ、ふぅ、はぁ、ハァ、あぁぁー……」 余韻の声を漏らす。霧切さんの顔には赤く染まり、絶頂からくる直接的な快楽の波に、まだ身を任せていた。 「はぁ、はぁ……」 呼吸がだんだんと落ち着いてゆく。いつもの冷静な霧切さんに戻ろうとする。 一度オナニーは終えた、普通の女子ならこれでもう満足のはずだ。だが、普段の抑圧が強いと、爆発した時の欲望はすさまじいものだ。 「もう一度……」 霧切さんはもう、次の一回のことで頭がいっぱいだった。なにせまだ、愛用のバイブを使用していないのだ。 昨日は色々なことがありすぎて、オナニー自体一日あけてのご無沙汰であった。あと一回、それぐらいしないと霧切さんの欲情は収まらない。 「もう一回だけ……」 これは「仕方ない」ことだ。オナニーで性欲を発散し、冷静な自分を守ることが、身を守ることにも繋がる。 そして冷静に振る舞って他者の動向に気を配るならば、希望ヶ峰学園という死地を平穏に保つことも出来る。だから、もう一回自慰にふけっても良い。 20センチのバイブを床に立てる。霧切さんは動物のように両手を床についてしゃがみ、天へそりたつバイブにまたがる。 バイブの亀頭が霧切さんのはみ出た小陰唇を撫でる。すると一回目の愛液がだらりとこぼれ、バイブの先をぬらぬらと濡らすのだ。 霧切さんの尻が踊り、細めの陰毛で草原のようになった膣が、粘液の音をたてながら、バイブの亀頭と何度もキスをする。 腰を落とすために位置を調整しているのだろうが、仮に第三者が見たとすれば、性器で雄を誘う雌のダンスにしか見えないだろう。 そしてようやく、ちょうどいい位置でバイブが割れ目にあてがわれた。このまま腰を落とせばズブズブと飲み込むはずだ。 「ふぅ、ふぅ、ぁ、ああ、あ゛ああ……!」 まずは挨拶程度に亀頭だけ。すでにどろどろになっている霧切さんの性器は、多少の太さは許容する。するすると入っていく。 真ん中まで咥える。茎のイボイボが膣の中のひだひだに擦れて、その一箇所一箇所から小さく弾けるような快楽が生まれる。 そしてスムーズに根本まで飲み込んでいった。亀頭は子宮口にぐりぐりと押し付けられており、 先程よりも深く、全てを満たすような快楽が霧切さんの脳内を塗りつぶしていった。 「はあっ、ぁっ、ああぁッ!」 セックスの経験はない。しかしこの感覚は、きっとセックスよりも素晴らしい。 霧切さんは口を半開きにして涎を垂らしながら、バイブの根本を掴んで、膣をいたぶるほどに出し入れを繰り返す。 バイブが霧切さんの奥に突き刺さるたびに、舌のこぼれそうな口からは、いやらしい声が聞こえてくる。ここは学園の廊下だ。すぐそばで皆が眠っている。 こんな所、誰かに見られたら。 希望ヶ峰学園の生徒個室は、しっかりとした防音工事がなされているため、個室の中まで喘ぎ声が聞こえてしまうことはない。 けれど、もし、誰かが起きだして、個室のドアを開けたなら、乱れるような淫靡な声に誰しもが耳を疑うだろう。 もっとも、そんなことが起こらないように、わざわざ早朝に起きてオナニーをしているのだが。 ありうる未来、そのわずかな可能性が霧切さんを燃え上がらせる。 希望ヶ峰学園の同級生たちが、好機と軽蔑の目で霧切さんを見下ろす。衆目に晒されても、バイブオナニーをやめない。 霧切さんってそんな人だったんだ。幻滅しましたわ。変態なんじゃねーの。こんな恥ずかしいこと、もうやめてよぉ。 空想の奥底から幻聴が聞こえてくる。霧切さんの膣がバイブに吸い付いて離そうとしない。 「はああッ、あッ、あぁっっ!! くぁ、はぁ、あぁぁ、あっ、んああああ゛ッ!!」 小さな快楽の波、大きな快楽の波、交互に打ち寄せて、重なりあったり打ち消し合ったり。 それでも膣肉のこすれる感覚は、霧切さんをここではないどこかへと引きずりあげる強さをそなえていた。 差し込む、引きずり出す。するとバイブは愛液まみれで、汁は床にびちゃびちゃとこぼれてゆく。奥に差し込む、潮を吹く。 クリトリスはパンパンで、バイブの枝分かれした部分が擦れるたびに、悲鳴に近い泣き声があがった。 霧切さんはもう、おまんこ以外のことを考えられない。そこにいるのは理知的な霧切さんとは全く逆の、発情した性的な霧切さん。 波が引く。大きな大きな絶頂の波が、霧切さんの理性に襲いかかろうとしている。その予兆に違いなかった。 口からは涎をこぼし、快楽の嬉し涙をこぼし、楽しそうに絶頂へと突き進む。バイブを出し入れする速度が、徐々に、徐々に上がってゆく。 「あ゛ああぁ、くはぁッ、はあああぁぁ、ン、んあ、んああぁあぁッッ! ハァ、ハァ、んあ゛ああぁぁあぁッ!!」 二度目の絶頂が、来る。霧切さんの全身の快楽細胞が、二倍も三倍も敏感になる。破裂寸前のおまんこ感覚が、バイブにより増幅される。 気持ちいい。気持ちよすぎる。危険をスパイスにしたオナニーは、やっぱりやめられない。今までで一番すごい絶頂がくる。 霧切さんは恐怖と期待が入り混じった感情のまま、無心にバイブを出し入れし続ける。ガツン、ガツンと奥を突く。 そして赤いビー玉のように勃起したクリトリスを革手袋の指先で抓りつつ、バイブをまた、子宮に打ちつけた。 射精される瞬間をイメージしながら。 すると膣全体がキュゥっと引き締まって、ありもしない白濁液を吸い出そうと内側から活発に動き始める。 それがトリガーになった。快楽の大波が押し寄せ、霧切さんの全身に叩きつけられる。甘くしびれる絶頂の感覚が、爪先から脳天にまで響き渡る。 頑張ってバイブを動かした霧切さんに、再び絶頂がごほうびに与えられたのだ。そして二回目の絶頂は一回目のものよりも激しかった。 霧切さんは全身を痙攣させた。声はほとんど出なかった。オナニーが気持ちよすぎて、声帯が痺れてしまったのかもしれない。 二度目の絶頂は、まさに落雷にうたれたかのような衝撃で、霧切さんの思考回路さえもショートさせかねないほどのものであった。 霧切さんができることは、快楽の横暴に耐えながら、必死にもとの自分に戻ろうとすることだけ。 「あぁ、はぁ、はぁ、ハァ、ハァ……!!」 呼吸が上手く出来ない。酸素がたりなくなってクラクラとする。愛液はふとももだけでなく、床のいたるところに飛び散っており、 霧切さんのオナニーの激しさを詳細に物語っていた。いまだバイブを締め付けて話さない膣から、無理やりそれを引き抜く。 たったそれだけの動作で、愛液が圧迫される泡立つような音、バイブが抜ける水っぽい音、膣が閉じる粘っこい音が静まった廊下に響いてゆく。 見れば、いつもより何倍も濃い愛液が、バイブ中に広がっていた。イボの裏やくびれに雫が溜まっていやらしく光り輝いていた。 霧切さんはその匂いを嗅ぎ、そして咥えた。舐めまわし、味わう度に、生臭い自分の味が口いっぱいに広がる。決して気分の良い行為ではない。 それでも霧切さんはバイブへの愛撫をやめない。バイブを男根のように労り可愛がることで、霧切さんはますます満足できるのだ。 「はぁっ、はぁ、ふぅぅー……」 バイブに満足すると、霧切さんはハンカチを取り出し、股まわりの液体をぬぐい、バイブを綺麗に掃除した。 膣は本当にベタベタで、性器の表面を拭き終えても、バイブとの交わりにより白く泡だった愛液が、ぴちゃぴちゃと穴からこぼれ続けていた。 愛液は霧切さんの性欲そのものだった。これだけ沢山の性欲を消耗したのだ。少なくとも明日までは、冷静沈着な自分を演じられるだろう。 「はぁぁー……」 深呼吸する。空気中の冷たい酸素が、髪の毛一本一本の先にまで行き渡る感覚がある。火照った思考が、冬の雪のように冷やされてゆく。 腕を組んで精神を引き締める。ようやく、理性を中心に据える、普段の自分が戻ってきた。これなら、どんな事が起きても大丈夫。 その自信がどこから来るものなのかは分からない。根拠の無い自信、自分らしくもないとも思うが、 もしかしたら、そんな無意識の動きの中に、自分の本当の才能に繋がる鍵が隠されているのかもしれない。 オナニーをすると、本当に頭の血の巡りが良くなってくる。 それにしても。我に返ってオナニーの跡を見ると、これまたすさまじい光景が広まっていた。 そこら中に飛び散った愛液、転がる太いバイブ、くしゃくしゃにまるまった下着、ノーパンで公共の場にいる自分という存在。 その現実を改めて脳みそが摂取する。冷静になった自分が、その痴態に客観的な判断を下す。霧切さんの体温が上がる。顔が赤くなる。 「幾らなんでもやりすぎよ、私……」 頭を抱えてしまう。 「本当に見つかったら、どうするつもりだったのよ……」 性欲に振り回されていた。一日オナニーをしなかっただけで、あんなに周りが見えなくなるとは、霧切さんは自分の欲望を甘く見すぎていた。 あれだけ興奮した分、反動も大きかった。いくら性欲を処理するためとはいえ、こんな場所で乱れていた自分が恥ずかしい。 冷静に判断出来ていたならあんなことはしなかったはず。興奮と冷静の落差。 とはいえ、今の霧切さんは感情に振り回されない。恥ずかしさに頭を抱えても過ぎたことは仕方がない。 「悩んでも仕方ない。これが私なんだから……」 スイッチを切り替えるように、即座に思考を中断する。 無謀な自慰をしないためにも、定期的にオナニーをして自分の性欲を律しなければならない。 それだけを教訓として、脳裏に焼き付けた。 そして、霧切さんを縛る欲求は性欲だけではない。一気にカロリーを消費したために、今度は睡眠欲が自分の存在を主張しはじめた。 誰も見ていないのをいいことに、大きくあくびをする。 「ふぁぁ……、とりあえず、朝食まで仮眠を取ろうかしら。なんだか疲れたみたい……」 バイブをバッグに戻し、立ち上がる。背筋を伸ばして、知性ある二足歩行を行う。表情は氷のようで、かつ知的だった。 口元はきゅっと閉じられており、長い髪の毛の先が、歩行に合わせてリズムをとるように靡いていた。 そこにいるのは、性欲に囚われた雌ではない。冷静で何事にも動じない、霧切響子という超高校級の存在があるだけであった。 ★ 「私だって人間よ……、喜怒哀楽は人並みにあるわ……」 おわり
霧切さんは自室のドアを開けると、様子をうかがうように廊下を見渡した。誰にも見咎められないように、決して感付かれないように。 その姿は盗人のように後ろめたさに満ちており、普段の堂々とした振る舞いとは食い違っていた。 霧切さんは今日もオナニーをする。それも普通の自慰では駄目で、心の底から満足できる自慰でなければ何の意味も無かった。 学園のどこか、見つかるか見つからないかギリギリの場所、そこを舞台にして自分の体を満足させたい。一種の露出願望、それが霧切さんの性的嗜好だった。 他人につけ込まれないように喜怒哀楽を封じ込め、無表情を貫きそれを良しとする。そんな霧切さんの行動が、歪んだ形で性欲に反映されたのであった。 仮面を剥がされ、乱れる心を剥き出しに晒されてしまったら、どうなってしまうのだろう。軽蔑か、あるいは嘲笑か。 恥ずかしさで体が震え、冷たい喪失感が体の中を蹂躙していくはずだ。 見つかれば、なにもかもが滅茶苦茶になってしまう。想像するだけで、子宮の奥が焼けた鉄のように熱くなる。 完璧に理性的に振る舞う霧切さんと、鏡合わせになったような欲求。それは自分の破壊に通じる、マゾヒスティックな願望であった。 ただし、欲求があるとはいっても、それを追求するかは別問題である。特に露出願望というものは、社会的な危険と隣合わせなのだ。 盛るなら自室で済ませればいい、性的満足のために危険は犯せない――普通の女子ならばそのような当たり前の理屈で思いとどまるところだ。 「仕方ないのよ……」 仕方ない。それは道理であり、筋の通った理屈でもあり、性欲を追求することを許す魔法の呪文でもあった。 そして、彼女の自慰には自己満足以上の「意味」がある。オナニーをしなければ冷静な自分を保てないのだ。 人間の内面には理性と感情が同居している。ロゴスとパトス、二つの要因の偶発的なからみ合いで、行動や言動が左右される。 人は元来、理性を徹底出来る生き物ではないのだ。平均的な高校生より理知的な思考回路を持つ霧切さんだからこそ、そんな論理の限界をも理解している。 そして人間の感情的側面を支配するのが食欲や睡眠欲等の肉体的欲求、そして最もコントロールが難しいのが性欲である。 食に溺れ地位を失う者は少ないが、性欲に基づく愛、そして憎悪で自他共に崩壊する人間は後を絶たない。 殺人事件の大半は、密接な関係の中から生まれ落ちている――赤子のようなものだ。 それでも、あくまで理性でつま先から表情までの肉体を支配するというのなら、感情が暴れまわる要因を吐き出すしか無い。 霧切さんは、普通の女子高生と比べて性欲が強いということを、持ち前の分析能力ゆえに自覚してしまった。 彼女にとってのオナニーは、暴れ馬のような性欲飼い慣らすための、不可欠な手段なのであった。 学生同士が殺しあう狂った箱庭。そんな環境で感情に左右されていれば、何もかも上手くいかないはずだ。 霧切さんは自分の体のことを誰よりも深く把握している。徹頭徹尾冷静に振る舞うためにも、毎日二回のオナニーは必須。 霧切響子にとってのオナニーは、大神さくらのプロテインに匹敵するぐらい、欠かせない重要な存在なのであった。 だから、仕方ない。今の私は冷静沈着な霧切響子じゃない、何もかもを剥き出しにしても、とても人には見せられない乱れ方をしても「仕方ない」のだ。 犯罪スレスレの露出オナニーをしてしまっても、それは「仕方ない」ことなのだ。 「ふぅ……」 肉親にも明かさない秘密の内面。霧切さんは、そんな自分の体質に多少の嫌悪を覚えるとともに、喜び楽しむ感情も持ち合わせていた。 これほどオナニーにドはまりしてる自分という屈辱、それでもオナニーは気持ち良くて仕方がないのだ。 恥ずかしがることはない。膨れ上がった欲望を吐き出す、要は排泄のようなものなのだ。そう自己暗示して、心のバランスをとる。 なんにせよ、オナニーさえ済ませれば冷静な自分が戻ってきて、必要なジャッジを論理的に下してくれるだろう。 そして霧切さんは今、早朝の五時という年頃の少女が起きるには早過ぎる時間帯に、一人廊下を早足で歩いていた。 背筋を伸ばし、左右の足を上品に、交互に働かせる。その度に長髪の尾が、右へ左へとしっぽのように揺らめくのである。 革手袋がなされた手は、小さな手提げバッグの取っ手をしっかりと握りしめていた。 氷のように無表情だった。ただ、今の表情は普段の無表情とは違う。すでに感情が漏れだし始めていたのだ。 大半の筋肉は御することができても、反射はそうもいかない。頬には赤みがさし、体温が上がって、汗のつぶが無用にも浮かんでいた。 それは、霧切さんという女子高生特有の、静かな発情表現であった。 膣の形に沿って皺の付いた下着には、涎を垂らしたような染みがすでに生々しくも浮かんでいる。 そして食堂前の広場までやってくると、仁王立ちして、流し目で前方180度を見渡す。そしてそっと振り返り、廊下にも人影がないことを確認した。 「誰もいないわね」 当たり前のことを確認するようにつぶやくと、革手袋をはめた手で、長い髪の毛を涼しげにかきあげる。 倉庫側の廊下の壁に、身を潜めるように背中を預けた。そこは個室の入口からは死角であり、誰かが突然現れても対処できる位置取りである。 冷静な思考はギリギリで許容できる危険を計算していたが、廊下という公共の場で自慰をするという未来は、霧切さんを興奮させた。 震える手でバッグのファスナーを開ける。待てをされていた子犬のように、しかし音をたてないよう細心の注意を払って、 霧切さんはガチガチに固いお気に入りのオモチャを取り出したのだった。 「……ふふっ」 慣れ親しんだ形。大きな二つの瞳から放たれる視線が、性玩具の扇情的なくびれに焼けつくほどに集中する。 20センチのバイブ、一般的なモノよりも少しだけ逞しい。根本の部分から小さいものが枝分かれしており、膣内とともにクリトリスを刺激する。 ネット通販でこっそり購入した中学時代からのパートナーである。初めてもこのバイブレーターに捧げたが、後悔はしていない。 最初に使った時は膣のサイズに合っておらず、多少苦しい体験となったが、体が成長するにつれて膣の穴も広く柔軟になり、 こういう逞しいオモチャでも充分以上の快楽を得られるようになった。 間近で匂いを嗅ぐと、ほんの少しだけ磯の香りがする。自分の膣の匂いが染み付くぐらい、何度も何度も交わった相手なのだ。 生々しい亀頭の形、茎のいぼいぼ、これが性器の細胞一つ一つを丁寧に揉みしだいてくれる。 オモチャを咥えるどころか、性器に当ててすらいない。それなにの霧切さんの下着はじっとりと濡れ、 薄布に包まれた膣は、はしたなく唾液を零しながら男根をねだりひくひくと動き始めていた。 こんな道具に弄ばれる瞬間を、霧切さんの体すべてが待ち望んでいた。唇がひとりでに微笑む。 静かな仕草だが、霧切さんの発情は退っ引きならないほど激しく、思考回路の底でごうごうと燃え上がっていた。 「もう駄目、早く入れないと抑えられなくなる……」 鼻息を荒くしながら下着のゴムに手をかける。手間取りながら腰と足をくねらせる姿はまた官能的だった。 スカートの中で尻が露わになる。布と膣がくちゅりと音を立てて離れる。 粘っこい液が、下着の染みと膣のヒダを名残惜しそうな一本の糸となって結んでいた。 足を上げ、下着を脱ぎ捨てる。濡れた性器が直接外気にあたってひんやりとする。膣までもがスカートの中で露わになる。 霧切さんの膣からは少しだけヒダが出ており、毎日のようにオナニーを繰り返したおかげか、クリは小さいビー玉ぐらいにまで育っている有り様だ。 具と穴を隠し挟む膣の肉も細身の体型のわりには豊富で、男根であれ指であれ、柔らかく締めあげられるだけの体質的素養があった。 性器の作りからして淫乱そのものなのである。月のものが始まったころの慎ましやかな性器とは、もうかけ離れていると霧切さん自身が自覚していた。 こんな姿、誰かに見られたら。破滅をスパイスに霧切さんのオナニーは燃え上がる。 床に落ちた下着、手には太いバイブ、ここにいるのは年頃の学生ばかりだった。 もし誰かが飛び起きて痴態を見咎めれば、もう言い訳はできない。彼女の築き上げてきたイメージは痴態という事実で塗り替えられてしまうだろう。 あの子が、あの人がオナニーしている自分を見たら。そんなあってはならない妄想が、破戒の快楽となって、霧切の快楽中枢をビリビリと刺激する。 そしてようやく、高まったあつあつの股下を、割れ目にそって指が柔らかくなぞった。 「あっ……!」 声を殺したいのに、気持ちよすぎて漏れてしまう。初日は色々なことがありすぎてオナニーも出来なかった。股間から性欲が溢れている。 手袋をしたままの手で、性器の表面に直に触れる。部屋でするよりも数段増幅された性感で、霧切さんは甘いため息をついた。 気持ちいい。オナニーは何回しても気持ちいい。緊張でこわばった全身の筋肉が解きほぐされていくかのよう、そんな爛れた夢心地。 そして手袋越しの手淫は、まるで自分ではない誰かに触れられているように錯覚できて、素手よりも心地よかった。 「ふぅ、んん……」 小陰唇をつねる。膣の肉を開いて、尿道と膣穴の間を指先でこする。クリトリスの周りをなぞりながら、 餅で遊ぶように大きめのクリトリスを揉み上げ続ける。赤い真珠はペニスのように硬くなり、刺激に連動して膣液がこぼれ始める。 最初は規則的だった霧切さんの吐息も、熱が増してゆくにつれ不規則になり、 スタッカートのように跳ね上がったと思えば、うっとりした様子で熱く吐く。 「ん、んぅ、ンッ!? あっ、くあぁぁ……ぁっ!!」 坂を転げ落ちるように淫乱になる。物静かな仮面を剥がして、性を貪る情動的な動物になる。快楽を貪りたいがため、膣の奥を触りやすいがに股になって、 二本三本の指で、じゅぽじゅぽと膣内をかき回すのだ。体がひとりでにビクンビクンと跳ねる。気持ちよさのあまり目元から涙がこぼれていた。 喘ぎ声は出口を求めて体の中で暴れまわる。口を閉じて閉じ込めようとすれば、鼻からだらだらと音が漏れてくるのだ。 「あぅッ、くぅぅ、ん、ふぅ、はぁ、ぁ、あああぁ……!!」 口元がゆるみ、涎がたれる。 「くひィッ、うぅ、あ、あぁぁ、はぁ、はぁ……」 腰がひとりでに動いてしまう。スカートの中の膣はベタベタに濡れ、今も愛液を分泌している。 膣のいたるところが粘ついた液でぬらぬらと光るが、それだけでは満足できないのだろう、膣口がしきりにピクピクと動いている。 草原のような陰毛の、毛先一本一本が濡れ、その先に愛液の粒を実らせる。体温と交わって湯気になる。一度目の絶頂、もうすぐ来る。 まだ、愛しのバイブさえ、使っていないのに――あまりにも早く、絶頂が襲ってくる。 気持ちいい。気持ちいい。気持ちよさで脳みそがスパークして、目の前がチカチカとする。 嬌声はもはや、堤防を破った波のようである。 「ひっ、ひッ、イッ、はうッ、ぅ、ぅぅあっっ!! くぁっ、んあっ!!」 切なく泣くような声をあげる。霧切さんは腰が砕けそうになりながらも、背中の壁だけを頼りに、二足歩行の尊厳を守っている。 革手袋の三本の指が、深々と突き刺さって子宮の入り口にまで到達する。膣はかなり広げられていて、内部全体の快楽神経が摩擦されていた。 バイブを床に取り落とす。このまま絶頂してしまう。バイブを持っていた方の手で口元を覆い、本能の発情声を物理的に抑制する。 口元を抑えないと、興奮のあまり叫んでしまいそうだったからだ。 「ん、ん、ふッ、んんッ! んく、ん、ンンんんん゛ッッ、ンウう゛ううううぅぅーーーーーッッ!!」 ふとももがビクビクと震える。尿道口から透明な液体がパシパシと音を立てて吹き出される、目をつむった夢の中で、霧切さんは鋭い絶頂にみまわれた。 性器から全身に快楽の情報が伝達される。全身が瞬間的に敏感になって、快楽の汗が溢れてゆく。喉を通るは気持ちよさの吐息。 膣と革手袋は愛液でぐっしょりと湿っていた。そして床にも失禁したかのような快楽の染みが残されていた。 ふとももも汗やら膣液やらでべったりで、霧切さんの乱れ方がどれだけ尋常ではなかったか、論より証拠とはっきりと表している。 「ふぅ、ふぅ、はぁ、ハァ、あぁぁー……」 余韻の声を漏らす。霧切さんの顔には赤く染まり、絶頂からくる直接的な快楽の波に、まだ身を任せていた。 「はぁ、はぁ……」 呼吸がだんだんと落ち着いてゆく。いつもの冷静な霧切さんに戻ろうとする。 一度オナニーは終えた、普通の女子ならこれでもう満足のはずだ。だが、普段の抑圧が強いと、爆発した時の欲望はすさまじいものだ。 「もう一度……」 霧切さんはもう、次の一回のことで頭がいっぱいだった。なにせまだ、愛用のバイブを使用していないのだ。 昨日は色々なことがありすぎて、オナニー自体一日あけてのご無沙汰であった。あと一回、それぐらいしないと霧切さんの欲情は収まらない。 「もう一回だけ……」 これは「仕方ない」ことだ。オナニーで性欲を発散し、冷静な自分を守ることが、身を守ることにも繋がる。 そして冷静に振る舞って他者の動向に気を配るならば、希望ヶ峰学園という死地を平穏に保つことも出来る。だから、もう一回自慰にふけっても良い。 20センチのバイブを床に立てる。霧切さんは動物のように両手を床についてしゃがみ、天へそりたつバイブにまたがる。 バイブの亀頭が霧切さんのはみ出た小陰唇を撫でる。すると一回目の愛液がだらりとこぼれ、バイブの先をぬらぬらと濡らすのだ。 霧切さんの尻が踊り、細めの陰毛で草原のようになった膣が、粘液の音をたてながら、バイブの亀頭と何度もキスをする。 腰を落とすために位置を調整しているのだろうが、仮に第三者が見たとすれば、性器で雄を誘う雌のダンスにしか見えないだろう。 そしてようやく、ちょうどいい位置でバイブが割れ目にあてがわれた。このまま腰を落とせばズブズブと飲み込むはずだ。 「ふぅ、ふぅ、ぁ、ああ、あ゛ああ……!」 まずは挨拶程度に亀頭だけ。すでにどろどろになっている霧切さんの性器は、多少の太さは許容する。するすると入っていく。 真ん中まで咥える。茎のイボイボが膣の中のひだひだに擦れて、その一箇所一箇所から小さく弾けるような快楽が生まれる。 そしてスムーズに根本まで飲み込んでいった。亀頭は子宮口にぐりぐりと押し付けられており、 先程よりも深く、全てを満たすような快楽が霧切さんの脳内を塗りつぶしていった。 「はあっ、ぁっ、ああぁッ!」 セックスの経験はない。しかしこの感覚は、きっとセックスよりも素晴らしい。 霧切さんは口を半開きにして涎を垂らしながら、バイブの根本を掴んで、膣をいたぶるほどに出し入れを繰り返す。 バイブが霧切さんの奥に突き刺さるたびに、舌のこぼれそうな口からは、いやらしい声が聞こえてくる。ここは学園の廊下だ。すぐそばで皆が眠っている。 こんな所、誰かに見られたら。 希望ヶ峰学園の生徒個室は、しっかりとした防音工事がなされているため、個室の中まで喘ぎ声が聞こえてしまうことはない。 けれど、もし、誰かが起きだして、個室のドアを開けたなら、乱れるような淫靡な声に誰しもが耳を疑うだろう。 もっとも、そんなことが起こらないように、わざわざ早朝に起きてオナニーをしているのだが。 ありうる未来、そのわずかな可能性が霧切さんを燃え上がらせる。 希望ヶ峰学園の同級生たちが、好機と軽蔑の目で霧切さんを見下ろす。衆目に晒されても、バイブオナニーをやめない。 霧切さんってそんな人だったんだ。幻滅しましたわ。変態なんじゃねーの。こんな恥ずかしいこと、もうやめてよぉ。 空想の奥底から幻聴が聞こえてくる。霧切さんの膣がバイブに吸い付いて離そうとしない。 「はああッ、あッ、あぁっっ!! くぁ、はぁ、あぁぁ、あっ、んああああ゛ッ!!」 小さな快楽の波、大きな快楽の波、交互に打ち寄せて、重なりあったり打ち消し合ったり。 それでも膣肉のこすれる感覚は、霧切さんをここではないどこかへと引きずりあげる強さをそなえていた。 差し込む、引きずり出す。するとバイブは愛液まみれで、汁は床にびちゃびちゃとこぼれてゆく。奥に差し込む、潮を吹く。 クリトリスはパンパンで、バイブの枝分かれした部分が擦れるたびに、悲鳴に近い泣き声があがった。 霧切さんはもう、おまんこ以外のことを考えられない。そこにいるのは理知的な霧切さんとは全く逆の、発情した性的な霧切さん。 波が引く。大きな大きな絶頂の波が、霧切さんの理性に襲いかかろうとしている。その予兆に違いなかった。 口からは涎をこぼし、快楽の嬉し涙をこぼし、楽しそうに絶頂へと突き進む。バイブを出し入れする速度が、徐々に、徐々に上がってゆく。 「あ゛ああぁ、くはぁッ、はあああぁぁ、ン、んあ、んああぁあぁッッ! ハァ、ハァ、んあ゛ああぁぁあぁッ!!」 二度目の絶頂が、来る。霧切さんの全身の快楽細胞が、二倍も三倍も敏感になる。破裂寸前のおまんこ感覚が、バイブにより増幅される。 気持ちいい。気持ちよすぎる。危険をスパイスにしたオナニーは、やっぱりやめられない。今までで一番すごい絶頂がくる。 霧切さんは恐怖と期待が入り混じった感情のまま、無心にバイブを出し入れし続ける。ガツン、ガツンと奥を突く。 そして赤いビー玉のように勃起したクリトリスを革手袋の指先で抓りつつ、バイブをまた、子宮に打ちつけた。 射精される瞬間をイメージしながら。 すると膣全体がキュゥっと引き締まって、ありもしない白濁液を吸い出そうと内側から活発に動き始める。 それがトリガーになった。快楽の大波が押し寄せ、霧切さんの全身に叩きつけられる。甘くしびれる絶頂の感覚が、爪先から脳天にまで響き渡る。 頑張ってバイブを動かした霧切さんに、再び絶頂がごほうびに与えられたのだ。そして二回目の絶頂は一回目のものよりも激しかった。 霧切さんは全身を痙攣させた。声はほとんど出なかった。オナニーが気持ちよすぎて、声帯が痺れてしまったのかもしれない。 二度目の絶頂は、まさに落雷にうたれたかのような衝撃で、霧切さんの思考回路さえもショートさせかねないほどのものであった。 霧切さんができることは、快楽の横暴に耐えながら、必死にもとの自分に戻ろうとすることだけ。 「あぁ、はぁ、はぁ、ハァ、ハァ……!!」 呼吸が上手く出来ない。酸素がたりなくなってクラクラとする。愛液はふとももだけでなく、床のいたるところに飛び散っており、 霧切さんのオナニーの激しさを詳細に物語っていた。いまだバイブを締め付けて話さない膣から、無理やりそれを引き抜く。 たったそれだけの動作で、愛液が圧迫される泡立つような音、バイブが抜ける水っぽい音、膣が閉じる粘っこい音が静まった廊下に響いてゆく。 見れば、いつもより何倍も濃い愛液が、バイブ中に広がっていた。イボの裏やくびれに雫が溜まっていやらしく光り輝いていた。 霧切さんはその匂いを嗅ぎ、そして咥えた。舐めまわし、味わう度に、生臭い自分の味が口いっぱいに広がる。決して気分の良い行為ではない。 それでも霧切さんはバイブへの愛撫をやめない。バイブを男根のように労り可愛がることで、霧切さんはますます満足できるのだ。 「はぁっ、はぁ、ふぅぅー……」 バイブに満足すると、霧切さんはハンカチを取り出し、股まわりの液体をぬぐい、バイブを綺麗に掃除した。 膣は本当にベタベタで、性器の表面を拭き終えても、バイブとの交わりにより白く泡だった愛液が、ぴちゃぴちゃと穴からこぼれ続けていた。 愛液は霧切さんの性欲そのものだった。これだけ沢山の性欲を消耗したのだ。少なくとも明日までは、冷静沈着な自分を演じられるだろう。 「はぁぁー……」 深呼吸する。空気中の冷たい酸素が、髪の毛一本一本の先にまで行き渡る感覚がある。火照った思考が、冬の雪のように冷やされてゆく。 腕を組んで精神を引き締める。ようやく、理性を中心に据える、普段の自分が戻ってきた。これなら、どんな事が起きても大丈夫。 その自信がどこから来るものなのかは分からない。根拠の無い自信、自分らしくもないとも思うが、 もしかしたら、そんな無意識の動きの中に、自分の本当の才能に繋がる鍵が隠されているのかもしれない。 オナニーをすると、本当に頭の血の巡りが良くなってくる。 それにしても。我に返ってオナニーの跡を見ると、これまたすさまじい光景が広まっていた。 そこら中に飛び散った愛液、転がる太いバイブ、くしゃくしゃにまるまった下着、ノーパンで公共の場にいる自分という存在。 その現実を改めて脳みそが摂取する。冷静になった自分が、その痴態に客観的な判断を下す。霧切さんの体温が上がる。顔が赤くなる。 「幾らなんでもやりすぎよ、私……」 頭を抱えてしまう。 「本当に見つかったら、どうするつもりだったのよ……」 性欲に振り回されていた。一日オナニーをしなかっただけで、あんなに周りが見えなくなるとは、霧切さんは自分の欲望を甘く見すぎていた。 あれだけ興奮した分、反動も大きかった。いくら性欲を処理するためとはいえ、こんな場所で乱れていた自分が恥ずかしい。 冷静に判断出来ていたならあんなことはしなかったはず。興奮と冷静の落差。 とはいえ、今の霧切さんは感情に振り回されない。恥ずかしさに頭を抱えても過ぎたことは仕方がない。 「悩んでも仕方ない。これが私なんだから……」 スイッチを切り替えるように、即座に思考を中断する。 無謀な自慰をしないためにも、定期的にオナニーをして自分の性欲を律しなければならない。 それだけを教訓として、脳裏に焼き付けた。 そして、霧切さんを縛る欲求は性欲だけではない。一気にカロリーを消費したために、今度は睡眠欲が自分の存在を主張しはじめた。 誰も見ていないのをいいことに、大きくあくびをする。 「ふぁぁ……、とりあえず、朝食まで仮眠を取ろうかしら。なんだか疲れたみたい……」 バイブをバッグに戻し、立ち上がる。背筋を伸ばして、知性ある二足歩行を行う。表情は氷のようで、かつ知的だった。 口元はきゅっと閉じられており、長い髪の毛の先が、歩行に合わせてリズムをとるように靡いていた。 そこにいるのは、性欲に囚われた雌ではない。冷静で何事にも動じない、霧切響子という超高校級の存在があるだけであった。 ★ 「私だって人間よ……、喜怒哀楽は人並みにあるわ……」 おわり

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