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「えっ……?」
響子さんは僕が言った言葉の意味をまだ理解できていなかったのか、呆けたような表情を浮かべるだけだった。
だから僕はもう一度言う。
「僕の子供を、産んでほしい」
「誠くん……」
今度はしっかりと僕の言葉を聞き入れ、その言葉が本気なのかを確かめるためにしっかりと見つめられる。
「僕の未来、全部あげる。……響子さんと一緒に歩めるなら、僕は何だってするよ」
響子さんは"そう……"と、小さく呟いて僕の頬を撫でてきた。
――薄く、涙が、彼女の瞳に溜まっていた。
「だったら私の未来、全部あなたと、私たちの子供にあげる。……あなたと一緒に歩めるなら、私はなんだってするわ」
だから。
「……だから、誠くん」
僕は。
「赤ちゃん、作りましょう……」
彼女を抱き締めて口にする。
「……うん。妊娠して、響子さん」
―――――
「はぁん……ああ、んんっ」
響子さんの項や首回りを撫でて、のけ反った彼女の首筋にキスマークを刻む。
「んぅ、ん、んんぅん、ふっ……ん……」
「んんぅ……ま、まふぉと、んふっ、んぅう……」
切なそうな表情で僕の方を向いたら、そのまま唇を奪って蕩けさせるように貪る。
クチャッ、クチュッ――。
わざと唇に隙間をあけて、粘り気のある音を立ててキスすると響子さんの頬が真っ赤に染まる。
右手は彼女の胸を触る――。丸みを帯びたラインをなぞるように撫でて、時々、柔らかさを確かめるように握って。
そして左右交互に撫でていき、手が行き来するたびに順に撫でる範囲を広めていく。
じわじわと、じわじわと先っぽに近づけていって、彼女のことを焦らしてみる。
「ああ、あぁん……お願い、意地悪しないで……!」
響子さんの乳首が、これ以上ないほど堅くなっているのが解る。
「ふふっ、エッチな響子さん……」
囁くと同時に、膨らみの感触を確かめるかのように握っていた手を離して捻り上げるように摘む。
「あっ! あっ!! あああーっ!!」
ビクンッと弾かれるようにのけ反った響子さんがそのまま力なくくずおれてしまう。
背中に回した左腕で彼女を支えながら、ゆっくりと仰向けに寝かせる。
仰向けになっている響子さんの胸を鷲掴みにして揉みほぐす。
すると、たった今イったばかりの響子さんは身を捩って襲いかかる快感から逃れようとするけど、そうはさせない。
「さぁ響子さん、脚を開いて……」
左手の人差し指をまっすぐ伸ばして、彼女のショーツの割れ目の所に忍び込ませる。
指先に触れる、可愛らしい突起。そこを指先で薄皮を剥き上げてピンク色の真珠を晒しだす。
「あっ! やああっ!」
それは出来ない相談だった。
これから何があってもこの指は離してあげない。
右手で内股の柔らかいところを撫でながら、左手の指をゆっくり上下させた。
「ああっ! んんっ!!」
響子さんの膣内が小さく痙攣しているのが指先に伝わってくる。
今まで焦らしてあげたから、刺激に飢えていたせいもある。
だからその分だけ、ここを集中的に攻めてあげる。いつもみたいに、たっぷり――。
「あああああっ!!」
裂け目いっぱいに舌を拡げ、充血した奥の奥をいっぱいに舐め上げた。
デリケートな部分をまとめて愛撫してくる僕の舌に、響子さんはお尻をブルブルさせてよがった。
その反応が嬉しく、しつこいくらいにべろっ、べろっと――ざらざら感を押しつけるように舌を躍らせる。
「ああんっ、き、気持ちいいっ! も、もっと……!」
夢中で鼻面を裂け目に埋め、唇を当てて内側からちゅちゅ、ぢゅるっと愛液を吸い出す。
唇と密着した膣口がヒクヒク悶え狂うのもお構いなしに、甘酸っぱい愛液をしつこいほどにすすっては飲み込む。
「いやっ! だめっ、だめええっっ!!」
そう高らかに叫んで引きつったように身体をピリピリさせると、汗と愛液にまみれた響子さんはベッドの上でくったりしてしまった。
絶頂の余韻に包まれ、深い呼吸を静かに繰り返している。
「……脱がせるよ?」
そう言うと彼女はコクンと頷いて腰を浮かせつつ、薄物を脱ぎ捨てる。
ねっとりと愛液の糸を引かせたショーツがぽい、とベッドの隅っこに放り投げる。
自分のパンツも脱ぐとペニスの方もすっかり準備万端になっていた。
響子さんの手首を掴んでゆっくりと抱き起こす。
「響子さん……おいで」
ベッドの上に胡座をかくと、彼女の腰に腕を回して抱き上げた。
「あん……」
僕の腕の中で響子さんはうっとりと微笑み、うずうずと躰をくねらせながら居心地を確かめるようにお尻を揺すった。
場所を合わせるために持ち上げる。
「行くよ」
「んっ、うんっ……き、来て」
響子さんは痙攣するように何度もうなずき、半ば浮いたお尻をもじもじと揺すった。
「……んんっ」
僕は彼女の腰に回した腕を降ろし、躰を支えながら響子さんの体内に押し入った。
狭く窮屈な蜜壷が、圧迫しながら僕のものを呑み込む。
「んんぅうっ、うぅんっ!」
蜜が押しだされて溢れでる水音と、粘膜の絡み合う特異な水音が和音となって響く。
「「んっ、はぁあぁ……」」
互いの躰が繋がり、僕らは満足げな溜め息を漏らして世にも幸福そうな媚笑を浮かべた。
「ふぁ、はぁ……ねえ、誠くん」
「ん……?」
呼吸を弾ませた響子さんが甘えた声音で呟いた。
彼女の呼吸が整うまで動くのを待ってから訊き返す。
「ふぅ、はぁ、ん……その……動いて?」
僅かに残った廉恥心に顔を俯かせ、上目遣いにおねだりをしてくる響子さん。
僕に躰を抱き上げられ、支えてもらっている響子さんには自分から動くことが出来ない。
「うん」
「ああっ……。あ、あぁ、あっ! ……はぁあぁっ!」
僕は愛おしげに響子さんを抱き締め、穏やかな笑顔を返した。
腕を彼女のお尻と腰に腕を回して、ゆっくりと揺さぶり始める。
すると響子さんの薄く開いた目蓋が痙攣し、半開きになった唇から掠れた嬌声が漏れ出た。
絡み合った粘膜が撹拌される、特有の水音が薄暗い室内に響く。
「あっ、あんっ、あぁっ、あんっ、あっ、あぁっ……!」
「んっ……く、ふっ……! ん、んんっ……!」
響子さんは手足をふらふらと泳がせながら、うっとりと顔を綻ばせて上擦った喘ぎ声を漏らしている。
彼女の蜜壷は僕のペニスを飲み込み、咀嚼するように蠢動していた。
熱く火照った粘膜が吸い付くように密着して、痙攣しながら奥へ奥へと導くような蠕動運動を繰り返す。
深奥からは甘露のような蜜が絶え間なく溢れ出て、結合部から漏れ出る粘着質な水音はどんどん大きくなっていく。
「ふぅっ、ふぁっ、はぁうっ、うっ、んっ、うぅんんっ……あっ、ああっ、まこと、くん……」
「……響子さん」
動きこそ緩慢だけど、僕と響子さんの性感は充足感に満ち足りていく。
ココロとカラダを満たしていく理想的な情事が交わされていた。
響子さんのかわいい鼻声と身悶えに高ぶり、愛撫の手を彼女の乳房へと移す。
「んんっ! んっ、んんっ、コラっ……! んっ、んっ、んっ……!」
僕は愛欲に駆られるまま彼女の左の乳房を大きく包み込み、やがてゆったりと反時計回りに揉み転してゆく。
キスもついばむだけでなく、大きく甘噛みするように繰り出すと響子さんは身じろぎしながら夢中でよがった。
「はっ、あっ、はぁっ、あっ、あっ、はぁんっ、あんっ、あぁんっ!」
彼女は唇を薄く開いて喘ぎながら、揺さぶられる動きのままに手足を上下に振っている。
やがて、響子さんの汗ばんだ肢体が激しく痙攣し始めた。
「はっ、あっ、あぁっ……あっ、あっあっ! わっ、わたしっ、も、もうぅ……!」
焦点の合わない瞳で僕を見つめ途切れ途切れに囁く響子さん。
何を伝えたいのかは一目瞭然で、僕は腕と腰を動かして響子さんの躰を揺さぶりながら穏やかに笑い返した。
「うんっ、好きなときに、イッて、いいよ……!」
「はぁうっ、あぅっ、はぅう……!」
安堵しきった微笑みを浮かべた彼女は、快楽に身を委ねるようにまた甘い喘ぎ声をあげて身悶えた。
「あっ、あ、あぁっ、あぁんっ! あっ、あんっ、あんっ、あぁあんっ!」
僕も終わりが近いので腰の動きを大きくし、彼女の躰を激しく揺さぶる。
じきに、響子さんの瞳が限界まで見開かれ、
「あぁ、あっ、あっ、あぁっ、ああぁーっ!」
かん高い叫び声をあげながら、響子さんは全身をわななかせた。
「うっ! ……くぅぅ」
響子さんが絶頂を向かえるのと同時に、僕のものを包み込んでいた柔肉がねじ切るように収縮する。
それに耐え切れず僕は喉の奥で呻きながら彼女の深奥に精を迸らせた。
「ああっ、はぁっ、あっ、あつい……。まことくんの、すごい、熱い……」
響子さんは、もっと欲しいと言うかのように自分の腰を押しつけてくる。
「うん、出てる、出てるよ……! 響子さんの膣内に……!」
「ふふっ、すごく嬉しい……。私のお腹の中で、びくんびくんしながら、いっぱい出しているのね……」
「まだ、出る……よ」
「いいわ、最後までちゃんと出して……」
ずるずると、響子さんの膣内を擦り、最後の一滴まで絞り出そうとする僕。
ようやくそれが終わった時、ずるりと僕のが抜け落ちたその割れ目からは、とろとろと精液が溢れ出てきた。
「あんっ、出ちゃった……。なんか、もったいないわね……」
「いくらでも出してあげるよ。……毎日だって、してあげる」
「ほんとう?」
「当たり前だよ」
それは本気だった。
僕はもう、本気で響子さんを妊娠させようとしている。
――欲しいから。
僕と響子さんの赤ちゃんが。
「嬉しい……、これで私は、もう、誠くんのものなんだ……」
「響子さん……」
「あなたに、私の未来、あげちゃったんだ……。ふふっ」
「うん、もらっちゃった……全部」
「嬉しい? 誠くんは」
「すっごく……」
「ふふっ……、誠くん、愛してる……」
「うん、僕も。響子さん、愛してる……」
二人で抱き合った状態からベッドに寝そべってじゃれあう。
頬をすり寄せる響子さんの髪を梳き、キスをしながら頭を撫でてあげる。
「んぅ、んぅ、んぅ……ん、んんっ、んふ……んふ、んふ……」
「ん、んっ、んんぅ……すふ、すふ、すふ……」
エッチは終わったけれど、僕たちは飽きもせずキスを繰り返す。
唇を重ねて、啄んで、舌を絡めて――。
「……まこと、くん」
鼻から抜ける響子さんの吐息が、甘く僕に囁く。
その音がまるで"大好き"とでも言うかのようで。
僕はそれだけで嬉しくなって、きつく響子さんを抱きしめて彼女の唇を貪る。
――その時。
「……んもう、誠くんってば」
「……なに?」
「だめよ……。こんな、キスばっかりしてたら」
「どうして?」
「また、したくなっちゃう……」
照れながら響子さんが笑う。
僕もつられて同じように笑う。
けれど、僕のは照れ笑いじゃない。
「……しよう、響子さん」
「えっ?」
にゅる、と。
未だ精液が溢れる膣の中へ僕は指を滑り込ませる。
「ふあっ……! ま、まことくん?」
「もう一回、しよう?」
「だ、だって、わたし、もう、こんな……!」
「もっとこの中、僕のでとろとろにしたい」
「……っ!」
「したいんだ」
「……わかったわ」
僕が弄っている手首をそっと掴み女陰から離す。
躰を僕の下腹部へとずらすことで何をしたいのかを察したので、黙って従うことにした。
「私が気持ちよくしてあげる……」
「うん、お願いするよ」
射精した直後の半勃ち状態のペニスを握り、先端に口付けてきた。
「んんっ、うっ……」
先端の方をちろちろと舌先で小刻みに擦り、そのまま舌先を鈴口に食い込ませるみたいにねじり込んでくる。
その刺激で尿道に残っていた分が促される。
響子さんは亀頭の先端部分にだけ唇を付けて優しく吸い込む。
「足、もう少し開いてくれる……?」
そのおねだりを素直に聞いて足を開く。
すると、彼女はペニスを右手で軽く包み込むよう握り左手で睾丸を触りはじめた。
少しくすぐったい感覚がしたけど、それもすぐ気持ちよさに変わっていった。
響子さんの口に睾丸の片方が含まれたからだ。
「ぽあ、れろ、れろ……どう、気持ちいい?」
「うぁ、すっごくいい……」
右手で軽くペニスを上下させ、今度は反対の睾丸を口にして左手で空いた睾丸を愛撫する。
倍増してゆく快楽に溶けそうな感覚になってくる。
「ちゅう、んふ……ちゅぱ、ちゅる……」
睾丸を舌先で這うように舐める度に、右手で握っている僕のペニスがヒクヒクと動く。
跳ねても舌が離れないように手で押さえて、ぺろぺろと僕のもの全体に舌を這わせる。
「……凄く元気ね」
「響子さんのおかげだよ」
彼女の感嘆の一言は、唾液を纏ってテラテラに光る僕のペニスに向けられたものだった。
お返しに響子さんの髪の毛に指を絡めると気持ちよさそうに鼻を鳴らして喜んでくれる。
「それなら……もっと元気にしてあげるわね」
ガチガチになった僕のペニスを再び咥えた響子さんは、リズミカルに頭を前後に振りはじめた。
「んふっ……んんっ」
「くぁ、きょうこさん……!」
もういいよ――と、中断を促す僕の声に気づいて口奉仕をピタリと止めてくれた。
「……四つん這いになってくれる?」
「……えぇ」
そうおねだりしながら後ろから抱きしめる。
すると両手と両膝を付いて四つん這いになってくれる。ついでに高くお尻も上げてくれた。
じゅぷ――。
響子さんの秘部にペニスを押し当てるとスムーズに挿入できた。
先ほど僕が出したのが潤滑液の役割を担っている。
「あっ……」
「くっ……」
搾りとるかのような締め付けに思わず悶えてしまう。
「……い、いくよ」
「んああっ、はぁん……!」
僕はゆっくりと腰を動かし始めた。
「ああっ、響子さんの中、熱くて、ヌルヌルしてて……」
「ふふっ、気持ち、いいの?」
「うん、最高、だよっ……!」
グチュリ、ヌチュリと恥液をまぶしながら僕たちは必死になって局部を摩擦し合う。
桜の花びらのように火照った色の肌を流れる汗。
顔のみならず、全身で悦びを表現している響子さんの姿はとても淫美だ。
「はぁ、はぁ、はぁ……響子さん、響子さん、きょうこさんっ……!」
「ん、んぅ、んっ……んぁ、誠くん、誠くん、まことくんっ……!」
やがてピストン運動がリズミカルとなり、肌と肌の打ち合う音が大きくなってきて僕らは高ぶりのままに互いの名前を連呼した。
僕は上体を弓なりに反らして、夢中で腰を突き出す。
「あっ、ああっ、あぁんっ、あっ、ぁふぁっ、ふぁっ、ぁはぁんっ!」
乱暴に腰を揺すられて体内をかき回して、響子さんは快楽の渦中にいた。
結合部からは粘着質な水音が絶え間なく漏れ出、僕らの躰がぶつかり合う音が部屋の内壁に反響する。
「あっ、あはっ、ぁはぁっ、あっ、あぁんっ! ……ま、まことくっ…んんっ、んはぁっ、はぁっ、あぁあんっ!」
「はあ、はあ、きょうこさん……っ」
更なる快楽を求めて自分から腰を揺する響子さん。
うわ言のように彼女の名前を呼びながら乱暴に腰を突き出し、ペニスで彼女の蜜壷を撹拌する。
「はぁっ、はぁっ、ぁはぁっ、はぁっ、あっ、あっ、ああ……っ!」
僕の腰が大きく突き出されたのと同時に、響子さんの躰がわななく。
子宮口をえぐられ、彼女の脊髄を電流が走った。
「あぁっ、はぁ、はぁあっ! ……あっ、ああっ、あぁあぁあーんっ!」
「う、うっ!」
彼女の唇から震える嬌声が迸り、うつ伏せに丸められていた背筋が弓なりに仰け反る。
剥き出しにされた乳房が丸い形状を保ちながら、ぶるぶると弾む。
搾り上げるような蜜壷の脈動に耐えきれず、僕は唸り声をあげて腰の力を抜いた。
眼も眩むような快絶と共に、僕の情熱が響子さんの深奥に注ぎ込まれる。
「あっ、んん……っ! あぁうっ……うっ、んんっ、あ、熱い……」
一番深い部分に熱い迸りを受け、響子さんの躰が悦楽に打ち震えた。
薄く開いた彼女の唇から、うわ言のような呟きが漏れ出る。
「う、う……ふうう」
響子さんの体内に精を注ぎ終えた僕は、半ば放心状態になりながら喉の奥で呻いた。
「あ、ああ……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ぁはぁ……」
「はあ、ふう、はあ、はぁ、はぁはぁ……」
彼女もシーツに顔を伏せ、体全体を突っ伏すようにして大きく息を吐いた。
僕らは快絶の余韻に浸ってしばらく身動きを出来ずに、絡み合ったまま呼吸を整えた。
「……んっ、くっ」
やがて僕は軽く頭を振りながら、腰を引いて響子さんから離れた。
繋がっていた部分が、名残惜しげな水音を立てて分かたれる。
そして彼女の左側に寄り添って横臥した。
そのまま少しだけ響子さんに頭を持ち上げてもらって、右の二の腕を枕の下端に添えて腕枕を用意する。
僕の腕枕に頬摺りしたら、そのまま居心地良さそうに溜息を吐きぴっとりと僕に寄り添ってきた。
僕らは粘液にまみれた性器も、汗みずくの肌もそのままに脚を絡め、愛欲の限りを尽くした身を寄せ合った。
前髪ごしに額を合わせて火照った肌のぬくもりを分かち合い、あらためてセックスの余韻に浸る。
ふと何気なく左手を伸ばし、そっと響子さんの右手に触れた。
響子さんはその誘いかけに応じるよう、僕の左手を優しく握り返す。
じゃれつくような手つきで互いの身体に触れて、二の腕から肩や首筋にかけてを丁寧に撫でたりする。
一方で響子さんはぼくのおへそから脇腹をくすぐったり、腰を抱き寄せて撫で回したり。
あるいは二人で指を絡めてつなぎ合ったり、時には乳房や性器に触れたりして、いちゃいちゃとスキンシップを重ねた。
こうしてだらだらと時間を過ごしているだけでも嬉しくて、僕らはくすぐったそうに相好を緩めてしまう。
「……私はここにいてもいいのね」
「えっ」
腕枕している右手で彼女の薄紫の髪を撫でていると、響子さんはそう切り出した。
彼女は腕枕に甘えていた顔を上げ、汗ばんだ鼻先を触れ合わせたまま僕を見つめる。
思わずキョトンと瞬きして響子さんを見つめてしまうのは、事後のスキンシップにすっかり夢中になっていたせいだ。
「……今まで探偵でなければ自分は存在する意味なんてないと思っていたわ。探偵であることをやめた時、人魚姫みたいに泡のように消えてしまうのではないかと……」
「響子さん……」
「でもこうして探偵ではなくなった今でも、私はここにいる。泡になって消えてしまうなんて、ただの思い過ごしだったのかもしれない……」
夢見るような口調でつぶやく響子さんだったけど、ふと静かに目を伏せて言葉を区切った。
僕は続きを促すようにゆっくりと背中を撫でる。
「これも誠くんのおかげだわ」
「そうかな? 僕は何もしてないけど……」
「私のこと、空っぽじゃないって云ってくれる人が傍にいる。それだけで私は……」
彼女の照れくさそうな囁きに、僕は衝動のままに抱き締める。
身を擦り寄せ合って唇を重ねてついばみ合う。
「んっ、んっ、んっ……ぷぁ、きょうこ、さんっ」
「んんぅ……ま、まことくん……? ん、んふっ、んぅう」
響子さんはかわいい鼻声をしきりに漏らしながら、積極的に僕とのキスを堪能してゆく。
右手は僕の火照った頬を撫でると、たちまちうなじを押さえて逃すまいとした。
そのまま小さな唇で、僕の唇を何度も何度も割り開くように啄ばみかかる。
僕はひとまず啄ばみ返したりせず、ただじっと響子さんの為すがままを決め込んだ。
せめてもと左手で彼女の肩を抱き寄せると、腕枕している右腕もあり響子さんを丸々包み込む格好になる。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、と水音を立てながら、何度も何度も小刻みに唇を奪われる。
かと思うと、十数秒ほどもぴったりとした密着感を堪能してキスをされて。
さらには舌先を左右にひねっては、丁寧なキスを僕に含ませてくれる。
「んぅ、ん、んんぅ……ん、ふ、んんっ……」
心の思うがままに響子さんは様々なキスをして思う存分に堪能して悦に入る。
鼻にかかった上擦り声は、もはやよがり声そのものであった。
そんな彼女のキスのおかげであれだけ盛大に射精したにもかかわらず、僕は再びペニスを勃起させてしまった。
それも相当に雄々しく、びくんびくんと打ち震えるほどに。
「ん、んっ、んんっ……。ぷぁ、はぁ、はぁ……誠くん…」
「はぁ、はぁ、はぁ……うん?」
ねちっこいくらいにキスを重ねてきた響子さんが、やおら唇どうしを引き離してぼんやりとした眼差しで僕を見つめた。
僕は口の周りを唾液でべちょべちょに濡らしたまま、忙しなく息継ぎして響子さんを見つめ返す。
「……幸せ」
僕に寄り添ったまま、再びゆったりと横臥した。
陶酔の溜め息に混じって素直な気持ちが睦言となる。
「こんなに心が落ち着くのは、生まれて初めて……。なんだか胸の奥がすっきりした感じだわ」
「そう言ってもらえると……嬉しいな」
「ごめんなさい……。今日の私、誠くんに甘えてわがままばかり言ってる」
溜め息とともに自責しながらも、響子さんは僕の腕枕に頬摺りして甘えた。
そんな彼女を優しく見守りながら僕は枕の上でそっと首を横に振った。
自由な左手で響子さんの頬を包み込み、そっと撫でさすって彼女に笑みを取り戻させる。
「そんなことない。わがままは自分の気持ちに素直になっている証拠なんだから……」
「誠くん……」
「だから、これからも僕に遠慮しないで? ね?」
何度か舌を絡めあうキスを繰り返して、互いに見つめ合う。
「誠くんの唾液って、とても甘い感じがするわ……」
「響子さんのだって……」
僕は腕枕を解いて彼女の上に覆い被さるようにして四つん這いになった。
そのままシーツに両の肘を突き、平伏すようにして寄り添う。
「響子さん」
「うん……」
真正面から相対した僕らは幸せそうに目を細め、もう一度キスをした。
ささやかに唇どうしで啄ばみ合い、少しだけ舌を触れ合わせて互いにセックスの期待感を高めてゆく。
肘を突いた四つん這いの体勢でわずかに後ずさると、今度は響子さんの首筋に唇を押し当てる。
彼女の首筋から、ゆっくりと胸元に向かってキスを連発していく。
しかもただキスするだけではなく、軽く吸い付き、ほんのり朱に染まった跡を舌先で舐め回してくすぐったりもする。
「ひゃうっ……! あ、んぅうっ……く、くすぐったい……!」
たちまち響子さんはか細いよがり声を上げ、イヤイヤとかぶりを振った。
鎖骨から胸元の膨らみにかけてキスを撃たれると、二の腕にはうっすらと鳥肌が立ち、線の細いあごも儚げにわななく。
「響子さん……もう待てないっ」
「ふふっ、あたしも待てないっ……」
求愛の想いを精一杯の言葉にすると、僕らは先を争うようにキスした。
モジモジと忙しなく薄膜をたわませ合い、欲張って舌も絡める。
響子さんがあらためてM字開脚の体勢になったところで、僕も膝立ちの脚を開いて高さを整えた。
反り返ろうとするペニスを右手で水平にし、そっと腰を寄せて彼女の淫裂にあてがう。
程なくして、熱いぬめりにまみれた亀頭は裂け目の下端に辿り着いた。
その奥にささやかなくぼみを探り当て、僕はワクワクとした期待に胸を逸らせる。
「入るね」
「うん……」
一言確認してから、そっと響子さんの方へ身を乗り出すようにした。
ツヤツヤのパンパンに膨張している亀頭は、それだけでヌルッと彼女の膣内に没入する。
「「あああっ……!」」
僕も響子さんも異口同音、結合の悦びによがり声をあげた。
そうはいっても、ペニスはまだ数センチほどしか挿入を果たしていない。
僕はきつく目を閉じて膣内の快適さに浸りつつ、両手を響子さんの横に突いてさらなる挿入を再開する。
亀頭がまるまる没入したわけだから、添えていた右手を離したところでペニスは反り返って抜け出たりしない。
亀頭が膣口をくぐってから、一センチ、二センチ、三センチ、と少しずつ。
太々とたくましいペニスは、ぬかるむような水音を立てながらゆっくりと響子さんの膣内に挿入されてゆく。
「あっ、あっあっ……や、大きいっ……ん、んんっ!」
「んっ、く、ふっ……! ん、ぅんんっ……」
そして僕が両の肘を突いて彼女に寄り添ったところで、亀頭は膣の行き止まり付近に辿り着いた。
行き止まりというには語弊があるが、太々としたペニスにしてみれば、子宮口は行き止まり以外のなにものでもない。
「はふぅ、ん、んっ……あったかくって、気持ちいい……」
「うん…ホント、あったかい……」
僕らは深く繋がり合った心地良さに感動しきりとなった。
誰に聞かれたわけでもないのに、その悦びが口をついて出る。
僕は響子さんのぬくもりと、ヌメヌメと絡まりついてくる襞の感触に陶酔した。
うっとりと惚けた表情のまま、先程から恍惚の溜め息が止まらない。
「響子さん……さっきから溜め息ばっかり吐いてる」
「だって、嬉しいもの……。そういうあなただって、さっきから溜め息ばっかりじゃない」
「そ、そうかな……。あんまりあったかくって、気持ちいいから……」
汗まみれになりながら重なり合う二つの裸身。
お互いの存在を確かめるように強く抱き合いながら僕らは絶頂の階段を駆け上る。
それこそ、獣のように腰をふりたくる。
「くっ……! 僕もそろそろ……!」
「うん、一緒にイきましょう? あっ、アアッ、ああ……!」
「きょうこさん……僕もイクよ、僕も、きょうこさんの、中でっ……」
「うんっ、きてっ、きて……!」
互いの汗と粘液でぐっしょり濡れているシーツの上で僕はラストスパートを駆ける。
激しい勢いそのままに、肉の打ち合う音が部屋に響く。
響子さんの両手が僕の首の後ろに回る。
「きょうこさんっ! イクよっ! イクッ……イクッ!!」
僕はきつく響子さんを抱き締めながら力の限り叫んだ。
とどめの一撃とばかりに極端な角度でペニスを突き込み、響子さんの子宮口を強く擦り付ける。
その瞬間、彼女はきつく目を閉じて全身をゾクゾクと身震いさせた。
「イクッ! イクいくイッちゃう!! んっ、んぁあああっ!!」
僕はきつく響子さんを抱き締めたまま、彼女の膣内で思う存分に精を噴き出させた。
響子さんも膣内に射精される心地に、仰向けの身体をぴくんぴくん打ち震えさせて鳴く。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
妊娠を厭わない夫婦同然のセックスを終えて、僕らはぐったりと脱力して折り重なる。
体重をかけ、あるいはかけられていてもそれぞれの絶頂感で恍惚となっているからお構いなしだった。
二人で荒い呼吸を繰り返し、静かに目を伏せて余韻に浸る。
「凄く良かったよ……。響子さんと一緒に溶け合った気がしたみたい」
「私も……」
胸をいっぱいにしていた愛欲は絶頂感と共に解放され、今では爽やかな幸福感がその代わりとなって満ちてきている。僕は繰り返し安堵の溜息を吐いた。
幸せだった。本当に幸せだった――。
射精を終えてなお、こうして繋がったまま抱き合っていられることが心から嬉しい。
「響子さん……」
僕が甘えた声で呼びかけて彼女を抱き締め直した。
そして気付く。彼女の眦に薄っすらと涙が零れていたことに――。
「どうして泣いているの……?」
「ごめんなさい、わたし……気持ちも身体の感覚もいっぱいになりすぎて……」
右手の親指でそっと涙を拭ったら丁寧に響子さんの頭を撫で続ける。
僕の愛撫でくすぐったそうに目を細めながら、彼女が言葉を続ける。
「多分……きっと嬉しくて、気持ちよくて大好きで……。でも初めてだからよく分からなくて、ごめんなさい……。だけど、だから……!」
「もういいよ、響子さん。……ちゃんと分かっているから。響子さんの気持ちは……ね?」
やがて響子さんも僕の背中に左手を伸ばし、そっとその身を抱き寄せてくる。
僕も響子さんの背中に右手を伸ばし、腕枕している左手とともに彼女の身をしっかりと抱き締める。
情熱的なセックスで疲れた身体に、抱擁のぬくもりは最高の安堵をもたらしてくれる。
僕も響子さんも、うっとりと溜め息を吐いて見つめ合った。
そして――。
――僕らは愛という名の希望に微笑む。
END