「メリークリスマス」

そんなバカな事を言いながら部屋にやって来たのは、やっぱりバカなサンタだった。
私はそんなサンタ、期待してなかったよ。

「はっ?いや、オメーが『大切な人が欲しい』って書いたんだべ?」

いやいやいやいや!!
まず第一、私はそんなバカみたいな事は書いてないし!
そんで望んだとして、あんたみたいなバカじゃないし!
ストレートに言ってやった。

「おいおい…オメー、マジで言ってんのかいな」

妙にマジな表情だから、引き込まれかける。
けれど私は知っている。
こいつのマジな表情は、どーせ何も考えてないんだって事。

だってこいつは。

葉隠康比呂は。

…バカだ。

それも!そこはかとなく!! 


私の事なんかどーでもいいんだ。


…なにこれ。
文章にしたら、私が葉隠の事を気にしてるみたいじゃん!
なんか、ムカつく。
一発殴らせてよ、葉隠。

「はあぁ!?何でそーなんだ?!」

そうなるもなにも、あんたがここにいるのが悪いんだからね。

「いやいや朝日奈っち?もっとさ、穏便に済ませられんの?」

済まさないね。
何たって、あんたがここにいるのだから。

私は確かに、お祭りとか、日本が祝うべき祝日とか、そう言ったモノにあまり興味がない。
最近だ。
さくらちゃんに「祝日には日本の文化や、先人の想いが込められているのだ」とか教えてもらった。
そのおかげでようやく、ようやくその祝日とか、そんな「祝うべき日」に、興味が沸いた。
そんなレベル。

どーせクリスマスイブなんかなんもない。
クリスマスなんかもっとなんもない。

プレゼント欲しがっても。

どーせ。

私には、何もない。


記録を伸ばせたのは、私自身の力だと、信じてたから、かもしれない。
あるいは、その時のコンディション?

でも、

誰かからもらうもんじゃない。



記録や記憶や、いわゆる【超高校級】以外に私が欲しがったものって何だろう?

「…ん?」

眼前の相手が、小首を傾いだ。

腹立たしい、
けれど、何故かソレを言及する気にはならない(勿論その理由のひとつには、彼の普段の様子が含まれているのだろうけれども)。


「欲しいんでねーの?」


その次の言葉が想定出来た自分に感服と同時に失望感も味わう。


「…彼氏。」


そして、それがどーせ見つからないならば、この眼前の相手で我慢しようかなー?とか思ってた自分が余計にイヤになったりとか。

彼氏はいらない。

それは、ちゃんと伝えてあげた。
何故、と聞く人もいるだろうからちゃんと答えておくけれども。
理由は割と簡単なものだったんだよ。
メンドいからだよ?

それに、


と、言い掛けた現実の私の唇が塞がれる。
何か息苦しい。

と、

同時に何故かいとおしい。
なんかね、満たされている気さえするよ。

あんたがいるから?

まさか。

あんたみたいなバカ、


相手にしないよ。
だってバカだし。


「はあぁ?!」

相手からは大きな声が上がった。
バカだからこその大声だ。

そんな感じ。

だけれど。

「オメーがキスしたんだべ」


なんて、バカみたいなせりふが返って来てさ。


どっちがバカなんだか。


何だか外が騒がしい気が、する。

「なぁ、知ってっか?朝日奈っち」

うっとおしい位の笑顔とうっとおしい髪の毛が眼前で揺れている。
あんたなんかに教えてもらう事なんか、何にもないのに。
それでもどや顔崩さずに、彼は言う。


「夢っつーのはよ、人の深層心理が現れるもんなんだべ」


…は?


…えーと。

は?

いきなり何で夢の話?

と、思った、次の瞬間には、


目が覚めていた。


ああ、そっか。私---

目が覚めたら私は自室にいて、
その体はベッドの上にあって、
枕元に何故か水晶玉が置いてあった。

---そうだ、私。
コロシアイ学園生活を生き抜いて。
未来機関、って言うよく分かんない人達に助けてもらって。
あの、無くしてた2年間の学園生活の記憶をようやく取り戻して。
今日はゆっくり休みなさい、って言ってもらえたし、ベッドでぐっすり寝てたんだ。

慌ただしかったから、日付にまで気を回す余裕がなかったな。
夢のせいで思い出したけど、今日はクリスマスなんだね。

って事は、この水晶玉はプレゼント?…うっわ、いらない。
苗木なら「しまった…!」とか言いそうな位、いらない。
なんとご丁寧に、メモが残されている。


『サンタより
ラッキーアイテムは水晶玉
お値段なんと今日だけ50万円』


…いや、おかしい!

何がラッキーアイテム?
サンタはそう言う事する人じゃないし!
しかもあんた、お金取るの?!
サンタと言うよりこれじゃサギだ!

そんな事するヤツはひとりしかいない。

すっきりした頭と体で、ベッドから飛び起きる。
服を着替えるのも面倒だから、パジャマのままでそこに直行。
もう、鍵をかける必要も、人目を気にする必要もないその部屋に、向かう。


「あ?朝日奈っち、もう起きて---」

そいつがベッドで呆けた顔をしたから、
私はとりあえずその上に飛び込む。

ぐえっ、と小さな呻き声が聞こえた気がするけど、無視しておく。

「もうっ!」
「ちょっ…オメー元気だな…」
「誰のせいだと思ってんの!?」
「はぁ?!」

あんたのせいだよ。
あんたがあんな変な事するから。
あんな変な夢の中に出て来るから。

「あんたなんか、私…だいっきらいだからね!!」

イライラする。
でもなに、あれ?何この感じ。
何かもやもやする、むずむずする。

「…傷付くべ、朝日奈っち…」

相手は変にしおらしい。
もぞもぞしているし、私はその上から降りると布団をひっぺがしてやった。
寒いと言わんばかりの顔をしてくる。再び無視!

「あんたがあんな事するからでしょ!」
「っつー事は見てくれたんだな?俺のプレゼント!どーだべ?俺にしてはなかなか粋な…」
「どこがよ!あんたホントにバカ。バカ通り越して、バカ」
「えぇ!?一周してんのかいな!」
「もう、うるさい!」

学園生活で当たり前だった、バカみたいなやり取り。
今ようやく戻ってきた、それでもまだ曖昧な一瞬だけの平穏。
嬉しいような悲しいような、複雑な感情が込み上げて来て、思わず目の前がにじむ。

自分の目の前が歪んだから、葉隠が何してるかよく見えないけど、
あいつは多分起きあがって、ぽんと私の頭に手を置いた。

「泣きたい時は泣くといいべ」

…何で、分かったの。

「俺の占い---いや、直感だべ」

…むかつく。

じわり、と涙がこぼれ落ちた。
今こうしていられるのは、さくらちゃんを始めとした仲間達の犠牲の元だ。
だから私が、私ひとりだけでも、簡単に幸せになっちゃいけない気がした。
それでもこうしてたわいもない会話をするだけで嬉しくて、その度さくらちゃんの事を思い出して悲しくて、
このどうしようもない感情が溢れ出て来て涙が止まらなくて。

「…ムラムラすんな」

そんな私の心情を、まさか空気が読めないコイツが読める訳が無かった。
そうだよね、そうだった。
葉隠はバカだし、私も…そんなに考えるのは得意じゃないし。

「なんでいきなりムラムラしてんのよ、あんた…」
ポロリとこぼれる、涙。
「オメーの泣き顔がこんなかわいいもんだと思わなかったから?」
なんで疑問系なのよ。
「つーかリアルな話、女なら誰見てても興奮はするもんだべ、男ならな!」
男ならな!じゃないよ葉隠バカもう!

それでも「あんたなんか死んじゃえばいいのに!」とは言えなかった。
本気でもなく、ましてや冗談でもそんな事言えない。
いなくなって欲しくない。

…いなくなって欲しくない?
私が?葉隠に?

いやいやいやいや。
おかしい、それはおかしい!
私は別に葉隠の事なんか、何とも思ってない---むしろ嫌いなのに、いなくなって欲しくない?
もやもやする。
何かがおかしい。

「…分かってんのかいな、朝日奈っち。密室に男と女がふたり。この状況、オメーは俺に襲われても文句言えねーぞ」

荒んだ学園生活の最後の方で聞いたみたいな低くて冷静な声がする。
未来機関の人が語るに、そう言う事をする絶望した人は少なくないらしい。
あんたは絶望してはないけど、欲望はしてるのね。

「はぁ…」
すっかり涙も引っ込んできた。まだもやもやはしてる。
「溜息つく事ねーだろ?俺は真面目にオメーの心配をだな…」
「心配ぃ?あんた自分がヤりたいだけのくせしてよくそんな事言えるね!」
「あ、ああ…」

またそれ。自分の旗色が悪くなったらそれしか言えなくなる。

「………」
何よ。何にも考えてない、真面目な顔して。
「…朝日奈っち」


刹那、時間が止まったような、気がする。

唇を、塞がれていた。

「~~~~~?!」

き、き、き……キスされてる?!私、葉隠にキスされてる!
自覚が芽生えたのは、行動開始から1秒程のスパンが開いてからだった。
唇同士を触れ合わせるだけの口づけ。
何か言おうとした私が口を開いたのをいい事に、そこから舌が入ってくる。
口内をぐちゅぐちゅとかき回すみたいな舌の動き。
離して欲しくて腕を暴れさせようとしたけど、口が苦しくて上手く行かない。
初めての大人のキス、ってヤツだった。

…私、ようやく葉隠がハタチ越えてた事を思い出した。

どすん、と着地して、唇が離れる。

え?

私の背中がベッドに着いた。
大きな体が上から被さっている。
い、いつの間にか寝かされている?!

真剣な顔をした彼は肩を上下させながら、右手で私の体を触り始めた。
な、何すんの!と言おうとした私の口は声が出ない。
キスされてるわけでもないのに、さらに言えばこう言う事は嫌いなのに。

パジャマの上から右手が私の右胸を押した。柔らかい胸は簡単に力に沿って形を変える。
揉まれてる、んだ。胸を、揉まれている。
自覚が次々と沸くとどんどん恥ずかしくなる。
と、次の瞬間。

「っぁあ!?」

ビクン、と体が本能的に反応した。
葉隠の左手が、パジャマの上から私の股間に触れていた。
な、にこれ…?初めての感覚。嫌がる隙も与えてくれない程、鋭敏な感覚。

「やっ、あんた…こんな事して…どうなると…!」
「まあまあ、怒るなっての朝日奈っち」
「怒るよ!…っく…!?」
「実際、オメーこれ嫌いじゃねーんじゃねーのか?」

やっぱあんたムカつく!!

右手が胸の先端を、左手は私の恥ずかしいところを、それぞれこすっていた。
体に変な感じがしてきて、次の句を告ぐのも難しくなる。

「…朝日奈っち、」

何?葉隠。どうせ大した事言わないんだろうけど。

「俺、俺…どうやら、オメーの事を想像以上に好きになっちまったみたいだべ」

…ほら、大した事じゃない。

「……ほえぇぇ?!」

どうしよう、ついバカみたいな声をあげてしまった。
唖然とする。言葉の意味が染みてきて余計に茫然とする。

「だから、」

そこで区切られた言葉の次を想像する事は、私には出来なかった。
両手の動きも既に止まって、彼は真剣な顔をして私の方を見てくる。

「…オメーが欲しい。」
かっこいい、台詞
「貯金もまぁ…今は無くなったようなもんだけどよ、オーパーツ以外に金払ってもいい、って思えたのはオメーだけだ、朝日奈っち」
…なわけなかった。

がっ、とパジャマを掴まれた。
真剣な顔をしたままの葉隠が、私の下の方をぬが、ぬ、脱がそうとして…!

「ちょ、ちょっ…!?何してんのよ!」
「何ってこれからクンニをだな…」
「はぁぁ?!」
「ん?知らんの?」
「そう言う事じゃない!何勝手に私を脱がそうとしてんの!」
「…なるほど」
「何がなるほど、なのよ?」
「お互い同意の上、が一番いいとは思うけどよ、そう言うプレイが好きならそう言えって朝日奈っち!俺も嘘かホントか分かんなくなるべ?」
「ホントじゃない!止めて!お願いだから!」
「はっはっは、そうは言っても朝日奈っち?俺とオメー、どちらの力が強いかな?」
「そりゃ私でしょ」

私鍛えてるし。あんたとは違うし。
けれどコイツは諦めない。
パジャマを脱がせる力に勝てずに、布を纏った下半身が露わになる。その布すら、こうして描写するのも躊躇われる位容易く脱がされて、

私の下半身は生まれたままの姿で、葉隠の目の前に出てきたわけで。

そしてその秘所に、彼が思いきり唇を付けた。

「ひ、ぃ…っ」

やっぱり、変な感じがする。
生暖かくてぬるぬるした生き物、例えるならあったかいナメクジ?
そんなモノが私の恥ずかしい場所を動き回っていた。
私の心が嫌がっても、体がソレを許さない。悔しくて、悲しくて、でも少しだけ嬉しい。
ぬるり、と舌先が私の先端に到達した。
びりびりする。

「ひゃ…!あ、あうっ…!」

息が苦しくなる。
スイマーとして体は鍛えて来たし、肺活量だってそこそこあると思うんだけど、上手く息が、出来ない。
声を押し殺す事も、出来ない。
なんで、なんで私、抵抗しなかったんだろう、と今更思った。
ちろちろ器用に動き回る舌先で、私の一番反応がいい場所を探されていた。
男の人曰く、先端部の皮を剥くとかなんとか、をしているらしい。
葉隠って妙に器用だよね、そう言うとこ。そう言えばモノクマの解体もやけにすんなりやってたし…。
などと、関係の無い事を考えていたら、
そこは簡単に見つかった。

じゅるり、と吸い上げられる。

「か、っあ…や…!」

今までよりも大きく体を振ってよがる。
そこ、が、イヤ。だけど、そこが、いい。
矛盾した言葉が喉の奥で詰まる。

全体をぬるぬる、ちゅるちゅると舐められて、舌が敏感なところをごしごし擦ってくる。
その度に私は大きな声を上げて、腰を浮かせてしまう。
葉隠はその意味をよく分かっていて、そこばかり舐めて吸い付いて、

あ、

私、もう、

「…っぁぁあああ!!」

体が反った。何も考えられない、脳の中身がからっぽになったみたいな。
体の奥から全身に向けて、心地のいい波が押し寄せる。
ひくひく、とだらしなく、恥ずかしい気持ちも抵抗の気持ちももはや無く、私はそこに下半身丸出しで横たわっていた。

「…どーだ!俺の大人のテクニックで、まだまだ子供な朝日奈っちもイチコロだべ!」

対して葉隠は、その言葉のわりにぜーぜー言っていた。
あ、こいつも苦しかったんだね。

「…な、にが…イチコロよ…」
「ん?でも気持ちよかったんだべ?」
「…わかん…ない」
「けどよぉ、気持ちよくねーんなら、あんな声は出さないんじゃねーか?」
「もうっ…バカ…」
「アッハッハ、俺に惚れたか?」
「ぜんっ…ぜん…、やっぱり嫌い…」

けろっとしているのが余計イヤらしい。
葉隠は何だか脳天気な顔をしたものの、一瞬ベッドを離れてなにやら室内をごそごそし始めた。

「……なに、してんの?」
「何ってナニを何する準備だべ」

はい?

えーと、はい?

私の耳がおかしくなっちゃったのかな?

とは言え動く気力がない私は横たわっているだけだった。
次に私の前に戻ってきた葉隠が全裸だったので、さすがに逃げようと思った。
それでも全身に力が入らない。
初めて見る男の人の股間。グロテスクでいて、それで人の体の一部って言うのが何か怖い。
いつか保険の授業でやったみたいに、コイツは先端に何か付けていた。

「大丈夫だいじょーぶ、確かに初めては痛いって言うけどよ、そこは俺も気を利かせたり利かせなかったりすっから」
「…どっちなの?」

きっと、利かせないんだろうなー。


私もなかなか脳天気だった。
それがどう言う行為なのかよく分かっていない。

私の股間に、赤ちゃんが出て来る場所…だよね?の入り口に、堅いモノが押し当てられる。
それホントにあんたの体の一部だよね?模擬刀じゃないよね?

めりめりめり、と擬音が聞こえてきそうだった。


「あぐっ……うあああっ!い、たいよ!や…やめて…!」

声が、悲痛な叫びになってしまった。
ソレは強引に私の中に入り込んでくる。
私を、私の中を、葉隠が犯しにくる。

結局葉隠が気を利かせたりする事なんか有り得なくて、その堅いモノが全部入りきるまではコイツは止まらなかった。

「ああ…っ…、わ、たしのおなかの…なかに…あんた…!」
「ああ、入ってる」
「っ…!」
「やっぱりオメーはきつきつだべ、最高だべ!なんならもうイッちまいそうな位だべ」

おお卑猥卑猥。

痛みはすぐには収まらず、私の中でソレが動かずにしばらく沈黙する。
脱がされなかった上が妙に恥ずかしい。
お互い見つめ合う形で数回、卑猥な会話を繰り返す。
お腹の異物感もやっぱり無くならなかった。

「そろそろ動くか」

こっちの気も考えないで葉隠は言った。
本当に今更だけど、何で生き残ったの、こいつ。

先端が、私の最奥を一度つん、とつついた。
と思えば今度は逆戻り、ずるずると抜けていく。
お腹の圧迫感が抜けていく。

「行くべ」
「へ?」

ソレがゆっくり、再び侵入を始めた。
せり上がる違和感に私は口を開く。がりがりと壁を削られているような感じもしている。
そこから、何度かゆっくりと葉隠が私の中を前後して、私の体はその異物を受け入れようと努力しているようだった。
びくんと私の中で震えるソレはあったかくて、堅くて、とても男らしいものだった。

「だいーぶ慣れてきたべ?」
「なれ…てはない…、けど、苦しくはない…よ?」
「俺も相当我慢したべ、そろそろマジで動くからな」
「…う…痛くしたら…」
「何事も快感と痛感は似たようなもんなんだべ。ちょっと位痛いのは仕方がねーべ」


意味が分からない理屈を並べた葉隠は、何故かきっぱりそう言い放つと、私の両肩に手をかけた。
熱が籠もっている。とても熱い手だ。

ずん、と衝撃が走った。

さっきよりも内部で動き回る速度が速くなっていく。
だからさっきよりも、やっぱり苦しかったし痛かった。
そしていつの間にか、私のそこから、ぬちょぬちょと水気のあるいやらしい音が立っていた。
それが私の体が葉隠を迎え入れる為に努力した結果、らしい。

ゴリゴリ、と奥の方を削られる。
「っんぅ!?」
痛かったはずの行動の中に、気持ちよさが加わった。
もしかしたら、私の急所を葉隠が見つけたのかもしれない。

腰の動きが、体内の動きが次第に速さを増していく。
その度その度、濡れた音とゴリゴリした歪な快感が体に響きわたる。

葉隠の息は荒かった。
ついでに言えば目もかなり本気だった。

「あ、朝日奈っち…」

その相手は、急に胸を締め付けるような声を上げる。

「な…なに?…葉隠…」

されるがままの私も、声を出す。

「俺、おれもう…」

彼が何か言おうとして、その大きな背中がビクッと痙攣するように震えたのを、触れ合った体で感じた。
あ、と喉の奥から絞り上げたような低い声の後は、言葉の代わりに先端から性の奔流を放った。
熱い、と思ったけど、避妊具越しのソレが私のお腹を犯す事はなかった。
数秒の間、動く事を止めた葉隠がビクンと震えていた。

ぽたぽた、何か落ちてくる。
葉隠の額からこぼれた汗だった。


しばらく、そのままの体勢でふたり、黙っていた。
私は、こいつに、たった今目の前のこいつに、ヤられた。
お腹の奥がジンジンと痛んでくる。

ようやく乱れた息を整えた葉隠が、私の中から抜け出していく。

「…やっぱり生身の女は最高だべ、うん。最近は右手にお世話になりっぱなしだったしよ、何よりオメーの体は最高だべ」

改めて最低だ、こいつ。

何でこんなヤツを、拒めなかったんだろう。

「…あっそ」

まだ起きあがれない私は、ごろんとベッドの上で横たわったままその声を聞いている。
下半身だけが寒い、何とも恥ずかしい体勢。
ばさっ、と何かが私を覆い隠した。

…布団?

「まぁ、そこで寝とくべ。初めての子に無理さしちまったし…すまん」

行為をした事は謝らないんだね。
…と、言及する気にもならない。

夢が私の気持ちを表すものなら、多分私は受け入れたくなくても、こいつを好きになってしまっているんだから。
……有り得ないよ。
私、彼氏もいらないし、あんたの事も好きじゃない、のに。

それでも、こんな葉隠でも、何故か傍にいて欲しいなって。
そう思った。



「こうして俺達の夜は性夜になったわけだべ!アッハッハ!」
「やっぱりあんた死ねばよかったのに…」
「えぇ?!朝日奈っち、なんつー事言うんだ!?冗談にしちゃー笑えねーぞ?」
「冗談じゃないもん!バカ!嫌い!」

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最終更新:2012年12月26日 13:50