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舞園さんのきれいで長い髪が顔にかかって、シャンプーのにおいがする。浴場で使ってる嗅ぎなれたにおいのはずなのに、胸が破裂しそうになった。
「ん…」
舞園さんの唇が少し動いて、こすれる。柔らかい、とても柔らかくて…それ以外に思いつかない。
「ん…ふぅ…」
唇が離れて、舞園さんは軽く息を吐いた。とろんとした、力が抜けたみたいな眼。僕の方に向けられている。
「苗木くん…うれしいです」
ベッドの上の手がぎゅっと握られた。あったかい。女の子の手はみんなこんなにあったかいんだろうか。
「舞園さん」
本当に僕でよかったの?と聞きたかった。でも、何だか聞くのが怖かった。たまたま、僕があの夜彼女の部屋に行っただけで。
たまたま、僕が舞園さんの側にいただけで。本当は、舞園さんはもっと、立派な、他の人とキスするべきだったんじゃないかなと思えて。
「苗木くん…好き。大好きです」
でも僕は舞園さんが好きだ。もう憧れじゃなくて、同情でもなくて好きだ。
「…僕も、舞園さんが好き。ずっと、一緒にいたい」
心が折れてしまった舞園さん。僕に依存して、どうにか保っている舞園さん。
霧切さんや十神君はそのことにとっくに気づいているのかもしれない。
「苗木くん…苗木くんっ…」
舞園さんに抱き着かれた。僕はちびだから、まるで舞園さんに包みこまれるみたいにベッドにあおむけになる。
本当は、このままじゃだめなのかもしれない。霧切さんみたいに、突き放して励ましてあげなきゃだめなのかもしれない。
「苗木くん…あったかいです…」
だけど、できない。臆病者で、卑怯者だけど、舞園さんにそんなことしたくない。もう壊れないように、大切に…守ってあげたい。
「苗木くん…ずーっと、ずっと…」
舞園さんがそのあと何を言いたかったのかよくわからないけど、僕は彼女をそっと抱き返した。
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