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21:50――。
自宅として宛がわれたワンルームに帰宅するともうこんな時間だった。
カバンをフローリングの床に無造作に置き、スーツの上着をハンガーに掛ける。
ネクタイを指で緩めたらワイシャツのボタンを上二つ分開くと、首元が緩くなったところで呼吸が幾分か楽になった気がする。
エアコンのスイッチを入れて蒸し蒸しした空間が涼しくなるのを待つことにした。

ベッドに横たわりながら今後の隠ぺい工作について考える。
明日の午後にはアルターエゴが15人分のバイオグラフィをデータで送ってくれることになっている。
ざっと30日分のデータから彼らが今も更正プログラムの真っ最中だという報告書をまとめて本部に提出する。
後は50日間という期限付きだけど、全員が"希望のカケラ"を回収しないと目が覚めないという条件を付けて彼らの意識が目覚めないことを言えば大丈夫な筈――。
文字通り"名前さえもない小さな事件"として本部に報告する。

そんな風にプランをまとめていたら瞬く間に僕は意識を手放したのだった――。


―――――

「んっ……」

蛍光灯の眩しさに目を眩ませていると近くに人の気配を感じた。
寝起きでボーッとした頭を動かしながら誰がいるのかを観察する。

その人物はフローリングの床に座りながら何かを啜っているような音が聞こえる。
鼻は食べ物の匂いを捉える。そういえば晩御飯、食べ損ねたんだっけ――。今更ながら思い出す。
視界が薄紫色の髪色を捉えると誰が僕の家に侵入してきたのかは一目瞭然だった。

「あら、起きたの?」
「うん、おはよう。……っていうか、いつの間に来たの?」
「電話しても反応がないから合鍵を使って入ったけど、思ったより疲れているみたいだからそっとしておいたの」

スラックスのポケットに入れていた携帯電話を取り出すと待受画面には1件の未読メールと2件の着信が表示されていた。
メールを開くと1時間くらい前に"今からあなたの家にお邪魔しても構わないかしら?"という簡素な内容だった。

「ごめん響子さん。気づかなくて……」
「いいの、私が勝手に押しかけてきたようなものだから。それとコレ、夜食代わりにいただいているから」

そう言って左手に持つカップGOKUBUTOのシーフード味を軽く持ち上げたのだった。
――カップ麺を見ただけでパブロフの犬のように勝手に口の中に涎が集まってくる。

「……美味しそうだね」
「あなたも食べる?」
「……うん」

ベッドから起き上がり、彼女の隣に並ぶようにしてフローリングの床にペタンと座る。
"はい、どうぞ"という一声と共に左手に発泡スチロールのカップと右手の割り箸が僕に差し出された。
"ん、ありがとう"と応えて受け取り、割り箸で麺を掬う。
息を吹きかけて軽く冷ましたら勢いよく啜りだす。

スープの味がしっかり絡まった極太麺が僕の口に広がる。
しばらくぶりの食事ということで胃袋がびっくりしているだろうけど、お構いなしに二口目を口にする。
このまま独り占めしてはよくないと隣を向くと"美味しい?"とローテーブルに頬杖を着きながら響子さんは僕の食べっぷりを眺めていた。
食べ物を口に含んでいるということでキツツキのように首を縦に何度も振ったら"全部食べていいわよ"と苦笑しながら僕に譲ってくれた。

その言葉に感謝しながら具のエビ・イカ・タコが入ったスープを口にする。
少しだけ温くなったスープで喉を潤したら再び麺を多めに掬って一気に啜る。
箸で摘むほど麺を掴めなくなったらカップを持ち上げて残ったスープと一緒に流し込んだ。

「……ぷはっ、ごちそうさま」

空になった発泡スチロールのカップをローテーブルに叩くように置く。
満腹には程遠いけど、腹八分目くらいは満たされたような幸福感が安堵の溜め息となって吐き出された。

「よっぽどお腹が空いていたみたいだけど、ちゃんと食べてる?」
「うん、なんとか。ご飯食べられなかったのは今日だけだよ、今日だけ」
「無茶は禁物よ、誠くん」
「わかってるって。あとちょっとで本部への隠ぺい工作も完了するからもう少しの辛抱かな?」
「待って。確か明日は私とあなたが非番の筈だけど……?」
「うん。けれど午後からアルターエゴがこっちにデータを送ってくれることになっているから僕は午後出するよ」
「言ってる傍から無茶をしているじゃない……」
「そうだね。でも僕一人でやることだって約束したことだし……」

つと、言葉を切って響子さんの左肩にそっと腕を回す。
そっと触れるとピクリと彼女の肩が揺れた。
人間の三大欲求である内の睡眠欲と食欲、その二つが満たされたら最後の一つも満たしたくなるのであった。


「あー、その、何ていうか……。ここしばらくはジャバウォック島の一件でバタバタしていたからご無沙汰だっていうのかな……?」
「…………」

俯いたまま無言の響子さんはどう思っているのかわからないけれど、耳の赤さから察するに拒んではないと受け取ることにする。
空いた右手を彼女のおとがいに触れて、僕と真正面から向き合わせるようにする。

「んっ、んんっ、んっ……」
「んぅ……ん、んっ、んんっ」

唇の弾力を確かめるようにして啄ばみ合う。
バードキスに夢中になる一方でムクムクと大きくなる自分の息子。
響子さんの太ももに擦り付けるように身じろぎしながら抱擁を強めていく。

「んぅぅ……ねぇ響子さん。いい、かな?」
「……好きにしなさい」

こういう時、主語のいらない日本語がこれほど便利なものはないと実感できる。
感謝のキスをしようと響子さんに顔を寄せようとしたら彼女の人差し指が僕の唇に押し当てられた。

「けど……待って。私もあなたも準備がまだだと思うの」

確かに。僕もまだお風呂に入ってないし、部屋も蛍光灯のまま。ムードのへったくれもなかった。

「うん、わかった。シャワー浴びて体を綺麗にするからちょっと待ってて」
「……ありがとう」

僕はそっと離れると玄関の脇にあるバスルームに向かった。


―――――

脱衣所でワイシャツ、スラックス、靴下、下着のシャツとパンツの順に服を脱ぎ全裸になる。
腕の辺りに鼻を持って行き体臭がひどかったのかチェックする。
――若干、いつもより汗臭いかも。その辺は響子さんにがっついて興奮したからってことにしておく。

浴室に入り、お湯の蛇口を捻りシャワーを出す。まず手を当てて程よい温度に温まったのを確認して僕は体をお湯で流すことにした。
次いで下腹部を中心に石鹸で念入りに洗っておく。
――こんなに元気にしちゃって、などと自分の息子の元気っぷりに苦笑しながらもこれからのことに心躍らせる僕であった。

バスタオルで体の水分を拭いて下着も穿かずにそのままタオルを腰に巻いてリビングに戻る。
すると部屋の蛍光灯は消され、部屋の隅にあるベッドのルームライトだけがぼんやりと点いていた。
ローテーブルを見ると僕が食べていたカップ麺も片付けられている。

そしてベッドにたどり着くとタオルケットに包まるように響子さんが横たわっていた。
もしかして、疲れちゃってそのまま寝ちゃったかな――? なんて思っていたら僕の気配に気づいたのか、もぞりと体を動かし僕を視界に捉えた。

「……お待たせ」

そっとタオルケットを捲り自分の体を潜り込ませる。
彼女は既に裸――ではなく、ブラウス一枚を寝巻き代わりにしていた。
そのまま抱き寄せると響子さんは僕の胸に寄り添い、背中に両手を伸ばしてくるのだった。

「「……はぁ」」

二人して自ずと安堵の溜め息が漏れた。
こうしているだけなのにバッテリーの充電みたいに満たされていく何か。
頬擦りしたりキスをして睦み合いながら彼女のブラウスに手を掛け、ゆっくりと袖から脱がすのであった。

「あ、ちょっと……」

お返しとばかりに彼女の手が僕のバスタオルに伸び、結び目を解いてしまう。

「……ふふっ」
「んぁっ……!」

響子さんは軽く微笑んでから左手を僕の股間に伸ばした。
優しく撫で上げるような手つきに思わず女の子みたいな声をあげてしまう。
それから響子さんはキスをしながらも丁寧に丁寧に僕の膨らみを撫でさすった。
下から上へ、緩急を付けながら彼女は左手から心からの慈しみを込めて僕のペニスを愛撫する。

「タ、タイム……!」
「? どうしたの……?」

幹を扱く音に湿り気が混じった音が出始めた頃、一ヶ月ぶりの絶頂が見え隠れしたので慌てて彼女の愛撫に中断を求めた。
響子さんは首を傾げながらもペッティングの手をピタリと止めてくれた。

「その、あまりに久しぶりだから敏感になっててさ……」
「あ、ごめんなさい……」
「いいよ。だから今度はこっちの番ってことで」

もぞもぞと体を動かして響子さんの背後に回る。

「ん、んっ、んっ……んふ、んんぅ」
「んぅ、んぅ、んぅ……すふ、すふ……んむっ」

バードキスをしながら響子さんの背中に手を伸ばし、触った感覚を頼りにブラジャーのホックを探す。
留め具を壊さないようにゆっくりと外したら腕からどかせるようにして胸部の拘束を解いた。

まずは両腋から腕を伸ばして下からすっぽりと包みこんで持ち上げる。
指の間から僅かに零れる膨らみを挟んで味わったら、ふもとからゆっくりと人差し指を登らせ、吸いつくような柔肌と少しざらつく頂きの間で触りの変化を楽しんだ。  
色素の薄い桃色の天辺を押し込むと、柔肉全体が慎み深い反発で僕の指先を歓迎した。  

「んぅ、んぅ、んぅ……あ、い、いい……気持ちいい」

そういえば初めての頃は手の平にジャストフィットするサイズだった響子さんのおっぱい――。
気づけば年月や逢瀬を重ねると共に徐々に成長する様はどこか感動を覚える。
そんなことをしみじみ思いながら彼女の乳房を反時計周りに揉み転がす。

屹立した乳首から右手を離し、そっと彼女の股間に滑り込ませる。
ひとまず右脚の太ももに触れて、そこからゆっくりと撫で上げてゆく。
そこでふと思い出したのだった。爪を切っていないことに。
女の子のデリケートな部分を弄るんだからあまり深くは入れられないよね――。

そう自分に念を押しながら下着の中に指を割り込ませ、響子さんの恥丘を性毛ごと撫で始めた。
さざ波のような優しさで恥丘を押圧しながら、指の腹でのこぎりを入れるようにしてクリトリスを刺激した。

「あんっ! んぁ、はあんっ……! ん、んっ、んっ……!」

一番敏感な性感帯を愛撫されて響子さんは半ベソの声でよがり鳴いた。
爪を立てないよう細心の注意を払いながら膣内を軽く掻き回す。

「んんっ! んっ、んんんっ……! すふ、すふ、すふ、んぅう……」
「……ぷぁ。はあっ、はあっ、はあっ、まこと、くん……」

気持ちが昂ぶった状態でディープキスを堪能し、情熱的に見つめ合っていると名前を呼ばれたのでコクンと首を縦に振った。
響子さんの下着に手を掛けると腰を浮かしてスルリと脱がせてくれた。

そっとサイドボードの引き出しからコンドームの箱を取り出し、その一つを取り出す。
ビニールを破ったらタオルケットの中に頭を潜らせ慣れた手つきでスキンを装着させる。

とにかく、今は響子さんとのセックスで果てたい。僕の想いはひとつだった。
それでもこの一ヶ月は本当に寂しい想いをしてきた。
響子さんと裸の身体を重ね、心ゆくまで交わり合って、深奥で愛欲を満たしたいと願ってしまうのだ。


「……一緒に気持ちよくなろうね、響子さん」
「えぇ、誠くん」

挿入前の通過儀礼ともなっている言葉の遣り取り。
裸同士での抱擁でカラダだけでなくココロも満たす遣り取り。
僕はそっと彼女の手を掴んで抱き起こし、僕の太腿の上に乗せる。
対面座位――。僕らの好きな体位で一つになる。

「んっ……」
「はふぅ……ん、あったかくって、いい気持ち……」
「うん……ホント、あったかい。今日は特に、いっぱいになってるの、わかる……」

ペニスに手を添えていると響子さんが膣口に宛がい、ゆっくりと身体を沈めてくる。
愛撫もキスもピストン運動もせず、二人して一つに繋がったことを感動するように打ち震える。

「ああっ、んっ、あっ、は、はあっ、あん、ああっ」  
「はっ……あっ、くっ、はぅっ」  

お互いの身体を抱きしめ合いながら腰を動かし性感を高めていく。
呼吸を合わせるかのように上下で動いたり、円を描くように感触を確かめ合うように動いたり――。

「んっ、んっ、んっ……んんっ!」
「んぅ、ん、んぅ……んっ」

ねちっこくキスを交わしたまま繋がったりするのも僕らのお気に入りだった。
――でも、久しぶりっていうことで僕の方もあまり持たないかも。
抱き寄せた状態のまま響子さんをゆっくりとベッドに押し倒し、彼女の上に圧し掛かった。

対面座位から正常位に体位を変えたら響子さんの右手を左手で掴み、手を繋いで指を絡ませる。
体温の上昇で手袋の感触もどこか熱く感じる。
――前にそんなことを口にしたら"火傷で発汗機能が失われているんだから気のせいでしょう?"って一笑されたけど、彼女と手を繋ぐと温もりが伝わってくるのは確かだ。

そんな風に手を繋いだら響子さんは照れくさそうに微笑んだ。その愛くるしさに僕もその微笑につられて、そっとはにかむ。
まだまだセックスを楽しんでいたいけど、僕の方は数分も保ちそうにない。
そういうわけなので僕は"奥の手"を使うことにした。
少しでも響子さんを気持ちよくさせ、あわよくば二人で一緒に絶頂できるように――。


一旦膣の奥深くまでペニスを押し込む。
そしてぴったりとした吸い付きに逆らいながら慎重にペニスを引き抜き、膣口まで残り数センチのところで目指していた感触を探り当てる。
――ココ、だね。
僕の亀頭は、響子さんの膣のおへそ側に微かなしこりを感じて捉えた。

そのしこりは、ちょうど亀頭の表側と同じくらいの面積であり意識を集中させなければ感じ取れないほどささやかなものだった。
そこはGスポットと呼ばれる部分であり、俗説では七割弱の女性のみしか有していないといわれる性感帯である。
その感度はクリトリスよりは鈍いものの生じる快感はあたたかくて優しい。
彼女にとっては強烈な性感帯であり、僕にとっては正に"奥の手"であった。

「……お待たせ、響子さん」
「えぇ、きて。誠くん……」
「いいよ、いっぱいしてあげる」

響子さんのおねだりに承諾するように、しこりの前後だけに穏やかなピストン運動を繰り出す。
ただ往復するだけじゃなく、上下左右と微妙に腰の位置を微妙にずらして亀頭が膣壁に擦れる部分をランダムにさせる。

「あっ! あっ、ああっ……あああっ……!!」
「きょうこ、さん……僕も、気持ちいいよっ……きょうこ、さんっ……!」
「あんっ! ああんっ!! だ、だめ、だめえ……!!」

対面座位の時とは打って変わって、自然と笑みが失せてしまう。
僕も響子さんも辛そうに顔を顰めて押し寄せる快感に打ち震えながら性行為に没頭する。
熱い吐息を弾ませてせつなげによがるだけだった。

ピストン運動が立てる淫らな水音すら遠く聞こえるようになるほど、意識は愉悦に飲み込まれてゆく。
気持ちいい。本当に気持ちいい――。
まるで、身体中が性感帯になろうとしているかのように気持ちいい。

「ああっ! あうっ! ああんっ……! わたしっ、イキそ……イキそうっ……」
「きょ、きょうこさん……僕もイクよ……! いっしょに、いっしょにっ……!!」
「うんっ……うんっ……!」

押し寄せる射精欲に必死に抗いながら響子さんに宣告した。
彼女はしきりにうなずいてなすがままになる。

「きょうこさん! イクよっ! イクッ……イクッ……!!」

僕はきつく響子さんを抱き締めながら女の子のような声で叫ぶ。とどめの一撃とばかりにペニスを突き込み、彼女のGスポットを強く擦り付ける。
その瞬間、響子さんはきつく目を閉じ全身をゾクゾクと身震いさせた。

「い、イクッ! イクッ……んぁっ!! ぁああっ!!」

普段より一オクターブ以上も上擦った声が僕の耳元に響いた。

急激な身体の火照り――。
不安になるほどテンポの速い、膣口の締め付け――。
きつくしがみつく両腕――。

そんな反応を身体中で感じながら、僕もまた限界を迎えた。
力任せに響子さんを抱き締めながらコンドーム越しに彼女のGスポットに思い切りよく精液を噴出させるのであった。

「んううっ……!!」
「あああっ!!」
「くっ! くううっ……! んっ、んんっ、ん……」
「あっ……! ああっ! あっ、ああっ、あぅ……」

夢中でペニスを深奥へと突き込む間に、二撃、三撃、四撃と盛大に射精した。
僕も響子さんもきつく抱き締め合った正常位での膣内射精にすっかり夢心地となってよがり鳴く。
まだ一回だけの性交と言っても濃密な一時。
お互い呆然自失となり、ぐったりと抱き合ったままセックスの余韻に浸る。

「まこと、くん……」

そんな余韻に浸っていると響子さんが甘えた声で僕に呼びかける。
自分の名前を呼ばれただけなのに愛おしさがこみ上げてくる。
僕はそれに応えるように響子さんにゆったりと頬擦りをしたのであった――。


―――――

「明日、私も一緒に出勤するから」
「……えっ、それホント?」

事後の余韻に浸って裸で抱き合っていたら、響子さんが唐突に切り出してきたので思わず聞き返してしまう。

「あなたの仕事、手伝わせて?」

彼女の提案は今の僕にとって非常に魅力的なものである。
けれど――と、幾許か逡巡してしまう。

「……ありがとう。けど、いいよ。僕だけが出勤するから響子さんは休んでて、ね?」

辿り着いた結論は"No"という回答だった。

「……理由を聞かせてもらえるかしら?」
「うん。やっぱり今回の隠ぺい工作は僕だけでやらせてほしいんだ」
「ジャバウォック島で言ったことを根に持っているの?」
「それは違うよ。ただ……響子さんが仕事を手伝ってくれるのは僕にとって"支え"じゃなくて"甘え"じゃないのかなって思ってさ……」
「甘え?」
「うん。僕を"超高校級の希望"とか持て囃す局員もいるけれど、それは過大評価だ。仕事の処理能力は至って普通でたまにミスもするし、その度に響子さんや十神君にフォローしてもらってばっかりだ」
「……そうね」
「結局今回の一件だって僕一人で解決したわけじゃない。みんなの手助けがあったからこそ彼らを島に誘致できた」
「今度こそ自分一人で決着をつけたいの?」
「うん。ごめんね、意地っ張りで。いつまでも響子さんに引っ張られるカタチじゃなく、仕事でも対等にいきたいっていう僕のワガママにしか聞こえないけど」
「……いいわ。あなたの気持ちがわかっただけでも私は十分よ」
「ありがとう。いつまでもこのままじゃ"幸せにしてあげる"なんて言葉、とても言えないからさ」
「そう……誠くんは敢えて大変な道を選ぶのね。でも期待してるわ……」
「うん、頑張るよ……」


こうして僕らは再び睦み合い、愛情を、明日の仕事を頑張れる気力を彼女からさらに分けてもらったのだった。

――響子さんから希望を分け与えてもらった。


END
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