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霧切響子が死んで、学園の残りが五人になって。
最初に異変を見せたのは腐川冬子だった。
原因は分からない。ただ彼女の身体は衰弱していった。
高度な医療技術の持ち主でもいれば違ったのかもしれないが、幸運の持ち主にも、占い師にもスイマーにも、そして白夜にもどうしようもなかった。
元々、丈夫とは言い難い彼女だった。閉鎖環境ではちょっとした事でも悪影響を受けるのかもしれない。
うつる病気の類ではないらしかった。その不調が他の四人に及ぶ事はなかった。
彼女は緩やかに衰弱していき…穏やかに死んだ。

「十神」
冬子が亡くなって一週間程経った頃、白夜の部屋を訪れる者があった。
朝日奈葵。超高校級のスイマー。通り名こそスイマーだがスポーツ全般に万能で、今は亡き大神さくらと並んで体育会系女子として皆のムードメーカーになっていた。
彼女は白夜の肩に手を掛けて言った。
「私じゃ…腐川ちゃんの代わりにはなれないだろうけど…」
「何を言っているんだ」
莫迦な事を言う女だと思う。
代わりにはなれない?こいつは何を言っているんだ。それではまるで…まるで、白夜があの女の事を。
「俺はあんな女の事など何とも思っていなかった」
白夜の答えに、朝日奈葵は気の毒そうな笑顔を浮かべた。

冬子がまだ生きていた頃。
白夜は個室のベッドに横たわる冬子の側に立ち、何とはなしに手を握っていた。
「いつもより更に、臭うでしょう?」
「そうだな。臭い」
白夜の答えはいつも通り容赦なかった。しかし彼女から離れる事はなく、その手を放そうともしない。
他の三人も時折見舞いには来たが、冬子の世話をするのはもっぱら白夜だった。
「ごめんなさい」
「貴様の不潔さには慣れている。今更だ。俺くらいでなければ耐えられないだろうからな」
「あたし…」
眼鏡を外した冬子の眼の縁に涙が滲む。
「もう一人のあたしが、いっぱい人を殺してきたから…きっと罰が当たったんです」
随分と殊勝なことを言う。精神的にも弱っているのだろうか。
「大丈夫、怖くないです。本来はあたしなんかが生き残るのはおかしいんだから」
「お前なら大丈夫だ。憎まれっ子世に憚るというからな。ギャグキャラは死なないのがお約束だろう?」
白夜の軽口を聞いて冬子はかすかに笑う。
しばしの間、緩んだ空気が流れた。
けれど。
「嘘です。怖くないなんて嘘。死んだらもう白夜様に会えない。 蔑んだ目で見てもらうことも、罵倒してもらうことも出来ない…っ」
泣きじゃくる彼女の側で、白夜はただその手を握っていた。
「死にたくない…っ!」
その後、泣き疲れた彼女はそのまま眠りに落ち、二度と目覚める事はなかった。

白夜と朝日奈はどちらからともなく服を脱いで、ベッドの上で抱き合った。
朝日奈の胸ははちきれそうに豊満だ。引き締ったウェストに盛り上がった尻、肉感的ながらも長い脚。女性美の象徴のような体つき。
その大きな乳房に顔を埋め乳首を舐めると、朝日奈は小さな声を洩らしながらも白夜の頭を抱え込むようにして髪を撫でた。全身で白夜を包み込もうとしている身体。
朝日奈の股の間を指で開く。褐色の肌の中で、その場所は鮮やかなピンク色で、さしたる抵抗もなく白夜を飲み込んだ。ひどくやりやすい身体だ。
「朝日奈…お前はいい女だ。お前とあの女なら、百人中九十九人はお前を選ぶ」
苗木も葉隠もきっとそうだろう。ただ一人しかいない女を白夜が独占する訳にもいかないだろうから、あいつらにも分けてやらなければなと思う。
ここにはもう彼等四人しかいないのならば、朝日奈には男三人分の子供を産んで貰う事となる。際限なく白夜の欲望を受け止める彼女を見ていると、それも容易い事に思えた。
苗木にも葉隠にも、女は必要だ。

褐色の肌の少女の身体を貪りながら、病的に白い肌の少女の事を想った。
彼女なら白夜が求めればいくらでも体を開いただろうが、ついに最後までそのような行為はなかった。
きっと朝日奈葵とは何もかもが違っていただろう。安産型の朝日奈とは違い、華奢過ぎる彼女は一度の出産にすら耐えられるかどうか怪しかった。そもそも殺人鬼だ。あのまま生きていても、まったくもって彼の妻には相応しくない女だった。
あの時。
冬子の遺体に口付けた、冷たい感触を想い出す。
不思議と抵抗感はなかった。あれが彼女との最初で最後の、そしておそらく彼の人生でも最初で最後の。


 ---終わり---
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