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「舞園さん、突然悪いのだけれど今日の放課後は空いているかしら」
 午前中最後の授業前、お茶を買いに購買部に行っていた私は、帰りの廊下で霧切さんに声を掛けられました。
「今日、ですか? ごめんなさい。今日は収録の関係で三時ごろに早退させてもらうんです。だから放課後もちょっと……」
「そう……それは仕方ないわね。ごめんなさい」
 霧切さんは声のトーンを落とし、伏し目がちになりました。
 けれど、たったこれだけのやりとりで、私がここで言葉を足さなければいけない空気が出来上がっていたことにも気付きました。
 たとえば、「どうしたんですか?」とか、「別の時なら大丈夫だけれど……」とか。
 なぜならば――そろそろ霧切さんが接触してくるのではないかという予感が、私にはあったからです。
 なので私は当たり障りのない範囲から、彼女の『ワナ』に掛かることにしてみました。
「ええと、それって急ぎの用事ですか? もしそうだったらなんとか時間を工面しますけれど……」
 霧切さんの意図は、まず間違いなく苗木君のことについてでしょう。
 入学当初の様な他人を寄せ付けない雰囲気こそなくなったものの、霧切さんが物静かで、クラスメイトとのプライベートにおいて受け身であることに変わりはありません。
 ただひとり、苗木君に関することを除けば、ですが。
「……そうね、出来れば急いだ方がいいと思うわ。私にとっても、あなたにとっても」
 含みを持たせて、霧切さんは言いました。
 私も慎重に言葉を選び、聞き返します。
「ここではお話出来ないことなんですか?」
「ええ。ぜひ、二人きりで。そう時間はとらせないわ」
 やや強い調子になった彼女に、私は確信しました。無論、彼女もまた、私に本題を悟らせるつもりで、そのような態度をとったのでしょう。
「じゃあ、今日のお昼休みなんてどうですか? でも、学園に二人きりになれる場所なんてあったかな……」
 私の言葉尻を狙い澄ましたかのように霧切さんが口を開きます。
「場所はどうにでもなるわ。そうね……この校舎の屋上なんてどうかしら」
「屋上は開放されてないですよね?」
「大丈夫。錠前は外しておくから」
 こともなげに彼女は言います。
「昼休みが始まって十分経ったら屋上に来てちょうだい。それじゃ」
 それだけ告げると、霧切さんはさっさと行ってしまいました。
 堂々とした歩き方で、しかし足音は驚くほど小さいまま、彼女は遠ざかってゆきます。
 その背中に満ちた意志の強さを感じながら、私は『超高校級の探偵』を見送ります。
 どうやら、肝を据えてかかる必要がありそうです。
 買ったばかりのお茶を開封し、一口飲みました。
 ペットボトルから口の中へ移った液体は、苗木君が巻いてくれた黒いチョーカーを喉越しになぞり、お腹の奥へ降りて行きました。

昼休みになって五分後、私は一緒にお弁当を食べようと誘ってくれた朝日奈さんたちに詫びつつ教室を出ました。
 フロアを上り、屋上に続く最後の階段に辿り着くと、ぷんと黴臭いにおいが鼻をつきました。普段施錠されているこの階段にはより付く生徒もほとんどいません。
 踏みしめるように一段一段進み、冷たいドアノブに触れます。
 引いてもドアは開きませんでした。
 押してみると、重たいドアが軋みながら動き――
「うわぁ……」
 吹き込んでくる強い風と日差し、目に染みるような青い空。
 そしてまっさらなコンクリートの上にひとり立っている霧切さん。
 屋上に踏み入ると、足元の硬さが上履き越しに感じられました。
「手間を掛けさせて悪いわね」
 私から見ても羨ましいくらい綺麗な髪を靡かせ、霧切さんは言い放ちました。
「そんなことはないですよ。それで、どうしたんですか?」
 グラウンドからは、サッカーボールなどに興じる男の子たちの声が風に乗って聞こえてきます。
 そんな中、彼女は無言で掌を差し出しました。
 握られていたのは、写真の束。
 やっぱり、という台詞を、すんでのところで呑み込みました。
「舞園さん、この写真に見覚えはあるかしら」
 写真を受け取りつつ、捲りつつ、私は考えていました。
 ここで私が取るべきリアクションとはなんなのでしょう?
 よくある作り物だと笑い飛ばすべきでしょうか?
 イメージを傷付けられたと憤慨するべきでしょうか?
 あるいは泣き崩れて枕営業を強要されていると粛々と告白するべきでしょうか?
 これくらいしないと芸能界では生き残れないとスれた態度をとるべきでしょうか?
 どれも違うでしょう。
 絶頂に達している最中の写真を眺めながら、私は考えていました。
 ここで霧切さんが期待しているリアクションとはなんなのでしょう? 
 『コラージュの写真』に対する反応をされることでしょうか?
 『本物の写真』に対する反応をされることでしょうか?
 どちらでもいいのでしょう。
 霧切さんはきっとすべて分かったうえで、私がどう出るか観察している。
 コラージュにしろ本物にしろ、私が言い訳がましく述べるのを論破することが、おそらくは彼女の目的。
 だったら私は、彼女の土俵で勝負するべきではありません。
 写真に目をやったまま、私は独りごとのように言います。
「ああ、気付かれてしまったんですね。苗木君とのえっち」

こっそり盗み見た視界の端でぴくり、と彼女の身体が揺らいだような気もしましたが、その表情には一切の動揺もありませんでした。
「そう。私はてっきりコラージュかと思っていたわ。あるいは、いかにも週刊誌が飛びつきそうなタチの悪いネタか」
 余裕のある風に霧切さんは返してきましたが、私は自分の発言が間違った選択だったとは思いません。
 きっと彼女は、苗木君が私に奪われるのではないかと恐れたのだと思います。
 でも他人に無関心なようでいて、心の奥底ではそうでもない霧切さんのこと。
 人間関係に臆病ということもあるかもしれません。
 自分に怒る資格があるのかとか、問い詰めて苗木君に嫌われたらどうしよう、とか、そういうことにも思い悩んで、混乱して、持て余した感情の矛先を私に向けた。
 しかし感情をぶつけることになれている訳ではないから、ひとまず私の言葉の矛盾点を突いてゆくことで胸のつかえを誤魔化そうとし――そしてあわよくば私が身を引いてくれれば、と思った。
 完全な推測に過ぎませんが、このあたりが彼女の心ではないでしょうか。
 私が苗木君に処女を捧げた後それとなく訊いてみると、これが初体験ではないことを、申し訳なさそうに答えてくれました。
 そこでもう少し詳しく訊けば、霧切さんとのえっちが、初めて同士だったとのこと。
 あの霧切さんでさえ心を許してしまう苗木誠という男の子に空恐ろしさすら覚えつつ、それでも苗木君なら仕方がないかな、と彼に抱かれた幸せを思い出しましていました。
「それで、霧切さんは」
 写真を返しながら私は強気に尋ねます。
「私にどうしてほしいんですか?」
 霧切さんのスカートが風に翻っています。
 あの細い足の間にも苗木君は押し入り、私のと同じようにその純潔を奪ったのかと考えると、なんとも言いようのない気持ちになります。
 ここで氷の様に冷たい表情をしている霧切さんも、苗木君との交わりでは、顔を赤らめ、愛しい人の名前を何度も呼んで、優しい口付けにカラダを震わせたのでしょうか。
「別にどうもしないわ。私は只、これらがあなたにとって『身に覚えのない不都合なコラージュ写真』だったとしたら、その拡散を阻止してあげようかしらと親切心で思っただけよ。でも、その必要はないみたいね」
 霧切さんはそう言って笑みを浮かべようとしたようですが、表情は硬いまま、唇の端が少し吊り上がったばかりでした。
 私が開き直ったことで、私の嘘を論破するという目論見が外れ、それ以上の進展を望めなくなってしまったからかもしれません。
 そのまま屋上を去ってしまいそうな雰囲気さえありました。
「ああ、どうか安心して。私は『コレを広めたりはしないから』」
 でも、私は。
「――ひとつ、いいですか」
 霧切さんとお話してみたくなりました。
「なにかしら」
「霧切さんは」
 強い風が吹いて、私達の髪の毛が同じ方角にたゆたいます。
 その風に負けぬよう、しかし彼女を通り過ぎてしまうことのないよう、狙い澄まして言葉を紡ぎます。
 搦め手は弱気の表れ。直球勝負が効果的だと、何かで聞いた気がしました
「霧切さんも、苗木君とえっちなこと、したんですよね?」
 私達の視線と、それに乗った思惑が交錯します。

屋上に這い上がってくる木々のざわめきやグラウンドの誰かの声は、私達の足元で遮断されて、耳たぶに触れるのは沈黙しかありません。
 十数秒の間を置いて、霧切さんは首肯しました。
「ええ、私は苗木君と、身体を重ねたわ。でも、それだけ。あなたと苗木君の関係にどうこう言うつもりはまったく――」
「それってうそ、じゃないですか?」
 あくまでもはぐらかすような、本音を言おうとしないその姿勢に、私はだんだん苛立ちが募ってきました。
「嘘って、どういう意味かしら」
「正直に答えてください。さっきの写真、写っているのが私と苗木君だってこと、最初からわかっていたんじゃないですか?」
「どうしてそう思うのかしら」
「直感なんですけど、それじゃ霧切さんは納得しませんよね」
 試す様な視線を送ってくる彼女に、私は詰まりそうになる声を必死で繋ぎます。
「なんていうか、もし霧切さんがこの写真の『コラージュなのかそうでないのか』を問題にしているのだとしたら、もう少し慎重な態度をとると思うんです」
「慎重な態度、ね」
「ええ。被害を受けているかもしれない人物を突然呼び出して物を突き付けるっていうやり方は、どちらかといえば加害者にとる方法じゃないのかな、って」
「暗に、『私の配慮が欠けていた』ということを言いたいのかしら」
「いいえ。『超高校級の探偵』である霧切さんがそういう点で無思慮ということは考えづらいです」
 霧切さんはふふふ、と口だけで笑いました。
「誉められているのかいないのか分からないわね」
「誉めているつもり、ですよ?」
 お互いの笑みはすぐに引っ込みます。
「それで私が加害者という立場になり得るのは、苗木君が好きで苗木君とえっちなことをした霧切さんが被害者に相当する場合だから――と、言えばいいんでしょうか」
 被害者だの加害者だの慣れない言葉遣いに気後れしそうになります。
「私と苗木君がえっちなことをしている写真を見た霧切さんが何も思わないわけないんです――学園で見ている限り、霧切さんは苗木君のこと好きなんだから」
 私は断じました。
「あなたの論理は」
 霧切さんが口を開きます。
「仮定に仮定を重ねた、相手を論破するには不十分なものだと言わざるをえないわ」
 案の定、霧切さんは私のハッタリめいた言葉にすぐ気付いたようです。
「でも、着眼点や発想は論理を一足飛びして正解に辿り着いている。驚嘆するわ。まさに『苗木君の助手』ね」
 ――これは、霧切さんは全てを認めたということなのでしょうか。
 私は畳みかけます。
「霧切さんはどうしたいんですか? それも、別にどうもしないって言うんですか?」
 霧切さんのポーカーフェイスが僅かに崩れます。眉をほんの少しだけ顰め、私を睨み付けるような顔になります。
「『事情は全部分かった上』で、私をここへ呼び出したんですよね。それで、なんの意図も無いなんておかしいです」

カマを掛けたうえで相手の動揺を誘い、そこから自分に都合の良い方向へ誘導する――『超高校級の探偵』としてはごくごく初歩の交渉術なのでしょう。
 他の交渉事だったなら、私は霧切さんに勝てないでしょう。現に『議論』の単元では、霧切さんはクラスどころか学園全体でもトップクラスの成績を持っています。
 でも――たったひとりの男の子に関することなら、私は誰にも負けたくありません。
 私は彼のエスパーなのですから。
「でも、もしかしたら霧切さん自身がどうしたいか分からないのかもしれません。だったら判断を下しやすいように、私の方から全部教えます」
 霧切さんは腹の探り合いをするつもりだったのでしょうが、最初からすべてを開陳されていたら、果たして彼女はどうするのでしょうか。
 論理では冷静な方が勝つとしても、感情のぶつけあいでは冷静な方が有利とは限らないのです。
「その写真は間違いなく、私と苗木君のえっちの最中を撮ったものです。もっと言えば、『私が苗木君にお願いして』、写真を撮ってもらったんですけど」
 霧切さんは自分の手に握ったソレを、まるで悪魔の憑代を見るような目つきで一瞥しました。
「――どういう理由で写真を撮らせたのかしら」
 霧切さんが静かに訊いてきます。
「表向きは只の気まぐれです。苗木君には『枕営業を断る練習』って言いましたけど、彼も本気にはしていなかったと思います。本当の理由は」
 苗木君に滅茶苦茶にされている時の身体の火照りを思い出しつつ、私は告白しました。
「苗木君がそうしたいんじゃないかな、って思ったからです」


(あっ!! ひゃっ!! らめっ!! イッてるからっ!! イッってます、から!! あ!! あ!!)
(すごいや……舞園さんのぐいぐい締め付けて来て、千切られそう……!! ほら、ほら!! えいっ!!)
(ああああああああ!! な、膣内に出て、あ、ああ、ふぁああああああああああ!!!!)
(まだ寝ちゃダメだからね!! うくっ……それっ!!)
(あああっ?! そ、しょんなあっ!! ああ、んああ、ああ!!)
(ボ、ボクが飽きるまで、ずっとイきっぱなしにしてあげるっ!!)
(ああ!! こ、ほわれひゃいますっ!! にゃ、やぁ、あ、んあああああああああああああぁ!!)
(あ……うくっ、舞園さんに飽きるわけないや……じゃあずっとずっと、中出しでイかせ続けるからね……!!)
(んにゅうっ!! あん、あ、あにゃ、ふぁ、あ、ん、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああぁ!)


 霧切さんは怪訝そうな表情をしました。
 更に言葉を重ねます。
「霧切さんは感じませんでしたか? 苗木君に抱かれている時、『彼が必死に自分を押し止めて』こちらが苦しくないように受け身になっていることを」
 図星、のようです。
 霧切さんは息を呑み――そんな自分に気付いて「しまった」という顔をしました。
「苗木君は優しいから、『好きなように動いていい』って言っても躊躇っていました。だから、『私のために』っていうお題目で、『苗木君がしたいようにできる』理由を作ってあげたんです」
 泣いても懇願しても、あの柔らかい声で私を責めたてる苗木君が脳裏に浮かびます。


(うっ……舞園さん、そろそろイきたい?)
(ひゃ、ひゃい……ヒかせて、イかへてくらふぁいっ……ふ、ふぁああ……!! く、ふりとりふ、こすこすしちゃやぁぁ……)
(どうやってイかせて、ほしいっ?)
(お……おまんこにぃ、なえぎくんのおちんちんじゅぷじゅぷってハメて、えっちなせいえき、ぜんぶなからしひてくだひゃい……!!)
(アイドルがこんなにエッチなんて……皆に知られないようにしないと、ね)
(あ、な、にゃえぎくんらけです。えっちなまいぞのさやかは、なえぎまことくんのまえだけですぅ……)
(すごくうれしいよ、舞園さん……じゃあ、イッちゃえ!!)
(ああ!! おちんちんおまんこにくら……んやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)

「はじめは彼も戸惑っているようでしたけど。でも回数を重ねるうちに、苗木君の中のサディスティックな部分が浮き彫りになってきた気がします。それに」
 私はチョーカーに手をやります。
 昨夜苗木君が巻いてくれた、所有の証。
 長い鎖を付け、えっちの最中に私が気を失うと、ゆっくりと鎖を引き上げて意識を起こします。
 最初は犬の様に後ろから犯され、獣みたいに種付けされました。
 次におちんちんをおそうじして、私が苗木君に跨ってまた種付けされました。
 正常位で苗木君の愛を感じながら。朝まで種付けされました。
 生理の周期は把握していても、そろそろ本当に、孕んでしまうかも。
「私の中の、マゾヒスティックなところにも」
 首輪を触るたったそれだけの所作で、霧切さんはその意味を理解したようでした。


(苗木君。この首輪、私に付けてください!!)
(えっ、これって、ずいぶん上等なチョーカーだね……でもどうして?)
(苗木君が私のご主人様だからですよ。学園でも肌身離さず付けられるようシンプルなモノにはしたつもりです。鎖を付けるところもありますよ?)
(ご、ご主人様って……)
(イヤ、ですか……?)
(……ボクで、いいの? やっぱりボクなんかもったいないんじゃ)
(ここまでえっちなことをさせるのは、苗木君だからですよ? 苗木君はその責任をとって、私のご主人様になるべきなんです!!)
(……そう、だね。ありがとう、舞園さん。ボク、とっても幸せだよ。舞園さんみたいな女の子に選んでもらえて)
(えへへ……私も、うれしいです)


 ただ、頭で理解しただけで、とても信じられないといった雰囲気でもありましたが。
「優しくてかわいい苗木君。いじわるで、とっても甘い苗木君。どちらも本当の苗木君なんです。『私はそのお手伝いをしたかっただけ』」
「違うわ!!」
 珍しく――本当に珍しく霧切さんが声を荒げました。
 でも、それはおかど違いの指摘。
「なにが違うんですか? 間違ってなんていませんよ。私も霧切さんも間違えてはいないです。ただ、霧切さんは苗木君の優しい面だけを受け容れて、私は苗木君の意地悪な面も受け容れているというだけ」
 風に翻るスカートが私のひざ裏を摩って――あることを思い出しました。
「苗木君の意地悪な、独占欲の強い部分が信じられないなら――これはどうですか?」
 私はプリーツスカートの端を抓み、そろそろと持ち上げます。
 霧切さんの綺麗な目が痛いほど私の太腿を撫ぜて、たったそれだけで、つい今朝まで苗木君の白濁に塗れていたおまんこがまた潤みそうになります。
 下着が完全に見えるまでスカートを上げたところで、霧切さんの表情が変わります。
 訝しげな目付きがそこにある『何か』に気付き、『何か』が『何』であるか推測して驚愕の顔つきになりました。
「これが『何』か、わかりますか?」
 外気に晒した私の太腿には、水性ペンでいくつもの直線が引かれています。
 より正確に言うなら、『正』の字とその書きかけが、右脚と左脚に並べられています。
 『正』の字が数を数える時に使われるのはごく一般的なことだと思います。
 それが女性の太腿に書いてある時、一体何を意味するのでしょう?

霧切さんの為に、私は解説します。
「右が、苗木君の射精してくれた回数」
『正正T』
「左が私の達した回数」
『正正正正正正正正正正正正正正正正正一』
 霧切さんの顔が青ざめてゆきます。
「撮影で露出の少ない格好ばかりの時期だから、できる真似ですよね」
 私は恍惚とし始めている意識を自覚しつつ、苗木君との逢瀬を思い出してゆきます。


(……はい、またイッちゃったね、舞園さん。もう書き込むとこがないくらいだよ)
(あ、ああ……む、むりです、へったい、ぜっちゃい、なえひくんのおひんひんにはかへませんよぉ……あっあぅぅ)
(仕掛けてきたのは舞園さんだからね……じゃあ約束通り、イッた回数の半分、膣内射精させてもらう……ねっ!!)
(ああ!! なひゃだししゃれながらまたヒきますっ!! やあぁ!!! あ、でてるっ、あん、あん!! あついですぅっっっ!! あ!! あん、やああぁ……)
(はは、もう舞園さんのいやらしいおまんこ、ボクが出した精液であふれかえってるよ? もったいないなあ、こんなにどぷどぷこぼしちゃって……)
(いやいやぁ、ひ、ひわらいれぇ……もうむりれふぅ……おなかぱんぱ、ん、んあぁ……あっ、あぅ)
(またちょっとイッちゃってる……ヘンタイだなぁ、舞園さん。こんなにおまんこヒクつかせてさ……まだまだ欲しがってるみたいだよ)
(や、やぁ、そんなこと……いやっ!! あんむ、んちゅ、ぷはぁっやぁあっ!! もう、もうむりで、んああああああああ!!)
(キスされてイッて、おっぱい捩じられてイッて、おまんこ突かれてイッて、中出しされてイッて……一体何回、イけるか、なっ!!)
(あ、ふぁ、あ、あ、あ、ああ、ああ、ああああ、あ、んあああぁ……!!)
(あーあ、一突きごとにイッちゃってる。せっかくの可愛い顔が、汗と涙と鼻水でめちゃくちゃだよ? ヘンタイな舞園さん……)
(ふぁん、あ、んあ、や、あ、あへぇ、え、ぇぇぇぇ……)

「この『正の字』は、えっちな小説で知ったんです。その小説では、女の子が男の人に性奴隷にされてしまうんですが、ハメるたびに女の子の身体に記録を残していくんです。もう他の人の前で裸になれないように、女の子を完全に所有するために」
 苗木君が私の太腿に書き込んでゆく正の字は、まるで魔法みたいに私を縛り上げます。
「私は苗木君に所有されてしまいました」
 この想像が、何よりも私を昂ぶらせます。
「これを真似したら、苗木君、すごくはりきっちゃって。朝になったら本当に申し訳なさそうに謝ってくれたんですけれど」
 目隠しをされ、本当に奴隷の様に好き勝手に突かれ、絶頂の最中でも構わずに延々よがらされ、熱い熱い精液を容赦なく子宮に叩き付けてくる苗木君。
 手を縛られ、鏡の前で淫らな自分を認めさせられ、そんな私に、甘い口付けと一緒に大好きだと言ってくれる苗木君。
「霧切さんは」
 放心したように私の下半身を凝視していた霧切さんは、私の声に意識を引き戻されます。
「そんな苗木君。知りたくないですか?」

一瞬、彼女は泣きそうな顔になり――再び、努めて、冷徹な少女を演じ始めます。
「私には……理解、できないわ」
 ひとまず、彼女の言うがままにまかせることにしました。
「あなたの性的嗜好について意見するつもりはないけれど、『超高校級のアイドル』が避妊具もなしに性交渉するなんてどうかしている。アイドルとしての活動が続行不可能になれば、学園からも追い出されてしまうのよ? それに」
 彼女はいったん唇をかみしめ、続けます。
「『苗木君が二股を掛けている』ということにあなたは何も思わないの?」 
「それは違います」
 私の指摘に霧切さんは言葉を止めました。
「苗木君は二股を掛けているんじゃありません。私達はどちらも、苗木君と正式にお付き合いしているという訳じゃないですよね? これまでの関係性を壊したくないから、あやふやにしてきた」
 スカートを元に戻し、私は胸に手をあてます。
「確かに私は、苗木君と霧切さんの間に入り込んだお邪魔虫かもしれない。でも今は、私の方が苗木君の全部を受け入れているんです」
 霧切さんが、閉じた唇の奥で歯を食い縛っているのがわかりました。
「それに私としては、この関係じゃないと困るんです」
 意図を測りかねたのか、霧切さんは沈黙を続けます。
「私が望んでいるのは、苗木君が悲しまないこと。苗木君が喜んでくれること。それには私だけじゃダメなんです」
「――つまり、あなたと私が二人で苗木君を満足させている今の状態がベストなのだと、そう言いたいわけ?」
「いえ。苗木君は今、私達二人と関係性を持っていることに罪悪感を覚えています。でも思春期の男の子だから、私達を拒みきれないし、私達を我慢できない」


(つまり、霧切さんとも、苗木君はえっちをしているんですね)
(ボク……最低だな……本当に。でも二人とも大好きで、どっちを選ぶことも出来なくて)
(……大丈夫です、苗木君。私は、大好きって言ってもらえるだけで満足です。きっと霧切さんもわかってくれますよ)
(そんな都合のいいこと、あるわけ……)
(それじゃ、試してみませんか?)
(えっ……?)
(試してみて……霧切さんのご主人様にもなればいいんですよ)
(試すって……何を……)

「そう……やっぱりあなたの入れ知恵だったのね。苗木君が私に、避妊具なしの行為を求めてきたのは」
 苦りきった顔の霧切さんに私は歩み寄り――その手を取りました。
 彼女は咄嗟に逃げようとしたようですが、ぎゅっと強めに手を握ると大人しくなってくれました。代わりに視線は強い抗議の色を示し、こちらを射掛けてきます。
「一緒に、苗木君のモノになりませんか」
「馬鹿言わないで。どうして私が――」
「霧切さんはもう苗木君から離れられないでしょう? 私と同じで」
 霧切さんの目が悲痛なほど見開かれ、反論を述べようと唇を戦慄かせ――やがて全ての力を失いました。
 えっちなことなんて関係なしに、私達の生活において、彼がどれほど大事な部分を占めるようになってしまったのか。
 心も、身体も、すでに苗木君なしではいられないということを、今更のように思いだしたのでしょう。
「あと、生理の周期は確認しています。もちろん絶対安心とは言い切れませんけど――あの充足感を知ったら、もう中出しなしのえっちには、戻れなくなってしまいました」
 びゅうびゅうと強い風が全身を叩いて、グラウンドから生徒の声は消え、どうやらとうの昔に午後の授業は始まってしまっているようでした。
「霧切さんは知りたくないですか? 苗木君のくれる、本当の熱を。苗木君に支配されることの安らぎを」
「……っ」
 私の掌の中で、霧切さんの小さな拳が弱々しく握りしめられたのがわかりました。
 私はその手をなおも包み込みます。
 刹那、霧切さんの呟きが風に掻き消され、私は訊き返しました。
 俯いて、ぼそぼそと、彼女は言いました。
 私はにっこりと笑い掛け、皮手袋に包まれた霧切さんの手を、私の首に回させます。
 彼女の指は私の首輪に触れ、まるでえっちの時彼自身にそうするように、愛おしそうに撫でました。
 霧切さんの首に、私とおそろいの首輪が掛かればどんなにいいだろう。
 そうすればきっと、苗木君はもっと喜んでくれるはずです。

 ところであの小説の最後には、女の子は男の人の赤ちゃんを孕み、大きなお腹になってからも彼のおちんちんを捩じ込まれていました。
 最初から最後まで、徹底して所有され尽くした彼女の顔は恍惚としていて、もう男の人から離れることはできなかったということでした。
 いずれそうなるのでしょうか。
 私も、彼女も、苗木君に惹かれているその他の誰かも。 


「苗木君、『尾行に失敗して拘束された探偵が尋問に耐える』というシチュエーションの練習に付き合ってほしいのだけれど」
 ある日、ボクは霧切さんにそう言われた。
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