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 私は恐れていた。
 苗木君を失うことを恐れていた。
 舞園さんに奪われることを恐れていた。
 でもそれは、『共有』というとても奇妙な形で解決されると舞園さんは言った。私はその誘いに乗り――そして今、襲い掛かってくる初めての感覚たちを恐れている。
「うわぁ……おまんこの毛を剃ったら霧切さん、濡れ方が半端じゃなくなってきたよ? ボクに丸見えなのが、そんなに興奮するんだ?」
 苗木君が私の性器を弄りながら、嬉々として語りかけてくる。すっかり扱いになれたという風な指使いがいちいち私の弱点を引っ掻き、甘い痺れが腰から体中に波紋となって広がってしまう。
「んくっ!! ぐぅ、うううぅ!!」
 でも私は満足に喘ぐことも出来ず、履いていた下着を猿轡代わりに咬まされて、涙と涎を垂らすばかり。
 苗木君の為に新調してきた――素面では赤面してしまうような――下着をこんな風に使われるなんて屈辱、
 な、筈なのに。

 ちゅくちゅく、ぐちゅ、くちゃくちゃぁぁ……
「んむぅ、ん、ん、ん、んんむ、ううぅ、うっ、うっ、うっうう、うう!!」
 苗木君に蹂躙されている今の状況が、理解できない程に、心地よい。
 鏡に映っている私は、淫液を垂れ流し、胸部を晒し、性器を隠す陰毛も剃り落され――尊厳などひとかけらもない。
 そんな私に絡みつく、最愛の男の子。私の大事なトコロを、ひとつ残らず鷲掴みにしているその光景。
 何も考えなくていい。
 大好きな人に全てを委ねられるという安心感。
 それが探偵稼業で無慈悲なほど堅牢になっていた私の価値観を侵している。
 私が真に恐れているのは、サディスティックに私を責めたてる苗木君ではなくて。
 『堕ちれば幸せになれる』という、正論とも暴論ともつかない状況が、今まさに目の前にあること。
 くちゅくちゅくちゅく―― 
「う、うううう、んむぅ……!」
「イきそうになった……? でもダメ」
 痙攣し、トばしかけていた意識が、寸前で引き戻される。
 ぼやけた視界の中心には、にっこりと笑い掛けてくる苗木君がいるのだろう。
 それでも耳朶に引っかかった台詞には、隠しようのない興奮が入り混じっていた。
「しばらくはイかせてあげない」
 そう言った途端――
 ぐちゅうううううううぅ!!
「んんんぅ~~~~~~~~~~~っ?!!!!」 
 三本の指を、私の性器の奥底まで一気に突き立てた。
 突然の衝撃に噎せ返り、間欠泉の様な快楽が一瞬で脳を焼いた。
 全身は水揚げされた魚の様に痙攣し、縛られている椅子がガタガタと音を立てた。
 しかし子宮口まで届きそうな程深々と突き刺さった指は、そこから微動だにしない。
 驚きが勝っていたのもあるだろう、掴みかけた絶頂を登り切ることなく、宙ぶらりんの快楽がもどかしく身を焦がす。
「ふぅ、やっぱりこれくらいは耐えてくれたね、霧切さん――イっちゃったかと思ってちょっと焦ったよ」
 苗木君が何か言っているが、よく聞こえない。正気を揺さぶられている私の耳には、粘液塗れの性器を掻きたてた指の残響が張り付いている。
「うっ、うんむうううぅぅ……んっんん、ん~~っ!!」 
 それから幾度となく、絶頂の間際まで責められては寸止め、ということを繰り返される。
 愛液が際限なく垂れ、性感帯が摩耗してゆく過程で、私の思考が固定されてくる。
 イきたい。イきたい、イかせて。
 その指を少し曲げれば、その爪をあと一センチ押し込めば、容易く達せるのに。
 よだれも何もかも垂れ流しながら、恨みを込めて苗木君を見上げる。
 だけど、睨もうとしても、力が入らない。きっと私は、彼に媚びるような視線を送ってしまっている。

 『はやくイかせて』
 垂れ下がった眦や荒い息、舌の様にはみ出したショーツが、そういう雌犬の表情を作ってしまっている。
 ――でも。
 絶頂への希求よりも遥かに深刻な渇望が、心の深淵で泥の様にわだかまっている。
 最早余裕の無い私に気付いたのか、急所を捉えたまま、とうとう苗木君は言った。
「じゃあそろそろ、霧切さんの返事を聞いてみよっかな」
「ん……んぷぁっ!! あ、はぁ、はぁ、はぁっ――」
 口の中に彼の手が突き込まれ、腫瘍を摘出するようにあっさりと、猿轡の下着を取り去った。涎を吸い過ぎたそれは、私の唇から露出した胸元に至るまで長い長い糸を引いた。
 それは苗木君の足元に放り出され、どちゃり、という腐った果実が潰れたような重い水音が床を這った。曖昧な意識の向こうに、私はそれを聞いた。 
 苗木君が、喘ぐ私のおとがいを持ち上げ、触れるか触れないか、というところまで、唇を近付けてくる。
「んくぁっ……な、はぁっ、なに、かしら……?」
 体中で悲鳴を上げている性感を抑え付けつつ、息も絶え絶えになって私は訊く。
「ねぇ霧切さん、キスしてほしい?」
「――――」
 意識の空白から帰還したばかりの私は数秒間固まって――無言のまま肯いた。
 そう、苗木君は知っていたのだ。
 私が何よりも、苗木君のキスを求めていたことに。
 苗木君が空気の様に当たり前にくれるその行為が、私の中において空気の様に致命的に情を支配していることに。
「やっぱり霧切さんって……ボクとのキスでいっぱい喜んでくれてるんだね。うれしいよ」
 本当に。
 本当に無邪気な笑顔でそう言われて、私は不意に、ここが熱に魘された夕暮れの密室ではなく、さわやかな朝の教室のように錯覚した。
 朝一番から、最愛の人の笑顔に出会えた、幸福な一日の始まりと思い違ってしまった。
 だから、私は彼の次の台詞を捉え損ねる。
「それじゃ、秘密と引き換えでいいの?」
「――ひ、みつ?」
「そう、要するに、このゲームは霧切さんの降参ってことでいいのかな?」
 その一瞬、私は本当に、『秘密』のことを失念していた。
 なんという題目で、この秘められた遊戯が為されているのかを、完全に忘却していた。
 しかし、私すら自覚していない本心から言えば、もはやそんなものはどうでもよかっただろう。
 恥も外聞もなく、私の全身全霊は苗木君に従う用意をしていた。
 彼は察知したことだろう、私がすでに屈服していることを。
 優しくキスをされようが、焦らされ続けた肉体に強引な絶頂を与えられようが、どちらにせよ私の心も身体も苗木君に征服されるだろう。
 最後の抵抗、としたかった沈黙は、数分ともたなかった。
 私は項垂れ、あっさりと降参した。
「キス欲しさに秘密をばらして負けを認めて、罰ゲームでいっぱいイかされて、妊娠しちゃうくらい中出しされてもいいんだね――探偵の敗北っていうのは、そういうものみたいだし」
 秘部を抑えていた苗木君の指が僅かに動いて、絶頂から遠ざかりつつあった官能を揺り起こす。
「あ、あああ……」
 ただゲームの終焉と、敗者へのオシオキを確認する唇の動きが、私の目には何よりも蠱惑的なモノに映る。

 その口で、苗木君は笑ってみせた。
 先程まで作っていた下手な嘲笑ではなく、いつもの受容に溢れた優しい笑みが、絶対零度よりも酷薄な刺突となって私を穿った。
「――ねぇ」
 苗木君は喋りはじめる。まるで、最高のいたずらの思い付き、それを得意げに語る子供の様に。
「霧切さんの口から聞いてみたいな。せっかく口止めを外したのに肯いただけなんて――もったいない気がしてさ」
「……何を、言わせたいの」 
 苗木君が笑い掛けながら項垂れた私の喉首を、愛玩犬にするように撫でる。
「『秘密』の中身だよ。あとはボクとの訓練に負けたっていう宣言も」
 微笑みから移ろった相貌には、嗜虐に滾った目がギラギラ輝いていた。私との交わり――いや、これまで一度も見せたことのない、苗木君の秘められた激情。
「これが――その封筒だよね。ボクは中身を確認するから、霧切さんはちゃんとそれを口に出して言って。封筒の中身と違う文を言ったりしたらだめだよ?」
 滲んだ視界の中で鏡越しに、予め机の上に置いておいた封筒を苗木君が見つけ、封を切ったのが見える。
 その表情が――シリアスに整ったのを見届けて、私は戦慄く唇を必死で動かした。
 たとえ蕩けたアタマでも、封筒の中身はすぐに思い出せる。

「……まっ、舞園さんと、おんなじにっ、シて……私を、んっくぅ、なえぎくんの、ドレイに……」

 躊躇は一瞬だった。たとえこれからの関係性が決定してしまう宣言だったとしても――この刹那、苗木君のキスと愛撫と肉欲に満たされないことが、何よりも耐え難かった。
 それに苗木君が私の旦那様になって、私が苗木君のモノになるというカタチに、愛おしい束縛感を感じてしまった。
 そこで何かが淘汰された。
 私がこれまで意地を張ってきたことが、プライドが、もう誰も信じないと誓った両手の火傷が、苗木誠という一人の少年によって超越された。
 裏切られたとか救われたとか、悲しいとか嬉しいとか、単純な話とは違う。
 苗木君によって、私の何かが永久に変えられてしまった――大袈裟に言えば、そういう風だった。
 感情の昂ぶりが神経を弄くったのか、私の目から一気に涙が溢れた。
 頬を伝ったソレが、私の喉を掴んでいた苗木君の指を濡らすと、途端に彼は焦り出した。
 今までの静かな迫力などどこへやら、狼狽し切った慰めと共に――口付けを。
「ごめんね、イジワルがすぎちゃったね……んっ」
「んちゅ……んんあっむ……うっ、ぐすっ……バカ、なひぇひふんの、ちゅっ、バカぁ……んぁむぅ……」
 まるで駄々っ子の様に泣きじゃくり、唇を貪る私。
 今すぐにでも抱きつきたいのに、身体を封じられていることがもどかしくて仕方ない。だから、可能な限り舌を伸ばして彼の口吻に甘噛みさせる。
「んんっ……あはは、奴隷になりたいって言ったそばからバカ呼ばわりなんてひどいよ、霧切さん」
「ひどいのは……あんん、んっ、む、あなたよ、にゃぇひひゅん、んちゅ、ちゅ……」
 キスをしながら、苗木君が私の拘束を解いてゆく。
 舌を捩らせ合っていれば、全ての縄が緩められるまでの時間など気にも留まらなかった。
 背に回された手錠のみを残し、私は抱きかかえられる。今度は苗木君という、ずっと解かれることのない赤い糸で紡がれた縄に――
「――ふふっ、霧切さん、トロトロの顔になっちゃってる」
「ああ、やあぁ――」
 ――苗木君の指摘で、お花畑になっていた頭に気付く。普段の私なら、少女趣味もいい所の比喩を自然と思いついた自分を呪いたくもなるのだろう。
 けれど、今の私は、苗木君の肉奴隷。
 恨みがましく愛おしく、苗木君に抱きすくめられながら視線を送る。
 彼は私をベッドに沈め、自らも覆い被さってきた。いったん私の手錠を外すと、お互いの服を引き千切るように取り払って行く。
 濡れそぼっていた手袋もあっさりと外され、ベッドの下に放り投げられた。でも、もう居心地の悪さはない。
 全てを苗木君に知られてしまっているという、心地良い羞恥があるだけ。

 そうして生まれたままの姿になった私に同じく全裸の苗木君が跨り、外したばかりの手錠を掲げてきた。
 私は――苗木君のゾクゾクするような視線を感じながら――両手を差し出した。
 すると苗木君は優しく微笑み、伸ばした両手をかいくぐるように顔を近付けてきた。
「あ――あん、んふぅ、んちゅっ、あんんんくっ、コクンッ――」
 そのまま貪るようなキスを受け入れる。舌が踊り唇を這わせ、流し込まれる涎を無抵抗に嚥下してゆく。
 意識を蕩かされている途中で、私の両腕が万歳するように抑えられている状況におぼろげながら気付く。でも幸せな接吻を止める気にはなれなくて、唾液と舌を掻き混ぜる行為に没頭していた。
 カチリッ――
「ふぁ、あ――?」
 転調を告げるような金属音に半ば覚醒し、私は瞑っていた目を開けた。
 眼前にある苗木君の口元はお互いの唾液でべちゃべちゃになっていた。
 そのてらてら光る唇はいたずらな笑みを浮かべた。
「霧切さん、両の手首を見て」
 後頭部を付けたまま視線を頭の上にやると私の腕はいつの間にか交差させられ――手首は手錠で絡め取られてベッドの鉄パイプに括りつけられていた。
「こ、これって……」
「どうせなら……もっとドレイっぽくしようと思って。ごめんね」
 恥ずかしそうに語る苗木君。彼の熱烈なキスは、拘束を行うためのカモフラージュだったのだろうか。
 言ってくれれば抵抗なんてしないのに、と考えると少し寂しくなった。
 でも、金属の軋みが、これまで以上に私の心を拘束する。
 抱きすくめられて身動きの取れない気持ちになる。
「あとは――これ」
 続けて苗木君が取り出したのは、黒い首輪。舞園さんが身に着けていたのと同じもの。
 ぶら下がっているタグにはご丁寧に、『飼い犬の名前』と『飼い主の名前』が書いてあった。
 私は生唾を呑み込み、目を瞑る。
 スルリと音がして――感触。
 そこには確かに同じ感触があった。あの屋上で舞園さんの首に触れた時と同じ。
 ソレだけなら、ただのざらざらした味気ないモノなのに、纏わりついている血肉の温度と一緒に感じると、こんなにも心を狂わせる。
 他人の首輪なら暗い羨望を、自分の首輪なら昏い充足を、掻きたてる。
「……完成だね、霧切さんの、メス犬みたいなカッコ」
 目を開けると同時に軽いキスが落ちてきた。
 旦那様が――この場合は『ご主人様』と言うべきなのかしら――少し恥ずかしそうに告げる。
 キスの間擦り合わせていた私たちの下半身は、各々が思いおもいに先走りの体液で汚し合っていた。
 孕ませたいオスの体液と、孕みたいメスの体液が、当人たちの理性とは無関係に分泌されて、まるで『そうしなければいけない』ような昂ぶりに襲われる。
 私は今にも暴走しそうになって、必死で苗木君の唇にむしゃぶりついて最後の一線を止めようとした。

 ――ずぶりゅううううううううぅ

「?! あっ?! え、いあ、あああああああああっ?!」
 意識が空転する。
 快楽に先んじて驚愕が脳を白くする。
 何の脈絡もなく苗木君が挿入してきたと理解したのは数秒経ってからで――溶岩じみた官能が意識をじゅくりと焼き焦がした。
 いつの間にか股に割り込んでいた苗木君の腰の隣で、無意識に足が跳ね上がった。
 耳元で囁く声。
「前戯なんて一秒もいらないよね、こんなに濡らしちゃってたんだから……メスギリさん」
「め、めすぎりって……んっんあ、ああああ、ああぁ――」
「メスギリさんのおまんこの場所、目で確認しなくたって知ってるんだよ? 覚悟してね……メチャクチャにしてあげるから」
「いや、いあああぅ! いい、いんっ、ふぅぁ、あんっ……」
 そのまま猛然と腰を振り続けるのかと思いきや、苗木君は挿入したままゴリゴリと、文字を書くように膣奥をこねくり始めた。
 激しさはないけれど一ミリの別離も許してくれないその動き、確実に押し上げられてゆく過程が、カウントダウンのような昂ぶりをもたらす。
 しかし、穏やかな腰の動きとは裏腹に、苗木君の口や指先は、私を折檻して主従を教え込もうとするようにイジワルだった。
「どう? ナマでハメられちゃった感想は……んっく! ボクは、すっごく気持ちいいや、霧切さんのナマまんこ……!!」
「あ……ひゃぁ……そんなのいえな、あああう!! んあぁぁあ、あぐっ、ふぅぅ、ふぃぁあああ……」
「……気持ちいいんでしょ? いつもよりすっごく締め付けてるし、濡れ方だって半端じゃないし――何より、きれいな顔がトロトロに蕩けちゃってる」
 顔に舌を這わせながら、剥き出しになった乳首を強く抓ってくる。痛いだけの筈なのに――
「や、やあぁ……ズキズキするの、んぐっ、ふぅぁ、らめ、らめぇ……」
 指が肉芽を潰し、唇が啄むたびに、甘い痺れが体に行き渡ってしまう。
 そして官能は空洞を反響する音波の様に連鎖し、責められ続けているある一点に収束して――
「……ふふっ、霧切さん。えっちな体の奥から、子宮が下りてきたみたいだよ。霧切さんの女のコがボクのの先端にキスしてる」
「あ、ああっ、うそうそ、そんなのうそ……や、やあぁ、らめ、ごりごりするのだめっ」
「ううん……霧切さんの身体はそうは言ってないみたい。そうだ、一回痛いのでイッてみようか」
「んぐっ、い、いたいので、イくっ……?」
 苗木君が私の両の乳首をそれぞれ抓んだ。
「いや、いや嘘……やめてやめて、やめてぇぇぇ……」
 彼が何をしようとしているのか分かって、私は恥も外聞もなく狼狽する。
 きっと今までで一番強く、万力の様な力を込めて私の乳頭を捻り潰そうとしているのだ。
 しかし私が真に恐れたのは、肉芽を握りつぶされる痛みではなく、きっと痴態を晒してしまうことだった。
 認めたくはないけれど――痛みが、私の中で快楽に繋がりつつある。他ならぬ苗木君に開発されてしまった。
 体をよじらせて少しでも逃げようとするけれど、両腕をベッドの上部に括りつけられながらペニスで串刺しにされている状態では、標本にされた蝶のように身動きが取れない。
 細い指から少しずつ圧力が掛けられ、来るべき淫痛に備えて私は歯を食い縛る。
 でも、苗木君は私の想像を遥かに超えていた。
 摘み上げた乳首を引っ張り――横たわっていた上体を、宙吊りにしたのだ。
「あうぅ?! あが、はあぁ、いたっ、いたいの!! やだっ、こ、こんなのぉっ!!」
 半狂乱になった私へ苗木君が追い打ちをかける。緩慢な動きだった腰の運動を速めだした。
「嫌なの? それにしてはおまんこの締め付けが……んっく! すっごく強くなったし、一気におツユも溢れて来たんだけど」
「やあぁっ、いたいっ、いだっ、ああんっ、あん、んぐぅああぁっ、あ……!!」
 両腕は頭上で固定され、乳首で上半身を吊り上げられ、下半身は肉の楔を打ち込まれて、弓形に反る身体から絶叫を撒き散らす。
 それでも胸を抓む手は放されず、むしろゆっくりと上下させて咽ぶ私を弄ぶ。まるで糸に吊るされたマリオネット。
「霧切さんのおっぱい、びよんびよん伸びてるね――いやらしいや」
「あんっ、あな、あなたがしてるんじゃ……ああああっ!! いい!! あぐぅぅぉああ!!」

 ――そう、私は苗木君のおもちゃにされていた。彼の意のままに操られ嬲られる肉人形。
 意識が切れかけた電球の様にバチバチと点滅し肺の中の空気を全て吐き出したところで、私の身体は唐突に支えを失って落下した。
 どさりという音が鼓膜を震わせても、思考が働かない。神経が焼き切れたように停止している。
 酸素が足りない。喉が引き攣ってまともに呼吸もできない。今キスをされたら、きっと窒息してしまう。
「イッちゃったね……マゾギリさん」
 苗木君の声が聞こえて、やっと暗転していた意識が戻ってくる。
 不本意な徒名に抗議は出来なかった。
 私は『痛いのでイかされて』しまったから。
 何もかもが違っていた。
 今まで私が経験した絶頂は、優しい苗木君との交わりから得られる、穏やかな充足感に満ちたものばかりだった。
 しかし今のは、苗木君の中のオスが、私の中のメスを徹底的に叩きのめして屈服させる様な、暴力的なまでの快楽の奔流。
 ここで――苗木君と交わっている部位で、彼が何かしているのに気付いた。しかしジンジンと痛む乳首や全身に圧し掛かってくる疲労が、確認を怠らせた。
「これで一回。そして――」
 苗木君の手が首輪に伸びてきて、がちゃりと音がした。
 その上からカメラの音を聞いて、やっと私は、自分の身体に何をされているのか気になりだす。
 目を開ければ、カメラを構えた苗木君。
 首輪には長い鎖。
 股間に目を遣ると、太腿に書き込まれた「一」。
 そして――苗木君に貫かれているそのすぐ上のお腹には、『苗木誠専用』という文字(正直これには面喰った。舞園さんのお腹まで見ることは出来ていなかったから)
 私は苗木君のドレイになりたいと言い、彼は着々とその準備を進めていた。
 朦朧とする意識に鞭を打ち、分かりきっていることを、改めて訊く。
 苗木君の――ご主人様の口から直接言われることで、未だ残る恐れにピリオドを打ってもらいたかった。
 舞園さんと一緒に苗木君のモノになるという決着への恐れを、断ってほしかった。
「あなた……私のカラダに、何をしたの……きゃっ、あん、んむ、んちゅっ……」
 苗木君は優しい愛を感じさせるキスを落としながら、私の隷属を確定事項にしてゆく。
「おまんこのとこにイッた回数を書き込んでボクの証を刻んで、んん、首輪に鎖を付けて、そのカッコを写真に撮った。これで……霧切さんは」
 苗木君は今更恥ずかしげに目を伏せて溜めを作り、最後に視線を合わせて告げた。
「ボクの奴隷だからね」
 ああ。
 きまってしまった。
 私のこれからの生が、苗木君にきめられてしまった。
 たかだか高校生がこんなことを思うなんて馬鹿げてるとか、事の始まりが戯れだったのは勿論承知している。
 でも――揺らがない気がする。私はこれからずっと、苗木君に支配されて生きてゆく。表向きの主導権はともかく、私の核となる部分に、彼は、枯れない花を植えてしまった。
「苗木君」
 私は潤む目を瞬かせながら言う。
「手錠を外して」
 その時彼が怯えた表情をしたのを私は見逃さなかった。
 私に拒否されるとでも思ったのだろうか?
 私をこんなにしたのは他ならぬあなたなのに。
「あなたを、抱き締めさせて……でも首輪はそのままにして……私はあなたのモノだから」

 痙攣する足を苗木君の腰に絡ませ、肉棒から滲み出る先走りを子宮口に刷り込ませる。他のモノの入り込む余地など与えないよう、避妊具がなくて隆起を顕わにした彼のペニスを覚える。
 苗木君の顔がくしゃくしゃに歪んだ。
 彼の手が慌ただしく手錠を外し、私は自由になった両手ですぐさま彼の顔を引き寄せる。
「きりぎりさん……」
「なえぎくん……」
 万感の想いで名前を呼び合い、とろけそうなキスをした。
「霧切さん……出すよ……!! 霧切さんのナカにぜんぶっ、ぐっ、全部射精するから!!」
 苗木君は腰を沈めごりごりと亀頭を押し付け、私は足を交差させぶちゅぶちゅと子宮をすり寄せる。
「ええ……あンッ!! あああ、ンンぐっ!! にゅあ、なえぎくんのせーし、ぜんぶ、ぜんぶっ、ナカダシしてッ!! 種付けしてっ…………ああっ」

 昂ぶりが、弾けた。

「あくあぁ、あん、ああ、あああああああああああああああああああぁ……!!」
 湯を注がれるような熱さ。
 髪一本分の離別もない私たちの生殖器官が蠢く。
 吐き出された子種が卵子を探して子宮を蹂躙する。
 お腹の表皮まで響くような滅裂な射精が、幸福すぎる絶頂から下してくれない。
 まだ出る。
 まだ出る。
 ――まだ、出てる。
 とうとう子宮は埋め尽くされ、膣道を通って淫液が滴った。触れ合った性器同士がバクバクと脈動している。
 果たして――私の卵は食い荒らされてしまうのだろうか。
 わからない。けれど――
「ドレイに種付け、にかいめっ……!!」
 勃起したままのペニスが再び動き始め、私のカラダはその逞しさに縋り付く。
「もっと……ごひゅりんひゃま、もっと、もっとぉ……!!」
 沸騰した頭でも本能が、只一人愛する人の精を求めていた。
 その結果に待ち受けるものが、『幸せ』以外の筈がない――


「お楽しみのところ失礼しますね」

 冷えた。
 醒めた。
 凍った。

 快楽悦楽で白黒させていた意識に平手打ちを喰らった。
 キスを止めて二人で振り返る。
 居間の入り口にあったのは、アルカイックな笑み。
 舞園さやか。
 黒髪とセーラー服、教室で見慣れた格好の上に被さる、私と揃いの黒い首輪。
 その手には――冴え冴えと光る包丁。
「ま、舞園さん……!!」
 先に名を呼んだのは私と苗木君どちらだったか。同時だったかもしれない。
 それが分からない程に混乱していた。
 駆け寄ってくる舞園さん。
 包丁が振り上げられる。
 反射的に苗木君を守ろうとする。
 でも苗木君は私を抑え付ける。

 ――バシュッ 

 室内灯に刃が翻った。
 思わず閉ざした視界に、残像が月光じみて浮かんだ。
 瞬時に目を開ける。苗木君のカラダから力が抜けていくのを感じる。
 そこで私が見たのは。
 血塗れの苗木君ではなく。
 血塗れの舞園さんでもなく。
 ましてや血塗れの自分自身でもなかった。

「私も交ぜてくださいよ♪」
 妖しげな微笑みの下、襟口から裾、さらにスカートまで全部縦断する、包丁の通り道。
 セーラー服の裂け目からブラジャーと柔肉が零れ、スカートの隠していた場所から濡れそぼったショーツがまろび出る。
 太腿には刻まれ続けた『正の字』――お腹には『苗木誠専用』の文字。
 強張っていた全身から力が抜けた。
「――驚かさないでちょうだい。心臓に悪いわ」
 長い安堵の溜息を吐きながら言うと、舞園さんはぷりぷり怒ったように反論した。
「ちょ、ちょっとイタズラしたくなっただけじゃないですか!! 苗木君にはちゃんと事前に伝えてましたし!!」
 苗木君にジロリと視線を向けると、慌てて弁明してくる。
「確かに舞園さんが来るっていうのは知ってたけど……こんな風なドッキリをやるなんて思ってなかったよ」
「ふふふ、『超高校級のアイドル』は、演技力も中々でしょう?」
 半裸になっていることも忘れたようにポーズをとる舞園さんを見て、どっと疲れが押し寄せ――
「――――それっ」
「きゃっ?!」
「あんっ?!」
 苗木君が舞園さんをベッドに引き込む。彼女は私に覆い被さるように倒れ、豊かな乳房や張りのある太腿が私の身体を押した。
 そして二人をまとめて苗木君は抱き込み、顔を近付けて囁いてくる。
「じゃあ、霧切さんは種付けの続きで――舞園さんは今のイタズラに、オシオキしなきゃ、ね……」
「あっ……」
「やぁ……」
 ご主人様の優しい微笑みに、二人の奴隷が火照るカラダを打ち震わせる。
 やがて三枚の舌が絡み合い、今夜の『調教』が幕を開ける。
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