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 何度目の寸止めだろうか。
 もう、「オシオキ」なんて生易しい響きで済ませていいものじゃない。
 これは、拷問だ。

「ひや、ひやぁあああっ!!らめ、あぁあああああぁ…」
 止められれば止められるほど、イくことへの欲求も、イく直前の快楽も増していく。
 けれど、それらは決して解消されずに、フラストレーションのように体に留まるだけ。

 ビクン、ビクン、と、処女が初めての絶頂を味わうかのように、体中が痙攣していた。
 あそこは、火箸を突っ込まれたかのように熱い。
「なえぎ…くゅん…」
 舌をずっとつままれ、こねくり回されているために、まともに喋ることもままならない。
 逃げ場のない快感が、体中をはいずりまわる。
 お預けに耐えきれず、とうとう私の体は、継続的に震えだした。

 もうダメだ。これ以上は、耐えきれない。
「いぁっ、ひっぎ…うやぁあ、らめ…」
 一度だけ。一度だけ、素直に認めよう。
 この体が淫猥なメスで、心の底から絶頂を願っていることを、今の一度だけ。
 彼の指はくすぐるように、私のあそこをなでまわしていて、それでも、それすらも耐えきる余裕はない。
「な、なえぎ、くゅん…!」
「…どうしたの、霧切さん」
 尋ねながらも、彼は手を止めない。
 指でクリクリと、やさしくクリトリスの周りをなぞっている。
「あ、あぁあ…も、もう、らめらから…がまん、れきないれす…」
 ろれつが回らないのは、彼の指のせいか、あそこの疼きのせいか。

「いかへて…いかへて、くら…さいっ!!お、おねがい、ひまふ…」

 言った。認めた。
 それだけでもう、あふれ出んばかりの絶頂感が、体中を満たしている。
 体中が、絶頂を待っている。やっと、この溜めに溜めた、気の狂う快楽を解き放てる。
「そ、そこ、もっと、ぐちゃぐちゃにしへ……あぁあああっ!」
 求められてもいない言葉まで口走ってしまう、どうやら口も快楽で腐ってきたようだ。
 もう、思考すらも、浸食され――
 ダメだ、まともに考えられない。
 イきたい、イきたいイきたいイきたい!
 彼に自由を奪われた体で、私のことをわかると言っていた彼自身の指で、
 もっと、もっと刺激を!
「あ、あぁ、あっあああぁああっあああああ…!」



 ぴたり、と、
 彼の指が止まった。


「…っ………い、やぁ……」

 絶望。
 同じことを繰り返されていたから、何が起こったかはすぐに分かった。

 限界まで、ダムをもう少しで越えるまで高められた快感の波。
 それは、越えることのないまま、留まらされた。

「いやっ…いやっ、いやぁああぁあぁあ…! なんで、なんでぇ…?」
 ぬるり、と、彼がようやく私の口から手を離す。
 つ、と引いた唾液の線を気にも留めず、私は泣き叫んだ。

「い、イかせてって、ちゃんと言ったのにっ、い…も、もう耐えられ、ないのに…っ!
 イきたくなったら言えって、い、言ったじゃない…」
「ああ、ごめんごめん…口に指が入ってたせいで、なんて言ってるかわからなくてさ…
 それに、イきたくなったら言って、とは言ったけれど、イかせてあげるなんて一言も言ってないよ」
「そんな…そんなぁあ…」

 一気に、緊張していた体の力が抜けた。
 ずるり、と、彼に預けていた体がずり落ち、
 その拍子で、捕えられていた片方の腕が、偶然にも自由になる。
「あ…」
「腕、自由になったね」
 彼はまるで、性交などしていない時のような調子で話す。
「…」
「さっき、『腕が自由になったら覚えていろ』って僕に言ったよね。自由になったけれど、どうするの?」
「あ…う…」

「反撃するのかな?それとも…

 エッチな霧切さんは、自分のあそこをひたすらいじりたいのかな?」


 ドクン、と、心臓が驚くほど強く脈を打った。
 彼の言葉が暗示や天啓のようにまで聞こえる。

 自分で、好きなようにイっていいの…?

「腕は自由だよ。僕は霧切さんをイかせないけど、霧切さんがオナニーするなら、それは止めない。
 霧切さんがどうしてもイきたければ、自分がそれほどエッチだって認めるのなら、好きにしていいよ」
「あ、あぅ…」
 彼の言葉に屈辱を覚えながらも、私は自分の股間に伸びていく手を、止めることができなかった。
「あれ、あそこに…霧切さんの一番エッチな場所に、手が伸びているけど。反撃はしなくていいんだね?」
「うぅ…う゛ぅあぁああ…」


 指が、触れる。
「ひ、ぎっ…~~~っ!!」

 あまりにも強い感覚に、一瞬それを激痛かと思い違えるほど。
 次いで溢れ出す、性感の奔流。
「あぅあぁああ…」
 指が中に入り、奥を小突く。声にならない声が、口からだだ漏れる。

 鏡には、それはエロチックな少女の姿が映っていた。
 好きな男に足と片腕を絡めとられながら、秘部は自由の利く右手の指をいやらしく呑み込んでいる。
 これ以上にない、というような至福の表情を浮かべて。

「あぁ…あぁあああぁ…」
 いつもなら、反射的に足を閉じ、腰を引いてしまうほどの激しい快感。
 けれど、
「大丈夫だよ。足も腰も、僕が押さえつけてるから、霧切さんの体は快感から逃げられない。
 反射で止められることもないから、思う存分、自分をなぶっていいんだよ」
「あぁ…はぅう…あんっ、やっ、あぁん!あぅん、ふぁ、はぁぁあ!」
「しょうがないよね。気持ちいいもんね。僕がさんざん焦らすから、我慢できなくなったんだよね。
 今だけは素直になっていいんだよ。どんどんエロくなって。僕はそれを見てる」

 快楽がどんどん高まる。
 もう、誰にも、自分自身にすらも邪魔されない。
 そう思うと、奥から奥から液が溢れてくる。
 私はいっそう、指の動きを強くした。

「う、あぁ…イく、イくっ…あっ、か、うぁっああぁあぁあっ…ひ、ぎぃ、ぃいいいいいいいい!!!」

 ドクン、と

 背骨が緩んだのか、とでも思うくらいの脱力感。
 一瞬遅れて、電気のような強烈な快楽が、背中から全身に駆け巡った。

 溜めに溜めた、何十回分の絶頂が、一同に私を犯す。
 その快感に身をすくませることすら、体の自由を奪われた今の私には不可能だった。
「っ…!…っ!!…ぁっ…!」
 もう、声すら出ない。
 息を吸うことも、吐くことも叶わない。
 目の前がバチバチと光り、まともな視界も失せる。
 背骨が軋みそうなほどに大きく背中を反らせて、長く激しい絶頂を耐える。
 時間にすれば10秒ほどだろうか、いや、もう少し短いかもしれないが、
 私には途方もない長さのように思えた。


「つ…はぁあ…あぁ…」
 絶頂が終わり、彼の体から解放されると、私はそのまま後ろに倒れ込んだ。
 体は、後遺症とでも言うのだろうか、絶頂時の敏感さや疲労をずるずると引きずっており、
 特に下半身は、足を少しでも動かそうものなら、それだけでまたイってしまいそうだ。


 なんとなくだけど、と、私は鈍った頭で考えていた。
 絶対そんなことあり得なそうだけど、もしかしたらこれは、彼流の荒療治かもしれない、と。

 好きと言われても信用できない卑屈さ。心のどこかで、愛する人を疑ってしまうという行為。
 全て、私が自分を信じていないから、大切にしていないから。
 だから、自分で自分をイかせるように、自分に素直になれるように、そう仕向けたのではないか…

 いや、考えすぎだ。
 口の次は脳みそまで、彼がくれる甘すぎる愛情で、腐ってきたのかもしれない。

 ふ、と苗木君が、私の頭をなでた。
 重い体を少しだけ持ちあげると、彼は優しくほほ笑みながら、そっと頬にキスをする。
 子どものように扱われていることが、少し悔しかったけれど、なぜか嬉しくなってしまう。
 反論の言葉や、この仕打ちに対する非難の言葉を考えようとして――やめた。

 今はいいじゃないか。
 あれだけ恥ずかしい思いをしたんだ。
 素直に、彼なりの愛し方を受けていたって、バチは当たらない。
 絶頂の余韻とも相まって、その幸福感の中で、私は目を閉じた。




『苗木の視点』

 やりすぎたとは思っている。
 正直、この麗しき彼女を、自分色にぐちゃぐちゃに染めてしまいたい願望はあった。
 もちろん、今までそれを必死に抑えてきたし、こんなひどいことをしたのは今回が初めてだ。
 自分でも、どうしたのかと思う。

 そっと、頭をなでると、霧切さんは悔しそうにしながらも顔を赤くして、
 その表情が本当に可愛くて、僕は心底彼女に惚れてしまっているのだ、と実感する。
 頭をなで続けると、霧切さんはそのまま目を閉じて、眠ってしまった。

 僕は霧切さんが大好きで、彼女も僕を好きだと言ってくれる。それだけなら話は簡単だったけれど、
 彼女は僕の「好き」という気持ちを信用できないでいて、僕はそれがどうしても許せなかった。
 余っていたからじゃない。なりゆきじゃない。
 僕はそんな失礼な気持ちで、霧切さんを好きになったわけじゃない。
 そう伝えたかったのに。

 …どういうわけかその憤りは、普段から抑え込んでいる僕の異常(…なんだろうか、やっぱり)な性欲と仲良くマッチして、
 歯止めがきかずに追いこんでしまったわけだけれど。
 目を覚ましたら、まずどうしようか。
 やっぱり、謝るのが最初かな。謝るくらいならやるな、と怒られそうだけど。
 それから、ゆっくり話そう。




『霧切お目覚め』
 夢とも幻覚ともつかない、もやもやとした眠りから覚めると、
 彼は私が目を閉じる前と同じ場所で、同じ顔をして、私の頭を優しくなでていた。

「…え、えーと…おはよう」「おはよう…ずっと、そうしていたの?」
「うん、まあ」「よく飽きもしないで…」
「飽きないよ。霧切さんの寝顔、可愛かったし」「っ…」

 いつもならここで、「馬鹿」だの罵声を浴びせたり、頭を小突いたりして、素直になれない代わりの照れ隠しに当てるのだけど。
 いや、正直今も、彼をどつきまわしたいほど恥ずかしいし、彼もそれを察して、頭を庇っている。
 でも…

「苗木君」「はい…」
「今日は…その」「…ぶたないの?」
「ええ…ちょっと、その…」「?」

 彼が、あれだけ私にしてくれた。
 だから私も、応えよう。
 ここで退いたら、女が廃る。必死に、まだ恥ずかしがっている自分に言い聞かせて。

「…今日だけ、今日だけでいいから…明日からは、また普通に戻るから…
 苗木君に迷惑や、押しつけがましい好意も、かけないから…

 その…思いっきり、苗木君に甘えても良いかしら…」

 苗木君は、それこそポカン、という擬音がぴったりなほど呆けていて、
 おそらく私の顔も、羞恥に耐えきれず、これ以上ないくらい真っ赤になっていることだろう。

「あ、あの、もちろんだよ!今日と言わず、毎日でも…」
 一瞬間があって、それから彼はおおいに賛同してくれた。

「毎日は、さすがに無理よ…私にとっては、すごく、恥ずかしいことで…
 でも、自分の気持ちに嘘をついているのも、そろそろ限界なの…
 だから、今日だけ。今日だけ、私は自分を許す。そういう条件付きでなら、素直になれそうだから。

 それと…本当にいいの…?私、ホントはもっとわがままで、感情的で…」

 私の内面の醜いそういう感情を知ったら、やっぱり彼は、私のことを嫌いになってしまうんじゃないだろうか。

 そんな疑心が、心を埋め尽くしている。
 彼は私を信頼してくれるのに、私は彼を信頼できない。その不誠実さを自覚している。
 罪悪感に悶え苦しみながら、
 これが私が考えた、自分へと、苗木君へ提示できる、現時点での最大の妥協点。


 やっぱり、彼は探偵の…いや、この場合はエスパーとでもいうのか。
 私のそんな鬱屈とした感情を、読み取ってくれたようで、
「どれだけ霧切さんが我がままで、感情的だったとしても、それで嫌いになったりは絶対にしないよ」
 私の肩にそっと手を乗せて、あの爆弾級の笑顔で、そう言うのだ。



「…見ていなければ、何とでも言えるわ。私がいかに自己中心的で、汚い心の持ち主か…」

「霧切さんがどんな欠点を持っていても、気にしないよ。
 だって僕は、それに負けないくらい、霧切さんの良いところを知ってるから。
 言ったでしょ?ずっと、見てきたんだから」



「…苗木君、その笑顔」

「え?」
「私があなたの笑顔に弱いって、知っていてわざとやってるんじゃないの?」
「そ、そんなこと…そうなの?」
 照れながら困惑する彼が、これ以上にないくらいに愛おしい。

「ほら、見なさい。あなた、私を見てきたから、私のことを分かっているって言うけど、
 あなたが知らないことなんて、まだまだたくさんあるんだから」


 私はそう言って、勢いよく彼に口づけた。

「…ほ、本当にいいの?さっきまであんなにしてたのに…」「『あんなにしてた』のは、どこの誰だったかしら」
「う…」「正直言うと、まだ足に力が入らないわ。ちょっと腰も痛いし、ココもまだジンジンする」
「ご、ごめんなさい…」「謝るくらいなら、最初からやらなければいいのよ……ま、まぁ、悪くは、その、なかったけれど」

「あ、う…で、でも、それなら尚更止めた方が…僕なら、大丈夫だから」
 これ以上ないくらいにギンギンにさせて、どこが大丈夫なのか。
 男の子の性欲は分からないけれど、彼のそれは、もう爆発しそうなほどに腫れあがっていた。

「…さっき、甘えさせてくれるって言ったわよね。わがままでもいい、そう言ってくれたのは…」
「う、嘘じゃないけどさ…」

 ホントに、この少年ときたら。

「…私は、苗木君のことが大好きで苗木君の笑顔とか真剣な目とか困った表情とかが大好物で
 苗木君に触られると全身性感体になるんじゃないかってくらい敏感になる、変態…です。
 苗木君が望むことは全部してあげるし、してあげたい。苗木君がいやだというなら絶対にしません」


 鏡越しに、自分の顔を見た。真っ赤なんてものじゃない。

 正直になれとあなたが言うから、言いました。
 ここまで言わせて、恥をかかせるなんてこと、絶対にないわよね?

「…あっ、うぅ…」
「…ほら…幻滅、したでしょ?」
「してないよ!」
「ま、まあとにかく、今日の私は、その、とことん本音で行くわ。
 …自分の心情を正直に話すことは慣れていないから…ちょっと変になってしまうこともあるかもしれないけど…
 さて、聞きます。苗木君、私の中に…入れたい?」
 上目遣いで尋ねると、彼も私と負けず劣らず顔を真っ赤にさせた。

「う、うん…霧切さんに、入れたい…です」
「…はい、よろしい」

 一度わがままな私を受け入れると言ったからには、
 今日は苗木君にも、とことん付き合ってもらおうじゃないか。

 私は彼に跨り、ゆっくりと、彼のそれを、私の秘部にあてがう。

「っ…ホントは、これ以上気持ちよくさせられたら、頭がおかしくなりそう…」
「あぅ…き、霧切さん、やっぱり…」
「や、めない、わ…あなたと繋がらずに終わるなんて、絶対あり得ない…」

 ゆっくりと腰をおろし、中に彼のものを受け入れる。
 ずぷ、ぬぷぷ、と、卑猥な音を立てて、彼が私の中に入っていく。
「あっ…んん!!」
「す、すごい…霧切さんの中、すごく熱い…」
「そ、そういうことは…」

 言わないで、と言おうとして、私は思いとどまった。
 今日だけは、本音。嘘をつかない。

「…もっと、言って」
「え?」
 ああ、頼むから、聞き返さないで。
 これでもまだ、本音を出すのは、顔から火が出そうなほど恥ずかしいのだから。

 震える体になんとか根性を叩き込み、私は一気に足の力を抜いた。
「ふぅっ…!」「うぁあっ…!」
 高さの違う、二つの喘ぎ声。
 重力に身をゆだねた私の体は、そのまま沈み込み、最奥まで彼のモノを加えこんだ。

「はぁ、はぁ、っ…」「霧切さん…大丈夫…?」
「…響子」「え?」
「いつか、言ったでしょ…?交わっている間は、下の名前で、ぅ…呼んでって…」

 彼の返事も聞かず、私は再び足に力を込める。
 ずるり、と、あそこから内臓まで引きずり出されるかのような、激しく、少しだけグロい感覚。
「あ、あぁああぁ…」
 いつも彼が動くのを、受動的に待っているだけだけれど、
 自分で動けば、これだけ違うのか。

「あ、き、響子…」
「何?…誠君」
「あ、そ、その…すごく、エッチだよ、今の響子の姿」

 ゾクリ、と、背筋が震える。
 羞恥と快楽で赤く染まった彼の顔。
 それらに耐えながら『もっと言って』という私の願いを、必死に叶えてくれた彼の健気さ。
 そして、自分自身が彼の眼に、エロチックに映ってしまっているという羞恥。

「あ、はぁ…」
 必死に力を込めて引き抜いている途中だったのに、意思とは無関係に彼のモノを締め付けて、
 いっそうの快感が背筋をかけあがり、私の足から力が抜ける。
 力が抜ければ、重力に逆らえないのが道理で、
「あ、あぁんっ!」
 再び私は、腰を落としてしまうのだった。


「う、ぅ…イかせたいのに…今度こそ、っん…誠君を、イかせたいのに…
 私が上になれば、好きに動けるはずなのに…なんで足に、力が入らないのかしら…」

「響子…っ」
 彼が、私の尻を鷲掴みにする。
「え、え?」
 そして、グイ、と引き抜いたかと思うと、
 思いっきり膣内に、それを叩きつけた。

「はぁああぅっ!」
 ゆるやかで断続的な快感から一転、激しく重い絶頂感が、またたく間に走り抜けた。

「あっ、あっあっ!イって、るの、誠君、イってるからぁっ!!」
「ご、ごめん…あんまり焦らされるから、我慢できなくて…っ!」
 パン、パン、と、リズミカルな音を立てて、彼が腰をたたきつけてくる。
 一突き一突き、そのたびに私は何度も絶頂に突き上げられる。
 体も、快楽に素直になったのか。それとも、彼に文字通り体を許したのか。
 子宮を小突かれ、飛んでしまいそうになる意識の断片で、そんなことを考える。

「ごめ、ごめん響、子っ…やめてあげたいんだけど、気持ちよくて…!」
「やめないでいい、やめないで、ぇっ、はぁああ!!私で、あぁぁああっ…わ、私で気持ち良くなって…!」
 子宮がキュウ、と閉まる。
 一つの絶頂が収まりきる前に、次の絶頂に押し上げられる。
 あまりの快楽は頭の許容量を超え、もう思考が焼き切れそうだ。

 でも、ダメだ。
 もっと、もっと。
 この先しばらくは、また彼に甘えられない、捻くれた私に戻るのだろう。
 だから、今だけ。今のうち。
 未来の分も前借して、精いっぱい彼を感じなくては。

「奥、おくぅっ!あぅううう!奥、弱いっ、から、もっと突いてぇ!」
「はぁ、はぁ、はぁっ…!」

 もう、限界に近い。
 中に入っている彼のそれが、いっそう大きく膨らみ、一突きが小刻みに、速くなってきている。
 私は彼の背に手を回した。
「わ、かってると、思うけど…っ、あぁん、はぁんっ!!」
「うんっ…中に、出すから…!」
 快楽の向こう側の、これ以上ない幸福感。
 女に生まれてよかったと、心の底から思える瞬間。

 彼が、グイ、とそれを中に押し付けて、子宮が思いっきり押し上げられた。
「ふっ…うぁああぁぁああああっ…!」
 その絶頂の瞬間に重ねるように、
「響子っ…で、出るっ!!」
 ビュクビュクと、その子宮に、熱いそれが注がれて、


「――――~~~~っっ!!!」


 声もなく、息も出来ず、目も眩むような絶頂にやられ、
 目いっぱいの力で、私は彼に抱きついた。



 絶頂が収まると、体中から力も抜け、彼と繋がったまま引き抜くことも出来ず、
 私はしばらく、舌を出したままのだらしない蕩け顔で、彼にもたれかかっていた。
「あ…っ…ひ、ぐ……」
 苗木君の絶頂感も同じようなものだったらしく、ベッドに倒れ込みはしないものの、
 私をこれでもかというくらいキツく抱きしめて、快感に耐えているようだった。

 また、抱きしめたまま、苗木君が私の頭をなでる。
 どうもその感覚に慣れず、もたれかかったまま、私は彼の耳元に口を寄せる。
 ホントは面と向かってピロートークなんていうのも憧れなのだけど、今のこのだらしない蕩け顔はさすがに見せられない。
「人の頭をなでるのが、随分好きなのね」
「あっ、いやだった、かな…」
 彼が遠慮がちに尋ねた。

 ホントに、さっきまでの強気な彼はどこに行ってしまったのか。
 今はもう、いつも見慣れている、気弱で少し頼りないけど、優しさに満ちあふれた少年になってしまっている。
 もちろん、こんな彼が大好きなのだけれど、時々はさっきのような強引さも欲しい、と思ってしまうあたり、
 やはり彼の前では、私はマゾヒズムに冒されてしまっているのだろうか。

「いや、じゃない…」
「そ、そっか」
 いやじゃない、というのに、彼は私の頭から手を離した。

「~~っ、もう…」
 私は再び彼の手を握り、むりくり自分の頭に押し付ける。
「えっ、えっと…」「なでて」
「へ?」「…」
 やっぱりこの少年は、まだまだ私を知らないのだろう。
 今の私の「いやじゃない」は、もっと分かりやすく言えば、


 「あなたになら何をされてもいい」だ。


「なでてって言っているの」
 自分でもどこから出たのか分からない、少し拗ねたような幼い声で抗議すると、彼は私をあやすように、優しく頭をさすった。




 あなたが、私のことを分かっているというのは、やっぱり悔しいけれど、どこか嬉しい。
 でも、私はあなたに話していないことが、まだたくさんある。

 探偵小説の次に、恋愛小説が好きなこと。
 暗闇が苦手だということ。
 時々あなたが舞園さんを思い出しているのに気付き、嫉妬すること。
 あなたがくれたイン・ビトロ・ローズが、誰にも言っていないけれど、密かに宝物だということ。


 探偵という職業柄、知られることは恥ずかしいことだと、そう思ってきた。
 知られたら負けだ、そんな世界で生きてきたのだから。


 でも、あなたになら、負けていい。

 だから、もっと私を知ってください。
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