小野崎家近代史
小野崎が当主となり、分家のを娶る。
姿はこの時改名し、となる。
結婚して二年後、道梨(断絶の姉)がお腹にいるときに、春悲の両親がラインハルト家と和解し、情報を持ってラインハルト側に下る。
六制および反転が春悲の説得を無視し、両親含め近しい家族を皆殺しにする。
春悲は立場が危うい状態で無事道梨を出産するが、当主にはなれない女の子を産んだことを責められ、徐々に追い詰められていく。
間を開けず再び妊娠出産、三人の子供をもうけたが、三人とも女児だった。
次の四人目の出産で女の子と分かった途端、春悲はわが子を殺してしまう。
精神病を患い始める。
六制により、反転に妾達があてがわれはじめ、反逆者の娘、春悲を切り捨てようとする動きが現れると、ラインハルト側からの春悲への接触が始まり、苦しい板挟みの末、両親の悲願を叶えようとラインハルトと通じるようになる。
そんな中執念で断絶を妊娠。
本妻が男児を出産したら妾としての娘たちが用済みになると危機感を覚えた妾の家族たちが、こぞって春悲を暗殺しようとする。
それに巻き込まれた春悲の娘たちが殺され始めると、春悲の精神は崩壊し、小野崎に対して消えることのない恨みの炎を燃やし始める。
無事断絶を出産するが、死ぬまで一度も断絶を抱きしめることはなかった。
以後、断絶を復讐の道具として育て始める。
産まれてきた断絶は次期当主として、甘えも遊びも許されず、武術、勉学、諜報としての技術など上層教育が施されることとなる。
唯一生き残った姉とは疎遠で、父親とはろくに会話もせず、母親は断絶に通常の勉強とはほかに様々なことを教えて行った。
断絶は命令には逆らわず、淡々と物事をこなす子供として育ったが、歪んだ教育の結果、過度のストレスにより拒食症、色覚障害を患い始める。
この頃に従者として宴が与えられたことにより幾分か回復し、生きるために自分自身を殺すことに長け始める。
翌年、妾の一人が妊娠。
断絶は弟ができたと喜ぶが、精神をおかしくしている母親は妾の出産を認めず、堕胎されるよう申告する。
それを拒否し、妾は断絶、宴、家族の手を借り、ひっそりと子供を出産。
その場にいて出産の手伝いをしていた断絶が繋と名付ける。
苗字を旧姓に戻し、一年ほど王族居住区で隠れて育てていたが、しょっちゅう隠れて面倒を見に来ていた断絶の後を付けた母親の従者により居場所がしられ、暗殺されかける。
母親は唯一自分のものである断絶が取られるのを恐れ、執拗に妾と繋の命を狙う。
やがて飲食に毒を盛られたことにより妾は体調と精神に異常をきたし、繋を連れて田舎へ逃亡する。
断絶は宴と大切なものは決して知られない様にすることと、繋を守ることを誓い合う。
その後学校に通うようになってほどなくして、断絶は母親から再度マインドコントロールを受け、ラインハルト家の来栖院まとりと接触。友達になる。
母親からの指示だったということは気付かず気の合う友人として傍にいるようになるが、公式の場ではラインハルト家派として接し、公式には敵対関係を貫いていた。
少したって、六制は繋を「断絶に何かあった時の代え」として小野崎家に呼び寄せる。
断絶は宴と共に冷酷に接するよう努め、母親に知られないよう影ながら守っていくが、「断絶を奪いに来た」と感じた母親によって、繋は再度命を狙われ始める。
殺害を防ぐために、断絶は繋を洞窟に突き落とし、「自分は繋を好いていない」と証明しようとしたが、洞窟内にたまったガスにより肺が汚れ、不治の病に侵されるという不測の事態が発生する。
断絶はすぐに医者を呼び寄せるが病状が改善されることはなく、残された手段としてガスマスク使用を父親である当主に認めさせた。
毎月治療金として小野崎家から繋のもとに酸素を買うための資金が届くが、断絶の手配があってのものであると繋が知ることは最後までなかった。
また、その結果繋が当主になることはなくなり、異常な教育が施されることはなくなったので、断絶的には不幸中の幸いだった。
繋は幸せとは言え難いが、諜報や監査とはかかわりなく育っていくこととなる。
そのことがきっかけで段々と母親の執着がひどくなり、薬品薬物投与で髪の色が変わり始める。
ラインハルト家からの情報で科学に染まりつつあった母親とその従者や信望者によって拙い人体実験(脳に電気ショックを与える等)も繰り返し行われ、収まっていた拒食症などが再発し始める。
身長も伸びなくなった。
拷問に等しい行為に繋が使われない様に、繋を敷地内から追い出し、王族の軍学校へと入学させる。
やがて、小野崎家の地下で秘密裏に行われていたことだったが、見かねた宴が当主に密告。
呼びだされた断絶は父親と初めて会話をし、父親が自分を案じていることに気付くと、母親と縁を切ろうとする。
それを知った母親が断絶に父親を殺害するように命じる。
マインドコントロールを受け、母親に逆らえない断絶は父親を殺害。
父親は和解した息子を受け入れ無抵抗で死んでいき、断絶は若干15歳で小野崎家当主となる。
従者である宴はこのことを後悔し、主である断絶に、以後喋るなと命令してほしいと頼み込む。
断絶は拒否したが、苦しんでいる宴をみてこれを了承。宴は必要最低限しか喋らなくなる。
当主になってから母親と六制の指示でスパイとして活動するようになり、大量の仮面を付けて、見かけを目立つものに変えていくようになる。
その頃にはまとりの妹のちどりとも親しくなり、母親からの介入がないことを不審に思った断絶が調べるとラインハルト家と母親のかかわりが浮上。
個人的にラインハルト家を警戒するようになる。
軍で順調に昇進している最中、友人まとりが何者かに殺害される。
動揺し、情緒不安定に陥り酷い有様になるが、母親からマインドコントロールや精神的な洗脳を幾重に掛けられて傷を忘れてしまう。
それ以後友人を作ることもなく生活していくが、スパイ中に出会った王族の女性に恋をし、誰にも知られない様に接していく。
女性は一般人との大恋愛の果てに結婚した、王族の中では異端だった。
しかし一般人の夫がギア出身だったことが発覚し、夫は金品を持って国外に逃亡。一人残された女性は屋敷を残すために不正金に手を付けていた。
断絶は糾弾しなければならないと思いつつ、彼女が自分の正体を知って逃亡してくれればいいと思い始めていた。
しかし断絶が変装した小野崎家当主だと知った女性は、逃亡するのではなく、屋敷で首を吊り命を絶ってしまう。
洗脳が解けそうなほど憔悴した断絶は、自ら自分自身に枷をはめ、誰も愛さないようにし始め、唯一の味方である宴にも壁を作り始める。
孤独になればなるほど、断絶の地位は高くなっていった。
六制から枢密院に上がるよう指示が来たときは、いざとなったら繋自身が小野崎家に抵抗できるように将軍の地位につかせ、もう二度とかえってくるなの意味を込めて邸宅を祝いの品として渡した。
繋はその意味を受け取り、それから先、小野崎家の敷地に近づくことはなくなる。
益々忙しく働くようになった断絶は枢密院からの命令でギアにも足を運ぶようになり、そこで空軍元帥リュゼ・スターリングと出会い、半年ほど経った頃、断絶はリュゼに告白される。
正体を暴かれたことも含め、突然の告白に酷く動揺し、拒否し続けるが、リュゼは諦めることなく愛を伝え続けた。
断絶は悩み続け、同性であるということとギアであるということ、過去のトラウマと自分自身の枷、大切にしているということが母親にバレたらと考えると拒絶した方が正しいと苦しみ続けるが、断絶を助けてあげて欲しいという思いを持った宴の後押しもあり、想いを受け入れることを試み始める。
誰かに愛される体験は生まれて初めてだったのでストレスを感じることもあったが、悪くないことだった。
断絶も少しづつリュゼを信頼し始め、二人は付き合い始めた。
断絶はスパイ活動と称して何度も会いに行き、いつしか恋愛感情が生まれ始め、愛するようになっていく。
しかし大神器ではそんなこと欠片も見せず、空軍の内部事情を知るため、繋と恋人を人質にとり補佐のブラックをスパイとして扱うようになったりと、活動的に行動するようになる。
そうして戦争が始まった。
こうなることを薄々予測していた断絶としては、リュゼからなんらかのアクションがあるんじゃないかと期待していた反面、何事もなく戦争になってしまったことに軽い動揺を受け見捨てられたという気持ちが母親に掛けられたマインドコントロールの効果を強くした。
裏から空軍に指示を与え繋を守りつつ、枢密院としての義務を果たす。
戦況が終わりに近づいてきたときだった。
母親から元帥殺害命令が下る。
母親はすでに10年前に亡くなっていたのにも関わらず、断絶に掛けられたマインドコントロールは解けてはいなかった。
断絶の世界の中では母親はいまだ生きていて何度も命令を下していた。
断絶は気が狂いそうになりながらもギアへと向かう。
自分に会えて驚きながらも喜んでいるリュゼを見て言葉にできない感情に支配された断絶は、リュゼに本音をぶちまけると母親の命令通り腹部を刺し、生死を確認しないうちに高笑いを上げて逃亡。
途中気を失い、宴に助けられて大神器に帰り着くが、リュゼを刺したショックでマインドコントロールが解け、精神がボロボロになってしまう。
六制は断絶の反乱を恐れ、離れに拘束して監禁するが、その時点で断絶は廃人同然だった。
食事もとれない状態だったが、宴の看病と、宴の報告により駆けつけた繋と和解により徐々に回復の兆しが見え始める。
半年ほどリハビリに努め、安定剤を飲まなくても日常生活をおくれるようになるまでに回復したころには繋とは仲良くなっていた。
リュゼにも電話出来るほど精神的に安定し、断絶は今まで尽くして付いて来てくれた宴に小野崎と縁を切りたい想いを打ち明ける。
本家の後継者には姉・道梨の長男を選び、それを支えていくように命令した。
断絶は最後の仕事として六制制度を繋と共に廃止の方向に持っていき、小野崎家の敷地内を囲う壁を撤去。
以後小野崎家はラインハルト家との歩み寄りを始め、改革、改善に力を注いでいく。
戦争から一年後、断絶は初めて宴と別れ、単身ギアへ向かった。
そうしてとあるマンションの扉をノックする。
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