キーリン Keelyn


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高級娼婦の子供たちの中で、胤を落とした父親の宮殿で暮らす者はそう多くありません。
しかしシェアイムの密偵とパーペンタクその人との間に生まれる子供はさらに稀でしょう。
キーリンの母が自分の突然の懐妊に気付いた日は、冠の王子に見初められた可愛い浮気者にすぎないという彼女の仮面が剥がれ落ちた日でもありました。
彼女の周りには、任務の中断を防ぐために魔法による避妊の守りがかけられているはずでした。
彼女にはこの状態でパーペンタクの寵愛を留めておけるとは思えませんでした。
そして母性本能に目覚めた彼女は、危険な任務にある我が身に新しい命が育つことを避けようとしました。
しかしながら、彼女は間違いなく彼の寵愛をその身から失ってしまいました。
そのとき彼は、魔法の鏡を通してテブリンへと最後の報告を行う彼女の姿を見付けてしまったのです。
彼女は脱出の呪文を試みましたが、宮殿全体にはそれを妨げる魔法がかけられていました。
地下牢に繋がれ、すぐさま処刑を言い渡されると、その密偵はひとつの願い事をしました。
「お願い、お願いです。この子だけはお救いください、私の…私たちの子供だけは。」侮蔑を湛えたパーペンタクの表情は、悪意に満ちた愉快げなものに取ってかわりました。

「やれやれ、さてさて、どうしたものか?

死を賜るは汝には過ぎたる誉れ!

ああされど、わらべは我が終焉へのしるべなり――

すなわち死なる破滅への。この苦しみは引き裂かん、

我が悦びの贄に、汝に宿る二つの魂を。

奴隷となさしめるべきか、それとも火炙りか?

定めて我が子は我が道具となさしめん。

汝があるじの魔法王? 彼には彼の生があろう!

家来どもよ、このうかれめに手厚き世話を、

なぜならこ奴めは生きねばならぬ――。

いとしき我が子の生誕に、

復讐の花は咲き乱れ、喜ばしき哉、荒々しき哉!」


このようにして、その娘が産まれるまでバルセラフの大臣たちは慎重に密偵を監視することになりました。
彼らはパーペンタクの命令を待ちました。
しかし一向に命令が下ることはなく、彼らの主はすべての問題を忘れてしまったかのようでした。
誰一人として彼にこの決まりの悪い関係のことを思い出させたい者はいませんでした。
自分たちの狂王の娘を敢えて害そうとする者はなく――しかし同様に、王に害なす者の娘に関わろうとする者もいませんでした。
彼女が乳母から乳離れさせられた日から、強大な召還師たちが彼女の安全を守る役目を仰せつかりました。
しかし彼らは彼女に情を移してはならないと命じられていました。
そんなわけで、部屋を離れてよちよち歩きができるようになった頃から彼女の唯一の友達は、魔法使いに召還されて彼女を守るよう縛り付けられた使い魔だけでした。
彼女はインプたちから会話を学び、魔人と共に踊りを舞い、ナイトメアと一緒に廊下を駆け、馬に出会うより先に砂獅子に跨りました。

一年が過ぎるたびに彼女の遊び相手は姿を消し、新しい召還生物と入れ替わりました。
彼女が8歳になった年、彼女はインプの『パピー』に懇願しました。
「今度は、私を置いて行かないで。私は一番あなたが好きなの!」
それが実際に地獄の僕の友情によるものなのか、それとも災いをなす獣による企みなのか、あるいは彼女の魔法の血統がなせる業なのかは後に論争となることですが、ともあれインプは彼女のほうを向いて、微笑みました。
「キーリンお嬢様。」彼は軋り声で言いました。
「共に過ごした時間はとても楽しいものでした。しかし私は主の下へ戻らなくてはならないのです…おそらく、お嬢様が彼らにお願いできるなら別ですが。」
そうして、霞の中から現れる怪物だけが友達であった子供は、自分自身で召還の術を学びとったのです。

次に彼女の父親が、いつものようにお祭りを求めて数週間から数ヶ月の放浪の旅に出掛けると、大臣たちは会議を開きました。
それは彼の下した狂った命令が、気付かれずに無かったことにできるか、それともどうしても遂行しなければならないかを慎重に決定するための恒例行事でした。
この会議はしかしながら、キーリンとバロール、そして脇を固める二匹の奈落の魔獣の乱入によって中断させられました。
「くすくす。」少女が魔獣に向かって言いました。
「しばらくは、私が仕切りますって彼らに教えてあげて。」
バロールが大きな咆哮を響き渡らせました。
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