マヘイラ Mahala


「我々は、彼についてもっと知る必要がある。」

「もっと知る必要がある? 俺たちはいつから黄色いひらひらを着るようになったんだ。知識が何だというんだ? そんなのは文明かぶれの連中がする話だ…。」
キャラドンはほとんど吐き捨てるように言いました。「…民は軟弱になった。そのことがお前を同じように腰抜けにしてしまったんだ。」

マヘイラは彼を無視しました。怒鳴り散らすだけの、頭の固い愚か者…。
「その男は見掛け倒しかもしれないし、あるいは本当の脅威に――そして味方になる者かもしれないのだ。我々には確実なことが必要だ、それが手に入るものならば。イリアンが勢力を伸ばしているとすれば…」

今回だけは、彼が話をわかってくれることを彼女は望みました。しかし二人の話し合いは、いつものように物別れに終わりました。くそったれ、間抜け、単細胞、小汚い半端者め。
この怪物を再び目覚めさせた、祈祷師たちのことです…。マヘイラは深呼吸して、ふたたび自分の主張を論じようとしました。

「あんたが言う無益な戦争などしたところで、敵軍の優れた統率を知るのが関の山だ! 我々を、滅びたほうがまだましだという目にあわせるつもりか!」

「はっ! お前は俺たちを腑抜けにして、敵に差し出そうというのか! 羊や牛みたいに、囲いの中で飼われるために! 奴隷として生きるくらいなら、戦士として死んだほうがましなんだ!」

「羊や牛の…ああもう! 私は子供たちのことを考えているんだ! あんたは流血のことしか考えちゃいない!」

「俺がお前から少しでも目を離せば、後ろから忍び寄って刃を突き立てるに決まってる――そうやって、ドヴィエロの力を担う最後の一人を亡き者にする気だろう!」
その侮蔑は明白であり、決定的なものでした。
正々堂々としたやり方、つまり、その場かぎりの血生臭い決闘という手段をとらずに相手を殺すことは、おそらくドヴィエロたちが考えうる中で最も卑劣な行為でした。

「そのように恥知らずな真似などするものか!――だが、カムロスか誰かのお迎えが、あんたに訪れることを心から願っているさ! あんたの時代はとっくに終わってるんだよ! そろそろ群れにも新しい頭目を迎えていい頃じゃないか、じいさん。あんたを呼び戻したのは間違いだったね。」

彼女は、その言葉が彼の急所を抉ったことを理解しました。そうなることを承知で言い放ったのです。キャラドンの顔は抑えきれない怒りのあまり、深い紫色へと染まりました。

「この子鼠めが! 何様のつもりだ! 臆病な雌餓鬼のくせして恩を忘れおって! 今からでも母親の胎の中へ戻ったらどうなんだ、この弱虫め! 群れの頭が言うことは黙って聞け!」

「群れの頭はあんたじゃない! ドヴィエロは、私が一人で、この手で作り上げたんだ! 氷の時代にあんたが失態を演じたあと、部族は私の他には誰もいなくなってしまった。ドヴィエロは私の群れなんだよ!」マヘイラの忍耐は尽きました。
彼女はその場を去ろうとしましたが、キャラドンは背後から彼女に組み付き、腰に手を回してきつく抱きしめ、頭を彼女の高さに合わせました。

彼は耳に囁き、マヘイラは腐った肉と歯の臭いがするキャラドンの息を感じることができました。
「お前の性根は軟弱で、口から出るのはたわ言ばかり。だがお前の身体は…見込みがある。俺たちは強靭な獣の子らを授かることだろうな、お頭。俺の素晴らしい血統を受け継ぐ以上は…。」
低く抑えられた言葉、病的なほど期待と欲望に取り憑かれた唸り声、そして、怒りから転じた情欲。

彼女は一喝し、身をよじって、袖の折り目に隠した短刀を彼の頸動脈に走らせました。首筋に沿って、ほんのわずかに血が滲みました。

束縛を解き、キャラドンは好色な笑みを投げかけて、彼女から身を離しました。「あせりすぎたようだな、わかっているとも。」彼はそう言い残して広間を去りました。
発情した犬め。マヘイラは容赦なくそう考え、息を弾ませながら座り込みました。アドレナリンが身体中の血管を駆け巡っていました。

キャラドンがどんな決定を下そうが、本当はどうでもいいことなのでした。いずれにせよ彼女は自分自身で事態を検討していたでしょう。
この期に及んで、しばらくのあいだ身を隠すのは悪くない考えのように思えました。

彼女は目を閉じ、夢の中に現れる人影をもう一度思い起こしました。
凛々しく、しかし…華奢で、気障で、少し悪戯な態度を気取り、細身で、肉の焼き串として使うのがせいぜいの尖った剣を佩いて…。
彼は戦士のようには見えず、まして、彼女の信頼に値するような英雄の類では決してありませんでした。しかし重要な人物であることに間違いはありませんでした。
彼女の眠りを悩ませるのが、どうして他の誰でもなく、そのような人影なのでしょうか?

キャラドンがのたのたと歩いて、外にいる彼の手下たちに会うのを見計らって、マヘイラは裏口からそっと出ました。
そこには彼女の馬が待っていました――最も信頼を置く、有能な仲間や護衛たちと一緒に。そのうちの一人、シシエルという名の女狩人が、彼女に近付きました。

「準備は整っています。他に入用はありましたか?」

「我々はありあわせで間に合わせるしかない。奴に道理を説くなど不可能だ。カムロスよ、彼とはまるで話が通じないのです! 奴はまたもや私と床を共にしようとした! そんなことになろうものなら、あの気違いをカムロスの大霊堂から呼び戻すのに手を貸した祈祷師どもに、一人残らず引導を渡してやる。」

「長老たちはそうなることを望んでいるようです。この危難に相応しい頭であると。多くの若い野蛮人が、襲撃の失敗の繰り返しで命を落としました…。」

「危難などと! 勢力の弱体化は嘆かわしいことだ。たしかに不遇の時代であると言えるかもしれん。だがそれは断固として必要な選別だったのだ。」
マヘイラは、ときおり故意に襲撃を失敗させてきたことには触れませんでした。その事実を知る者は少なく、彼女が今後も無事で過ごせるかどうかは、そうして秘密を守れるかに掛かっていました。
「我々はそれ以来、一段と致命的な腕利き集団として頭角を現してきた。だが、今はといえば…。」

マヘイラは言うことを聞かない馬の腹を鋭く叩いて、息を吐き出させました。それから鞍の革帯をきつく締めました。

「今や、あの過去から来た亡霊は自暴自棄になって、他のあらゆる者たちに襲い掛かるため、そしてあらゆる存在を吊るし上げるために、死者の大地の混沌を利用するのが上策だと考えている。どう転んでも碌なことにはならん――奴が敗れれば、次は我々の番だ。かといってあの妖術師が勝てば、我々も奴から逃れられなくなる。」

マヘイラは大広間の片隅をじっと見つめました。ちょうどキャラドンが忙しそうに愛するウォーマシンの手入れをしている姿を見ることができました。
それはキャラドンにとって完璧な装置でした。残忍で、有無を言わせない。彼がそれほど入れ込んだところで、何の不思議もありませんでした。そして彼女には自分自身の多忙な準備がありました。

「ふむ、俺たちの中で少なくとも一人は、良識と、あの女の剣先よりも遠くを見据える意思を備えた者がいたというわけだ。」

彼女がいなくなったことで、おそらくキャラドンはせいせいしていることでしょう。ドヴィエロを血の海へいざなうという、狂った計画を推し進めることができるのですから。
しかし彼女は、失ったことを彼が知れば間違いなく悔しがるであろう、一人の男を連れて行ったのでした…。

「シシエル、ルシアンはまだか?」
最終更新:2013年03月10日 15:05
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