パーペンタク Perpentach


彼は、笑い男、嘲りの神、泣き虫ジャックなどと呼ばれています。
彼がなんと呼ばれていようと、バルセラフの国王は少なくとも二世紀以上に渡り、ジュビリーの暗い中枢で王宮を掌握してきました。
今とは違った形態であったにせよ、氷の時代よりも以前に、彼がこの地に陣取っていたという証拠があります。これまで彼は、捕まえた奴隷たちが流す血の上に勢力を強めてきたのです。

しかし笑い男は、単に恐ろしくて破壊的な脅威というわけではありません。
狂気に満ち、気まぐれで、致命的というのが彼であり、また、ある種の度が過ぎた稚気を備え、勇敢さや正直さを尊重し、約束を守ることに対しては強迫観念に囚われているようにも見えます(とはいえ、彼は言質を与えることを避けるために、詭弁や言葉の微妙な言い回しを使うことを好みます)。

本当に独りぼっちでした。ただ彼と、四方を囲む壁だけがありました。再び。

「あの時あなたは牢獄にいたわけではないのよ、分かるでしょう、坊や。」と、シスターセリサが彼に語りかけました。
「シロナの修道女たちが、あなたの看護をしていたの。誠心誠意ね。たぶん精神病院はあまり居心地が良くないのでしょうね。でも決して牢獄というわけではないのよ。私たちがあなたを保護したとき、あなたは飢えていたわ。飢えて、ずっと以前に亡くなったあなたのご両親と話をしながら、通りを徘徊していたの。」

「この女はあたしらをあんたから引き離そうとしてるんだよ、パーペンタク。みんなを閉じ込めておいて、あたしらがいつもあんたと一緒にいられるわけじゃないなんて出任せを言ってるんだ。」そう言って、彼の母親は彼に手を伸ばしました。

「お前は狂人などではない、少年よ。」と、彼を救い出したカイロリンが告げました。
「お前は魔法の申し子だ。特別な才能を持つ人間なのだ。お前の場合は精神魔法の才能だ。あの精神病院がその証だ。およそ300人もの患者が、看護を受けられずに息を引き取った。なぜなら修道女たちの全員が、お前が気まぐれを起こすたびに魅了されてしまったからだ。私はそうした力を役立てることができる。」

彼の師は狭い個室を歩き回りました。「魔法というものは常にそれを行使する者に対して影響を及ぼす。私はそのことに気付いたのだ。準備ができていない者であれば尚更のこと。お前の力は恐ろしい代償をもたらした。おまえ自身が生み出したもう一つの人格が、お前の心の中に住み着いたのだ。これがお前の狂気の原因であった。お前を見つけたとき、私はおまえ自身の力を用いて、心の中にあるそうした部分を封じ込めたのだ。」

「お前がしたことは、それで全てというわけではない。」年老いたカイロリンが、若い頃の彼に向けて言いました。「お前は狂気を悪意と引き換えにした。我々は力に溺れるあまり、お前がどれほど堕落しているかに気付くことができなかったのだ、我が息子よ。お前をこうしなければならないことを、残念に思う。」

「堕落だと? お前は我々を裏切ったのだ。そして、我々が積み重ねてきた全てを!」より若い姿のカイロリンが、年老いた方をパーペンタクの独房の冷たい石壁に押し付けました。「私はパーペンタクが成し遂げられた業績を、誇りに思ったであろうに!」

「誇りなど! 神よ、私はガストリウスをこの手にかけたのです。パーペンタクが犯した非道には到底及ばぬ彼を。」

ガストリウスが師の肩にもたれかかって付け加えました。「なのに、あなたはパーペンを殺すことができませんでした。彼はあなたよりも強大です。我々全員の誰よりも。彼はほとんどあなたを殺すところでした。大いなりし、力強きカイロリン、己が正義に背きし者よ。」

年老いたカイロリンが束縛を振りほどき、人々から背を向けました。「彼が行った悪行は……しかし彼の責任ではない。我々の責任なのだ。だが私は彼を阻止せねばならなかった。だから私は解き放った。彼が私を打ち負かさんとした将にそのとき、彼の最大の弱みである、かつて私が施した守りの術を解いたのだ。そして押し寄せる狂気は充分なものであった。そうして今、我々はここにいる。ただお前と私だけが。おそらくこれを最後に、お前の悲しい人生に幕を引いてやるべきなのだろうな。」

「お前は後ろに下がってるんだよ!」と彼の母親が叫びました。

パーペンタクは思考が混濁し、自分が一人でいることに気が付きました。彼は心の平静を求めて、耳を塞ぎ、叫び声を上げながら床に倒れ込みました。それも空しいことでした。そして彼は狂気の海の上空に浮かぶ別の誰かを必死で捜し求めました。カイロリンは彼を侮るという同じ過ちを二度と繰り返しませんでした。彼の牢獄である、沼地に深く沈んだ塔の周りには、何マイルにも渡って人間の集落はありませんでした。夜毎に彼は、どんな思念であろうと、どんなに微かな意識の瞬きであろうと、意識を失うまで探し回りました。

「誓って言うが、お前さんがクリアスを見つけるより先に、俺たちはパトリアの端っこまで辿り着いちまうぞ、バルマフリュー。」その声は辛うじてパーペンタクの認識の端に引っかかり、そして遠ざかろうとしていました。一縷の望みとなる、大胆な計画がパーペンタクの脳裏に閃きました。旅人たちが立ち去るのを感じたため、彼はその男の精神に跳び移りました。彼の肉体との繋がりは大きく揺らいで、ほとんど完全に断たれてしまい、独房にいる魔術師の身体は地面に倒れ込みました。

「川のせせらぎか聞こえたり、」とバルマフリューが答えました。「川なら確かにモーマスの西側を流れとるが……おい大丈夫か?」劇団の座長は顔色を悪くして、慌てて馬車を止めました。

「我は――我々は戻るべし……」嘲りの神は途方もない不安に駆られました。パーペンタクは自分の身体に戻りたくて仕方ありませんでした。他人の精神の中に隠れている間は、持てる魔力のほとんどから切り離されてしまうのです。しかし彼にはそれ以上に、自由を阻む物思わぬゴーレムたちを打ち倒すため、この小さな旅の一座が必要なのでした。そして彼は時を待ちました……この愚か者たちが、町まで案内してくれるのを。

嘲りの神はかぶりを振りました。「すまんすまん……よく言われるように、少し意識が飛んでいたようだ。だが急ごう。この沼地は気分が悪くて仕方ない。」

ロークは自分の娘を探しました。彼女は乳絞りから戻っているはずでした。彼は野原で、狼に連れ去られそうになっている娘を見つけました。ロークは干し草用の三つ叉を引っ掴み、狼の後を追いかけました。狼にはなかなか追いつけませんでしたが、たとえ死ぬことになろうとも、諦めるつもりはありませんでした。愛しい娘のために。

いと疎まれしは大臣の従兄弟。いと美しきは鍛冶屋の愛。いと尊きは、領主の息子より盗まれし品々なり。

村にいる演者たちが視界に入る頃には、それぞれの相手を追いかけて列を成す群衆の姿を見ることができました。嘲りの神は、引き出した全ての魔力を幻影へと注ぎ込んだために、ほとんど意識を失う寸前でした。彼はなんとか皺枯れた声を搾り出しました。「群集の後を追うべし……沼地へと戻らん……」

村人の多くがゴーレムに襲い掛かって倒されました。多くの者が半ばで力尽き、三日に渡り牢獄に辿り着くことはできませんでした。そしてとうとう、パーペンタクを自由の身とするのに充分な数が生き残りました。しかし、誰一人として忘れ去られる者はいませんでした。彼の心に宿る人々の群れに、おびただしい数が加わりました。しかしパーペンタクは、狂気を生き抜くために、それを避ける以外にも様々なやり方があることを学びました。彼は狂気を受け入れ、心の中でたくさんの人格を支配下に置き、カイロリンの炎から遠く離れた小さな領地と、心の領域に宿る数多くの人々とを、共に統治しました。