サバシエル Sabathiel


シャディスは静かに部屋へと滑り込みました。広大な控えの間や、サバシエルの居城の公共区画である、見上げるような大広間には及びませんでしたが、その部屋も充分に広く、おおざっぱに言って立方体であり、床から天井まで優に6メートルはありました。屋根は丸型で、四方の壁に埋め込まれた円柱に支えられており、それぞれの壁は三つの部分に分けられていました。

部屋は暗がりに沈み、中央には石から削り出された寝台が据えられ、そこに横たわる巨大な人影が微かな光を放っているという事実が、単純に興味を引きました。サバシエルは再び眠りに就いていました。おそらく彼は、シャディスが最後に話した二週間前からずっと眠り続けていました。

それは本当の眠りではないのだと、シャディスは何度も考えました。それが何であるのかについては完全な確信を持てませんでした。サバシエルの身体はこの石の寝台の上にあるように見えましたが、心と魂はそうではありませんでした。風の助祭は、サバシエルがそのように横たわるとき心がどこに行くのか、彼に問うたことはありませんでした。彼には自分がそれを知りたいのか否かも見定められませんでした。

シャディスが近付くと、急激に空気を吸い込むような音がして、サバシエルが驚くほど突然に背筋を伸ばして起き上がりました。

「何かが起こったのである。」

それはまるで数え切れないほどの声が優しく同時に響いたようであり、その口調には非難の色合いと、シャディスの心を逆撫でする確信の響きが込められていました。サバシエルはシャディスを吟味し、彼が口を開く機会さえ得る前に、おそらく問題が何であるのかを見抜いていました。そして発言の内容も、非難の色合いについても、その天使は正当なのでした。確かにある事態が起こってしまったのであり、そしてシャディスは間接的にとはいえ、過ちを犯していました。

「彼らには罰が下されるであろう。言うまでもなし。法をないがしろにはできぬことを、その制約から逃れるは望めぬことを、彼の者らには教えねばならぬ。なれど我は汝に失望せり。汝はこの成り行きを承知したり。今少し早くに止めることができたはずである。」

シャディスは頭を下げて恥じ入りました。彼は事態を知っていましたが、それが重要なことであると見抜けなかったのです。早期に対処しようとすれば背筋が凍るような処置を伴うことになり、それで彼は、自然に消滅することを願って問題を先送りにしたのでした。しかしそれは消滅する代わりに爆発しました。事態の収拾には混乱が避けられないでしょう。

サバシエルは地面から浮かび上がりました。彼がそのようにすると、部屋にはさまざまな色調の光が迸りました。その光景が、恐れ入るシャディスの態度を崩すことはありませんでした。今や壁のあらゆる区画が、遥か下界の風景を映し出す巨大な窓でした。まるでその部屋は、ありえないほどに高い塔の最上階にあるかのようでした。しかし眺めは一様ではありませんでした。それぞれの窓からは異なる光景を見渡すことができました。ある窓から見えるものは、すべてが山と氷と雪でした。別の窓は、起伏する丘や野原や静かな牧草地を映しました。三つ目の窓には、その全体に果てしない砂漠を見ることができました。

天使たるバンノールの統治者は、四方に広がる首都の眺望を映し出す窓へと漂ってゆきました。彼は静かにその前に立ち、両手は背中で握られ、しばらくの間そのまま動きませんでした。シャディスは話しかけませんでした。サバシエルと会話を持つことは、もどかしい行為でした――その天使はこちらが何を言わんとしているのかを事前に悟っており、たいていは口を開く機会さえ与えられないまま、答えを返してくるのでした。それで助祭は根気強く、あるじが沈黙を破るのを待ちました。

ついに、サバシエルは震えるようにして、長い長い溜め息を吐きました。それはシャディスに、峠を吹き抜ける風の音を思い起こさせました。都市に面と向かったまま、サバシエルは話し始めました。

「我は汝を非難せず。畢竟、汝は人間であるに過ぎぬ。汝らすべてが人間であるに過ぎぬのだ。ユーニルに仕える掛け替えのない道具であるも、死すべき定めの肉を持ち、誤りやすく、ことあるごとに覚束ぬ存在でしかない。慈悲というものが、我が友よ、平和や安定や法を前に、一歩譲らねばならぬこともあるのだ。これがそのときであった。そして汝はそれを見過ごした。汝は人としての手際の壁に至れり。我は怒りを抱かず。失望を抱くべきまことの所以もまたなし。されど汝は我が民として、我が子として生を享けし者なり。我こそが光に導くべき、ムルカルンの御代にありて我こそが守護せし者なり。我は思う……。我は汝らに過ぎたる期待を寄せたりと思うものなり。」

サバシエルは動かなくなりました。おそらくは、自分の考えをまとめるために。いったい誰に分かるでしょうか? 彼の心は、この場所とはまったく別の次元で活動しているように見えました。人間が、可能な限り最善の選択であることを願いながら道を選び取り、それにつまずかなければならない一方で、その天使はただ知っているのでした。彼は総じて無慈悲に、策略と深い冷酷さを以て振る舞うことができました。しかしサバシエルが命じた行動の結果は、他のどんな代わりの者がもたらすやり方よりも常に優れていました。その天使は、その時どんなに心無く間違っているように見えたとしても、いつも正当なのでした。窓には突然たくさんの異なる眺めが映し出され、目ざましい速さで移り変わってゆきました。

「見るべきは数多あり。気に掛けるべきは数知れず。過つに能うは夥しきなり。我は願う、おお、我は如何に願おうぞ、今よりもじかに人々の世情に交じらんことを。されど栓もなし。我はこの場にて人々の過ちを防ぐものなり。なれども我にそれまでの力はなく。未だなく。我はなけなしの、今なお我に残されし力を蓄えておかねばならぬ。いつの日か、恐らく汝らが過ぎ去りしのち、だがそう遠くない日々に、我にはそれが必要とならん。我らのすべてに必要とならん。」