サンダルフォン Sandalphon


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寒く、霧深い日のことでした。その掴めそうなほどに濃い霧は、人の手による都市の谷間にだけ立ち込めるものでした。腕の長さから先にあるものは何一つ見えなくなってしまうせいで、歩き続ける二人の姿を視界に収めておくため、彼女は彼らから少しも身を離すことができませんでした。そこかしこで、松明やランプが発する柔らかな光が、羊毛のようにふんわりとした大気の色を変えていました。彼女はできるだけそれらを避けるようにしました。彼女のような生業の者にとって、影を投げかけることは得策ではないのです。

昼間に会ったときは、サンダルフォンは完全な目に見える姿を保っており、隣の男と同じくらいはっきりとしていました――異様なほど青白い顔色と生気のない目を除けばですが。まるで彼の瞳には光が宿っていないかのようでした。しかし、この霧深い黄昏どきには、サンダルフォンはまるで周囲に溶け込んでいるかのように見えました。霧の中から現れたり消えたり、あるいは霧と同化したり、うっすらと光を発しているようにも見えました。彼はまったく実体があるようには見えませんでした。いずれにせよ、実際にはサンダルフォンと周囲を取り巻く霧とを見分けることはできても、どこまでが霧でどこからが彼なのか正確に言い当てることは不可能でした。その男の全身はまるで光の加減による幻のようでした。それはむしろ不穏な印象を与えていました。

予想に反し、霧の中を響き渡る彼の声は力強く威圧的であり、おぼろげな姿から連想するようなかすれた囁きや遠くの軋り声などからは、とてもかけ離れたものでした。彼は同行者と影人であることの利点について話し合っていました。

不死なる者は、最後にはただ変わらぬ毎日を送るだけの存在に成り果てるのだ、彼女は考えを反芻しました。それこそが彼らの弱みです。長年に渡る繰り返しは彼らの生活を様式化し、簡単に予測できるものとします。サンダルフォンの最も大きな付け入るべき隙は、影人としての生を体験できる儀式を受けてみようと考える人々を案内する、この移動のさなかにありました。

「私は特に愛を失ったというわけではないのだ。」彼らが酒場と商店の間をゆっくり歩いているとき、サンダルフォンは感慨を込めてそう呟きました。「愛、嫌悪、怒り、強欲、そして嫉妬といったものは、君たちの魂を束縛する、悩ましく不要な感情だ。君たちもいずれ、そうしたものはないほうが望ましいのだとわかるだろう。」

「あなたが失ったものはないのですか? 魂を捨て去ったとき、諦めるしかないと感じたものは何もないのでしょうか?」侍者がそう問うと、彼らは角を曲がりました。悪態をついて、彼女は慌てて彼らに続きました。

「ああ、もちろん失ったものはある。食事や香り、音楽の悦びを克服するのには長い時間が必要だった。どれもすべて原初の本能に訴えかけてくるものだ。しかし結局は、知識の海に溺れ、世界のあらゆる知恵を貪れるのだという期待の前には、すべてが色褪せていった。君には探究のための限りない時間があるのだ。」

彼らは歩き続けました。侍者が問うたび、サンダルフォンは落ち着いた確かな答えを返しました。道順は通りの内へ外へと曲がりくねり、彼女が行動を起こすのに適した機会はなかなか訪れませんでした。彼女は沈黙して彼らと歩調を合わせながら、早く好機が訪れることを祈りました。

「でも、影人となった者の中には終わりのない生に倦む者もいるのではないですか? もしあなたの仲間になれば、私は逃げ道を閉ざされ、地上を永遠に彷徨う運命となりはしませんか?」長い地下道の入り口に繋がる短い道の曲がり角に差し掛かったとき、侍者はそう尋ねました。

彼女はそれ以上黙ったまま彼らについていくことはできませんでした。今しかありませんでした。彼女は飛びかかりました。

サンダルフォンは今しがたの問いについて考えました。「自殺という選択肢は常に存在する。」彼は霧の色合いの変化を感じ取ったかのように、答えると同時に背筋を伸ばしました。「我々は死ぬことができないというわけではない。たとえば、非業の死を遂げるということもありえる。」彼は続けました――優雅な足取りで左へと身を翻し、腕を突き出して暗殺者のナイフを持った手を捕えながら。「我々は死ぬこともできるのだ。」彼は不運な暗殺者を自分のほうへとねじりました。そして一瞬だけ、まるで物陰から照明の下へと躍り出たかのように本当にはっきりとした姿をとり、流れるような動作で彼女の頭を後ろへひねり、同時に背骨を前方へ押し出して、身の毛もよだつような音を鳴らしました。「とはいえ、我々を殺すのは途方もなく困難なことだが。」そう彼は言い、暗殺者のぐったりした身体を地面へと下ろしました。