カーディス・ローダ Cardith Lorda



カーディスは本当に注目に値する名君です。
少年王とある大臣とのチェスの対局を見て、ギルクラスは深くそう思いました。
確かに、彼の見た目は十歳の少年に過ぎませんが、その知識は年齢を遥かに凌駕するものでした。
事実、彼の博識は他のほとんどの統治者を遥かに超えていました。
そして彼は、本当は十歳などではありませんでした。
ギルクラスが若駒として自衛軍に参加した日から、彼はずっとその姿のままでした。
決して思春期へと成長せず、声変わりもせず、胸毛も生えず、女性に興味を持ったり男女の営みに誘惑されることもありませんでした。

ギルクラスはそれに漠然とした満足を感じていました。
王とは愛に溢れる存在のことであると言う者がいるとしたら、それは彼の帝国の民であり、彼の伴侶とは玉座のことでした。
カーディス・ローダは全ての時間を、巨大都市の運営や、集落の拡張や、蛮族と敵対国家に対する軍事行動などに注ぎ込みました。

縁故主義や、同族政治による腐敗や、彼に助言を与える人々の「ささやかなお願い」などとは全くの無縁でした。
理由は簡単です。カーディスは、人々が知る限り、天涯孤独の身でした。
彼には家系図もなく、やんごとない家柄の出身だという話もありませんでした。
名前の由緒を知る者は誰もいませんでした。
ギルクラスなどは、彼が自分で名付けたのではないかと半ば疑っているほどでした。

だとしても、ローダはその人柄の力や、決断、知恵、そして少しの狡猾さを駆使して、驚くほどの短期間に、クリオテイテの分裂した公国や都市国家を纏め上げました。
戦いと流血の期間は短く限定的で、その後には、すべてのクリオテイテのための力と繁栄の新たな時代が続きました。

ギルクラスは、両者による虚々実々の駆け引きが繰り広げられる場に駆け寄りました。
カーディスはいつものように勝利していました。
彼はギルクラスが近づく音に顔を上げ、愛情の篭もった笑顔を見せました。
それから彼は盤上に戻り、静かに殺戮の手段を講じるのでした。

彼のさまざまな気苦労や落ち着き払った態度にも関わらず、またクリオテイテへの多大なる貢献にも関わらず、ローダのこうした、自由に切り替えが利くように見える冷たく打算的な面は、ギルクラスの心を不安にさせました。
王に面と向かっては決して口にしませんでしたが。

彼が心配なのはそれだけではありませんでした。
過酷な判断を下すことや、長期に渡る戦いや、特に不愉快な決断などを求められると、ローダの声色は微妙に低く、歯から空気が漏れるような音に変わり、普段は優しく少年らしい瞳には、それに似合わない爬虫類を思わせる冷たい輝きが現れました。

そんなときは、ギルクラスは本当に恐ろしい思いをするのでした。

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