デイン・ザ・カスワラウン Dain the Caswallawn


彼は機械仕掛けの装置の部品を手先に弄び、卓上の上にかき混ぜ、歯車をつまみ上げて軸の上に乗せ、それから軽く弾いて回転させました。
技術工学というのは興味をそそる代物でしたが、デインはそれがどのように機能するのか基礎的な技巧を知ると、それ以上は本気で時間をかけて学ぶことはありませんでした。

そのように見事な機構を使いこなす者たちには大いに感銘を受けましたが、彼がそこに意義を見出すことはありませんでした。
こうした精巧な仕掛けを作ってまで、どうして苦心しながら自然法則に従う必要があるでしょうか? 単に自然法則そのものを操れば簡単に済むというのに。

しかしながら、魔法やそれを学ぶ者はちょっとした珍しい存在であって、それがこうした子供騙しや座興を必要とさせるのだと彼は理解しました。
魔法はあらゆることを解決できますが、大抵は使わずに済ませるほうが簡単でした。
それはボタンを押すだけで、あるいはレバーを引くだけで用が足りました。
精神を集中させる大いなる妙技も、時間を食うルーン文字や呪文の詠唱も必要ありませんでした。

デインは攻城魔術師として、人間砲台として過ごした日々のことを覚えていました。
彼は戦争の中で、自分自身を矯正しました。
それは本当に惨めなことでした。
彼は覚えていました。
血と汗の臭いを、それらを発する泥にまみれた衣服を、そして恐怖を。
負傷兵のうめき声を、目と鼻の先で行われる戦闘の怒号を、そして冷たく不潔でじめじめした野営地を、白兵戦に弱いアムリテ魔術師たちが身を寄せ合いながら出番を待つ、人間の創意工夫など望むべくもない場所を。
とりわけデインは、不安を――こうした一切の混乱から生きて抜け出すことはできないのではないかという、差し迫った感覚のことを覚えていました。

にもかかわらず、デインは他のものを求めようとはしませんでした。
高位の軍事魔法とその扱いに極めて熟達した魔術師たちの存在により、アムリテは、前述したような厄介で時間を食う類の大型攻城兵器という贅沢品を所持しているも同然なのでした。
それは彼らに戦争での優位をもたらし、はるかに強大な敵との戦いをも生き延び、相手を圧倒することを可能にしました。
魔法が彼らの命脈を保つすべてとなることもありました。

戦争に身を置く勇気を持たない者は、アムリテの魔法社会における序列構造の中に、いかなる居場所を得ることも期待できません。
それは言うなれば……最低限の資格でした。
そしてデインは、戦い、殺し、苦しみ――仲間たちの屍を越えながら戦争を生き延びました。
彼は苦労を重ねて奮闘の末に頂点まで登りつめ、そして今、そのすべての終わりとして、ここに腰掛けて機械仕掛けの小さな天文装置を弄ぶのでした。
デインは、ドワーフたちがこうした小物の製作に極めて優れていることを知っていました。
カザードはそうして鉱山を稼動させ、ルシュイアープは魔法と組み合わせることで、ある種の生命とも言うべきものをそれに吹き込むのでした。

この魅惑的な品物が、巧妙に作られた魂を持たない機能的な金属片が、想像もできないような厳しい法則に縛られた物体が、果たして彼やアムリテの民にとって脅威たりえるものでしょうか? 最も格下のアムリテ人でさえ、(ある程度は)法の目を逃れるものだというのに!

彼はかぶりを振りました。
頭がぼんやりとして、思考の焦点が定まらなくなっていました。
手慰みを始めたのが、敵を宥める真似事をするためなのか、それとも今まで大いに役立ってきた彼自身の実際的な性向によるものなのか、彼には最早わかりませんでした。
このようにして我に返ることは珍しくなくなっていました。
彼は殺風景な部屋を見回し、太陽が在るべき位置よりもだいぶ沈んでいることに気付きました。

時計を分解してしまったことに後悔を覚えながら、彼は部屋を飛び出しました。
それは少なくとも、歯車やぜんまいといったものが常に彼にとって最善となる事例の一つでした。
つまりは時間を守ることです。
最終更新:2013年03月08日 19:56
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