ファエリル・ヴィコーニア Faeryl Viconia


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ファエリルは自室の外では硬く心を閉ざしていました。
彼女は時の女王でしたが、エルフたちは未だアレンデルのご機嫌を伺うばかりでした。
ファエリルは、半年間の冬の統治を――なにひとつ成し遂げられることのない統治を、まさに始めたところでした。
やがて春が訪れ木々が芽吹きはじめると、ファエリルは慣習に従い、女王の座をか弱い従姉妹へと返上しなければなりませんでした。

彼女にできるのは、自室に篭って歯を食いしばることだけでした。
アレンデルも内心ではきっと、これまで毎年のごとく行われてきた一時的な玉座の喪失を快く思ってはいないに違いないのです。

「ここでの滞在はくつろげるものだったかしら。」ファエリルは尋ねました。

「ええ、もちろん。月影の王宮の美しさや、住人たちの礼儀正しさにはいつも驚かされるわ。」

ファエリルは頷きました。
これは両者が上辺だけを演じあうゲームの一部でした。
穏やかで上品な振る舞いの陰で、心の内では互いを嫌悪しているのです。
それでも、アレンデルはいつもよりいっそう憂鬱なようでした。
アレンデルの申し分のない人生に、なにか重大な問題が降りかかったのではと考え、ファエリルは危うく笑みをこぼすところでした。
彼女は尋ねずにはいられませんでした。

「アレンデル、何か心配事かしら。ご家族はお元気?」

「おかげさまで、変わりないわ。お気遣いありがとう。ええ、ずっと悩んでいることがあるの。でも謝らなければならないわね。ほんとうに、あなたや月影の王宮には関わりがないことなのに……。それが何かはわからないの。でも私たちに危険が迫っている気がする。今年の冬の訪れは、あまりに早すぎるもの。秋の戴冠式を終えたばかりだというのに、斥候たちはもう初雪の訪れを報告しているわ。司祭たちは夢で強い神託を受けているし、森の木々は冬の眠りに落ちるどころか、再び花を付けているみたい……。」

ファエリルは反射的に反応しそうになるのをこらえました。
アレンデルは、前途に横たわる問題が何であれ、自分の手には負えないかもしれないと考えている。
このままファエリルに、一年で実りのない季節を任せておくだけでは役不足なのではないか? 陽光の王宮もそう考えるのではないだろうか? しかしファエリルは一呼吸置き、努めて平静を装いながら答えました。

「イヴァンから聞いているでしょう? 彼はここで同じようなことを言って、はっきりとは言えない警告をいくつか残していったわ。あなたは指導者としての責任を忘れて、休息すべきよ。冬が去って、私が王冠をあなたに返すときの為の準備が必要でしょう。そのときまでは、なにか起こっても私が対処します。」

「ええ、そのとおりね、女王さま。私の心配で煩わせてしまってごめんなさい。」

「……今日はいい日和ね、アレンデル。まだ時が残されている証拠よ。あなたは統治をしているあいだ、エルフの国のことばかりを考えて、自分自身のことを失念してはいないかしら。今は自分の身を労ることね。おそらく今年の冬はとても厳しく、スケルスは私たちを支えるために新たな種を授けてくれることでしょう。もう行かなくては。今日はやることがたくさんあるの。もしよければ夕食を一緒にどうかしら。」

「ええ、喜んで。」アレンデルは言いました。「よき客人として振る舞うことを約束するわ。」

「必ず来るのよ。さもないと私が食事をここに運んで、あなたがお気に入りのこの窓の前に一緒に座って食べることになるわ。女王がいないせいで、右往左往する他の客人たちを放っておいてね。」

アレンデルは微笑みました。ファエリルは、窓から彼女を突き落とすことを想像しました。
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