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 『落人の谷』 
 
 [[久平]]という国が出来る少し前の話。 
 戦いの中で沢山の小国家が生まれては消えていた戦乱の時代に、頭一つ抜き出た者達がいた。 
 
 優秀な指導者の元、地の利を生かして大地の多くを支配した彼らは、栄華の絶頂にあった。 
 
 大きな「力」を手に入れた彼らは、当然その力を身内で独り占めにした。 
 彼らが栄華を誇っていた頃は、都は屋根が全て金で出来ているほどだったという。 
 
 しかし、彼らは時代の変化に気づけなかった。 
 
 彼らの生活を支えていたのは、名も無き民達の血の滲むような貢献があってこそなのである。 
 その民の力を軽視し、あまつさえ搾取を強めようとした彼らに未来はなかった 
 
 民の蜂起を扇動した一団の元、一丸となった民兵との戦いに次々と破れた彼らは、 
 自らの支配圏の端、太古より往来地だった海峡にて一族の命運をかけた一大海戦を挑んだ。 
 
 
 ここはその海戦の後、辛うじて逃げ延びた落人達が作った集落の一つである。 
 
 既に彼らの一族の物語が昔々のお話として語られるほどの時間がたった今、ここに住む者たちが
 落人達の子孫なのか、それとも住む人の絶えたこの地に移り住んだ人々かも判別できない。 
 
 季節が巡る度に花をつける桜は、華やかな見た目とは裏腹に儚く散っていく姿から栄枯衰盛の象徴とされている。 
 
 かつて季節の移り変わりと共にこの谷を彩っていた桜を、彼らはどんな想いで見ていたのだろうか。 
 
 今もこの谷を彩る桜の木々は、彼らの時代に生きていた桜の木の子孫だろう。 
 今も春になれば、この谷は美しい桜の景観を見せてくれる。
 
 
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