《朝顔の大聖堂、ニル/Nil,Cathedral of morning glory》
era1の終息となった人工衛星の落下。その直撃や衝撃波を奇跡的に避けることが出来た聖堂。
外形はera2の中盤となった時でもほぼ完全な形を保っているが、
付近に落下した軍事衛星の内部に入っていた毒性蒸気により、近隣住民は残っていない。
当時は数ある新興宗教の一つ、植物の持つエネルギーを信奉する宗教の総本山とされていたようである。
聖堂の周りには非常に繊細なデザインを持つ建物が建設され、小都市となっている。
人は一人も住んでおらず、植物が建物を緩やかに取り込んでいるのが見られる。
大霊堂の中心には毎朝花を咲かせる巨大な朝顔が生えている。
ニル、と言う名前は朝顔の木の根元のレリーフに刻まれていた文字列から。
『「朝顔が光っているように見える。人が全くいないのも変だ。何らかの異常気象か、毒性の物質が撒かれたかだ」
私の前に座っている短い髪の女が言った。
この不可思議な小都市を回っていたら、彼女に出会った。
私と同じく、世界の遍歴を続けているらしい。こんな辺鄙な土地で合うのも何かの縁だろう、少し、散策を共にした。
「――そちらの調子はどうだ? 男はそんな堅苦しい服で探索できるのか? 女はやりにくくて仕方が無い。」
「同じようなものだろう。遍歴なんて宗教だ。苦しんだほうが救済があると思うがね」
「そういう事を言うやつには久しぶりに会ったよ。宗教家だから襲わないのか?」
「紳士で通っているんだ。私、イーゼル・バックスは」
「どうせ偽名だろう?」
「洗礼名と言って欲しいよ」
そんなやり取りをしていたら、小都市を一周した様だった。お互いに靴の鋲を一つ交換して分かれた。
彼女に幸があるように、と思った』
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探検家ゴッヘルザッホの手記より
最終更新:2022年08月29日 18:21