《重なり合わせのデニーピード/dnimpeed,doubled palace》
ジャッジメントデイに伴い壊滅した無数の都市、その中の一つにある小さな教会だった場所。
今では無人の廃墟となっている。
現存時は小さいながらも凝った作りの教会として有名なところであった。
二つの礼拝堂とそれを分ける巨大な隔壁。一つの聖堂しかないように思わせる丸い屋根。
総ガラス張りにし、光の屈折を調節することにより室内を広く見せる天蓋。
それは長い時を経る間に二つの礼拝堂があるにもかかわらず外からは一つの建物のように見えるため、
『重なり合わせ』と呼ばれるようになった。
荒廃した現在では隔壁も半壊し、その驚くべき構造もほとんどが失われてしまった。
しかし、一年のある時期になると光が差し込む度に天蓋のガラスがまるで在りし日の教会の隔壁、
内部構造の輪郭をなぞるように屈折する。
現在と過去を同時に描きながら、デニーピードは真の意味での『重なり合わせの』デニーピードとなった。
era3となっても、デニーピードはどの国家からも認知されずにただ在りし日を刻む。
『「エラミー、水があった。向こう3日はここに停泊しよう。
エヴィングの整備もある」
「仕方ないわね。旧時代の衛星の一つや二つ生きてれば簡単に道を見つけ出せるのに」
道に迷っている。
政府の追跡を振り切るために無理やり転送システムをランさせたのが失敗だったのは分かっている。
これからどう行動していくかだ。
とにかく、ここを政府軍が嗅ぎつけるまではこの教会をねぐらとさせてもらうことにする。
「エラミー!ちょっと来てくれ!」
億劫そうに立ち上がる。礼拝堂はあまり好きでは無いし、ここの構造も、気味が悪い。死体の一つや二つ――。
光が差している。私は目を疑った』
―――
反逆者エラミーの回顧録より
最終更新:2022年08月28日 23:20