ピーちゃんを捜して!


ピーちゃんを捜して!

各地の魔物狩りギルドの間で語り継がれるクエスト。
以下はその依頼内容の謄本である。


クエスト名:ピーちゃんを捜して! 
依頼主:丘の上のオネエサン

依頼内容:
私のピーちゃんがいなくなっちゃったの!
多分街の近くにいると思うんだけど、どうしても見つけられないの! お願い捜して!! 
あの子がいないと、私・・・。

ピーちゃんの特徴はキュートな赤い羽根よ。
右の足首に銀の足輪を付けてるから、見ればすぐわかるわ。
時々口から火を出したりするから、火傷しないよう気をつけてね。
報酬ははずむわ♡

達成目標:依頼主のペットの捜索・捕獲 
難易度:A 
報酬:金貨100枚


この依頼に釣られたのが、当時金欠だった3人組の魔物狩りたちだった。
依頼内容に対して破格の報酬と難易度、ちょうど彼らがギルドのクエスト状況の確認に来た時に受理されたものだったので、
彼ら以外の魔物狩りは誰もこのクエストの存在に気付かなかったのが、彼らの不運を一層際立たせる。

金銭的余裕が無かったために、彼らはこのクエストの異様さをさして気にすることなく、報酬に魅かれて依頼を受けた。
だが本当なら気づくべきだった。この時の受付嬢の、あの哀れむような眼差しを・・・。

確かに、依頼内容にあった特徴と一致する魔物はいた。ただ一つ、大きさを除いて。
彼らが想像していたものより遥かに巨大なそれ"ピーちゃん"は、
そんじょそこらの魔物と魔物狩りを容易く退けられるほどの異彩と、「異災」を放っていた。
結果として、必然的に魔物討伐の様相を呈することとなった”ピ-ちゃん”捕獲クエストは、
辛くも彼らの勝利に終わったが、その後街へ戻ることが体力的にも気力的にも不可能となったために、
魔物と悪魔が練り歩く魔境で一夜を明かすことになったのは言うまでもない。

翌日、彼らはピーちゃんを連れて街へと帰還した。
意気揚々と出て行った後のその満身創痍っぷりに同業者や市民は何事かとギルドに詰め掛けたが、
彼らの早とちりから生じたこの阿呆話のあらましを聞くと、皆一様に呆れ返り、爆笑や哀れみの声が飛び交った。

こうして彼らの武勇伝、もとい黒歴史は、今もこの街の話題に新しく其処彼処で木霊している。

それからしばらく彼ら3人組(特に女魔物狩り)はあまりの情けなさと羞恥心から、
しばらく街に依り付けなくなったとか、リーダー格の男魔物狩りが依頼主に突撃してボコボコにされ、
小一時間の説教の末に土下座させられていたとか、後日談も豊富である。

余談だが、この依頼主の「丘の上のオネエサン」とは、
この街に居を構えるA級魔物狩りでギルドに顔の利く人物であり、
今回の依頼も、一種のサプライズクエストとして用意していたもので、ギルド側にも口止めをしていたのだ。
どれだけ不当な内容でも依頼をやり抜く意志と熱意があるかを試したかったそうな。
また敢えてペットの特徴を詳細にしなかったのは、彼らのように誰かが釣られるのを期待していたからとか。
難易度を偽らなかったのは、彼女なりの気遣いだったのだろう。


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最終更新:2022年08月31日 18:26