深き闇へと

深き闇へと

era1末期に勃発した人類史上最悪の大戦、それがこの赤道上宙域艦隊決戦である。

世界中に《審判》が下される僅か十日前、大国は抵抗する発展途上国に対し、
一挙に核攻撃を加えるべく所有する全艦艇全戦力をここに集結させた。


この暴挙に激怒した南半球の各国も、全艦艇を赤道上宙域に集結させ、これを迎え撃った。

戦いは熾烈を極めた。


飛び交う戦術核、次々と敵艦に体当たりしていく戦闘機。
そして地球の重力に囚われ、大爆発を起こして墜落し、大都市を壊滅させていく巨艦。
結果僅か十日間で、死者4億5000万以上、喪失艦艇10万以上という未曾有の大惨事となった。

そこはまさに、この世の地獄そのものであった。


そして、審判の日は訪れる。


撃沈されたδのうちの一隻が、現・久平領の都市部に墜落する寸前、
搭載していた生物兵器、通称『セレクトオーダー』を含んだ戦略核全てを起爆したのだ。
艦は都市諸共跡形も無く消し飛び、この攻撃に対する報復という名の戦略核が無差別に、世界中に放たれた。

誰もが、狂気に支配されていた。

草木は枯れ、人々は自らの行いを悔いる間もなく巻き起こる爆風に呑まれ、
生き残った者も多くが肉体を細菌に侵され、消えていった。

この日、世界は一旦の終焉を迎えた。

――全てが終わった後、まるで嘘だったかのような静けさを取り戻した宇宙に、
小艦艇数隻を引き連れた一隻のδが出現した。
それは地球を自転面に沿って、まるで滅んだ世界を看取るように一周すると、何処かへと転移していった。

彼らの行く先を知る者は、誰一人としてなかった。

――そして数百年後、新たなる人類が彼らの技術をほぼ復活させることに成功する。
しかしそれは、未来への希望を意味するものではない。

忌まわしき過去を呼び醒ますパンドラの箱となるか、
はたまた血と硝煙に塗れた未来へと突き進む銀の鍵となるか。

“彼ら”は目を凝らし、そして囁くだろう。

   殺せ、殺せ、もっと殺せ!!


『狂ってる。みんな狂ってる。
 こんな気違いみたいな空間になんか、あと一秒たりとも居たくない。
 もう限界だ、俺はこのボタンを押す。押してやる』

 ――δ艦内にて発見された航海記録、最終行より抜粋


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最終更新:2022年08月30日 22:12