era2の頃、世界各国を旅し見聞録をつけていたという男。
多国語が話せ、交渉も上手い。
よく偽名を使っていたとされる。
本名エフラム・ゴッヘルザッホ。
父の蔵書である旧世界の冒険小説に憧れ、幼い頃より探検家になることを夢見ていた。
15の時に故郷を旅立ち、最寄りの街の探検家ギルドに入団した後、
夜営の仕方や猛獣の撃退法などのノウハウを実践で学びながら徐々に頭角を現してゆく。
20代の頃には、
旧世界遺物の発掘や新生物の発見といった数々の実績を上げ、
その道ではそれなりに名の知れた人物となっていた。
どんなギルドでも、こういったことには報酬が付き物だが、
彼自身はこういったシステムを好意的に捉えてはいなかった。
好きでやっていることに見返りを得ることに抵抗があったようだ。
その後数十年、人並み以上の経験を積んでいた彼も、そろそろ引退を考え始めていた40代後半のある日、
《
賢精イズの古屋》探索の道中で
悪魔の襲撃に遭ってしまう。
道案内に連れて来ていた村のエルフの若者が対峙し、どうにか悪魔を退けることには成功したが、
ゴッヘルザッホとエルフは深手を負ってしまい、ゴッヘルザッホは意識を失ってしまう。
エルフの方は傷が深く、最早助からないことは明白だった。
その時、エルフは彼だけでも助けようと、苦肉の策で自身の血を彼に飲ませた。
長寿であることで知られるエルフ種。
その血液ならば、
通常種であるゴッヘルザッホに何らかの作用があるかもしれない、という
確証もなければ根拠もない、藁にも縋るような最後の手段。
エルフ自身、これで助けられるなどとは本気で考えていなかった。
しかし、この行動が一人の男の運命を狂わせることになる。
翌日、ゴッヘルザッホはエルフの村のベッドで目を覚ました。
重症を負っている筈なのに、体が妙に軽い。
村の長から話を聞かされ、彼は自分の意識が無い間に何が起きたのかを悟った。
あの若者は自分に血を飲ませた。自らを犠牲にして、つい最近知り合ったばかりの男を救ったのだ、と。
――あの日自分が道案内を頼まずに一人で行っていれば、彼が死ぬことはなかっただろう――。
ゴッヘルザッホは自責の念に押し潰されようとしていた。
だが、長の言葉が彼の数奇な人生の歯車を廻すきっかけとなる。
「あの子はお前さんを苦しめるために生かしたのではない。あの子の願いを無駄にせんでくれ」
その言葉は彼の心に強く響いた。
――そうだ。あの若者の命を代償にして永らえたこの命、存分に使わねば彼に合わせる顔がない――。
「行きなされ。お前さんはここに居るべきではない…」
数日後、傷を癒したゴッヘルザッホは目的の《イズの古屋》へと向かい、遂に探し当てる。
すべきことを終え、若者の墓前で祈りを捧げた彼は村を後にした。
エフラム・ゴッヘルザッホ。
これから200年以上に亘る彼の数奇な冒険譚が、幕を開ける。
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最終更新:2022年08月29日 18:21