執着


「執着」

『彼女』は彼と同じ道をゆく仲間だった。

同じ騎士を目指す者同士、しかも珍しい魔術の道に身を投じていた二人は出会ってすぐに打ち解けた。。
彼の魔術に対するひたむきな情熱は『彼女』の励みになり、そして『彼女』の笑顔は偏屈な青年魔術師の心を癒した。

彼にとって、この期間は人生でもっとも喜びを感じる時間だったに違いない。


だが、二人が念願の騎士になった時、彼らの時間は終わりをつげる。
『彼女』が、ある男と結婚することとなったのだ。

しかも悲劇だったのは、その男が彼が心より尊敬する人物であり、忠誠を誓った人物であったことである。

笑顔で『彼女』を見送った年若き騎士は、その後人付き合いを避け
何もかも忘れるかの如く魔術の研究へと没頭した。
それから暫くして、『彼女』が出産の際の病でこの世を去ってからは
ますますその傾向は加速し、魔術と名のつくもの全てに手を出すようになっていった。。

そうした空虚な研究生活の果てに、彼が見いだした禁断の魔術こそが死者の蘇生であった。
その禁術に必用なもの、必要な実験。
それを自らの立場を利用して少しずつこなしていった彼は、
ついにその禁術に最も必用な依り代を除いて魔術を完成させる。

だが、その依り代とは蘇らせたい人物の血を最も強く受け継いだ、実の子に他ならないのである。

だが、ここに至っては彼はもう止まらない。

正義も悪も無い陰謀の海に身を委ねてまで、彼は『依り代」を手に入れるべく奔走する。

その瞳にはもう、かつて『彼女』と夢を語り合っていた青年の面影はない。


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最終更新:2014年04月17日 22:44
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