旧ソルグレイユ中核都市《試作円筒居住地区跡/ruin of pre-tube》
era3の幕開け。それはある意味、
ソルグレイユにとっては開発と廃棄の新たな土地を提供しただけであった。
ソルグレイユをくみ上げた者達に残っていたのは、復興への凶悪なまでの渇望と、自分は死ななかったと言う驕りであった。
滅ぼされた大地を覆っていた大量の資源は彼らが独占した。彼らは新たな居住を試行錯誤した。
その過程で作られ、そして廃棄されたものがこれだ。
開発当初は生命維持用の大量の機械を天井に設置することが出来、次なる時代の住処として期待されていた。
しかし、次第に居住可能スペースの狭さ、採光量の無駄な低減などの欠点が指摘されるようになり、
ついには半円の直径が物理上の限界を迎えると、破棄された。
ただ、それまで試作品として様々な試験が行われていたこの構造体は打ち壊されず、残ったままである。
『私はお父さんが働いていた所に入った。支柱は折られ、ガラスは砕け散っていた。機械はさび付き、配線は抜かれていた。
自然が、緑色をしたぬるぬると滑る苔ばかりが目に付いた。太陽電池パネルの制御板は完全に破壊されていた。
私はとめどなく歩いた。お父さんはここから帰らなかった。
彼は、きっとどこかで死んでしまったのだ。悪いのは、誰なのだろう。
そんなことが頭の中でずっとぐるぐると円筒形のこの居住区を駆け巡るみたいに渦巻いて、混乱してしまった。』
――
反逆者エラミーの回顧録より
最終更新:2022年08月31日 18:27