《淵奈の一角/A corner of Huchina》
淵奈に多く見られる平屋の建物。
久平周辺の湿度の高く、蒸し暑い気候に合わせて、開口部の広い窓と影が最大になるように設計された家が立ち並ぶ。
ここは久平でも初期の頃にできた淵奈ゆえに、建物の内部構造も古く、所どころに寂れた空気がたたずんでいる。
奥側に見えるのは開発地区であり、島国ゆえに自給自足できない久平の(中立国ではあるが)大きな産業の一端を担っている。
『――しばらく、倒れていたらしい。ここ何日か水以外口にしていない。
躊躇いながらそういうと、彼らは私に食事をくれた。温い酒のようなものを飲み干すと、幾分体が温まった。
ここは久平。ここに潜伏していればソルグレイユも私を探し出すことが出来ない。もう少し、ここに滞在していよう。
部屋を風が通り抜けている。遠くから歓声が響いてくる。
こんな場所は、あそこには無かった。あんな、金物と油の匂いしかしないようなところには、こんな場所は無かった。』
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反逆者エラミーの回顧録より
最終更新:2022年08月28日 23:36