-プロローグ-

京太郎「………」

京太郎「咲、実は俺…岩手に引っ越すことになったんだ」


朝からどこか寂しげだった京ちゃんが切り出したのは、二人きりの帰り道の途中だった。

いつものつまらない冗談だったらどれほど良かっただろう。でも長い付き合いだ。目の前の京ちゃんが、嘘や冗談を言っていないことはすぐに分かった。


咲「冗談じゃ…ないんだよね」

咲「て、引越しって…いつ?すぐってわけじゃないんでしょ?」


おそるおそる尋ねる。別れが避けられないならば、せめて少しでも思い出を作りたいというささやかな願いは、しかし


京太郎「それが…今週末にはもう出発らしいんだ」


すぐに打ち砕かれてしまう。


咲「今週末!?急すぎるよ!だって今日ってもう金曜日じゃない…っ!」

京太郎「俺だって昨日親から話を聞かされたばかりで、まだ心の整理とか出来てないんだよ…」


思わず声を荒げてしまった私に、京ちゃんは力なく笑いかける。


咲「…麻雀部のみんなには言ってないの?」

京太郎「別れがつらくなりそうでな…。言いそびれちまった」

京太郎「でも、咲には、咲だけには伝えとかないとって」


…こんな時なのに特別扱いが嬉しくなる自分の厭らしさが大嫌いだ。
//7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [saga]:2012/07/25(水) 14:32:33.79 ID:/MZc/WK90
咲「嫌だよ…。京ちゃんがいなくなるなんて嫌…」

咲「げ、下宿とか出来ないの?なんだったらうちに空いてる部屋があるから…」

京太郎「…ごめんな、咲」

京太郎「…ごめん」


私の言葉を遮るように謝る京ちゃんを見て、目の前が暗くなるような感覚を覚える

ああ、京ちゃん、ホントにいなくなっちゃうんだ。


咲「…私を見捨てて行っちゃうんだ」


自分の口から出た言葉に驚く。一番つらいのは京ちゃんに決まってるのに。けれど止まらない。


咲「私、京ちゃんが転校なんて絶対認めないからっ!」タッタッタ

京太郎「咲!」


最悪なことを言っている自覚はある。京ちゃんの顔がまともに見られない。

立ち尽くす京ちゃんを置き去りにして、私は走り去った。


京太郎「………」

京太郎「まぁ、笑顔で送り出してもらえるとは思ってなかったけどな…」



京太郎「あと咲、そっちは帰り道じゃないぞ…」











京太郎「岩手に引っ越すことになった」  開幕

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最終更新:2012年08月05日 15:52