いんしねれぇたぁ in 火曜日

2004年12月11日(土) 00時03分-藤枝りあん

 ○前回までのあらすじ○

異世界<アミジェムーユ>に飛ばされてしまった少年、草薙 流は、
外見が先の英雄<リュウリカンド・セイナイル>皇太子と瓜二つ。
お陰でネコもどきの<レイクオルド>に皇太子と間違わてしまった。
とはいえ、流は記憶を失っているので別にそれで良いかという気もしないでもない。
一方、諸悪の根源<ミワール>も、リュウリカンド皇太子復活を聞きつけ、抹殺を開始する。
大魔王<アイモッグ>の復活も間近。この世界のために、一抹の不安を残しつつも、戦え、流!

決意を固めたものの、流は戦える状況ではない。
道中立ち寄った村で極大の長剣を安く譲って(押し付けられて)もらうも、前途は多難すぎ。
そんな折、レイはリュウリカンドの親友が王子をしている国へ向かおうと提案。
先に情勢を探りに行ってしまった。
そんな不安要素が増す中、少女と刺客(幹部)イリトが現れる。
イリトは、少女と流、両方をミワールに連れて行くことがその目的だ。
自身の命の危険と、少女を守るため、流は必死に応戦する。
が、やはり相手が悪い。
しかし、懇親の一撃を込めた長剣が手から抜け、イリトに直撃するという奇跡が起こり、彼は退却。
彼等は事無きを得たのであった。

レイによれば、頼みの綱のスクッツ王国はすでにミワールの配下であるとのこと。
そこで、少女の頼みもあり、彼等は行き先を変更し、大巫女<イム>のいるスィイカイム大神殿へと向かう。
だが、守護精霊である水竜のズイムが中に入れてくれない。
リュウリカンドであることを証明するために戦いに突入するも、苦戦苦戦の大苦戦。
一同が諦めかけたその時、潮の引きと共に力が弱まるというズイムの弱点を看破した流が、
必殺技のバーバン・ブレードを炸裂させ、勝利を決める。
だがしかし、大神殿にいたのは<ミウ>と名乗る生意気な女の子だけだった。

ミウから譲り受けた(押し付けられた?)巨大な水鏡と、刃の無い剣の柄を持って先へと進む流一行。
少女が実は男だったとか、
さらに彼はリュウリカンドの親友にしてスクッツ王国の王子ナルディアであり、
国を乗っ取った大臣から命を狙われているとか、
びっくりしすぎてどこで驚けばいいのか分かり難い事実が判明する。
スクッツ王国をミワールの魔手から取り戻すため、一行はスクッツ王国へと向かった。
そこで現れた大臣、実はミワールの送り込んだモンスターが彼に化けていたことが、水鏡の力で分かった。
重たいだけではなかったのだと感心している流に襲い来る偽大臣に、思わず水鏡で殴りつけた流。
やはり重いだけあって立派な鈍器となったようで、一撃の元に偽大臣を撃破する。
自室の鏡の中に閉じ込められていた本物の大臣を、水鏡(の欠片)に残った力で解き放った王子達。
こうしてスクッツ王国乗っ取り事件は幕を閉じ、流達は新たな旅に出ることになったのであった。
王国を発って暫く。
アツモーエ神殿へと向かう途中に立ち寄った村で、旅の少女がひどい病気でうなされていると聞き、
早速、万病薬の材料である薬草を取りに行った流。
しかし、薬草の花畑で、幹部であるイサヤの襲撃を受ける。
熱の力を操り、さらには冷気にも耐性を持つイサヤに手も足も出ず、
流は最後の力を振り絞ってレイに薬草を持たせて逃がすが、自分は谷底へと落ちてしまう。
イサヤは流の死を確認しないまま、ミワールに帰って行った。
病気が治った少女が、実はアツモーエ神殿の巫女だということが分かり、
力を貸してもらいたいと頼むレイに、彼女は快く了解してくれた。
きっと無事でいてくれると、彼らは流を探すことにする。しかし、肝心の流は一体何処にいるのだろうか。

流は川を流され、辺鄙な浜辺にいた。
近くの森を通り抜けようとしたところ、そこに生息する眠り花のせいで眠ってしまう。
そんな彼を助けてくれた少女は、ミワールに従わなければ生きていけない現実を流に告げ、
どうしてリュウリカンドは大魔王に止めをさせなかったのだろうかとこぼす。
実は、少女はミワールに服従を誓わされている一族だった。
それでも彼女は流を信じ、彼を逃がすことを決意。
森の抜け方を教えてもらった流は、少女に必ず平和を取り戻すことを誓い、森を抜けた。
(ちなみにこの少女は、イリトの庇い立てもあってお咎めは無かった。だって重い話ではないから)

次に辿り着いたのは、誰もいないヒョーヒレイ神殿だった。
昔に流が思いを馳せていると、謎の女剣士が現れ、強制バトル発生。
しかし、必殺技をことごとく避けられ、大ピンチに陥る。
そこへ、神殿の守護精霊である氷魚のイラウィが現れ、女剣士撤退。
イラウィは流に、その剣の刃は自身の気によって変化することや、
神殿の力を得ることで強くなっていくのだと説明する。
知らず知らずのうちに思い出していた<アツ>の力の他に、<ヒョー>の力を授かった流。
イラウィは、ミワールの幹部に自分のところの神官がなってしまったことを告げ、
どうか目を覚まさせてほしいと頼み込む。
それを了解した流は、一刻も早く大巫女イムに会って<スィイ>の力を得ることが先決だという
イラウィの薦めもあり、再びスィイカイム大神殿へと向かうことにした。



Q:手を抜くな、手を!
A:・・・じゃあ、最終話書くよ。書けばいいんだろ!?(逆切れ)


○ 前回までのあらすじ○

夢の島<アミジェムーユ>。
世界は大魔王<アイモッグ>とその配下組織<ミワール>によって凄惨たる有様であった。
<セイ>の力を持つ<リュウリカンド皇太子>が異世界へと消え、平和への望みは絶たれた。
主人公:草薙(くさなぎ) 流(リュウ)は灯火(とうか)高校2年生。清掃委員の普通の16歳の少年――だった。
しかしある火曜日、幼馴染み:清原(きよはら) 茜(アカネ)との委員会活動中に異世界へと飛ばされてしまう。
そしてその異世界こそが、<アミジェムーユ>であった・・・

だが流は飛ばされたショックで記憶を全て失ってしまった。
しかもそこで出会ったネコもどき(?):レイクオルド・ヒサメアレラによって、
行方不明となった<リュウリカンド・セイナイル皇太子陛下>だと認識されてしまう。
一方、悪の組織<ミワール>は復活した<リュウリカンド>抹殺に向けて動き出した。
そんな状況の中、流は<戦うこと>を決意する。
だが彼らの前途は多難・・・胸に一抹の不安をよぎらせつつも、頑張れ、流!!



最終話.時として物語は理不尽な理由で短くなる

 第一話と銘打っておいて、第二話が最終話だというあり得なさ。前後編だと思って涙を呑んでください。
 では、はじまりはじまり。


 幾多もの苦難を乗り越え、再び流はスィイカイム大神殿へと辿り着いた。親友のナルディアとスクッツ王国を取り戻すために戦ったこと、アツモーエ神殿へ向かう途中に襲撃に遭い谷川に落ちてレイと離れ離れになってしまったこと、優しい人々との出会いと平和を取り戻すという誓いのこと、そして謎の女剣士との戦いと新たに得た<ヒョー>の力のこと。本編では決して語られることはないが、あらすじでは語ってあるのでそれを見るか、あるいは脳内空想で補完して頂きたい感動の物語ばかりであるとか言ってみたりして。その辺りは、短くても書き終えるほうがまだましじゃないかという、長編には全く向かないのに設定ばかり作りたがるどこぞのアホ作者の胸先三寸で決まってしまうのである。小説って世知辛い。
 ともあれ、流はそんなメタ的なことなど思いもよらず、大神殿の前に佇んでいた。

 前に来たときと同じ――最初、流はそう思った。海と半ば一体化しているこの大神殿は、海が見るに堪えないほど汚れてさえいなければ、畏怖の念を抱かずにはおれないだろうという荘厳さだ。何処も前と変わる事無く、それは存在しているように見えた。
 だが。
 妙に血が騒いだ。
 無論、これは言葉のたとえであって、別にいきなり血圧が上がったとか赤血球がお祭り騒ぎを始めたとかそういった意味ではない。
「・・・早く行こう」
流は意を決して、大神殿の中へと走り去って行った。
ザッザッザ
 彼が大神殿の中に入ると、そこには――ん? ↑は何の音だって? 画面切り替えのときに良く使われる効果音です。気を取り直して、中に入ると、そこには見知った顔と、見知らぬ顔が向かい合っていた。
「ミウ!」
咄嗟に剣の柄へと手を伸ばした流だったが、
「来るな馬鹿者ッ!!」
ミウの一括でビクリとその動きを止めさせられた。
「へぇ・・・今はミウと名乗っているんだ」
燃えるような赤髪に、真っ黒なマントを羽織った人物が口元で笑う。
「俺はてっきり、昔通り<イム>と名乗っているのかと」
「!!」
イム、というのはこのスィイカイム大神殿の主にして、アミジェムーユにおいて最高の賢者と名高い、大巫女の名前である。流が驚くのも無理は無い。実は前にここに来た時は、大巫女は誰にも会いたくないのだと、この目の前にいるミウがそう言って取り合わなかったのだから。というか、大抵、大賢者とかそういった属性を持つ偉大な人物は、最初から主人公に会ってくれることがない。はっきり言って、最初に出てくる如何にも賢者に見えなさそうな、例えば子供とか獣とか、そういった姿をとって賢者は今留守だとか誰にも会いたくないとか言い始めて何処そこに行って来いと言われてそういった幾度にも及ぶ新人イジメもとい勇者への試練を乗り越えることによってようやく自分が賢者であることを明かし、何故騙したのだという勇者のもっともな問いに対して昔のお前は未熟だったから会ってもダメだった云々という答えにならない答えを貰って納得する羽目になり、ひいては良く分けの分からない抽象的過ぎる言葉を頂いてはっきり行ってオマエな逃がした員よと言うプレイヤーの思いを差し置いて勇者は新たな第一歩を踏み出さなければいけないという、そういう存在である、賢者と言うものは。
「・・・必要があればな。今ならその名も相応しかろう」
そして昔言葉で喋るガキンチョは、かなりの確率で高年齢であり、さらには賢者様々である。
「まぁ・・・その名のせいで、俺は苦労したんだがな」
言うが早いか、男はマントを翻すと手にした炎の矢をミウに向かって乱射した。
 突き刺さる矢の音。流の叫び声。もうもうと立ち込める朝靄。ウソ、もうもうと立ち込める煙。
「・・・腕を上げたな、アル」
「そう言って貰えるとは光栄だ」
 賢者はこのくらいでは死なない。これ賢者のジョーシキ。
 ミウは片手で張っていた水のバリアを解くと、その手にそのまま水球を生じさせる。
「破ッ!!」
 投げ付けられた水球を片手で弾く男、アル。強いぞこの男。というか何故掛け声は『破ッ!!』であって『波ッ!!』とか『羽ッ!!』とかは無いんだろう。ナミッ!とかハネッ!とか読まれると困るからだろうか。どんな掛け声だそれ。
 ともかく、男もミウに負けず劣らずの強さだ。
「リュウリカンド、手出しはするな」
肩で息をしているようにも見えるミウは、流に向かってそうのたまった。
「しかし――」
「お前は最後の希望だ」
「は、感動的なことで」
上の三つの言葉は説明しなくても誰が言った言葉なのか分かっていただけると思う。話の流れ的に。言葉遣いで分からせるという手もある。
 話が進まないじゃないか。誰のせいだ。

 打ち合うこと数十、一向に勝負はつかない。何を打ち合ったんだろう。気かな。
「・・・イム様」
これはアルの言葉。
「俺は手を抜いて倒せる奴じゃないことぐらい、貴方が一番良く知っているはずだ」
いきなり様付けかよ!という突っ込みはさておき、この兄ちゃん強すぎやしないかい? ダメだよ賢者様が負けちゃ。
「・・・そうだな」
そうです。
「自分で言うのもなんだが、もう力が残っている気がしない。大技でお前を止めさせてもらう」
「へぇ、じゃあ次の一撃を止めれば俺の勝ちだ」
ニヤッと笑うアル。いや、チャイニーズじゃないよ。アルがニヤッと笑ったってことですよ。
「止められればな」
イムもふっと笑い返す。強い奴の戦いはお互いに笑いあって戦うから気味が悪いと思いませんか。というか主人公なのに流君、思っくそ蚊帳の外だ。大丈夫、きっと後半で挽回出来るから。
 イムの周りにただならぬエネルギーが集中する。渦巻く力で服が煽られ、翻る。残念ながら、ここにいるのは野郎共とイム様だけである。イム様は布を体に巻きつけているだけのような服ではあるのだけれど、多少翻ったところで、チラリ、イヤ~ンってことはないので残念ッ! それならまだ相手のアルの方がチラリズム全開中ではあるが、一部を除いてそんなシュチュエーションは望まないだろうアルよ。
「いくぞ」
行っちゃってください。
「どうぞ」
余裕ですな。
「・・・」
影薄いですな。
「轟け波よ!」
おお、ついに。最終奥義が。さあ、遠慮せずに技名を叫んじゃってください。
「唸れ海よ!!」
ドキドキ。
「我が御名において全てを押し流せ!」
おお、荒れ狂う海のエフェクトが。いや、エフェクトじゃない。現実だッ!
ザッパーン! ザザザ
 うわー。最終奥義なのにフォントが微妙。ってか、イム様、技名叫ばなかったね。見方である流は無事だけれども、さすがの敵もこの威力には耐えられまい。
「はぁ、はぁ・・・」
思わずへたり込むイム。だが。その後ろに。
「俺の勝ちだな」
アルがある。いや、おる。じゃない、いた。
「「何ッ!?」」
流が駆けつけるよりも早く。アルはさっと手を伸ばしてイムを抱きかかえると、笑った。
「動くなリュウリカンド!」
人質をとられると滅法弱いところが、正義の主人公の最大の弱点でありまする。最近はそうでもない人もいますがね。
「わ、私に、構うな!」
そう言われると、分かった!とか言って攻撃するタイプの人間が。
「それを決めるのは貴方じゃなくて、リュウリカンド、アンタだろ」
でも流は言うことを聞くタイプの人間なわけで。
「く・・・卑怯だぞ」
「俺だってイム様を傷付けたくはないさ」
さらっと告白。え? 敵なのに?
「お前だけ大人しく死ねばそれでいいんだ」
うわ身勝手。世界の中心で身勝手な愛を叫ぶ男。
「イム!!」
「呼び捨てにするな!」
「イム様!!」
ちなみに二番目の台詞はアルが言いました。偉いぞ、流。敵の言うことをここまで聞くなんて。
「リュウリカンド、追って来い。アイモッグ様がアンタを待ってる」
異次元の穴に片足を突っ込みながら、アルはイムをお姫様抱っこしたまま言った。ちなみにこのイムという人物は、さっきからずーっと黙っていたが、はっきり言って、外見が少女を通り越して女の子である。幼女。そんな彼女を執拗に狙い続けるこの男はヘンタ――ロリ――えーと、まぁ言わずして分かってもらえる類の存在になりそうなならなさそうなことは無いような。いや、別に外見なんて変えられるんだけれども、賢者様だから。でも何故か子供の姿が多いよね、賢者様って。そのままさらったらヤバいとか思うけれどもまぁいいか。
「待てッ!」
「待たない」
でしょうな。待てと言われて待った奴はそういない。無駄だと分かっても言わなきゃいけないお決まりの台詞。
「後は頼んだぞ、オウロック」
「御意」
何時の間にかそこには、真っ黒な甲冑に身を包んだ騎士が立っていた。手には巨大な槍が。
「リュウリカンドを倒すまで帰ってくるな」
「御意」
「あと、死んでもその玉を守れ」
「御意」
いいのかアンタそれで。さっきから御意御意って。それにしても精気の無い目をしている。
「聞いたかリュウリカンド。ミワールへ続く扉の鍵はそいつが握ってる玉だ」
玉ですか。金色っぽい色をしているようには見えなくて良かった良かった。
「殺して、奪って、さっさと来ることだ」
「お前・・・自分の仲間だろう!?」
敵を心配する辺りが甘い正義の味方。
「ただの駒さ」
言い切った! さすが悪役。
「リュウリカンド、お前がその男を大切だと思うなら救ってみな」
「?」
言い終えるや否や、アルの姿は虚空へと掻き消えた。
「ミワールに仇なす者に死を」
残ったのは流と危ない黒騎士だけ。さぁ、バトルの時間だ!

 一刻も早く、ミワールに急がなければならない。そのために敵を倒さなければならない。
 でも。
 そういう時に限ってやたらと強い敵が出てくるのは最早定番ですか。
「うあああああッ!」
強かに背中を壁にぶつけること数十回、それでも崩れてこない大神殿は何の力が働いているのだろうか。じゃなくて、それでも立ち上がり続ける流はもうボロボロだ。
 鎧が割れ、下着が露出し、さらに所々破れている。これをおいしいと思うかどうかはお任せの方向で。
「うう・・・」
「ミワールに仇なす者に死を」
槍を手に猛スピードで突っ込んでくる相手を何とかやり過ごし、反撃しようとするも気付けば敵は遥か彼方。必殺技の、バーバン・ブレードやキンク・スォードも全く効かない。それもそのはず、オウロックは属性吸収の鎧装備なのだ。
「何とか・・・一撃でも・・・」
「まだ立つか。しぶといな」
言うと同時に、オウロックは槍を斜に構えた。何をする気なのだろうか。って技を出すつもりしかないだろうな。この場合。そしてそのまま槍をくるくると回し始める。
「旋風槍」
途端に、突風が吹き荒れ竜巻が発生した。あり得ないとか言わない。竜巻ぐらい起こせなくて何が幹部か。
 と言っている間に流は竜巻に飲み込まれて遥か上空に吹き飛ばされてしまった。侮れないぞ、旋風槍。というかその前に流が大変だ。もっとこのピンチさを伝えなければ。
 はっと思って防御したものの、風の威力は凄まじく、ガードごと流を巻き込んだ。足が地を離れ、中空に吹き飛ばされたのが分かった。上下が絶えず反転し、口や鼻に突き刺さる空気は吸うことすらさせてくれない。武器を飛ばされては大変と握り締める右手の感覚も段々と鈍くなってきている。それどころか、考えること、それすら覚束無くなってきて――
 流、予想以上に大ピンチ。


 流は目を見開いた。
「流君! もぉ。よぉやく起きたんだから」
「え・・・?」
慌てて辺りを見渡すと、そこは見覚えのある、学校の焼却炉の前。目の前にいる少女は、確か――
「茜か!」
「えぇッ? どうしたのよ、急に」
「っと・・・」
「心配したんだから。いきなり倒れたりなんかして!」
困ったような安心したような複雑な表情で自分を見つめている茜の顔を見て、流はすまないことをしたと思った。
「ごめんごめん」
流は笑いながらそう幼馴染みの少女に返すと、ゴミ袋を手に取った。今日は清掃委員の日なのだから、ゴミを捨てなければならない。妙な夢を見た、なんてことは茜には言えなかった。そうとも、ただの夢だ。

 それから、ゴミを捨てて、茜と一緒に家に帰って、ご飯を食べて、寝て。

 アレは夢だったに違いない。

 流は目を開いた。
「流君! もぉ。よぉやく起きたんだから」
「え・・・?」
慌てて辺りを見渡すと、そこは見覚えのある、学校の焼却炉の前。目の前にいる少女は、幼馴染みの茜だ。
「茜!?」
「えぇッ? どうしたのよ、急に」
「っと・・・」
「心配したんだから。いきなり倒れたりなんかして!」
困ったような安心したような複雑な表情で自分を見つめている茜の顔を見て、流はすまないことをしたと思った。
「ごめんごめん」
流は笑いながらそう幼馴染みの少女に返すと、ゴミ袋を手に取った。今日は清掃委員の日なのだから、ゴミを捨てなければならない。妙な夢を見た、なんてことは茜には言えなかった。そうとも、ただの夢だ。

 それから、ゴミを捨てて、茜と一緒に家に帰って、ご飯を食べて、寝て。

 アレは夢だったに違いない。

 流は目を開いた。
「流君! もぉ。よぉやく起きたんだから」
「え・・・?」
慌てて辺りを見渡すと、そこは見覚えのある、学校の焼却炉の前。目の前にいる少女は、幼馴染みの茜だ。
「茜!?」
「えぇッ? どうしたのよ、急に」
「っと・・・」
「心配したんだから。いきなり倒れたりなんかして!」
困ったような安心したような複雑な表情で自分を見つめている茜の顔を見て、流は。すまないことをしたと。
「・・・どうしたの?」
「なあ、茜、今日は何日だっけ」
心の何処かで警鐘が鳴った。目を覚ませと、それは言っている。
「火曜日・・・だけど?」
いきなり何を言い出すのだろうかと、茜は困惑顔だ。だが、流は続けた。
「清掃委員の当番は、毎週火曜日、だよな」
「そうよ」
目を覚ませと。
「夢か?」
「え?」
「俺・・・妙な夢を、見たんだ」
夢という言葉で記憶が曖昧になる前に、思い出しておかなければならないことがあるような気がした。
「別な世界で、俺は戦う羽目になって」
「RPGみたいね」
「そう。で、仲間もいた。ネコみたいな奴だけどさ。一緒に敵と戦って、離れ離れになって・・・」
他にも仲間はいた。王国を取り戻すために、一緒に戦った昔の親友とか。
「で、大魔王までもう少しだったんだ」
「惜しいところで起きちゃったね」
茜は屈託無く笑っている。
「ね、その中で私、出て来た?」
言われて、流はドキッとした。夢の中で、どうして彼女のことを忘れていたんだろう。大切な、人なのに。
「いや・・・」
茜はちょっと寂しそうな顔をした。
「思い出して」

 流は目を開いた。
「流君! もぉ。よぉやく起きたんだから」
「え・・・?」
慌てて辺りを見渡すと、そこは見覚えのある、学校の焼却炉の前。目の前にいる少女は、幼馴染みの茜だ。
「・・・」
「心配したんだから。いきなり倒れたりなんかして!」
困ったような安心したような複雑な表情で自分を見つめている茜の顔を見て、流は。
「・・・どうしたの?」
「俺・・・妙な夢を、見たんだ」
夢という言葉で記憶が曖昧になる前に、思い出さなければならないことがあった。
「別な世界で、俺は戦う羽目になって」
「RPGみたいね」
「仲間も・・・確か、いたんだ。敵と戦って・・・」
もうだいぶ思い出せない。忘れてはいけないと、心のどこかがそう叫んでいる。
「で、大魔王までもう少しだったんだ」
「惜しいところで起きちゃったね」
茜は屈託無く笑っている。
「ね、その中で私、出て来た?」
言われて、流はドキッとした。夢の中で、どうして彼女のことを忘れていたんだろう。大切な、人なのに。
「どうだろう・・・」
茜はちょっと寂しそうな顔をした。
「思い出して」
「・・・そんな真剣な顔するなって」
ゴミ袋を手に取ろうとする流の手を取って、茜は言った。
「思い出して!」
「・・・」
もうすぐ日が沈む。今日は火曜日で、清掃委員の当番の日で。
 違う。
 あの夢のこと。
「見付けられなかった」
茜は黙っている。
「何でだろう」
夢の中で、どうして彼女のことを忘れていたんだろう。大切な、人なのに。
「名前・・・夢で俺、何て言われてたかな」
流はそう言うと同時に、何故か、無性にゴミ袋を取りたいという思いに駆られた。茜の手を振り切って、ゴミ袋を掴みたいという思いに。
「流君・・・」
もう少しだった。思い出せと願う思いがある一方、どうして夢のことでそこまでムキになるのだという思いがあった。だが、またここに戻ってきても、次は思い出せそうに無いという奇妙な確信があった。
 思い出したほうがいい。言ってしまった方が、いい。
「俺は、流・・・リュウ・・・」
あと一言――
「リュウ・・・リュウ・・・」
眠い。とても眠い。だが、眠る前に思い出さなければ、もうこのままずっと忘れてしまう。
「俺は――」
「君は――」
忘れちゃダメだ。
「リュウリカンド」
「当たり」
驚いて茜を見ると、茜の姿が変わっていくのが見えた。と同時に、世界が闇の中に吸い込まれてゆく。
「茜!」
「違うよ。私はアカネじゃない」
茜だった少女は、流の知らない、だがとても大切な人物の姿をした少女は、そう言った。
「リュウリカンド、君の世界はそっちじゃない」
少女は光の欠片となって闇に消えて行く。繋いだ手が、堅く握り合った手が、虚しく宙に浮いている。
「俺、会いに行くから! 絶対に、会いに行くからな!!」
「・・・待ってるわ」
闇の中に消えてしまった少女は、それでも流に笑いかけてくれたような気がした。名前は茜という偽りのものしか思い出せないけれど、この胸に残っていた思いだけは同じだった。
「ちゃんと、思い出すからな!!」
目を覚ませ――そう、誰かが彼を呼んでいる。


 流は、目を見開いた。
「リュウ様! よかった、本当によかった・・・」
自分の胸の上で泣いているのは、見覚えのある水色のネコもどき。そしてその隣にいる少女は、かつて呪いに臥せていた少女だった。
「レイ! それと――」
「アツモーエ神殿の巫女、ユタですわ」
にっこりと少女は笑いながらも、心なしか苦しそうに見えた。それもそのはず、今流達がいるのは結界の中。その外側ではその結界を崩そうと、オウロックが大槍を振り回しているのだ。
「リュウリカンド様、ここももうそんなに長くは持ちません」
「・・・大丈夫だ」
傷も回復してくれたのだろう、もう塞がっていた。流は右手で握り続けていた、刃の無い剣の柄をしっかりと握り直すと、立ち上がった。
「もう俺は、迷わない」

 一方、ミワール。
「何なのよ一体!? さっさとリュウリカンドを始末しろだとかすぐさま戻ってこいだとか! 命令をころころ変えるのもいい加減にして欲しいわよ!」
一室に、幹部達が集められていた。しかし、今いるのは三人だけだ。イサヤと、ロゴイと、グレイ。オウロックは流と戦っているからいいとしても、イリトの姿が見えなかった。
「イサヤ、少しは落ち着いてください」
そう言ったのはグレイだ。
「貴方も・・・イリトの二の舞はいやでしょう?」
その場にいる全員が口をつぐんだ。
 イリトは度重なる失態と、反逆罪の責めを受け、大魔王の闇の中に取り込まれてしまったのだ。その中で力を吸い取られ続けている。リュウリカンドの仲間達がそうであるように。
「・・・ごめんだわ」
そう吐き捨てると同時に、イサヤは目元を拭った。無理矢理仲間に引き入れて、大魔王の命令を聞かなければならない幹部達も、ある意味ではこんな戦いなど望みはしなかった。だが生きるためには従わざるを得ない。
「あのアルって奴が何を考えてるのか知らないけどね」
イサヤはそう言ってタバコに火をつけた。この幹部の中で大魔王の右腕と目される彼だけが、嬉々としてその命令に従っているように見えた。
「・・・それにしても、何をする気なんでしかね?」
もじもじと、困ったように体を動かしながらロゴイが呟いた。
「リュウリカンドを足止めするために私達を当たらせようという魂胆でしょう」
イサヤとロゴイは驚いたようにグレイを見詰めた。グレイは悪びれる風も無く続ける。
「そうでしょう? 私達と大魔王様との繋がりなんてそんなものです。一族の命を握られていた少年の末路が、あれです。あの方ははなから私達を助ける気なんて無いんですよ」
イサヤとロゴイは顔を見合わせた。イサヤは妹の命を助けるため、アツモーエ神殿の巫女でありながら大魔王についた。だが、その呪いを解いたのは大魔王ではなく、敵であるはずのリュウリカンドだった。ロゴイは子供の頃にミワールに引き取られ、育った。だから従わなければならない。
「じゃ、じゃあ、ロゴイたち、このままやられるのを待たなきゃダメなんでしか?」
涙目になりながらそう嗚咽するロゴイに、
「大丈夫だ」
声がかかった。
「「「アル!」」」
三人が三人とも、意外な登場人物に驚いて声を上げた。
「そ、そのシトはもしかして・・・」
「そう、イム様だ」
大魔王が手に入れられなかった力の一つ、スィイの力を司る大巫女だ。抱えられてはいるものの、その目はしっかりと周囲を見据えている。何処かしら悲しげな顔をしているのは、かつての教え子達がその場にいるからだろう。先述の通り、イサヤはアツモーエ神殿の巫女、そしてグレイはヒョーヒレイ神殿の神官、アルはエンフォーミュラ大神殿の神官だったのだ。
「・・・何を考えているんですか、アル?」
グレイはそう尋ねた。まさかイムと交換で幹部達を助けるつもりなのだろうか。しかし、アルを良く知るグレイにはそうは思えなかった。彼は人ならぬ身であるイムを、師としてではなく、一人の女性として愛していたからだ。つまりロリ――ではなく、その当時はイムは妙齢の女性だったので無問題。
「つまり誰も・・・大魔王様には忠誠を誓ってないってことだろうな」

 記憶を取り戻さなかった方が、流にとっては戦いやすかったのかもしれない。オウロックは、そう、かつてリュウリカンドと共に大魔王と戦った戦友だった。それを洗脳し、配下につけたのだ。
「その男を大切に思うなら救ってみな、か・・・」
流は槍を折られ、それでもなお、死んでも玉を守れという命令に従い続けるオウロックの姿に胸を痛めた。だが、それもレイの比ではないだろう。オウロックとレイは無二の親友。共に主を守ると誓い合った仲間が、その主を殺そうとしているのを見ているのだから。
「ミワールに、仇なす者に、死を」
どうすれば本当に彼を助けることが出来るのだろうか。例えば攻撃せずに10ターン耐え切ってみせるとか、特殊なアイテムを見せるとかしないと駄目なのだろうか。
 と、その時。
「もうやめてくれ! セーヤ!!」
レイの叫び声に、オウロックの動きが止まった。
「もうこれ以上は・・・お前が死んでしまう!」
「レ・・・イ・・・?」
その瞬間、流は思い出した。自分が記憶を取り戻したのは、自分で本当の名前を取り戻したときだったと。
「騎士よ、お前の名は何だ!?」
「名、前・・・俺、は・・・オウ――」
「思い出せ! お前の、本当の名前を!!」
いや、実はもうレイが言ってるんだけどね。思い出せというよりはレイが何て言ったか言ってみろの方がいいかもしれないけどそれだと感動が鈍るので却下。
「・・・俺は・・・セ・・・セ・・・」
せっせっせーのよいよいよい。頑張れセーヤ。
「セーヤ・・・」
「! 思い出したんだな!!」
瞬間、騎士は目が覚めたような顔をして、叫んだ。
「俺は、王宮騎士、セーヤガッジュ・サッブゥムだ!!」
「・・・よかった、セーヤ!!」
レイが結界から飛び出すと、セーヤの胸に飛び込んだ。男同士の友情だ! ギリギリィズム。だってネコだもん。
「リュウリカンド様・・・俺は・・・貴方にどう謝ればいいのか・・・」
「いいんだ、セーヤ」
いや、流きっとセーヤの名前覚えてなかったと思うよ。だって記憶が戻ったばっかりだから。でも如何にも覚えてましたよアピールを無意識のうちに行ってしまう所がさすが皇太子。
「それよりも、俺はミワールに行かなくちゃならない。決着をつけなければならないんだ」
「では俺も!」
「私もリュウ様をお守りします!」
「及ばずながら、私の力もお使い下さい!」
まぁ、嬉しい台詞。でも主人公はこう言わねば。
「ありがとう・・・だが、この玉で移動できるのは一人しか出来ないらしい」
「そんな・・・」
さあ、勇者らしい台詞をどうぞ。
「大丈夫。必ず戻ってくる。誓おう、セイナイルの名に懸けて」
――約束する、じゃないんだ。ふーん。何この差を見せ付けられたような敗北感は。
「信じてます、リュウ様」
「・・・ありがとう。行ってくるよ」
逝ってらっしゃい。
「くれぐれも、お気を付けて」
間違えた。いってらっしゃいだった。
「・・・ああ」
流は意を決して、異次元の扉をくぐった。その先に待つものが、希望なのか、絶望なのか、知るものはいない。作者を除いて。


A:あとはラスボス戦だけだ~!!
Q:え? まだ続くの!? ってかQ&Aが逆になってますけど!!

○ 前回までのあらすじ ○

ついに記憶を取り戻し、リュウリカンドとして覚醒した流。
仲間達との再会も束の間、一人ミワールへ乗り込んで行った。
果たして彼は、アミジェムーユに平和を取り戻すことが出来るのだろうか。
そして、地球で<清原 茜>だった少女は、アミジェムーユで出会うことが出来るのだろうか。
大抵、~出来るのだろうかというアオリは最終的に出来ることが多いのはお約束で目を瞑って下さい。

一方、大巫女イム様をさらったロリ――幹部アルは、彼女の力を使って何やら企んでいるようだが・・・
果たしてどうなる!? そして彼とイム様の恋は成就するのかっていうかそれはまた別の問題だな。



 別にわざわざあらすじやる必要は無かったかな。まぁ、いいかな。

 流がミワールに辿り着くほんの少し前。幹部一同が大魔王アイモッグの前に畏まっていた。
「よくやった、お前達」
「ありがたき光栄に存じます」
心にも無いことを言って、アル達は頭を下げた。
「これでスィイの力を手に入れることが出来る・・・我がダクの力も増すというもの」
「左様で」
右様で、とは言わない謎。
「ふふふ・・・たとえリュウリカンドが以前の力を取り戻そうが、最早私の敵ではないわ」
「作用で」
こら。心を込めてないから字が違ってるじゃないかアル。気付かれたら大変アルよ。
「・・・だが、残念だったな」
「「「「?」」」」
一気に四人分の?。喋るのはアルだけだけど思いは四つ。
「このままスィイの力を手に入れる前に、イムの力を借りて私を倒そうというのだろうが――」
計画、バレてますよ。と、言うが早いか辺りに漆黒の闇が広がった。いや、闇というよりは闇をペースト状にしたぶにぶにした不気味な物体が辺りを満たしたと言った方がいい。
「なッ!?」
「こ、これは・・・」
「きゃあッ!」
「いやー、やめて~」
「何のおつもりですか、アイモッグ様!!」
誰か二回喋ってます。
「――私はもっと残酷なのだよ。お前たちが考えている以上に、な」
自ら言った~!! 開き直ってる!! こうなった奴ぁ止まらないッ!!
「雑魚は雑魚なりに力もあろう」
いや、ザコじゃないっす。神殿に仕えていた元・神官二人と、元・巫女一人、現・大巫女がいらっしゃいますから。えーと、このちみっこも子供なりに制御不可能なくらいの力を秘めてますから。第一、幹部をザコだって言うならそんな幹部を揃えた貴方が悪いわけでギャー! 取り込まれる! 取り込まれるぅ!! ウソですアイモッグ様! 地の文まで飲み込んだら誰が説明するんですか! 会話しかない小説だと今一バトルとかの雰囲気が伝わらなギャアアー!!

♪~ しばらくおまちください ~♪

「・・・覚えてる・・・この雰囲気、以前よりも禍々しくなってるな・・・!?」
も~と~に~も~ど~せぇ~
「何だこの暗い物体は」
たぁすけてぇ~
「まさかこれは・・・奴の<ダク・アブソーブ>!!」
そ~
「地の文にまで被害を及ぼすとは・・・力が増している」
はやく~
「・・・体に残った記憶よ、心の記憶を補完してくれ!
 俺の持ち得る<セイ>の力を引き出してくれ!」
わざめいさけべ~
「セイ・ピュリファイ!!」
ピラリーン
おお、しょぼいフォントはそのままだけど、無事に回復したぞ。助かった。一時はどうなることかと――いや本当に。それに技名も叫んでくれたし、満足満足。
「・・・無事に元の姿に戻ったみたいだな」
はい。ご苦労かけました。
「道が開いた。先に進むか」
独り言多いですね。自分がもっとしっかりしてれば勇者に独り言ばかり言わせずにすんだのに申し訳ない。ついでに自分の代わりに大魔王ぶっ潰してください。陰ながら応援してますから。次の段落からまともな(?)地の文に戻りますから。

 流が奇妙な闇を浄化して先へ進むと、そこには――
「!!」
「良く来たな、リュウリカンド」
大魔王アイモッグが、いたと言えるようないなかったと言えるようないたと言えないようないなかったとは言えないような感じでいた。
 どういうことかと言うと、周り一面にあの闇っぽい物体があるのだが、アレはあくまでもアイモッグの力の象徴であってアイモッグ自身ではない。これは間違いないだろう。
 だが、アイモッグとはそもそも何であるのか。
 大魔王である、というのは確かだ。だがその姿はどうだろう?
 実は奴は、いや、大魔王は、人の体を借りて行動するという実に実に嫌らしい生命体というか精神体なのである。体が使い物にならなくなると次の体に乗り移るわけで、この世界にたった一人になるまでは倒すことは不可能と一般的には思われるような構造をしている。褒めたくはないがさすがは大魔王である。そして闇に取り込んだ力をもってしてどんどんパワーアップするという、どこかで見たことがあるような感じがする能力を持っている。
 つまり大魔王=アイモッグであり、決して他の何ものではないのだけれども、他人の体を乗っ取っているのだということであり、つまりは自分とは何者であるのかを考えた時、この精神体はどの辺りをもってして自己というものを確立していると言えるのか、そもそも肉体と精神は切り離して考えられるものであるかいや否だろうというのにこれはどういうことなのかとか、長すぎて何がなにやら分からなくなってきたとかそういうことで学術的な話は何故長くて分かりにくくなってしまうのだろうかとか云々カンヌン。
 要するに、大魔王は羊の角と巨大な蝙蝠の翼を持つ半獣の巨大な化物ではなく、この、美少女なのである。うわー、第魔王ったらこんな体選んだの。趣味悪~という感じのギャップがたまらなく駄目だ。
 で、その不幸なる体の心の持ち主が、・・・という、第一話で体を乗っ取られてたアノ人であります。あれ? 名前が出ない。・・・さん、・・・、・・・っち。あれ?
「まさか・・・そんな・・・」
「あっはははは! 驚いたか!」
驚いてます。見れば分かる。
「そう、この体は貴様の恋人のものだったな」
何~!! 何考えてんだこのエロ魔王!! 女性の体を乗っ取るだけでは飽き足らず、勇者の恋人の体を乗っ取るとは確かに攻撃出来ないけど駄目だ駄目だ! 何か駄目だ!!
「私を攻撃すれば彼女が傷付く。つまり――」
エロ魔王――もとい、大魔王アイモッグは美少女の顔でニヤリと笑うと、巨大な暗黒の剣を抜いた。
「貴様はこの大魔王アイモッグ様には勝てんのだよ!!」
邪悪なオーラに圧倒されながらも、流も刃の無い剣を構えた。
「セイの力よ、そしてアミジェムーユの平和を願う人々よ、俺に力を!!」
と、見る間に光の刃が現れたではないか。最終決戦に相応しい戦いですな。皆から力を貰って戦うなんて、な~んてイベントバトルチックなんでしょ。え? イベントバトル?

 防ぐばかりで攻撃が出来ない。そして、大魔王の攻撃は完全に防ぎきれるものではなかった。少しずつではあるが、流れは傷付き、力を削がれていった。
「っははははは! 弱い! 弱すぎるな、勇者リュウリカンドよ! それとも私が強すぎるかな?」
いや、卑怯なだけです。
「く・・・どうすれば・・・」
祈るのも手です。あるいは体力が下一桁になると助けが来るとか。他に何かあったかな?
「どれだけ会いたかったか・・・思い出せるのに・・・」
助けに来てくれた仲間が自分の代わりに死ぬのは感動でした。
「おかしいだろ、君の名前が思い出せないんだ」
自嘲気味に笑い、立ち上がる流。は、この流れは。
「思い出すって、約束したのにな」

 記憶っていうのは、たとえ忘れてしまったと思っても何処かに残っているという。
 それが本当だかウソだかは知らないけれども。
 記憶は消えずにいて欲しいと思う。
 例えば。君の笑った顔は思い出せる。泣いた顔、怒った顔、今でも鮮明に覚えてる。でも、忘れてた。会いたいと思ってたこと、思い出せなかった。
 でも。
 今は感じられる。あの時の気持ちも、今の新しい気持ちも。
 ウソの記憶に捕らわれそうになったとき、助けてくれた。
 だから今度は、俺が君を助ける番だ。

 流は地にうずくまったまま動かなくなってしまった。
「これでこの世界は私のものだ! もう邪魔するものはいない!!」
大変だ。こんなヘンタイに世界を乗っ取られてしまう。立て! 立って、流!!
「!!」
流が立った。
「おのれ~、いつまでもしぶとい死にぞこないが!!」
「・・・思い、だした」
え? いつ?
「何をだ?」
偉そうな笑みを浮かべる大魔王。勝利を確信した悪役の笑みだ。
「名前」
「名前・・・?」
訝しがる大魔王に向かって、流は笑いかけた。
「目を覚ませ」

アクネ

 アクネファシール・ダクテイユ。セイの力と反発するダクの力を押さえ込む力を持つ姫君。リュウリカンド・セイナイルと同じく、聖地インシネレーターを守るべき存在。
「りゅう・・・りかんど・・・? く・・・貴様、まだそんな力が・・・」
一人漫才by大魔王アイモッグ。内部では激しい戦いが繰り広げられているに違いない。
「私・・・クソッ! 人間ごときが私に・・・これは私の体よ・・・うぐ・・・」
良く分からないのが難点。
「うああああッ!!」
眩しい光と共に、崩れ落ちる大魔王、というかアクネ。周囲の闇が揺れる。その瞬間を流は見逃さなかった。
「全てを浄化する、セイの力よ!! 平和を願う力よ!!
 俺に力をッ!!」
そのまま光は何処までも何処までも広がり、全てを包み込んでいく。眩しー。あまりにも眩しくて何も見えな








































だが私は消えん
この世に
穢れがある限りはな











 終わった。全てが、終わった。
 こうして、地の文までエネルギーにしようとした極悪な奴は滅びた。ちょっと残ってる気はするが、その辺りは皆の力で何とかやりすごすということで。
 後日談としては、やっぱり世界が平和になったとか、リュウリカンドが新しい国を創っていくことを宣言したとか、その傍らにはアクネが寄り添っていたとか、神殿を復興させるのが大変だってんでイムが世界を飛び回る羽目になったりとか、この戦いを誰かが歴史の一ページに刻もうとしているとか、自分達を裏切ったとばかり思っていたミワールの元・幹部の人達が実は自分達を守るために犠牲になっていたことが分かってその辺りはこれから溝を埋めていくしかないんだろうけど前途は明るいと思われるとか、異世界について色々研究しようという動きが出て来たとか、色々だ。
 でも、ま。
 いつかまたその平和は崩れてしまったり腐ってしまったりするのかもしれないけれど、それでも、今しばらくはその喜びを享受するのが、いいんじゃないかなーと。
 以上、 最後までお付き合いくださってありがとです。
 もう、アミジェムーユのお話はこれにて、終~了~。








いんしねれぇたぁ in 火曜日(チューズデー)
 

by 藤枝りあん









A:こっちも終わった・・・無駄に疲れた。
Q:終わった・・・また逆になってるけどもう注意したくもない・・・
おっしまい!


 (15点配分)
( )「全体として、面白かったかどうかの報告」
( )「どこまで読んだか、その確認」
( )「気になった部分への指摘」
( )「興味深い(面白い)と感じた部分の報告」
( )「技術的な長所と短所の指摘」
( )「読後に連想したものの報告」
( )「酷評(とても厳しい指摘)」
( )「好きなタイプの作品なのかどうか」
(15)「最後まで読むに堪えられる作品であるかどうか」

・特に重点的にチェック(指摘)してもらいたい部分。
( 読み終わることが出来る作品かどうか )

・読んで楽しんでもらいたいと考えている部分。
( 地の文のメタ的な行動 )

・この作品で、いちばん書きたかった「もの/こと」
( 打ち切り作家の苦悩と称した自己満足の行き着く先、および自分の限界はどこにあるのか )


自己満足万歳。暫く不貞腐れて来ます。

最終更新:2014年03月18日 13:38