蟹乙女 -La Crabienne-

2005年01月10日(月) 05時49分-葉山一色

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一八七一年を告げる鐘の音が威勢良く響き渡り、男はレバノン杉の机の上で跳ね起きた。砕かれた石が埃のように舞い、天窓から差し込む幾条もの光に優美にパヴァーヌのステップを踏む。激しく咳き込んだ男は救いを求めるように本能的にその窓から顔を突き出し、朝の街に盛大にその余韻を響かせた。

「ごきげんよう、ポワレ。新年だって気がついてる?」

朝の市場に向かう年増の女が振り向きざまにそういって笑う。冬の湿った冷たい空気が男の顔を撫でた。その声に若干のあざけりが入っていない


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泡vol.3用原稿
ルビ二箇所、イタリック体一箇所。脚注、フォントサイズ変更、強調等はなし。全段落は一文字分の字下げでお願いいたします。

http://uk.various-colors.net/friday/pukiwiki.php?%B3%AA%B2%B5%BD%F7
に、dviとそれを変換したpdfがおいてあります。

というか、卒論が、卒論があぁっ・・・。
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葉山一色 2005年
最終更新:2014年03月18日 13:49