お題「在校生」

2013年03月24日(日) 23:09-竹之内大

僕は親友のトメに軽く挨拶して教室に入った。すでに来ていた数人のクラスメートとあいさつを交わしながら自分の席に着いた。今日は雪ちゃんはまだ来ていないようだ。いつも僕より早く来ている彼女がまだ来ていないなんて珍しい。

算数の授業。割合の問題ができないことに愕然とした。習ったはずなのにな。復習しないとどんどん忘れていくものだ。隣に座ったトメがすらすらと解いていくのが恨めしい。

体育の授業。今日はダンスをした。なかなか振付を覚えられない人が多い中、僕はすらすらと踊ることができて内心得意だった。心配だったのは、途中で転んでしまった中野さんだ。腰を打ちつけたらしく、救護室へ運ばれていった。かなり痛そうにしていたが、大丈夫だろうか。

国語の授業。今日は百人一首を行ったのだが、大変盛り上がった。取るほうではトメと接戦を繰り広げたのだが、読み手を任されたときは、どうあがいても読むことができず、結局タカに代わってもらうことになった。実に面目ない。

お昼の時間。朝から気になっていたことをトメに聞いた。
「なあ、今日雪ちゃんどうしたんだ?」
トメはちょっと困ったように手を止めると、こちらを見ずに一気に答えた。
「『卒業』したんだよ…。」

少子高齢化が進んだニホンでは、増加する廃校と高齢者の介護問題を解決するために「在校介護」が行われていた。僕はもう通って7年になるかな。僕も卒業の時が近いのかもしれないな。ぼんやりとそんなことを考えながら、食後の薬を飲み干した。

最終更新:2014年03月17日 19:28