逆らえぬ運命

2013年04月24日(水) 01:21-三水 夏葵


神様はある人間にこう伝えた。

「近い将来、貴方は非常に珍しい不治の病に侵されるでしょう。それは今までの間誰も治せることが出来なかった不治の病です。」

そして神様はその不治の病の名を挙げた。それは当時では非常に恐ろしい病であった。

「そ、そんな…」その人間は顔を真っ青にした。「な、何とかなりませんか?」

「それは貴方しだいですよ。」

神様は只そう言い残し、消えてしまったのであった。

 

一人残された人間は考えた。

(そう簡単に死んで堪るものか。自分の人生はもっと有意義であるべきだ。私は生きていく、必ず生き抜いていく。運命なんぞ変えてやる。打開策を施さなければ。)

故に人間は医学を勉学し始めた。人並みならぬ努力をした。来る日も来る日も人間は医学書をむさぼるように読み続け、食事や仮眠を忘れる程頑張った。神様が予言した不治の病についても必死に調べようとしたが、患者が非常に少ない為、その不治の病を扱う書籍も極めて少なかった。人間は幾つもの専門図書室に足を運び、数少ない関連書籍を読み漁った。

やがて人間は多くの医学知識を学び得り、医学研究もどんどん進んでいった。気づいた頃には、世界で名の知れる医学者になっていた。人間は自分が患うことになる不治の病をひたすら研究し続けた。有名に成った為、稀少な患者と会う機会も多くなった。人間はなるべく多くの患者と接し、効果的な治療法を生み出そうと日夜頭を抱えた。

 

その後何年か経ち、病の研究が成功まであと少しの所にやっとたどり着いた時、不幸にも人間は神様の予言通り不治の病に侵されてしまった。

しかし人間は諦めなかった。

(私は…私は、運命に弄ばれるべきではない誇り高き人間だ。病などに負けて堪るものか!もうひと頑張りだ、もう少しで効果的な治療法が見つかるんだ!)

人間は病の痛みを堪えながら研究を続けた。気が狂いそうな勢いで研究を続けた。

もう体力が限界に来たところで、人間の努力はついに実ったのであった。効果的な治療法を見つけた人間は、早速その治療法で自分の病を治した。

(やったぞ、やったぞ!私は自分の運命に逆らうことが出来たのだ!私は自分の手で、不治の病で死ぬことから間逃れることが出来たのだ!)

人間は心から喜んだ。喜んで喜んで、号泣しだす位喜んだのであった。

 

 

人間はその後も努力の姿勢を止めなかった。医学を極め、多くの患者を救った。人間は段々年をとり、最後は老衰で穏やかに他界した。人々はこの偉大なる医学者の死を心の底から悔やんだ。

死後、人間は天国に着き、神様に出会った。人間は誇りげにこう言った。

「神様、私は自分の運命に逆らうことが出来ました。私は自分自身の手で不治の病に立ち勝ったのです。」

それを聞いた神様は嬉しそうであった。神様は人間の人生を褒め称え、末にこう言い添えた。

「実は、もし貴方が医学に献身せず、あの不治の病を研究しなければ、あんな珍しい病に感染することなどまず無かったのですよ。」

 

(終)


早速思い切って投稿してみました。

読み辛くて、読者に不親切かもしれません。

今回は寓言的なショートショートを書きたかったのでメッセージ性を重視したのですが、今後は語り口をもっと磨いていきたいです

最終更新:2014年03月17日 19:32