コワシテ、万華鏡(アップ板ver.)

2013年05月25日(土) 23:16-御伽アリス


~プロローグ~
夢を見せてあげよう。それが本当になるか嘘になるか、それはなってみないと分からない。その方が、面白いだろう?
We hurt ourselves. ――“who?”
Hate our weakness. ――“how?”
名前が象徴しているんだよ。
そして回る、回る。鏡が回る。廻り廻され、舞わされる君たちに贈る、万華鏡の世界。



大事なのは、「誰が」と「どのように」だ。それさえあればストーリーができる。それだけあれば色と形ができる。馬鹿で、汚くて、苦しくて、嬉しいけど切なくて、そして綺麗な模様だった。
朝の洗面所で鏡を覗き込んで、少し赤い眼を見る。腫れぼったいまぶたが、まだ少し湿っている。
「よし、今日も頑張ろう」
頑張ろう。がんばろう。負けないように。
外は、カラッと乾いた風が流れていて心地良い。潮辛い血に染まった心臓が喘ぐように呼吸し始める。

二つ前の席の背中を見る。二人だけの教室。もうここは二人だけの教室。少しでも良い。休み時間のちょっとした会話が、それだけでここに来る意味になる。ここに生きる意味になる。
「深谷くん、大谷さんのこと知ってるんだね」
「ああ、家がすごく近所だから顔見知りなんだよ」
「大谷さんね、うちと同じ中学だったんだ。ホントは二人で同じ高校に行こうねって言ってたんだけど、結局離ればなれになっちゃった。でも今でもよく会うんだよ」
「仲良いじゃん」
「親友だからね。お互いのこと何でも話せる友達なんだよ」
「お互い何でも知ってる仲か。良いよな、そういうのって」
その笑顔が好きです。その声が好きです。この人の「そういうの」になりたいです。ねえ、これが恋ですか?



「誰が」と「どのように」が大事なんだ。ストーリーは形と色になる。苦しくて切なくて、時に嬉しくて、馬鹿で汚れていて、でも綺麗な模様だった。
にわか雨が止んだ道路に、水たまりがいくつもできている。たたんだ傘の先から水滴が零れ落ちて、ときどき光る。水たまりは夕方の空と学生服を映して、映画のワンシーンみたいな綺麗な風景を描き出している。
この街に引っ越してきて、新しい家で暮らし、新しい学校に通うようになった。前にいたのは遠い街。この街には少しずつ慣れてきたけれど、まだ身の回りがぼんやりとしていて、見えない何かが潜んでいるような、そんな気がしている。
まるで時の止まった街のように、何も変わらない。心臓の鼓動のように。静かな呼吸のように。何かの前触れのように。

「どうかしました?」と不意に後ろから声をかけられる。
「あ、ぼ、俺、最近この街に越してきたんですけど。それで家の近くを散歩してた。んだけど……」
「もしかして、迷った?」
いたずらっぽい笑顔が一瞬だけ夕陽に照らされて、また陰になる。
「じゃあ案内したげるよ。家どこらへん?」
「俺の家は、鏡池のすぐ近く」
「鏡池? オッケー。じゃあカモンカモン」
そう言ってその人は歩き出した。先を歩くその人の背中を見つめながら、一緒に歩く。坂道をゆっくりと上る。
歩いている間、その人はずっと自分の友達の話をした。その中に、ある知り合いの名前があった。
「ねえ、それってもしかして、風雅さんのこと?」
「あれ、知ってるんだ? 偶然だねえ」
共通の知り合いがいると分かっただけで、なぜか少し嬉しかった。
ここまで来ればもう分かるから、と言うと、その人は頷いて「ばいばい」と手を振り、角を曲がっていった。時間が止まったのは、ここからだったと思う。家まで意味もなく突っ走って、急いで玄関のドアを開けて中に飛び込んだ。
あの人の名前を知ったのは、それから少し後のことだった。



大事なのは「誰が」ってことと「どのように」ってことの二つ。だから、ここがどこかということは知る必要がない。この部屋には大きな鏡があって、わたしはその鏡の前にいる。単純にそれだけのことで、そのことの意味とか理由なんて知らない。
恐る恐る手を伸ばして、鏡の中の少女に触れようとする。わたしはわたしに触れたい。でも、本当に触れてしまったら? その時、何かが消える気がする。溶けていってしまうのが怖い。
オージくんはどうなんだろう。どう思ってる? ワカに彼のことを相談してみようか。ワカならきっと、わたしに協力してくれるはず。



「どのように」、「誰が」。これが大事なこと。必要なのはその二つだけなんだ。ストーリーは色と形を編み出して、汚くて、綺麗で、馬鹿だけど切なくて、嬉しい時も苦しい時もある、そんな模様ができた。
夜の星を見上げて、空に向かって息をつく。青白い星たちは消えそうに輝いて、でも流れない。流されない。
星の輝きは綺麗だけれど、もっと綺麗なのは星々の間に広がる黒い空だと思う。磨き上げられて独特のつやを持った夜のスクリーンに、この世界の全ての物の姿が映し出されて見えるようだ。夜は、鏡なんだと思う。
夜が汚れてしまう気がして、星と星の間に線が引かれるのは嫌いだ。そんな線で繫がなくたって、星の光は互いに行き来して、お互いの存在を認め合える。そんな気がする。
不意にその星が一つ、夜の表面を滑る。頬を伝う雫のように。それを見て、そのまま眠りに落ちていきたい、と思った。

「ああ、シンヤくんのことね。ちょっと変わった人かもね。良い人そうに見えるけど」
「うん」
「ねえフウ、それより今度の日曜日、遊びに行こーよ。それから新しくできたクレープ屋さんにも行ってみたいし。ねえ行こうよ!」
「あ、それ行きたいと思ってた。じゃあ行こっか」
「やったぁ。もう、フウはやっぱサイコ―な子だよ! ずっと若葉と一緒にいてくれぇ~。超愛してるっ」
「もう、いつも大げさだなあ……」
できればずっとこうして、その声を聞いていたいと思った。
「じゃあ、また日曜日にね」
「うん。ばいばーい」
プツッ。ツー、ツー。いつもそうなんだけれど、その音は電話が切れたことを教えてきて、少し寂しくなる。なぜなんだろう、線が切れる気がして。



「誰が」、「どのように」。それだけが重要なこと。それらが物語を創り出して、そして色と形、状態になる。落ち着かなくて、可笑しくて、笑えなくて、悲しくて、くだらなくて、でも大切な命の模様ができる。
通学路、少し歪んだ形のカーブミラーが生えた路地を抜ける。鏡は今日も苦しげな街の景色を切り取っている。ほんの数秒、自分の姿もその中に切り取られて、そして枠から出る。
空を見上げる。今日は曇っている。空って、どこのことを言うのだろう、とふと考える。地面を離れたら、そこはもう空なのか。それとも人間の胸の辺りからが空? それとも頭の辺りから?

「あのさ、若葉さんってどんな人?」
「あ、え?」
「脇谷さんと仲良いんでしょ?」
「うん、そうだけど。えっと、何でそんなこと訊くの?」
「あ……、実はぼく、若葉さんのことが気になっててさ」
「好き、ってこと?」
「多分……いや、絶対そうだと思う」
「それ、ほんとに?」
「うん。でもぼくは若葉さんのことをほとんど知らないし、いきなりいろいろ話しかけたりしたら嫌われるかもしれないじゃん? だから脇谷さんに協力してほしくてさ……。変なこと頼んでごめん。でも本気なんだ。だから、お願いしますっ!」
「わ、分かった、そういうことなら協力する。と言うか、うん、協力したい」
「本当に? マジありがとう! すっごい心強いよ」
「うん……まあ任せて。いつでも相談に乗るから何でも言ってね」
そう言って、握手が交わされる。柔らかく、少し冷たい手で、わずかに微笑んで、そして視線はどこかの空へ落ちていた。



大事にしなければいけないのは、「どのように」と「誰が」なんだ。今、僕はここに閉じ込められているのだろうか。そんなこともどうでも良いことなのか。大きな鏡がある。他には何もない部屋だ。何もないのは、本当に何もないからなのか、僕が何も見ていないからなのか。……きっとそんな疑問さえも、意味なんてないんだな。
境界の向こうから、僕と同じ顔をした人間が近付いてくる。触れてはいけない。越えてはいけない、と思った。きっともう戻れないだろう。ここにではなく、あの場所にでもなく。僕が僕に戻れないだろう。
彼女はきっと良い人だ。だから大丈夫。あいつだって、そう、うまくいくはずだ。焦らない。追い詰めない。どっちも苦しまないように。しばらくしたら、一緒に笑い合えますように。



あるべきものは、「どのように」と「誰が」だけ。物語のインクが染み込んだ針は動き続ける。そして色と形と状態を描き出す。悲しいくらい可笑しくて、くだらなくて笑えなくて、でも落ち着かなくて、そして大切な命の模様が描かれる。
反射する陽射しがまぶしい。ガラス張りのビルがそびえる、真っ直ぐな大通りを歩くと、この道はどこまで続くんだろう、という気がしてくる。知らない人だらけのこの森で、走り出したくなる。早くここから抜け出したい。臆病で意地悪な悪魔が棲む、フワフワした夢から覚めたい。そしてゆっくりと眠りたい。

「うう、食べ過ぎた~。おいしかった~。でも苦しい~。太る~」
「ねえワカちゃん、ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「え、まだ帰らないの?」
「うん、お茶でも飲まない?」
「お、良いね。一杯引っかけて行きやすか。ささ、行こう行こう」
「はは、ワカちゃん、それじゃオッサンっぽいよ……」
「オッサンとは失敬な。で、どうしたの? 何か話があるんでしょ」
「……前にも話した、彼のことなんだけどね」
「好きになっちゃったとか?」
「え? あ、いや、うん、そう、です」
「まじで? ちょっと、冗談のつもりだったのに。恋、しちゃったってこと?」
「うん……だってもう私、しょっちゅう彼のことが頭に浮かぶの。緊張で胸が痛くて、それでも考えちゃうんだよ。本当に病気みたいな感じで、苦しくて……」
「え、っと、ごめん。冗談なんか言って。何か……できることはない?」
「うん、私にも何が何だかよく分からないんだけどね、なんか、とにかく誰かに話を聞いてほしくて。そしたら私にはワカちゃんしかいなくて」
「……そっか。そういうことなら何でも言ってよ。いくらでも聞いてあげるから。二人の仲じゃん。何年の付き合いだと思ってんの。頼ってくれて全然オッケーだからね」
涙が溢れた。ありがとう、と言いたいのに、なかなかその言葉が出なくて、気が付いたらごめんごめんとつぶやきながら泣いていた。目の前にいる大切な人の姿が濡れて、滲んで見えた。



「誰が」と「どのように」だけが肝心な点。それさえあれば物語は進む。時計の針とともに、映写機は回る。色と形と状態を映し出す。悲しみはくだらなくて、笑えなさが逆に可笑しくて、落ち着かず、それでも大切な命の模様が像として結ばれる。
街のショーウィンドウに映る影は一つ。そこにはぼやけた人間が立っている。透明人間って、どんな気持ちなんだろう、ということを考える。自由で楽しいのか。誰からも気付かれず、寂しいのだろうか。でも、中途半端より良いんじゃないかな。ぼやけているくらいなら、透明になれた方が良い。鏡にも映らない人間になれたら良い。

こういう時に限って、ばったりと出会ってしまうんだよな。
「あっ」
「あっ……キミは」
「えっと、あのさ――」
「正直に言ってほしい。キミは、あの子のことどう思ってるの」
「……あの子?」
「私の気も知らないで」
「何を言ってるのさ?」
「私、キミには負けないから。誰にも負けたりなんかしないから!」
「おい、ちょっと待って!」
駆け出そうとする。逃げようと思った。この人から逃げて、二人でどこかへ行ってしまいたいと思った。誰の手も届かないような場所へ。でも、透明人間にはなれなかった。
泣きながら道に飛び出した。そして、横から来るバイクに気付いた時、足が地面に縫い付けられたみたいに、動けなくなった。自分の体に、強い力がかけられるのを感じる。
「えっ……」
体が何かにぶつかる。でも受けとめられる。無意識に、ごめんなさい、とかすれた声が出た。バイクの音が遠ざかっていった。顔を上げると。
「誰にも負けないなんて言っておいて、死ぬ気かっ!」
「き、キミ、なんで――」
「ごめん。……最低だ。大切な人を自分のせいで危ない目に遭わせた」
「あ、でも……」
「もう良いんだ。さよなら。気を付けて」
するりと、握られていた手が離れ、去っていく。今まで握られていたことに、初めて気付いた。呆然として座り込んだままの自分の手に、さっきまでの体温がほんの少しだけ残っている気がした。



「どのように」と「誰が」が問題。多分、今あたしがいるのはどこでもない場所なんだと思う。大きな鏡とあたしだけ。ここから出たいとは思わない。ここは何もない不思議な場所のはずなのに、奇妙な現実味があるせいかもしれない。
向こうのあたしが笑っている。あたしは泣きたくなる。いっそ、鏡の向こうへ逃げ込めたら。そう思って一歩前に踏み出す。向こうのあたしが、一瞬悲しげな表情をしたように見えた。
できない。それこそ、あたしがあたし自身に負けることになるような気がした。あたしは泣いて、あたしは笑っている。
フーちゃんならこんな時、どうするの? フーちゃんはどうしてほしいんだろう。フーちゃんがあたしの全て。誰にも占領されたくない。でも……本当にあたしはそれで良いのか。フカやんのこと、あたしは……。今までこんなこと考えもしなかった。どうしてこんなことになっちゃったの? それにあたしは、フーちゃんの気持ちを知ってしまっているんだ。それを裏切って良いの? あたしは、今まで生きてきたあたしを裏切るようなことをしてしまっても良いの?


10
誰が、どのように? もう忘れてしまった? ストーリーはまだ続いているのだろうか。模様は残っているのか。
スプーンの凹みを見つめている。上下逆さまになった顔がこっちをにらんでいる。ため息をついて、冷めたカレーを頬張る。やっぱり美味しくない。

「私ね、何だか、もうやめようかなと思って」
「え、何を?」
「彼のこと……」
「やめるって、それどういうこと?」
「ごめんね。せっかくワカちゃんに話聞いてもらってたのに。もちろん、ワカちゃんは悪くないから。それに彼が悪いわけでもない。悪いのは私が迷ってたこと。曖昧な気持ちだったこと。それで、よく考えてね、やめようって決めたんだ」
「でも、良いの? まだ何かあったわけじゃないんだし、それに――」
「良いんだよ、何もないうちにやめた方が。それに私さ、やっぱりワカちゃんとこうしてるのが、楽しいから。彼を嫌いになったわけじゃなくてね、でもやっぱりワカちゃんにそばにいてほしい。一人にはなりたくない……」
「わ、分かった。うん、じゃあその話はもう終わりってことで良いんだよね」
「そう。終わりにするって決めたから」
「うん……よし、じゃあそういうことなら、そうしよう。そうだ、また二人で何か食べにいこーよ」
そう言ってくれる笑顔が、とても嬉しかった。ちゃんと、全部、今まで通りになるんだと思った。


11
誰が、どのように、このストーリーを作っているんだろう。もうやめてしまったんだろうか。色と形と、状態はそのまま? それともまだ続いていて、新しい模様ができているのか。
カップに紅茶が入っていて、湯気が優しい曲線を描きながら生まれては消え、消えては生まれる。その紅茶に、どこか湿った顔が浮かぶ。泣きそうになったり、そうかと思えば急にニヤついたり。自分でも、もうどうしようもないと思った。フッと息を吹きかけると、小さな波が顔を隠してくれた。

「驚かないで聞いてほしいんだけどね、わ、私、キミのことが好きなんだ……」
言ってしまった。瞬間、顔が熱くなって俯く。相手の顔なんか見られない。
「きっと、きっと、あの子も私とキミのことを応援してくれるからっ」
緊張のせいで変なことを口走る。
「つ、付き合ってくれま――」
「こっちだって、好きだったんだ」
「え?」
何を言われたのか、分からなかった。目線を上げると、曇った顔があった。
「考えさせてほしいんだ」
「え、あ、そうだよね。うん、私――」
「ごめん。じゃあ……また」
何かを抱えているような表情。間違ったことをしてしまった? いや、それでも。自分勝手なのかもしれないけれど、なぜかその時、後悔はなかったんだ。


12
誰が、どのように。誰も、どうやっても?
大きな鏡は何も語らない。この部屋で僕は独りだ。何かを創り、何かを動かし、変化させられるのは僕だけだ。鏡に映るのは僕自身だ。だから、向き合わなきゃいけないんだろう。
僕は迷っている。でも、やっぱり彼女のことが。ただ、あいつへの気持ちはどうなってしまうのか。それは、自分を偽ることになってしまわないか? どうしたいんだろう、僕は。
いや、本当の気持ちは、もう分かっているんだ。そうだ。変に取り繕ってカッコつけようとなんか考えるな。彼女に、ちゃんと伝える。それ以外にはもう何もないんだ。
その時、床に何かが落ちていることに気が付いた。静かに光るそれを拾って見てみると、小さな鏡の破片だと分かった。部屋の大きな鏡をよく調べてみると、一部分が欠けていて、そこから落ちたのがこの小さな破片だと分かる。
とがっていて、少し冷たいその破片を手に持つと、なぜだろう、少しだけ勇気が湧いてくるような気がした。


13
どのように、誰が。ストーリーは崩れ去ってしまうのか。色も形も状態も、散っていってしまうのか。これから、今までよりもっと綺麗な、いや、意味のある、そんな模様が描かれることはあるんだろうか。これから向かう先に、果たして意味というものはあるのか。
りんごジュースの缶を見つめている。酸味料、香料、糖、いろんな物が混じってできているらしい。果汁は全体のほんの数パーセントにすぎない。これを本当にりんごジュースと呼んでも良いのだろうか、と疑問に思わないでもない。そこでふと、人体の六、七割は水なんだと小学校くらいの時に習ったことを思い出す。そういうものなのかもしれない、と思うことにする。
アルミ缶に映る顔をしばらくの間見つめる。曲面に映る顔は歪んでいて、少し笑える。それからその缶をべちゃりと握りつぶして、ごみ箱へ捨てる。

「どうしたの? 何か用?」
「うん、ちょっと」
「もしかして、前に言ってた話? 実は、それなんだけどね――」
「いや、若葉さんとは関係ないんだ。ぼくは、脇谷さんに渡したい物があって……」
「渡したい物?」
「そう。これをもらってくれないかな」
「……これって。自分で書いたの?」
「そう。ぼくが書いた」
「……分かった。帰って読むから。用はそれだけだよね? えっと、じゃあ、また明日」
去っていく背中を見送る。ふわりと涼しげな香りを一瞬だけ感じた。その人の俯いた顔は、微笑んだような、でも泣き出しそうにも見えた気がして、なんとなく、何かが崩れていくような気がした。


14
どのように、そして誰がこの物語の中に存在しているんだろう? 存在していたんだろう? このままだと、色と形はどうなるんだろう。綺麗な模様は、きっといつか終わりを迎える。その時、模様は綺麗なままでいられるのか、安らかに眠ることができるのか、それは分からない。
地下を走る金属の塊がやってくる。蛇みたいな形のそれに乗って、人込みに飲まれる。その中に隠れて、そしてガタゴトと揺られていると、妙な心地良さがあって、安心感に満たされる。そのまま止まることなく、深い闇の中へどこまでも潜ってみたい、そんな気になる。
でもそんな時、暗い窓に映る人間と目が合う。少し赤く、腫れぼったい目でこちらを見ている。その目が自分を非難しているように見えて、耐えられなくなって目をそらす。一体どうすれば良いの? どうすれば良かったの? ……きっと誰も教えてなどくれないんだ。
少し残酷で明るい光が、窓に映る影をかき消す。

「ごめんなさい」
「えっと……そっか。そうだよね。ごめん、こちらこそ」
「違う、違うんだけど……」
どうしてこんなふうになってしまったんだろう。そう思うと涙が溢れてくる。分かってる。本当はどうして、なんてない。でも、こんなに悲しいのは一体……。
「好きだった、深谷くんのこと。でも、もう、遅かったんだよ。うちは、今のうちじゃ、だめなんだよ……」
「いや、良いんだ。悪いのはこっちなんだ。それに、何と言うか、ちょっと分かってたんだ」
「それは違う、ちが――」
「良いんだ。本当にごめん」
「ねえ、一つだけ、良い? 大谷さんのこと、嫌いになったの?」
そう言って、どうしてそんなことを訊いたんだろう、と思った。
「嫌いになったんじゃないんだ。ただ自分に対して腹が立って仕方なくて……。好きでいる資格なんかなくて、本当に申し訳なくて」
会話はそれで終わりだった。これで良かったのか。伝え方を間違っていなかったか。正しいことって、一体何なのか。それはこんなに辛いことなのか。


15
誰が、どのように。誰でも、どのようにでも。
大きな鏡は無表情のまま。この部屋の中で、あたしは独りだ。あたしは、ここで何かを創り、何かを変えることができるんだろうか。そもそもあたしは、何かを創るべきなのだろうか。変えていくことは本当に幸せだろうか。それをあたしは望むだろうか。
本当に後悔はしていない。後悔だけはしたくない。今、後悔しているとしたらあたしはあたし自身を信じてあげられないことになる。否定することになる。だから間違っていたなんて思いたくない。フーちゃんに対する思いにも、フカやんに対する思いにも、きっと嘘なんてなかった。それならば、あとあたしがやるべきことは、単純なことなんじゃないかって、そう思う。
ふと、床に落ちた小さな何かが光った。近寄っていって拾い上げてみると、それは割れた鏡の破片だと分かった。今まで大きくて立派なものとしか思っていなかった鏡は、実は一部分が欠けていて、あたしが拾ったのはその部分から剥がれ落ちたものみたいだ。
小さな鏡の欠片は鋭くとがっている。手を滑らせたら肌を切ってしまうような、そんな危うさを秘めている。でもそれがちょっと羨ましく、嬉しくもある気がした。


16
誰が、どのように、この物語に決着をつけられるだろう。終わりは来るのだろうか。それがいつかなんてことは関係ない。いつかあるかもしれないし、いつまでもないかもしれない。ただ、誰が、どのように?
目の前に黒いタクシーが停まっている。そのボディに映った姿は、歪められて縮められて、やけに背の低い不格好な人間が見える。じっと見つめていると、運転手が困った顔で「乗るの?」と尋ねてくる。「……いえ」と短く答えると、じゃあそこに立っていないでくれ、という手振りをされる。その場を離れると、不格好な人間も消え去った。

「本当に、本当にごめん」
そう伝える以外にない。それに対して、目の前の人はわずかに頷く。
「あのさ、俺、風雅さんのことが好きなんだ。それはもう、だめだったけど。でもさ、だめだってはっきりしたって、好きなんだよ。そこの気持ちは変わらなくて。ホント、ものすごく自分勝手なこと言ってるの分かってるけど、でも……。だから、ごめん」
「うん、分かった。良いんだよ。こんなこと言うの変かもしれないけど、そういう気持ち、こっちもすごくよく分かるからさ。痛いくらいに。ほんと、残念ではあるけど。残念で仕方ないけど。でもしょうがないことだから」
「ごめん」
「ううん、謝らないで。と言うか、ありがとう。多分これは、お互いにとって悪いことじゃないんだよ。きっと、曖昧なままにしてたらモヤモヤし続けちゃうから」
「……そう、かもしれない。そうだと良いな。うん、ありがとう」
きっと、完全に切れたり、なくなったりすることなんてない。人間の関係というのは絡み合う糸のように本当に複雑で、いつもぐちゃぐちゃで、身動き取れなくなることもある。ただ、それは繋がっていることの証拠でもあって。それが見えてきた時、自分にも何かを起こせるチャンスがあるんだろうか。


17
どのように、誰が、物語を壊すだろう? どのように、誰がこの物語を殺すのだろう? それが自分なのか、自分じゃないのか、自分に関わる何かなのか、それが問題なんだろう。今は、確かなことの方がむしろ多い。でも、大事なことはいつだって、確かでないことの方なんだ。
握ったナイフが、きらりと優しく光る。その細い刃に、少女の顔が映り込んでいる。その刃に、少女の目元が切り取られ、貼り付けられている。穏やかに、悲しげに、睨むように、溶けるように。その眼差しの意味は何だろう。自分でも分からない。自分とは誰だろう? もしも自分が自分以外の人間になったら、ここにいる自分とはどんな人に見えるだろう?

「ねえ、シンヤくんのこと、どう思ってる?」
「え? 彼のことなら、前にも言ったでしょ」
「今、どう思ってるの」
「だから……もうやめることにしたんだよ。わがままだと思うけど。でも、正直な気持ちでいたいから。やめたの。もうどうとも思わないことにしたんだ」
「そう……。えっとさ、落ち着いて聞いてね。あのね、若葉さ、本当にこんなことどうしてなのか分からないんだけど、シンヤくんのことが……好きになったんだ」
「それ、本当なの? いやその、ごめんね。でも、どうして」
「違うの。実は、告白を、してね。それで、断られた。他に好きな人がいるから、って。それで、その好きな人っていうのが、フウなんだって、そう言ってたの」
「それは……知ってる。どうして、こんなことに」
「ねえ、聞いてフウ。若葉は今も、シンヤくんのことが好きなんだ。それはやっぱり、正直な気持ち。だから、シンヤくんに好かれてるフウのこと、すごく嫌な目で見ちゃう時がある。ダメだって分かってるけど、でもどうしても……」
「良いの。悪いのは全部――」
「そんなこと言わないで。フウが一人で抱え込んじゃダメなんだよ。それに、ねえ、これって皆が自分の気持ちに素直に向き合って、考えて、悩んで出した答えでしょ? その結果がこうなってしまったんなら、きっと、どうしようもなかった」
「でも……」
「大丈夫、きっと。皆でちゃんと話せば良いんだよ。すれ違わないように。今はまだ、解決の方法って、分からないけど。でも会って話せればね、そうすれば、どうすれば良いのかが分かってくるはずなんだよ。それぞれが、どうしたいかが、分かる気がするんだ」
本当は不安だけれど。それでも、どうにかしなくちゃいけない。誰か一人の問題じゃなく。二人の問題でもなく。これは、自分たち全員の問題。
だから、一緒に、この壁を破らなくてはいけない。


18
どのように、誰が。誰かが、どうにかして。
ぼんやりと光って、全てを飲み込むような、大きな鏡の前に立って、わたしは何かの予感みたいな寒気を感じている。この部屋にわたしは独り。そう思ったけれど、一瞬どこかからわたしを呼ぶ声が聞こえた気がする。ただそれは音にもならないような声だったかもしれない。そう、それは、祈りだ。
わたしたちは、会って話をすべきなんだと思う。ワカがそう言ってくれたように。会って話をしたら、きっとわたしは傷付くだろう。多分、ワカもオージくんも傷付くと思う。それぞれの正直な思いを確かめて、それが絶対に叶えられない願いだと知ってしまって、みんなが悲しむことになる。それが本当に一番良い方法なのか、わたしには自信が無いけれど、少なくともそうすることで、今までになかった新しいことが起こるんだと思う。立ち止っていても今の悪い状況は変わりっこない。それならば、無理にでも前に進んで行かなくちゃいけないのではないか。そこで、確かでなかったことが、ようやく確かになってくれると、わたしは願っている。
一歩前に踏み出した足に、何かが触れたのが分かった。それは、小さな鏡の破片だった。わたしは屈んで、それを手に取る。部屋の大きな鏡は、魔法のように完全で、怖いくらい綺麗な物だと思っていた。でもその鏡の一部はいつの間にか剥がれて落ちていて、それが今わたしの持つこの破片のようだ。
小さな欠片は輝いていて、そしてギラギラした力を秘めている気がした。その力とは怒りかもしれないし、恐怖かもしれないし、喜びや悲しみかもしれない。不安かもしれない。先の知れない強いエネルギー。でも今は、それに賭けてみたいと思ったんだ。


~エピローグ~
それから三人は出会った。一人は脇谷風雅であり、一人は深谷大路であり、一人は大谷若葉だった。
三人がそれぞれ拾った小さな欠片は、もともとそこにあった物だった。三人がそれに気付くか気付かないかが運命の分かれ目だったのだが、結果として三人はその欠片の存在に気が付いた。その小さな欠片は、それぞれにとっての自分自身だった。だからこそ三人は、壊す力を手に入れることができた。
三人は粉々になった鏡の破片が床じゅうに散らばる、一つの部屋の中にいた。その破片とは、さっきまでそれぞれの前に立ちはだかっていた鏡の壁だった。三人は拾った欠片を自分の前の壁に突き刺して、鏡を叩き割った。そうして初めて、三人は同じ一つの部屋にいたことに気が付いた。三人は最初から出会っていた。ただそれが見えていなかっただけだ。
三人はようやく、顔を合わせて語り合うことができた。思った通り、そうすることで三人の心はまた痛み、腫れ上がった。どうしても、自分たちの望みは叶えられないということを確認してしまった。三人とも、もう消えてしまいたい、と思った。物語が行き着いた先は、悲しく辛い結末のように思われた。

万華鏡の作者は、壊された万華鏡を見て、そして三人の姿を見て、最後の最後にこう思った。
「この人たちを、救ってやりたい」と。
だから万華鏡の作者は、粉々になった鏡の破片を集めた。その全てを集めて、そしてそれらを繋ぎ合わせて、再び鏡を作った。もともと三枚だった鏡を寄り合わせて作った、一枚の大きな大きな鏡だった。作者は、出来上がったその鏡に三人の姿を映し込んだ。そうすると三人は六人になった。
このことが意味するのは、とても単純なことだった。鏡は、こちら側とあちら側を作り、そして二つを結合させる装置だ。だからこちら側にいる三人は、あちら側で待っている想い人のもとへと消えていった。そうさせることが、三人に対するせめてもの救いだった。

ちなみに、この万華鏡の作者が何者なのかは、全く知られていない。こんな厄介なものをどんな方法で作り出したのかということも、分かっていない。おそらくは今後もそれは明らかになることがないのだろう。まさに、「誰が、どのように?」だ。この怪しく謎に満ちた存在について、恐ろしいと思うか、面白いと思うか、その考え方の度合も、人それぞれだろう。ただ一つ言えることは、ストーリーの種はどこにでも転がっている、ということなのかもしれない。

 

***

この作品の「御伽度数」は75パーセントくらいです。ちなみに2013年度『泡』に掲載の予定です。しかしなぜかこのアップ板ver.ではプロローグが追加されてます。微妙にお楽しみ頂ければ、と思います。


≪御伽ラジオ2≫

さて、やってきました御伽ラジオのお時間です。皆さんどうかお付き合い下さい。
まずは今回も行きます、「アリス飛び込む夢の音」! このコーナーではその名の通り、御伽アリスが見たいろんな夢を皆さんに紹介していきます。昨今の娑婆世界は、かつてないほどのワンダーランドと化しています。そんな世界で見る夢はまさに御伽話のようなのです。くだらないけどちょっと心温まる(かもしれない)夢の世界に、皆さんをご招待しましょう。

――i lost my way――
まずい、道に迷った。俺は今、盛大に迷子になっているぞ。何でこんなことになったのかは知らないし、そもそもどこへ向かっていたのかも覚えちゃいないが、とにかく道に迷っていることだけは確かだ。脳の中に、迷子になった時にだけ反応する部分か何かがあって、今その部分が悲鳴を上げながら俺に訴えてくるのだ。
「迷子なう(ToT)」と。
とその時、焦っている俺の目の前に、一筋の希望の光。一人の少年が通りがかったのだ。青いランドセルを背負っている。つまり小学生だろう。小学生以外がランドセルを背負うはずはない。いや、しかし待てよ? そう簡単に決めつけて良いのか? 見た目で人を判断するのは良くない。もしかしてあの顔で、俺より年上かもしれん。下手に馴れ馴れしい真似をすると、名誉毀損罪に問われるかもしれない。ここは慎重に行こう。
「は、ハロー! チャオ! グーテンターク! ボンジュール! ジャンボ! ナマステ! アロハ! ニイハオ! アニョンハセヨ! ちーっす!」
「なにおじさん、意味分かんない。しかも最後の日本語、ちーっすかよ。こんにちは、で良いだろ」
少年は冷静にツッコミを入れてきた。やはり、この外見で結構大人なのかもしれない。しかし良かった。とりあえず日本人のようだ。外見で判断してはいけないと思い、いろんな国の挨拶をしてみたわけだが、日本語で通じるようだ。まあ慎重に話すに越したことはない。日本人だと最初から決めつけて「こんにちは」などと話しかければ、もし少年が日本人でなかった場合、名誉毀損で訴えられるかもしれなかったからな。危ない危ない。
「実は私、こう見えて怪しい者ではありません」
「嘘つけ」
「いえ、別に誘拐しようとか拉致しようとか、そんなことは微塵も考えてません」
言ってから、しまったと思った。この言い方では、この少年には魅力が無いと言っているようなものではないか。これは名誉毀損になってしまうかもしれない! 慌てて言い直す。
「あ、でもあなたは素敵な人だと思います。残念ながら私はあなたを拉致することはできませんが、他の大人ならば思わず拉致したくなるほどの魅力をお持ちです」
「うわ、やっぱ怪しいおじさんじゃん!」
「いえ、私はただ、道をお尋ねしたいだけでして」
「どこに行きたいの?」
「はい、実はそれが分かりませんで……」
「ええ、やっぱり不審者だろお前!」
まずい、少年の中で俺に対する疑いが大きくなっている。と、とにかく、何か話して雰囲気を良くしよう。
「失礼ですが、あなたは小学生でいらっしゃいますか? いえすみません、別に子供っぽいとか、背低いなとか、童顔だとか思ってないですよ! 男はハートで勝負ですから!」
「あたし女なんだけど!」
ええええ!! くっそお、髪が短くて言葉遣いが男っぽいから勘違いしてしまった! 今の子は女子でも青いランドセルなのか! まずいぞ、これは名誉毀損と言われても仕方のないことだ!
「すすすすいません、女性の方だったとは!」
「いや、嘘だっつーの。なんでオレが女なんだよ、見りゃ分かんだろ、男だって」
ええええ!! 嘘だったの! これはまた失礼なことを言ってしまったんじゃないのか俺は!
「で、小学生だけどそれがどうしたの、変なおじさん」
「いえ、私は変なおじさんではなく……。あ、そうですか小学生……やっぱりそうですか、はあ」
「ねえ、道に迷ったんなら、とりあえずこの道をちょっと行って、郵便局のある交差点で右に曲がって、それから二つ目の信号のところで左に曲がって、少し行った所に――」
何だ? そんなに丁寧に場所を指定して、俺をどこかへ行かせようとしているのか? つまり少年は俺を怪しい人間だと思って、俺からうまく逃げようとしているんだな。まずいぞ、ここまで疑われるとは。しかし、この少年に道を聞かないと本当に俺はどうしたら良いか分からなくなる。何とか道を尋ねなければ。
「ねえおじさん、オレの話聞いてた? とにかくそこに行けばだいじょぶだって」
「お願いです、とにかく道を教えてください!」
「どこに行きたいのかも知らないくせに、教えようがあるかよ。とにかく、今言った場所に行けば大丈夫だから」
「そんなことを言って私が離れた隙に、110番通報しようとしてるんじゃないですか? 何度も言いますが私は怪しい者ではなく――」
「めんどくさいおじさんだなあ。だーかーらぁー、交番に行って道を教えてもらえば良いっつってんの!」
「交番? あ、やっぱり私のことを犯罪者だと思っているんですね! 交番に行って自首しろってことですか! くどいようですが私は何もしていませんよ、ただ道に迷っているだけで」
「面倒だなあ」
まずい、このままでは本当に道が分からないぞ。俺は焦った。とにかく、ここはもう多少危険なことをしてでも、少年から道を聞かなければ!
「お、おいっ。早く道を教えろ、いや教えてください……。お、教えてくれないと、誘拐するぞ?」
ああやばい、言っちゃったよ、これって犯罪じゃないか? 逮捕されるんじゃないか? うわどうしよう!
「うっせーなあ。しょうがない、電話で交番の人呼んであげるから、ちょっと待って」
「え? 呼ぶの? 警察? いや、その、誤解です。私は別に怪しい者じゃ……」
「もしもし、交番ですか?」
「本当に電話しちゃってるよ!」
「はい、そうです。すぐ来てくれませんか。はい、変なおじさんがいて困ってるんです」
「うわ、やばいってそれ、誤解されるよその言い方。俺犯罪者だと思われてるよ、どうすんのよ、うわ、ってかマジどうしよ」
「あ、来た来た駐在さん。おーい、おまわりさーん、こっちこっち! ちょっと助けてください!」
「ああ、そんな大声を出したら余計に……。ほら来ちゃったよ警察の人。いえ、私は不審者ではなくてですね、話せば分かります、どうか捕まえないでください」
「おまわりさん、この変なおじさんに道を教えてあげてください」
……そこで夢から覚めた。

いかがでしたでしょうか、僕としては神秘的な夢だったと思うんですが。これのどこが夢なのか、という不満を持たれるリスナーの方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方は放っておきましょう。

さーて、続いておハガキ紹介コーナー! ここではリスナーの皆さんから寄せられた、御伽アリスへのご質問にお答えしていきますよ!
まず、一通目。ラジオネーム「御伽アリスの書く小説はつまらないし、何か上手いことを言ったとでも思っているのか知らんが調子に乗っているのがイライラする、そもそも何がしたいのか分からない、才能が無いと思うのでもう執筆をやめてほしい」さんからのおハガキ。「御伽アリスさんは、霊長類ですか?」というご質問。あ~、これはいきなり、良い質問ですねえ。はい、僕は霊長類ですよ。というかヒトですよ。
続いて二通目。ラジオネーム「御伽アリスの書く小説というより、御伽アリスという生物自体が気に食わない、なぜこの世にこんな奴がいるのか理解不能、生理的に受け付けない、御伽アリスがいなくなるのならお金を払っても良い」さんからのおハガキ。「御伽さんがいつも食べているプランクトンは何ですか?」というご質問。いや、これも良い質問ですね。正直に言いまして、僕はプランクトンは食べません。「御伽アリスという生物」という表現をしてくれていますが、さっきも言った通り僕はヒトなので、せめて「御伽アリスという人」という表現にしてほしいです。
ラスト三通目。ラジオネーム「一応努力はしてみたのだが、御伽アリスに興味が全く持てない」さんからのおハガキ。「タコライスってあの八本足のタコが入ってるわけじゃないんですね!」という内容。うん、僕と何の関係もないし、そもそも質問ですらないですね。はい、タコライスのタコはタコスの具が入っているというところからの命名みたいですね。また一つ賢くなって良かったですね(笑)
はい、これからもリスナーの皆さんからのご質問をお待ちしてます! どしどしお送りください!(今回紹介したハガキの内容は架空のものです。そもそも本当にハガキを送られても多分困ります。ラジオ番組という形式なのでやってみただけです。ご了承ください。そして今後もご了承しててください)

さて、こんな感じで御伽ラジオをドッカンドッカンとお送りしていきたいなと思います。いつ放送打ち切りになるか分かりませんが続くと良いですね……。
と、いうところで今日はそろそろお別れの時間です。ではまたお会いしましょう。バイバイ!

最終更新:2014年03月17日 19:34