女王陛下ゲーム(お題「女王陛下」)

2013年07月14日(日) 22:44-御伽アリス


女の子は誰しも、お姫様に憧れる。……などというのは幻想だ。

ある女の子は言った。
「私は、女王陛下になりたいの」


***

はーい、私は今、県内のとある女子高校の校門前にいま~す! この高校ではぁ、心が病んだり荒れ果てたりしている近年の少女たちに、マトモな人間関係の構築をさせるため、とってもユニークな教育をしているんだそうですよ! 今日はその実態を調査するために、突撃取材したいと思いま~す。うふふふっ。ではさっそく、校舎の中にお邪魔しましょう!

さて、この教室では今、朝のホームルームが行われているようです。その様子をちょっと覗いて見ます!
「これから朝のお仕置きを始めます。ではまず下女の皆さんは前に出てください。次に、女王陛下の皆さんも前にお越しください。さて、では女王陛下は、お手持ちのお仕置きカードで下女たちにお仕置きをしてください」
おっと、いきなりお仕置きが始まったようですね~。あちゃ、こりゃ思ったよりかなりエゲツナイお仕置きですよ、あはは!
そう、この高校のユニークな教育とはこの、お仕置き制度なんです。学校の中ではこれを「女王陛下ゲーム」と呼んでいるそうですねぇ。さてこの制度には、とってもうまいことできた仕組みがあるんですが、まずはそれをフリップでご紹介することにしましょー!!

まず、この高校の一学年の生徒数は二百五十六人です。一か月に一度の学年集会において行われるくじ引きにより、この二百五十六人にはそれぞれ「身分」が与えられます。「身分」には具体的に、「女王陛下」、「王女」、「下女」、「下の下女」、「一般」などがありますが、同時にこれらすべての身分が存在することはないそうです。
えっとぉ、とりあえず、そのくじ引きの方法を紹介しますね。生徒の二百五十六人は順番に箱の中から小さな紙切れを一枚選び取ります。それには例えば【12,五】などといった二つの数字が書かれています。左側は算用数字、右側は漢数字ですね。さてくじを引いたら、生徒たちは十六人カケル十六列の形に整列します。このとき、先に引いたくじの番号が自分の位置を示します。例えば【12,五】ならば、左から十二人目、前から五列目という位置に並ぶことになります。
んで、こっからが重要です。生徒たちの整列の位置には意味があります。その位置によって、その先一か月の自らの「身分」が決定するんです。下の(1)を見てください。

(1)
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下

ここには、十六カケル十六の文字が書かれてますね。この一字一字の上に、二百五十六人の生徒が一人ずつ立つと思ってください。で、どこに並ぶ生徒がどの身分なのか、が気になる所だと思います。ドドンと発表しちゃいます。この(1)の場合、「陛」の字の位置の生徒は「女王陛下」になります。これは六十四人ですね。そしてもう一つ。図の中で「下」と「女」が左右隣同士になって、パッと見では「下女」に見える所が四十八か所ありますね。こうなってる所の「下」と「女」の位置になった生徒九十六人は、「下女」の身分です。それ以外の位置になった残りの九十六人の生徒たちは「一般」の身分となります。
はい、これでだいたい身分決定法はお分かりになったと思いますけど、この(1)以外のパターンもあるんですね。それが(2)と(3)です。これらは(1)よりやや複雑です。

(2)
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女

(3)
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛
女王陛下女王陛下女王陛下女王陛下
王陛下女王陛下女王陛下女王陛下女
陛下女王陛下女王陛下女王陛下女王
下女王陛下女王陛下女王陛下女王陛

(2)の場合、「陛」の字の位置になった生徒が「女王陛下」であることに変わりはないです。従って「女王陛下」は六十四人。次に(1)と同じく「下」と「女」が隣同士になっている所ではその「下」と「女」の位置の生徒は「下女」です。これが百二十人ですね。そして次が(1)にはなかった点。(2)の図を見ると、上下で「王」と「女」が隣り合って、パッと見では「王女」に見える所が六十か所あります。こうなってる所の「王」の字の位置になった生徒は「王女」の身分になります。「女」じゃなくて、「王」の位置の生徒だけですよ? だから「王女」の身分は六十人です。あと残りは十二人しかいませんが、これらは「一般」の生徒です。
そして最後に(3)の場合です。これが少し複雑です。(1)や(2)と同様に、「陛」の字の位置の生徒は「女王陛下」です。これが六十四人。そして(3)の図を見ると、「下」と「女」が左右隣同士の所と、上下に隣同士の所、両方があります。しかも左右に隣同士の「下女」と上下に隣同士の「下女」が重なり合って、もう訳が分からないくらいの「下女」ラッシュですね。このとき、左右の「下女」と上下の「下女」の両方に関わる「下」あるいは「女」の字の位置の生徒は、「下の下女」という身分になります。えっとぉ、分かりやすく言うとぉ、左右隣同士の「下女」の要素にもなり、同時に上下隣同士の「下女」の要素にもなっている「下」あるいは「女」の位置の生徒が「下の下女」なんです。んで、左右か上下どちらか一方の「下女」の要素にしかなってない「下」あるいは「女」の字の位置の生徒はただの「下女」身分となります。……あれ、自分で言ってても分かりにくいですねこれは。だからつまりそのえっと要するにすなわち、図を見てください。例えば左から五人目で前から一列目つまり最前列の【5,一】の「女」の字は、左右で「下女」を作る要素となってはいますけど、上下で「下女」の並びを作る要素にはなってねえだろうがっ! だから【5,一】の「女」の字の位置になった生徒はただの「下女」身分です。しかし【4,一】の「下」の字は左右でも上下でも「下女」の並びを作る要素になってますから、この位置になった生徒は「下の下女」身分になります。さてそうすると、(3)の場合「下女」の身分になるのが十四人、「下の下女」身分が百十三人ですね。で、残りの「一般」身分が六十五人です。もしかしたら数え間違えてるかもしれねえが、まあ身分の決定の仕方は分かったでしょうから良いですよね。疑うんだったらてめえら自分で数えろや!
ところどころ、私のキャラが変わってしまった感もありましたが、これで「女王陛下ゲーム」の地盤となる、生徒の身分については分かって頂けましたね。

さぁて、「女王陛下ゲーム」が面白いのはここからですよ! ここまで説明してきたように生徒たちには一か月の期限付きで身分が付与されているわけですが、この身分によって生徒たちはお仕置きする側とお仕置きされる側に分けられます。それぞれの身分間の関係は次のフリップにまとめてあります。

・「女王陛下」→「王女」(LV.1)
→「下女」(LV.2まで)
→「下の下女」(LV.3まで)
・「王女」→「女王陛下」(防御)
→「下女」(LV.1)
・「下女」→「下の下女」(LV.1)
・「下の下女」はお仕置きを受けるのみ
・「一般」はお仕置きに関わらず、見てるだけ

「女王陛下」は「王女」に対してLV.1のお仕置きができます。「下女」に対してはLV.2までのお仕置き、つまりLV.1かLV.2のお仕置きが可能です。もしLV.1のお仕置きなら、同時に二つまでできます。そして「下の下女」に対しては最高レベルのLV.3までお仕置き可能です。LV.1なら三つまで可能ですし、LV.1とLV.2の組み合わせもありです。
「王女」は「下女」に対してLV.1のお仕置きができます。さらに、「王女」は「女王陛下」からお仕置きを受けそうになったとき、それを防御できる場合があります。それについては後で補足説明しますね。ちなみに、「王女」と「下の下女」が同時に存在することは今のところないそうなので、その場合のルールは書いてありません。
「下女」は「下の下女」に対してLV.1のお仕置きができます。
「下の下女」は「女王陛下」、「下女」からのお仕置きを受けるだけの身分です。
最後に「一般」ですが、これはただ見てるだけの身分です。誰かにお仕置きをすることも、されることもありません。
さてここで、さっきから言ってるお仕置きのレベルとは何なのか、気になりますよね? もちろんそれも調べましたよ! この高校の生徒たちは皆、「お仕置きカード」という小さなカードを持っています。このカードにはお仕置きの内容が書かれています。誰かにお仕置きをする際には、自分の持っている「お仕置きカード」の中からですね、一枚を選んで提示しまして、そのカードに書かれた内容に従ってお仕置きを実行します。カードにはお仕置きの内容とともに、そのお仕置きのレベルも書かれています。過激なお仕置きほどレベルが高くなるわけですね、はい。
「お仕置きカード」を提示されたら、お仕置きされる側は黙ってお仕置きされなければなりません。そういうルールです。ただし先にも少し言いましたけど、「女王陛下」から「王女」にお仕置きがされる場合だけは例外があります。このとき、「女王陛下」の提示したカードと同じカードを「王女」が持っている場合、それを提示することで「王女」はお仕置きを免れることができます。まあ持っていても必ず出さなければいけないわけではないそうです。お仕置きを受けたい場合は何もせずにお仕置きされます。
「お仕置きカード」は消耗品です。一度提示したらそのカードはスタンプが押されて、スタンプの付いたカードはもう使えません。あと補足ですが、「お仕置きカード」は、一枚につき一人の生徒にしかお仕置きをすることができないそうです。大勢の子たちにお仕置きするには、数多くのカードを持っている必要があり、それで生徒たちは皆カード集めに熱中するんですね!
この「お仕置きカード」ですけど、生徒たちはどこで手に入れてるのか。その答えは校舎の中央棟一階にありました。そこには購買部の売店があって、そこで「お仕置きカード」は十枚ひとパックで百円(税抜)で販売してます。これ、さっき私も買ってみたんですが、結構面白いですね。例えばこんなカードが入ってます。「平手打ち(LV.1):相手の顔を思いっ切り平手打ちする」とか、「鼻コチョコチョの刑(LV.1):ティッシュをねじって尖らせ、相手の鼻の穴に入れ、くすぐることでくしゃみさせる」とかですね、あと「雑巾顔拭き(LV.1):掃除ロッカーの汚い雑巾で相手の顔を綺麗にしてあげる」とか、「なりきり! 美容師さん(LV.2):相手の髪を自由にカットする」、「なりきり! カメラマン(LV.2):相手の全裸写真を撮影する」、「化学実験(LV.2):相手の腕に希塩酸を垂らす」など。生徒さんに聞き込みしたところ、LV.3のカードは超レアで、滅多に出ないそうです。
さらに面白いのはここからです。この「お仕置きカード」は購買部において合成ができます。複数のカードを掛け合わせることで、パワーアップした、より高度なお仕置きのできるカードを生み出せるようです。合成の結果どんなカードができるかはやってみないと分からないらしく、このドキドキ感が生徒たちの心を捕らえているそうです。合成でしか生まれないカードもあるそうで、合成サービスの利用者は大勢いるとのこと。ちなみに合成は一回で三百円(税抜)だそうです。私もためしに合成してもらいました。「平手打ち(LV.1)」と「鼻コチョコチョの刑(LV.1)」を合成したら、「お化粧(LV.1):相手のお顔を油性ペンで自由にメイクしたげる」ができました。
その他にも、生徒たちの間では「お仕置きカード」のトレードも盛んに行なわれていて、すごい盛り上がりです。お仕置きの時間は、朝・昼休み・夕方と、一日三回設けられていて、毎回クラスで大いに盛り上がります! お仕置きに熱中する彼女たちの顔はどれも輝いていて、そしてカードを使った友達とのつながりもあり、といったように素晴らしい思い出と温かな人間関係を築き上げている彼女たちです。この学校ではこの「女王陛下ゲーム」の制度を始めてからというもの、いわゆる「イジメ」というものがまったくないそうですよ。すごいですね!
今日はですね、校長先生が何か問題を起こして謹慎中とのことですので、副校長先生に来ていただきました~! こんにちは!
「こんにちわっしょいですどりゃあ」
はい、「女王陛下ゲーム」は大盛り上がりのようですね!
「ええ、我々は長い間、教育の現場における問題を改善しようと努力してきました。そして試行錯誤の果てにようやくたどり着いたのが現在の状況です。カードの売り上げで学校の収入は増加。それをこっそりちょろまかして、私らもウハウハですよまったく。多分、学校の設備とかの充実にも役立ってる……んじゃないかなあ。まあそのへんよく分かりませんわ、ウハハ! で、保護者の方々にもご理解いただき、ご支援を賜っております。学校に関わる全ての人々の協力で成功しているシステムですから、感謝しておりますどりゃどりゃ」
生徒たちの声も聞いてみたいと思います。え~、「女王陛下ゲーム」についてどう思っていますか?
「とても良い制度だと思います。他の人にお仕置きをするのはすごく気分が良いですし、嫌いな子が酷い目に遭わされているのを見るだけでも胸がスッとします。もし自分がお仕置きされる立場になったとしても、それは一か月の間です。それを我慢して次の身分替えで女王陛下になれたら、思う存分仕返しできます。それを考えるだけで、どんなお仕置きにも耐えられます」
「イジメじゃなくて、お仕置きだから良いんです。皆が受け入れている制度だから、うまくいくし、それに何より楽しいんです。私は前いた学校でイジメを受けてました。それでこの高校に転校してきたんですが、今はとても居心地が良くて、本当に幸せです。この学校に初めて来てお仕置きを見た人はビックリするかもしれませんけど、生徒たちは皆、普段は本当に仲が良いんですよ。学校が運営しているこのゲームのおかげです!」

はーい、ということでぇ、とってもユニークな方法で生徒たちの良い人間関係作りを実現している、とある女子高校からの中継でした~。


「ねえ、三組で今、LV.3出たって!」
「マジでっ? 早く見に行こ!」

「このカードでお願いします」
「はい、ではお仕置きを開始してください」
「ふふふ、いくよ」
「え……い、いや! や、やめ、うあ! お、おねがい! わ、は、やめてっ! た、す、ああぁっ!! うっ、ぐっ、えぐ、ぶっ、たっ……たすけ! きゃあ! ンあっ! し、ん、ぎゃあっ、うぐぁ! しん、じゃ、う! し……あ、わ、ッ!」

「今まで見たので一番ハードなお仕置きだったね」
「うん、すごかったよね~」
「延々とアレし続けるのって、ある意味かなりキツイだろうからなぁ……」
「あ~、早く私も女王陛下になりたい~!」
「と言うかあんたさ、前のくじ引きで「陛」の位置だったんじゃないの?」
「うん、そうだと思ったんだよ私も。でもね、よく見たら「陛」じゃなくて「階」でね……。ひどくない?」
「えぇ~、女王階下って何だよそれ~」
「くっ、う、ウケる!」
「笑い事じゃないよ、まったく~!」


***

ある女の子が言った。
「女王陛下は偉い人のはずなのに、どうして文字に“下”が入っているのかしらね? 変なの。ふふ、うふふふ……」


(おしまい)

※この作品はフィクションです。作品中の内容は何らの事実にも基づいたものではありません。

 


この作品の「御伽度数」は40%くらいですか?
知らねえよ、もう。

大衆小説じゃなく、「下」衆小説です。ほらだって、女王陛「下」ですし。
作品に関して、ごめんなさいとは言いたくない。だって別に、ごめんなさくないし。
しかし、すみませんと言っても過言ではない。

最終更新:2014年03月17日 19:38