2013年07月26日(金) 01:34-弥田
部屋の底にまひるが沈殿する
まひるはこがね色に輝いて
私の部屋の底に 泥のように沈殿する
見た目こそきれいでも その強い匂いにはむせこんでしまう
飛び込んでしまえば あまく くるしく
溺れて息も吸うことができない
こっそり部屋を横切っていた ありたちの死骸が
こがね色の海をぷかぷかとたゆたっている
ほしくずのように
※
まひるは夏の熱気にあてられてしまったようだ
発酵して もしくは 熟れて
じゅくじゅくと汁を垂れ流しはじめた
匂いはますます濃くなって かげばくらくら視界が揺れる
腐れたリンゴジュースを想像してくれると
すこしだけ理解してもらえるかも
発酵する日光からは 生命が次から次へと湧いてでる
またたくまもなく 部屋はちみもうりょうで埋め尽くされた
なれしたしんだものからよくわからないものまで
おびただしい生命の氾濫
あかいきんぎょがまひるをおよいで
はしゃいで話しかけてくる
やけに楽しげであやしく思うと
どうやらこんこんと酔っぱらっているようす
酒のでどころを問えば
なんということだろう
発酵した日光は良質な酒になるのだと!
それからきんぎょと ちみもうりょうと
たのしくまひるを酌みかわし
うららかな午後の茶会としゃれこんだ
※
さて まひるから ほろ酔いかげんの私をたずね
綾波レイがやってきた
かのじょは私のきんぎょをゆびさし
「あいらしいね」とほほえんで
あかいひとみにうつりこむ
あかいきんぎょがほしいだなんて わがままばかり
※
ちみもうりょうはそのかずを増しつづける
ついには溢れてしまったかれらは
あかるい都市へと行進をはじめた
パレードのスローガンはもちろん
「死んだ有機物から
生きているちみもうりょうへ!」
にわかのお祭りきぶんに私も興奮してしまい
祝砲がわりにピストルをいっぱつ 空へとぶっぱなす
穴のあいてしまった空からは ふきだすように宇宙が
すきとおった うつくしい宇宙が
われわれにふりそそぐのだった
うかれた熱気はそのつめたさにもまけることなく
もはやパレードはとどまることすらわすれて
行進はおわらない
都市へ! 都市へ!
※
けっきょく部屋にはふたりがのこった
私ときんぎょだけがのこった
しばらくふたりでちびちびやって
それから それから
どういうわけか きんぎょには
キミのおもかげがかさなる
のであります
私にはそれがたまらない
のであります
※
とある夏の晴れた日の
けだるい真昼のことだった
おひさしぶりです。小説でもないような詩でもないような、コウモリみたいなやつですが、よろしくおねがいします。