真昼のこと

2013年07月26日(金) 01:34-弥田

部屋の底にまひるが沈殿する
まひるはこがね色に輝いて
私の部屋の底に 泥のように沈殿する
見た目こそきれいでも その強い匂いにはむせこんでしまう
飛び込んでしまえば あまく くるしく
溺れて息も吸うことができない
こっそり部屋を横切っていた ありたちの死骸が
こがね色の海をぷかぷかとたゆたっている
ほしくずのように

まひるは夏の熱気にあてられてしまったようだ
発酵して もしくは 熟れて
じゅくじゅくと汁を垂れ流しはじめた
匂いはますます濃くなって かげばくらくら視界が揺れる
腐れたリンゴジュースを想像してくれると
すこしだけ理解してもらえるかも
発酵する日光からは 生命が次から次へと湧いてでる
またたくまもなく 部屋はちみもうりょうで埋め尽くされた
なれしたしんだものからよくわからないものまで
おびただしい生命の氾濫
あかいきんぎょがまひるをおよいで
はしゃいで話しかけてくる
やけに楽しげであやしく思うと
どうやらこんこんと酔っぱらっているようす
酒のでどころを問えば
なんということだろう
発酵した日光は良質な酒になるのだと!
それからきんぎょと ちみもうりょうと
たのしくまひるを酌みかわし
うららかな午後の茶会としゃれこんだ

さて まひるから ほろ酔いかげんの私をたずね
綾波レイがやってきた
かのじょは私のきんぎょをゆびさし
「あいらしいね」とほほえんで
あかいひとみにうつりこむ
あかいきんぎょがほしいだなんて わがままばかり

ちみもうりょうはそのかずを増しつづける
ついには溢れてしまったかれらは
あかるい都市へと行進をはじめた
パレードのスローガンはもちろん
「死んだ有機物から
生きているちみもうりょうへ!」
にわかのお祭りきぶんに私も興奮してしまい
祝砲がわりにピストルをいっぱつ 空へとぶっぱなす
穴のあいてしまった空からは ふきだすように宇宙が
すきとおった うつくしい宇宙が
われわれにふりそそぐのだった
うかれた熱気はそのつめたさにもまけることなく
もはやパレードはとどまることすらわすれて
行進はおわらない
都市へ! 都市へ!

けっきょく部屋にはふたりがのこった
私ときんぎょだけがのこった
しばらくふたりでちびちびやって
それから それから

どういうわけか きんぎょには
キミのおもかげがかさなる
のであります
私にはそれがたまらない
のであります

とある夏の晴れた日の
けだるい真昼のことだった

 

 


おひさしぶりです。小説でもないような詩でもないような、コウモリみたいなやつですが、よろしくおねがいします。

最終更新:2014年03月17日 19:39