アリスとキャロル(リレー)

2013年09月20日(金) 15:54-御伽アリス


執筆順:斉藤→御伽→九条→安住→三水→斉藤→(以下続く)


「ひょっとしたら、そうかもしれないわ」
少女、アリスは喫茶店でつぶやいた。陰鬱な顔してコーヒーをすする。
「何を言っているんだ? 君は」
目の前の青年キャロルはブラックコーヒーをすする。
「大変なことよ。生きていくために、大切なこと。……ねえ」
「なんだい?」
「あなた、きもちわるいわ」
「知ってる」
キャロルは罵られたにもかかわらず、すずしい顔だ。少女は砂糖のたくさん入ったコーヒーをキャロルの顔にぶっかけた。
「甘い。この展開は甘いよ。かわいい女の子に砂糖の入ったコーヒーをぶっかけられるとはね。いや、実に甘い」
キャロルはいやらしい笑みを浮かべる。
「きもちわるいっつーかさあ、マジでキモいんだよお前。近付くんじゃねェよ」
キャロルはそのいやらしい笑みを崩さない。しかし、その顔からはかけられたコーヒーが茶色く滴っている。
「私の目の前から消えてくれる?」
「うん、まあ、それも良いんだけど。何がそうなのかを聞くまでは帰りたくないかな。」
語尾にハートマークをつける勢いで、キャロルは首を傾げた。コーヒーが飛び散る。
「あなたに教える筋合いはないわ」アリスがそっぽを向く。
「それより、早くコーヒーふいて、キモい」
「いや、せっかくの君からの贈りものだ、ふくわけにはいかないね」
「だから、そういうところがきもいって言ってんのよ。社会不適合者」
「異常性癖と言ってほしいなあ」
キャロルはあくまでにこやかだ。アリスはというと、かわいいドレスをゆらしながら立ち上がった。
「そうね、やっぱりそうかもしれない。」
「金はぼくが払っておくよ」
「あたり前でしょ?」
2人はレジに向かう。「お勘定、お願いします」とキャロルが言う。
「19,800円になりま~す」「高っ!!」
キャロルは泣く泣くお金を払う。しょっぱい涙がどばどば飛び散る。
「これ払ったんだからさ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない? 何がそうなんだい? 僕の異常性癖について? それとも僕と君との間の甘い可能性について?」
「ばかね、そうじゃないのよ。私が言ってるのは、殺意が沸くほど素敵な友人を持つことも大切よねって言ってるの。」
「なんで?」
「その方が楽しいからよ」そう言ったアリスは、今日初めて笑みを浮かべた。
アリスがキャロルを置いて店を立ち去る。キャロルの被ったコーヒーはもうすでにつめたく冷めていた。

 

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ルーズリーフ片面1枚でピッタリ物語を完結させるリレー小説です。今回は1ターンの持ち時間3分でした。最初の一文は文庫本から無作為に引用。

最終更新:2014年03月17日 19:43