※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「振り回される」「疲れる」という感覚が必ずしも不快なものでないということを、日向 創はジャバウォック島に来て初めて知った。
天真爛漫にして天衣無縫、自らの興味の赴くまま行動しそれを楽しむことを至上とする「超高校級の軽音楽部」、澪田 唯吹と交流を持つことで、彼は幼かった頃のような、余計なことを考えず無心に楽しむことの素晴らしさを思い出したのだ。
しかし無心とはいっても、そこは健全な男子高校生。
可愛い女の子と毎日一緒に遊んでいたら、子どもじみた友情を超えた、なにかもっと熱くて暗い情動が沸き起こるのは不思議でも何でもない。
派手な服装や突飛な言動のせいで今ひとつ認知されていない感はあれど、澪田 唯吹はあれでかなりの美形である。
釣り気味の大きな目や白く輝く歯、くるくるとめまぐるしく変わる表情などが、口元のピアスやメッシュの入ったヴィヴィッドな髪色、大きなツノのような髪飾りと不思議に調和し、彼女の魅力を大いに増幅していた。
彼は日に日に、そんな澪田を独占したくなっていったのだ。


「……で、それでなんで俺のところに来るんだよ」
「すまん。でもお前くらいしか、俺には頼れる相手がいないんだ」

かつて義兄弟の盃を交わし合ったコテージで、日向と九頭竜 冬彦は向かい合っていた。
わざわざ話があるからと声を掛けられて、いかにも高校生的な、平凡な恋愛相談を持ちかけられた九頭竜はなんとも言えない渋い表情をしていた。

「まったく、仕方ねえな……ま、お前の言うことだから、聞くだけは聞いてやるけどよ」
「ありがとう。実は、澪田のことなんだけど」

日向は事情を説明した。
ここのところずっといっしょに居る澪田と、どうにかしてもっと親密な間柄になりたいということ。
しかしその澪田は恋愛事に免疫をまったく持っていないらしく、ラブストーリーの映画を見せようとしただけで言葉を失い、凍り付くような人間であるということ。
遊びに行った帰り、手をつないでくれたりもするのだが、その気さくさがかえって二人の間の関係を「友人」と定めているようで、辛いということ。
ただ単に色恋に無知なのではなく、何か思い過去を背負っていそうで、迂闊に手出しできないということ。
その辺りのことを聞き終えた九頭竜は俯いた。

「ま、事情は分かった。
 それでお前はどうしたいんだ? 澪田と恋人同士になりたいのか?」
「そうだよ。なんとかあいつに俺のことを、男として見て欲しいんだ」
「だったら、そう言う風に思ってるんだってことを伝えるしか無いだろ。
 下手打って女を逃したくないって気持ちは分かるがな、お前、そんな煮え切らない感じでズルズルいって、
この修学旅行が終わっちまったらどうする気だよ?」
「終わったら……?」
「今は、なんか知らんがこの島で、俺らだけで暮らしてるから、
そりゃあお前が澪田と遊びたいと思った時にはだいたいいつでも遊べるさ。
でもここを出ちまったら、なかなかそう上手くはいかねーぞ。
お互い色々、都合ってもんが出てくるだろうからな。
人口密度の低いこの島にいる間に、さっさと決めちまったほうがいいんじゃねーか?」
「で、でも……」
「澪田の方にも事情はあるのかも知んねーけどよ、ここは南国の島だ。
 俺らみんな、今までの人生とは関わりのねえ世界に暮らしてんだよ。
 むしろ、過去のしがらみのねえ今こそ絶好のチャンスだと俺は思うね。
 言いたいことがあるなら今のうちに、バシッと言っちまいな」
「な、なるほど……」

極道らしい割り切った意見を聞かされて感服していた日向だったが、
一方で意見を言った九頭龍自身も、なにかはっとしたような表情をしていた。

「しがらみ……? へっ、そうかよ。そうだよなぁ、考えてみれば。
 ったく……自分のことも気づかず偉そうなこと言って、バカみてーだな」
「へ? 今、何か……」
「いやいやなんでもねーよ。とにかく俺からは、そんだけだ。
 大して役に立たねー意見だが」
「いや、そんなこと無いよ。凄く勇気づけられた。
 今からちょっと澪田のところへ行ってくる」
「そうか。ま、頑張りな。俺もせいぜい、気張るからよぉ。
 ……ありがとうな、日向」
「礼を言うのは俺の方だろ。なんで九頭龍が」
「お前は気にしなくていーんだよ。さっさと言って、一発決めてきやがれ」

どこか悟ったような目付きの九頭龍を背に、焚き付けられた日向は鉄砲玉のように飛び出していった。

声が大きくて派手な格好の澪田はこの島においても大変良く目立つ。
アテもなく歩いていた日向はすぐに彼女を発見できた。

「おーっす創ちゃん! 唯吹と一緒に遊ばないっすか?」
「ああ、いいよ。遊園地でも行こうか」
「やーった、ボーイハント成功っすよぉ。うしししっ」

鋭い目付きの日向と、いつも通り明るく元気な澪田。
二人は連れ立って、おそらく今日も貸切状態になっているであろう遊園地へ歩んでいった。

ジェットコースターに乗ったりして、今日も疲れ果てるまで遊び倒した二人。
思う存分遊べてすこぶる機嫌の良い澪田が、ちょっと高揚した声で言った。

「今日も創ちゃんと遊べてすっごい楽しかったっす!
 しかもなんかちょっと、イイ雰囲気かもしちゃったりなんかして……ぐふふ。
 次回はどこに行くっすか?今から楽しみにしてるっすよ~!
 それじゃ、ホテルまでお手々繋いで一緒に帰るっす!」
「なあ、澪田」

邪気の無い澪田と遊んでしまったことで当初の目的を忘れかけていた日向だったが、
今日この日を逃せば気持ちが萎えて、きっと何も言い出せなくなるであろうことは彼も直感的に知っていた。
彼女の柔らかい手を握ったことで再び沸き上がってきた情熱に駆り立てられるまま、日向は言った。

「なあ。澪田は、俺と一緒にいて楽しいか?」
「へ? そりゃあ、すっごい楽しいっすよ~!
 なんてったって創ちゃんは唯吹のバンドメンバーっすからね!
 一心同体、異体同心、われら生まれたとき違えども願わくば同年同月同日に死なん……って感じ?」
「そうか。ありがとうな」

いつになく神妙な日向の様子に澪田の表情が少し強張る。まるでこれから放たれる言葉を予期しているかのように。
日向の放った言葉は定石を少し外れていた。
それが激しすぎる情熱のゆえか、それとも成功率を上げたいという冷静な計算によるものかは、彼自身にもはっきりしていなかったが。

「澪田。お前にキスしたいんだ。……いいか?」

一瞬硬直した後、ものすごい勢いで首を横に振りながら澪田が言う。

「ええええ、な、な、なんでそういうことになるんっすか!
 だめだめだめ、唯吹と創ちゃんはそういう関係じゃないっすよ!」
「驚かせて、すまん。でも俺はどうしても澪田とキスしたいんだ。どうしても、だめか?」

握った手を離さないように少し力を加えながら日向は更に押す。
興奮のあまり自分が何を言っているのかも分からなくなりかけていたが、
それでも今退いたら全てが台無しだということは理解していた。


「だだだだって、そういうのは、その、恋人同士……? で、やるもんっすよ!
 創ちゃんは、唯吹の恋人なんかじゃないっしょ!」
「そんなことない。外国じゃ、家族や友だちの間でも普通によくキスするって聞くぞ」
「うぅぅぅ~……普段はもっとこうおとなしい感じなのに、どうして唯吹にだけそんなアグレッシヴなんすかぁ!」
「澪田が可愛いからだよ。澪田と一緒にいると俺も楽しいから、だから……」
「ぐわああああ! もうやめるっす、恥ずかしいっす!」
「じゃあキスさせてくれるか?」
「ああもう、分かった、分かりました! その代わり、一回だけっすからね!」
「ありがとう」

観念したらしい澪田は、強く両眼を閉じて日向の方へ歩み寄った。

二人の身長差を埋めるためにちょっと爪先立ちした仕草が愛しすぎて、彼自身思っても見なかったほど情熱的にキスしてしまった。
ツンと微かに尖らされた澪田の唇に自身のそれを合わせる。
ぷるんと潤った健康的なリップを舌先で舐めると、我に返ったように澪田が身体を離した。

「……ってぇー! 何してんすかぁ!」
「何って……キスだけど」
「そうじゃなくて! 唇にするなんて、聞いてないっすよ! 額とか、ほっぺだと思ってたのに……!」

抗議するような口ぶりだが、しかし澪田は日向から逃げたり逆襲してきたりする素振りは見せない。
なんだかんだ言いつつ、それでもまだ手を繋いだままな彼女への愛情はますます増大していった。

「驚かせてごめん。でも、キスって行ったら普通ああいうのだろ?」
「知らないっすよ! もう、創ちゃんのバカ! 肉食系!」
「肉食系って言われたのは生まれて初めてだな……」

声高に言い争いながらも、二人はいつも通り、各々のコテージ前まで一緒に帰っていった。

翌日。自由時間を迎えた日向は再び澪田に会いに行った。
暇そうにしている彼女に声をかけると、最初はひどく嬉しそうな、しかしその後、少し警戒するような顔を見せた。

「またどっか、二人で行かないか?」
「……いいっすよ」

唇を尖らせながらも着いて来てくれる彼女はとても可愛くて、とても他人に渡すなんてできそうもなかった。
最初こそ渋い顔でいたものの、砂浜へ行って二人、水着に裸足で駆け回っていると澪田の表情はどんどん明るくなっていき、
夕暮れにはもういつもの、一切の邪気を感じさせない笑みを浮かべていた。
もうそろそろ帰ろうかという時、日向は切り出した。

「なあ澪田。今日も俺と、キスしてくれないか?」
「うぅ~っ、やっぱりっすかぁ……まあなんとなくそんな気はしてましたけどねー……」
「イヤなのか? だったら、別に……」
「あーもー、いいっすよ、やりますよ。一度も二度もおんなじだし……
 創ちゃんは唯吹の大事なバンドメンバーっすからね、しょうがないっすよ!」

ヤケクソ気味な彼女の振る舞いに少し気圧されたが、澪田の気質から言って、
もし本当に嫌ならそうだとはっきり言ってくれることだろう。
背中を押してくれた九頭竜に心のなかで感謝していると、澪田は立ち上がり、辺りを見回し始めた。

「どうしたんだ?」
「大きな岩か何か……隠れる場所が無いかなって」
「隠れる……? 昨日は遊園地の真ん前でしたじゃないか」
「あ、あれは創ちゃんがいきなり、ちゅーしたいなんて言い出したから……!
 ダメだよ、あんな、コーキョーの場で!
 ああもう恥ずかしいぃー!」

ブツブツ文句を言いながら二人が見つけ出した岩陰。
道路の方からは死角になって見えないその場所で、日向と澪田は唇を重ねた。
紺色のスクール水着は、海水に浸されて一層その色を深くしている。
大岩に夕陽を遮られた、ちょっと薄暗い場所では濡れた水着がどこか魅惑的で、そのツヤはいっそ退廃的ですらある。
恋うる女がそんな官能的な出で立ちでいるのに、キスだけで済まさなければならないのは、日向にとって大変苦痛だった。
しかし本質的に冷静な彼は、今までの澪田の様子から必要以上に押すことの危険性を感じ取っていた。
無謀と勇気が違うのと同じく、愛することと貪ることもまた別のもの。
目を閉じて、舌先を微かに唇の間から出し、唇の表面をそっと舐めてくる澪田は、
こいつを絶対に失いたくないと思わせるほどに魅力的だった。
強く抱きしめて、舌を口の中へ割り入れて粘膜をしゃぶり合いたい。
小ぶりな胸とむちむちしたフトモモの感触を味わいながら舌を絡ませあって行けるとこまで行ってみたい。
その凶悪な衝動を、岩を握りしめることで無理やり押さえ込んだ。


そんな感じで、毎日澪田と遊び、帰り際に軽いキスをしてそれぞれのコテージへ帰る、という生活を続けたしばらく後。
課題達成のため無理をした日向がダウン。三日間の休養を余儀なくされた。
澪田と少しでも長く一緒に居るため、ウサミの課す課題を達成しておでかけチケットを入手するため、
なんとか素材を入手しようとロクに休憩も取らずに山へ分け入っての採取を強行したのだ。
その甲斐あってどうにか指定された品物は完成させられたものの、肝心の日向が倒れてしまっては遊ぶどころの話ではない。
焦る余りに澪田と過ごせる貴重な時間を無駄にしてしまった自分の愚かさは悔やんでも悔やみ切れないほどだったが、もう遅い。
回復するまでコテージでおとなしくしていることにした。

丸二日間身体を休め、明日には復帰できるだろうと思えるくらいにまで回復したころ、コテージの戸を叩く者がある。
鍵を開けて来訪者を迎え入れてみると、果たしてそれは澪田だった。

「こんちゃーっす……ええと、その、……身体の方はもう、大丈夫なんっすか?」
「ああ、2日も休んだだけあって、ほとんど治りかけだよ。明日には復帰できる」
「それは良かったっすよー。もう、心配したんすから」
「はは、悪かったよ。……ところで、それは?」

取っ手と蓋のついた、アルミ製の平凡な鍋を澪田は持っていた。
微かに醤油のいい匂いがすることから、中には何か料理が入っているらしいことが分かる。

「いや、これは……へへ、その、差し入れを……」
「おお、ありがとう。早速頂くよ」

鍋を渡してそのまま帰るのかと思いきや、手ぶらになった澪田はその場を立ち去り難そうにもじもじしている。
ちらちらと、何かを訴えかけるような上目遣いの視線にやられて、日向は言った。

「じゃあせっかくだし、上がっていくか? 俺も暇してたところだし」
「……! じゃ、じゃあちょっとだけお邪魔するっすよー!」

意気揚々と部屋に入ってくる彼女を見て、日向は二人の距離がぐっと縮まりそうな予感を得ていた。

鍋に入っていたのは肉じゃがだった。
机を出して床に座って食べようとしたのだが、

「創ちゃんは病み上がりだからベッドから出たらダメっす!」

という澪田の強い主張に押し切られ、ベッドに腰掛けて食すことになった。
花瓶を乗せた小さな台が丁度良い感じの高さだったので、これを食卓代わりとした。
日向のすぐ隣、同じベッドに澪田が腰掛けた時にはひどく興奮させられたが、ひとまずは彼女の手料理を頂く。


一口食べて驚いた。
素材が良いのだろうか、料理法や味付けに特に変わった点は見られないにもかかわらず、箸を持つ手が止められないほど美味い。
二日間、軽めのものしか食べていなかったこともあり、鍋いっぱいの肉じゃがと残っていた白飯を瞬く間に食べ尽くしてしまった。

「美味かった。ご馳走様」
「お粗末さまっす!
 しっかし、創ちゃん凄い食べっぷりだったすねー。お腹空いてたんすか?」
「まあそれもあるけど、でもこの肉じゃが、今まで食べた中で一番美味しかったよ。澪田が作ってくれたんだよな?」
「へ!? あー、えー、はい、そうっす……けど……」
「やっぱりか。ありがとうな、こんな良いもん食わせてくれて。澪田は良いお嫁さんになるよ」
「お嫁さん……! 唯吹の事そんな風に言ってくれたの、創ちゃんが初めてっすよ……!」

顔を真っ赤にして照れる澪田の姿はなんだか新鮮で、見ているだけで元気になれそうな気がしてくる。
もっといろいろな顔をした澪田が見たい。
そう日向が思っていると、なぜか正座した澪田が恐る恐る切り出した。

「……と、ところで。こうして二人で会うのも、その……久しぶり、っすね?」
「ん、まあ、2日ぶりか。ほとんど寝てたから、そんなに長い時間経ったような感じはしないんだけどな」
「ええっ!? なにそれ、ずるいっすよ……
 って、そうじゃなくて! 創ちゃん、しばらく唯吹と、ちゅー、してないっすよねぇ……」
「へ? や、確かにそうだけど」

まるでキスを乞うような突然の発言。日向が困惑していると、澪田は更に続けた。

「それで、ですね、ええっと、創ちゃんがどうしてもしたいって言うなら……
 その、唯吹とちゅーしたら元気になれそうだーとか、そう言う風に言うなら、
 唯吹としても創ちゃんのお願いを聞かないでも、ないというか……
 ああーもう! これ難しいっすよ真昼ちゃん! なんなんすかツンデレ風って、無茶苦茶じゃないっすか!」
「み、澪田……?」
「創ちゃん!」

大きな可愛いツリ目を爛々と輝かせて、澪田が日向の顔を見据える。
なぜか少し双眸を潤ませたまま、考える時間を奪うかのように畳み掛けてくる。

「創ちゃんがいない間、すっごく寂しかったっす。 疲れてるのに押しかけて、本当は凄く申し訳ないって思ってる。
 でも、毎日創ちゃんにちゅーされてたせいで、いざされなくなってみるとなんか物足りない気がして……つい、来ちゃったんす。
 だから創ちゃん、もし嫌じゃなかったら、またいつもみたいに唯吹にちゅーして欲しいっすよ……!」


惚れてる女にここまで言われて奮い立たない男はいない。
隣の彼女をベッドに押し倒し、組み伏せるようにして強引に口付けした。
ベッドの上に、仰向けにした澪田の唇を味わいたくて、
今までしてきた軽いキスよりもっと激しく、貪る様に口を吸う。
口元に刺したピアスの少し冷たい感触が生々しくて、もっと奥まで欲しくなる。
駆り立てられるまま舌を彼女の口へ挿し込んでみると、拒まれるどころか澪田の方からも舌を絡め返してきて、
二人はもっともっと深まっていく。
今までの、唇までのキスがサイン愛の象徴だとすれば舌まで使うキスはさしずめ情欲のシンボルか。
しばらく溜め込んでいた分、解き放たれた欲情は激しく、抑えることが出来ない。
こんな風に口を吸い合って口で愛しあってしまったら、普段の生活で澪田の口や舌を見るたび興奮してしまうかもしれない。
「ぺろりん♪」などといって彼女がおどけるたびに、その舌を舐めたくてたまらなくなってしまうかもしれない。
それでも構わないと思ってしまう程、今の日向は熱くなっていた。
疲れマラとでも言うのか、病み上がりで決して本調子ではない日向の身体は、初めての彼女の方からのアプローチで熱く滾る。
眼下の澪田が両手を持ち上げ、覆いかぶさる日向の背中を抱き寄せた。
友人や知人同士なんかでは絶対にしないようなディープキスをしながらも
更に自分を求めてくれる深い愛情に応えるように、日向も澪田の体を抱きしめた。
お互いを強く抱き合ったせいで日向の身体がよろける。
横へ少し回転し、今までの、押し倒す体勢から並んで抱き合う体勢へ移るが、それでも澪田は唇を離そうとしない。
他の女生徒達と比べると格段に小さいおっぱいが日向の胸板に擦りつけられる。
潰れる程の体積も無いそれからブラジャー越しに熱を感じられるような気がして、口づけには更に熱が入る。
日向は澪田以外とこうしてキスした経験は無かった。
そんな自分の拙い舌使いとほとんど同レベルな澪田も、恐らく自分と同じ初心者だろうと想像していた。
そんな若い二人の、荒々しい、欲望優先で技巧に乏しいキスが、却って興奮を煽る。
澪田の薄い胸、すべすべした太もも、何より熱くて貪欲な唇を感じていると、
もうズボンの中が窮屈なほどに勃起してしまう。
興奮していたのは日向だけではないらしく、澪田の方ももどかしげに脚を擦らせ、
まるで股をパンツで刺激しているかのような扇情的な仕草を繰り返している。
延々キスし続けていい加減息が詰まりそうになってやっと二人は唇を離す。
ねっとりした粘度の高い唾が二人の口の間に橋を作り、ベッドシーツを汚した。


「ね、ねえ、創ちゃん……」
「澪田……」
「唯吹、もう、何がなんだか分かんないっすよ……頭ボーっとして、熱くて、創ちゃんのこと以外何にも考えられないっすよ……」
「俺だって……俺、お前が好きだ、他には何にも……」
「だ、だったら、ねえ、創ちゃん……唯吹、今なら創ちゃんのために、できることがあるっすよ……」

ころんと仰向けになり、頬を紅潮させて脚を開く。
いつになく真剣な口調で、喘ぎ声を交えて言った。

「ねえ、創ちゃんは絶対、唯吹のこと裏切らないっすよね……!
 創ちゃんがきっと、唯吹の運命の人なんすよね……!
 創ちゃんは絶対、唯吹のことだけ、見ててくれるんすよね……!
 だったら、いいっすよ……創ちゃんのしたいこと、唯吹にして、いいっすよ……!」

それを聞いて日向の最期の理性が吹き飛んだ。
ズボンと下着を降ろし、澪田のスカートに手を突っ込み、やけにお洒落なパンツを引きずり降ろし右脚から抜き取り、
もどかしさの余り左足に引っ掛けたままにして、股の間に陣取った。
男性器は今まで見たことが無い程大きく、硬くなっている。
凶器然としたそれを見て澪田は息を呑んだが、逃げることも顔を背けることもせず、シーツを両手で掴んだ。
普段の、自由で無邪気な様子からは想像もできない、健気かつ淫蕩な雰囲気に日向の獣欲が解放される。
スカートを腹の方まで捲り上げ、澪田の女性器を晒す。疎らな毛の生えたその割れ目からは少なからぬ液体が漏れ出ており、
ベッドの上で唾を飲ませあったことで興奮していたのは自分だけではなかったのだということを再確認できた。
欲情する余り視界が狭まって澪田以外何も見えなくなりそうな日向は、濡れた陰唇に自分のものを添える。
ぬらぬらした我慢汁を垂らす亀頭を挿し込み、カリ首あたりまで膣に収めると、澪田が息を詰まらせた。
悲鳴にも似た短い呼吸音に、日向は少し理性を取り戻した。欲望のままに押し進めようとしていた腰を留め、下唇を噛んだ澪田に問う。

「ええっと……やっぱり、きついか?」
「そ、そんなことねーっすよ……このくらい、だいじょうぶ……」
「でも、お前」
「いいから! 創ちゃんは唯吹のカラダに溺れてればいいんっすよ!
結構あれで勇気出したのに、途中でやめられたりしたらどんだけ寂しいか……考えてよ!」

手と足の指でシーツを握りしめ、意地でも動かない様相の澪田。
そこまで言われては、もういろいろな意味で止まる訳にはいかない。
じっくりと、ゆっくりと日向は竿を膣へ挿し込んでいく。
余り素早く挿入しないのは澪田の負担を気遣う意味もあったが、それ以上に膣の締まりがきつすぎて挿れにくく、
無理に入れたらすぐに射精してしまいそうな恐れがあったからだ。

奥のほうまで亀頭が達する頃、膣口と竿の隙間から一筋、赤い液体が流れた。
彼女の今までの言動を裏付ける、破瓜の証。
嬉しいような痛ましいような、曰く言いがたい思いに囚われた日向だったが、
精力旺盛な男子高校生の肉体が、彼にのんびりと考えることを許さない。
多めの愛液と先走り液、そして血液によってかなり潤ってきた膣道に抱かれる快感は絶妙で、
どうしても腰を動かしてもっと大きな快楽を貪らずにはいられない。
はぁはぁと息を荒げて、腰を掴んで叩きこむようにして抽送を行った。

「……ひっ、い、ねえ、ハジメ、ちゃん……! どうっすか、唯吹のカラダで、キモチよくなってますか……!」
「ああ……すごいよ。これ、気持ちいい……ぎゅうぎゅうして、でもびしょびしょで……」
「や、そ、そんな、恥ずかしいのダメ……! 禁止、禁止っす!」
「わ、ごめん、でも本当に……」

喉を反らせて、手足に力を込めて澪田は声を抑えている。
しかしピストン運動で責められてどうにも耐えられなくなってきたか、澪田は唇を震わせながら、言った。

「ね、ハジメ、ちゃん。唯吹、このままじゃすんごい大きな声出しちゃいそうだから……ちゅー、して欲しいっす……!
 出したくなったら、そのまま中にしてくれて、いいっすから……!」

断る理由など何一つ無く、日向はそのまま上体を倒して澪田にキスした。
今まで散々してきたことだが、セックスしながらとなるとやはりだいぶ違う。
女の口を貪りながら腰を激しく降っていて、若い男が長保ちするはずもない。
上下でつながっていると下の方の限界がすぐに来た。

「んんんっ……! はふ、ちゅ、ちゅるるっ……!」
「う、はふっ……みお、た、もう……!」

抜けとも離れろとも言わず、澪田は日向を受けいれてくれている。
頭を持ち上げて貪欲にキスしてくる仕草が可愛すぎてもう我慢ならない。
処女への気遣いも忘れかけて、絶頂だけを求めて腰を振り立て、そのまま一番奥に射精してしまった。

「んぅ!? んーん……ちゅっ、るる、るっ……」
「ふう、ふう、う、……!」

子供を作るための液体が処女の子宮を浸す。
二度三度と精が放たれ、膣奥から子宮口へ流れこんでいく。
射精するたびにピクピク跳ねる男性器がまだ緊張の解けない膣肉に締め付けられ、
追い打ちのような快感が精液の最後の一滴まで搾っていった。
純血の血と交じり合って薄桃色になった液体が会陰から漏れでて、酷く卑猥だった。

「はぁ、はぁ、はぁ……
 あー、えー、……唯吹達、とうとうしちゃったんっすね……」
「……後悔、してるのか?」
「なんでそうなるんすか! して良かったに決まってるっすよ!
 だってこうなっちゃったからには、創ちゃんは唯吹のこと絶対捨てないっしょ?
 責任とって、ずっと一緒にいてくれるんっしょ? ちゃーんと聞きましたからね、この耳で!」

びしーっと、なぜか前頭部のツノを指して言う澪田。
いつもの快活さを少し取り戻した彼女の明るさは、自然と日向を笑顔にさせる。

「だからぁ、ね? また唯吹にちゅー、して欲しいっすよ……
 まだじんじんして痛いから、痛くなくなるまでちゅーして、慰めて欲しいっすよ……!」

ここへ来てまさかの、可愛い彼女からのキスのおねだり。
やっぱりこいつでよかった、こいつ以外の女なんてもう考えられない、という衝動に任せて、また日向は澪田の唇を奪った。



その翌日。
色々と体力を消耗するイベントがあったが、日向は無事修学旅行に復帰した。
素材を採取し終えて自由時間。前回の課題達成で入手したおでかけチケットを持って、再び澪田を訪れた。

「やぁ。今日もどっか、遊びに行かないか?」
「そりゃあ勿論、大歓迎っすけど」

ちょっと内股になって、上目遣いの澪田。大きなツリ目で、じっと彼を見上げる。

「……創ちゃん。遊び終わった後、また唯吹とえっちなことしたいとか考えてるっしょ」
「なっ」

秘めた欲望を見透かされて日向は狼狽えた。
何故ばれた。もしやこの女、エスパーか。
そんな荒唐無稽なことすら考えてしまう彼に、澪田は呆れ顔。

「あーあ、やっぱり。
 昨日あの後、大変だったんすからね。ジンジンするしキリキリするし、というか今でもちょっと変な感じ残ってるっすよ。
 なのに創ちゃんは、そんな唯吹とまーた子作りしたがるんすねー。
 いやぁほんと、えろい子を彼氏にしちゃうと大変っすよ」

揶揄するような口ぶりだが、澪田の表情に嫌悪は無い。
日向の手を握って、にっこり笑って言った。

「でも、しょーがないっすね。
 創ちゃん、唯吹のことだけ見てくれるって約束してくれたからねー。
 だったら、唯吹が他の女の子の分まで一杯、気持ちよくしてあげなきゃっすよねー。
 あ。でも、いくらしたいからってえっちばっかってのはナシっすよ。
 始める前と、してる時と、終わった後と、しっかりちゅーして可愛がってくれなきゃダメっすよ」

喪失の痛みを抱えながらもそう言ってくれる澪田が可愛すぎて、思わずキスしてしまう。
唇で交わす愛を、彼女は十分に受け入れてくれた。
手を取り合って島を二人歩いていると、道の向こう側から人影が見えた。

あちらも男女の組み合わせ、それも随分親しげな間柄らしい。よく見ると、その者たちは日当達の同級生、九頭竜と辺古山であることが分かった。

「おう日向。もうすっかり元気だな。
 ……いろんな意味で。随分手が早いじゃねえか。さすが俺の義兄弟だぜ」
「おかげさんでな」

ふと見ると、今の自分達と同じく九頭竜と辺古山が手を繋いでいる。握った手を見られて少し恥ずかしげにしてはいるが、
しかし互いの手を離そうとはしない二人を見て、日向は彼らの関係を察した。


「……へぇ。そういうことだったのか」
「まぁな。実は俺、こいつとは長い付き合いだったんだが……
 その、なかなか言い出せなくて、な。
 でも、お前のおかげで俺も踏ん切りがついた。
 人にでかい口叩いておいて、自分じゃ何も出来ない男ほど情けねえ奴はねえ。
 お前はそれを、俺に分からせてくれたんだよ。
 ……ありがとうな」
「そんな、礼を言うのは俺の方だよ。お前が背中を押してくれなかったら、
 俺は絶対に澪田とこういう関係にはなれなかったと思うから」
「……唯吹も創ちゃんも、だいぶヘタレっぽい感じだったっすからねぇ……」

仲睦まじい二人を見て九頭竜と辺古山が笑う。
剣道少女の柔らかい笑みは、今まで見たことが無いほど穏やかだった。

「……辺古山。お前の言ってた相手って、九頭竜だったんだな」
「ああ。私と冬彦坊ちゃんは、本当なら恋人同士になどなってはいけなかったんだが……
 坊ちゃんにあんなに求められては、断ることなどできない」
「おい、お前! 坊ちゃんはやめろ!」
「……二人でいるときには、何も言わなかっただろう。何故いまさら」
「……うるせえ! つうかワザとかてめえ!」

九頭竜と笑い合う辺古山の表情はどこまでも自然な愛情に満ちていて、
無理して笑顔を作る必要など全く感じられなかった。
かつてのような鉄面皮より、何の気負いも無しに笑えている今の方がずっと可愛いなあ、
なんて思っていると背中に鈍い痛みが走った。

「こらぁー。どーこ見てんすか。創ちゃんは唯吹だけ見ててくれるって約束したじゃないすかぁー。
 約束破る悪い子には、ツノドリルの刑っす!」

前頭の髪飾りを背骨に当ててグリグリされると、見た目以上に痛い。
愛しい女をこれ以上不機嫌にさせる訳にはいかない。日向は澪田と腕を組んで言った。

「それじゃあ、また。本当にありがとうな、九頭竜」
「ああ。あんまり気張りすぎて、ダウンしねえよう気ぃつけろよ」

蚤の夫婦に別れを告げ、日向たちは歩いていく。南国の太陽を浴びて、全身から活力が沸き上がってくるようだった。

「さー、今日もいっぱい遊ぶっすよー! 創ちゃんと一緒なら、なんだって楽しいっすからねぇー!」

生命力の権化のような澪田と、これからずっといっしょにいたい。そうすることで自分も、真に生きることができる。彼はそう信じていた。
|