女の嬌声と、腰と腰がぶつかり合う肉の音と、淫らな水音が室内に響く。
月明かりだけが差し込む薄暗い部屋の中で、絡み合う二つの影があった。
「はぁっ!はひっ!いい、いいです……!」
片方の影――背後から貫かれている女が裸の胸を揺らし、美しいプラチナブロンドの髪ををなびかせる。
超高校級の王女――ソニア・ネヴァーマインド。
普段は気品に満ち、聞く者に威厳を感じさせずにはいられない声が、今は淫蕩に濡れた喘ぎを響かせていた。
「ダメっ、です……!そこ、はぁ……ああっ、あああッ!!」
後背位の体勢での力強い打ち付けに、ソニアはおとがいを反らせて快感を露わにする。
「はあっ、はぁ……ん……見て、下さってますか……そう、ださん……!」
荒い呼吸をつきながら、ソニアはベッドで情を交わしている男にではなく――部屋の隅で膝を抱える、もう一つの影に声を掛ける。
その痴態を見ながら、浅ましくペニスを勃起させる男――左右田和一に。



その日のウサミ先生の課題も終わり、自由行動となったソニアは島の探索を兼ねた散歩へと繰り出していた。
折角だから図書館の方にでも行こうかと考えながら海岸線を歩いていると、見慣れた黄色いツナギの男子が手を振りながらこちらへ近づいているのが見える。
「ソーニアさーん!」
「……左右田さん。また貴方ですか」
一点の曇りもない左右田の呼びかけと、それに対するじとりとした視線。
王族らしい博愛精神に満ちたソニアがこんな反応を返すというのは、ある意味で特別ではあった。
この場合、彼のいくら罵られても挫けないメンタリティが逆に作用しているのだが、それに気付く左右田ではない。
「はい!貴方の左右田和一です。どうですかソニアさん。こんないい天気ですし、今日は俺と遊園地なんかに……」
「……左右田さん。貴方がわたくしに好意を抱いてくれているのは純粋に嬉しく思います。ですがわたくしは……」
初めての色よい――少なくとも左右田の耳にはそう聞こえた――返事に、左右田は喜びと共に一歩近づく。
「本当っすか!いやーソニアさんも嬉しく思ってくれるなんて感激です!」
「…………」
眼を輝かせる左右田とは対照的に、ソニアは困ったように視線を落とす。
しかし、やがてソニアは何かを決意したように顔を上げると、左右田の眼を正面から見据えた。
宝石を思わせる深い蒼に見つめられ、左右田は思わず胸が高鳴るのを感じた。
「わかりました」
「そ、それじゃあ――!」
「今夜、わたくしのコテージまでいらして下さい」
「え……?え?」
続いて放たれた言葉は、そんな想像だにしない言葉だった。
混乱する左右田を気にも止めず、ソニアは一礼すると、優雅に去っていく。
その背中を追うことも忘れ、左右田は今しがた耳にした信じられない言葉を、何度も頭の中で反芻し続けた。



午後10時。
他の生徒達がコテージに戻る時間になって、左右田はそっと自分のコテージを抜け出した。
まさか、という理性と、万が一、という期待。
それらが織り交ぜになったまま、ソニアのコテージまでたどり着く。
こういう時は果たしてノックするべきなのか否かと考えていると、扉に鍵がかかっていないことに気付く。
(開けておいてくれたのか……?)
いよいよ高まってきた興奮に唾を飲み込むと、意を決して扉を開け、素早く中に入り込む。
「そっ、ソニアさ――!」
そして――
そこに広がっていた光景に、左右田の思考は完全に停止した。
「あはっ……!あ……来て、下さったんですね……左右田さん」
ベッドに腰掛け――いや、正確には、そこに座る"誰か"に背中を預けるように寄りかかるソニアが、左右田を見て微笑む。
そんな、いつもの左右田ならそれだけで歓喜するだろうソニアの姿は、一糸纏わぬ全裸だった。
確認するまでもない。
それは明らかに、情事中の男女の姿だった。
「な、なに……なに、やって……?」
「すみません……口では言ってもわかって頂けないようですので、一度左右田さん自身に見て貰うことにしたのです。"彼"も了承してくれました」
彼、という言葉に、左右田は初めてソニアの背後にいる男に眼をやった。
この修学旅行が始まってから、すっかり馴染みになった男子――日向創が、何かを言いたいような複雑な眼でこちらを見ていた。
「見ての通り、わたくしと日向さんは愛し合う仲です」
「ひ、なた……と?」
「貴方にお誘いを頂くずっと前から、わたくし達は愛を交わしてきました。何度も、何度も何度も何度も、です」
「…………」
「ですから、どうかわたくしの事は諦めて下さい……わたくしはもう、身も心も日向さんのものなのです」
左右田はのろのろと首を振る。
理解できない。
否、脳が理解する事を拒否していると言った方が正しい。
「……その顔は、まだわかって頂けないようですね……では、このままここで見ていて下さい。わたくしは貴方に応えることができないのだと、理解できるまで。ですが――」
「もしわたくし達に指一本でも触れたら、そのまま出て行って頂きます。宜しいですね?」
左右田は壊れた人形のように、ただ頷くことしか出来なかった。



行為の最中、日向は幾度となく左右田に申し訳なさそうな視線を送ってきていた。
(……畜生。そんな眼で、見るんじゃねえよ)
男が二人と、女が一人。
当然の図式として、一人があぶれただけだ。
(……ただ、それだけの話なんだ)
「今日は……んっ、いつもより……優しい……ですわね」
「いや、それは流石に、な……」
日向も人に見られての行為など初めてである。
恋人のたつての願いということで了解はしたものの、なかなかいつも通りという訳にはいかない。
「お願いです……いつもの様にしてください……どうか」
「――――わかった」
再度、日向が左右田に視線を向ける。
声には出さないものの、その眼はすまないと言ったように左右田には見えた。
これから始まる光景を、直視させてしまうことに。
そして。
そこから先は。
ケダモノと化した、オスとメスの貪り合いだった。



「ひっ――あああああああっっ!!!」
日向は一度腰を限界まで引くと、勢いをつけ、全力でソニアに叩き込んだ。
しかもそれは一度では終わらず、ソニアの膣内を蹂躙するように、何度も、何度も繰り返される。
(な……んだ、それ……おい、やめろよ……ソニアさん、痛がって……)
左右田は思わず止めようと立ち上がりかけ――そしてすぐにそれが間違いだと思い知らされた。
「やぁ、んぅ、ううぅー……あっ、すご、いぃ……いぃ……あん、いぃぃ……!」
その声が悲鳴のように聞こえたのも束の間、ソニアの声は明らかに快楽の喘ぎへと変貌する。
ソニア自身も、日向の打ち込みに合わせて腰を振り、くねらせ、更に快感を引き出そうとしていく。
(う、嘘……だろ……?))
「あっ、ひゃふぅっ……や、ふぁあっ!そ、そんな……ふぁああっ、ら、めええっ……」
(感じてる、ってのかよ……あれで……?)
それはまだ経験の無い左右田にとって、俄かには信じがたい光景であった。
男女が愛を交わすというものは、もっと優しい、愛情に満ち溢れた行為ではないのか?
そんな事を考える左右田を嘲笑うように、行為が更に激しさを増してくると、日向も左右田に気を配る余裕を無くしたのか、唇を歪ませて恋人の痴態に溺れていった。
ソニアの両脚が背後から持ち上げられ、後背座位の体勢になる。
その正面には、二人の情事の勢いに気圧され、へたり込む左右田がいた。
「あ……あ……」
美しいソニアの顔が汗と涙に濡れている。
陶器の様な肌は全身余す所無く晒され、豊かな乳房も、貫かれた秘部も、全てが惜しげも無く丸見えになっている。
その光景に、左右田は自分のペニスが激しく勃起するのを感じた。
「やぁっ……日向さん……!わたくし、見られて……恥ずかしいところも、全部見られて……!」
「……見られて感じてるんだろ?この雌猫」
「あッ――!!」
耳元の囁きに、ソニアはぞくぞくと身体を震わせる。
「は、はいぃ……はいぃっ……!わたくしは……淫乱な雌猫です……!」
「その雌猫は今なにをされてるんだ?」
「お……おまんこに……日向さんの逞しいおちんぽを挿れられています!!」
一国の王女ともあろう者が、そんなはしたない言葉を口走っている。
しかもそれが、自分の憧れであるソニアの口からだと言う事実に、左右田は最大まで勃起した自分のペニスを無意識にしごき出していた。
「くそっ……くそっ……!」
日向はそんな左右田を一瞥したものの、すぐにソニアへと意識を戻す。
「挿れてもらっています、だろ?」
言いながら、パァンと音が鳴るほどに激しく腰を叩きつける。
「くひぃぃっ!ふぁっ!い、挿れてもらっていますっ!!!」
「よく、言えましたっ……!」
ソニアの両腕を取り、背を反らせるようにすると、バックから腰を打ちつける。
突かれる角度が変わり、ソニアをまた新しい快楽が襲い始めた。
「くぅっ……んふぅっ、ぅぅぅぅッッ!!」
快楽から逃れるように突き出されたソニアの上半身が、自分を慰めている左右田の方へと近づく。
「あ……ああ……」
左右田の眼前で、夢にまで見たソニアの乳房が揺れる。
何度も何度も想像し、そして同じ数だけ精を吐き出したそれより、実物は遥かに美しかった。
左右田の震える指が、無意識にその胸に伸び――
「触りたいのですか?」
耳朶に響く、氷のような冷たさを持つ言葉に、びくりと手が止まる。
快楽に蕩けていたはずの眼が、王女の威厳と共に静かに左右田を見つめていた。
「――――!!」
気付けば胸まであと1cmの距離に近づいていた手を引き剥がすと、ソニアはよく出来ました、と出来の悪い生徒を誉めるように妖艶に微笑む。
「ソ、ソニアさん……俺……俺、は……」
「ええ、わかっていますとも。左右田さんはちゃんとわたくしとの約束を守ってくれましたものね。追い出したりはしませんよ」
(ああ……!)
まだここにいていいのだ。
まだ、彼女のあられもない姿を見ていることを許されたのだ。
王女の慈悲に、左右田は思わず歓喜に震えた。
「続けていいか?」
「はい……」
左右田との会話中、動きを止めていた日向の言葉に、ソニアは再び眼に淫蕩の火を灯らせる。
背後を振り向き、口付けを交わすと、遅れを取り戻さんとばかりに激しさを増した律動が再開される。
「ひゃっ、ふぁあっ、くはぁっ……ふぁっ、ひゃひぃっ……!」
息をすることも忘れ、どろどろに融け合い、一つになった二人が、お互いの絶頂を感じ取る。
「ひいっ、ふぁあっ、ふぁううっ!ふぁあッッ!!」
「ソニア……!そろそろ……射精す、ぞ……!!」
「あはぁぁっ!はいっ!はいっ!わらひ、待ってます……あなたが、しゃせい、するの、まってますぅ!!」
そう言うと、ソニアは淫蕩に染まった笑みを左右田に向けた。
「そう、さ……!ひぃっ!みれ、見れいてください!わらくしが、ノヴォセリック、次代の王を、孕むところをぉっ!!!」
「うおおああああああああ!!」
日向が獣の咆哮を挙げながら最高速でソニアを蹂躙する。
遂に限界に達しようとする二人と共に、左右田もまた限界に達しようとしていた。
ベッドが軋むほどの勢いで揺さぶられ、がくがくと震えていたソニアの身体がふいに動きを止めたかと思うと、島全土に聞こえるのではないかというほどの叫び声が響き渡った。
「――――っぁ!!ああああああああああっっっーーーー!!!!!」
「くっ――ああああッ!!!!!」
ソニアが絶頂に達した時、彼女の膣内にいる日向も、自分を慰める左右田も、ほぼ同時に精を吐き出した。
日向の精液はソニアの膣内を埋め尽くす勢いで放出され、シャワーのように噴出した左右田の精液は、ソニアの紅潮した顔や身体にびちゃびちゃと振り掛かる。
狂おしいまでの射精衝動が収まると、左右田は自分のやったことに蒼白になった。
「あ――ああああッッ!!す、すみませ……」
今にも泣き出しそうな顔になる左右田に、ソニアは倒れこんだ姿勢のまま蕩けきった笑みを浮かべた。
「はぁっ、はぁっ……ふ、ふふ……いい、ですよ……とく、べつに……許可、します……」
顔を精液で汚しながらもそう言ってくれるソニアに、左右田は安堵の溜息を漏らす。
しかし、そのやり取りに嫉妬の炎を滾らせるもう一人の男が、この場には居た。
「……ソニアがそう言うなら良いけど、自分の女が他の男ので汚されるってのは、あんまりいい気分じゃないな」
「ああっ……すみません……すみません日向さ……あっ――」
日向は脱力するソニアの腕を引くと、強引に起こしてベッドに腰掛ける自分の上に座らせる。
そこには、射精して尚硬さを失わないままの日向のペニスがあり――
「ひっ――いあああああああああああああ!!!」
ずぶり、と、まだ絶頂に震えるソニアの膣内が、再び剛直に埋め尽くされた。
「全部塗りなおしてやるよ。ソニアが汚されたところも!俺の精液で!!全部ッッ!!!」
「ひあああぁっ!!ゆるひ……ゆるひてくら……んぐぅっっ――!?んっ、ふぅぅぅッッッ!!!」
「あ……あ、あぁ……」
再び眼前で始まる、終わらない獣の交わりに、左右田の意識はゆっくり闇へと落ちていった。



夢だ。
こんなのはただの悪い夢なんだ。
そういや、昨日は寝不足だったからな……。
――だからさ、今だけちょっと眠らせてくれよ。
起きたら元の左右田和一に戻ってるからさ。
これが全部夢だと、そう思わせてくれ。
それくらいは……なぁ、いいだろ?

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最終更新:2012年09月03日 14:22