《ディクティナ・ファリス/Dictyna felis》
文明は進むが、つまりそれは統制と規制の発達を意味し、少数の排斥を意味する。
大多数にとって都合のいい制度とは、少数にとって都合の悪い制度であり、その少数が単体で強大であればなおさらだ。
宗教的、人種的に不適合とされたものは特定の社会を追われ、別のコミュニティをつくり上げることになる
――それが十分に多ければ。
ソレグレイユ、
ユグドラシル、そして人種の坩堝とも言われる
久平のいずれにも属せなかった人種は確かに存在し、
彼らはどうにかして糊口を凌ぐ必要に迫られる。
彼女、ディクティナ・ファリスもそのような排斥された者の一人である。
病的なほど青白い肌と赤い瞳はそれだけで彼女の特異性を明らかにさせる。
彼女――その一族はもはやどこに居るのかわからないが――は空気中の
マナを利用し物体を動かすという
肉食獣にしかできない技術を習得している。
(
エルフはマナを凝縮、そしてそれを転嫁しているため、エルフのほうがより『粗暴でない』)
寒さに耐性を持ち、外見からは想像できないほどの力を持っている。
それを周りの人は恐れ、汚し、殺し、追放した。
現在彼女は廃棄された遺跡を廻りながらたった一人で生きている。
彼女は知っている。誰も自分と友好関係をもとうとしないことを。
彼女は気がついている。もはや自分の一族は自分以外いないことを。
彼女は知っている。自分が何かを為すには無力なことを。
最終更新:2022年08月29日 18:56