ノース・ルーテンシア


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「ノース・ルーテンシア」

ユグドラシル信託統治領、アースガルズ地区の北に位置する町。旧称は「アヴェンディア」。
旧・神政アースガルズ首長国領の町の例にもれずここも寒冷な気候の地だが、
それでも比較的発達した街ではある。

主な特産品は、魔術礼装を組みこんだ特性のクォーツを使用した、職人ものの懐中時計。
市内には世界で唯一のアヴェンディア時計の販売と修理を行なう時計店がある他、
時計職人を育成する専門学校も存在する。

悪魔術師の反乱において、シャラシャーティが最期に逃げこんだ土地でもあり
街の時計塔の上空にて、彼の信奉者達とユグドラシル軍の小数精鋭の勇士達が激戦を繰り広げた。



『この街の入り口に掲げられた看板に書いてあった「ようこそ、ノース・ルーテンシアへ」という文字。
 けれど、街の中でそこかしこに掲げられている看板には街の名前は一つも無く、
 代りにアヴェンディアという名前ばかりだ。

「この街の人間にとって、ここはまだ"アヴェンディア"なのよ」

 道端で途方に暮れていた私をここまで案内してくれた眼鏡の女性は、そう言いながら自嘲的に笑った。
しかし、意味が解らずキョトンとしているしかない私に気づくと、彼女は歩きながら続ける。

「ルーテンシアは、押しつけられた名前なの。
 ユグドラシルの都合で歪められてしまったこの国の象徴のようなものよ。
 だから、この街の人間はその名前を否定することで、現実も否定しようとている。
 ……愚かなことよね。そんなことをしても何も変わらないのに。」

 まあ、私もこの街の人間なんだけどね、と言いながらどこか遠いところを見る彼女の顔を見ながら、
 私はさっきの話を考えてみようとした。
 けれど、村を出たばかりの私にはその話はなんとも難しく、
 知らぬまに鳴らしてしまったお腹の音を彼女に聞かれてしまっていた。

「フフ…ごめんなさいね、変な話を聞かせてしまって。
 そうね、この先にいいアースガルズ料理のお店があるの。
 エルフのあなたの口に合うか解らないけど…」

 料理、と聞いて私が大きく首を頷かせたその時、彼方に見える時計台から大きな鐘の音が聞こえた。』

―――生まれ故郷を飛び出したエルフの少女の日記より

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